オーストラリアの大自然の中で生まれた、サステナブルな山の家
あまり知られていないかもしれませんが、オーストラリアの山々には、近年、環境への配慮と工夫にあふれるモダンでサステナブルな山の家が建てられています。エコの面でも、規模の面でも、日本の住宅の参考になるポイントがありそうです。
Brodie Norris
2015年12月14日
オーストラリア史上最大規模の土木開発計画といわれるスノーウィーマウンテンズ計画以来、オーストラリアの山岳地帯の建築はめざましい発展をみせてきた。もともとは、ニューサウスウェールズ州南部とビクトリア州北部への安定した水源の確保を目的とする計画だったことから、水力発電事業が発展し、山に囲まれた地域一帯に雇用と機会をもたらしてきた。そして、こうしたインフラ整備を背景に、オーストラリアのモダンな山の家は、革新的でスタイリッシュ、かつサステナブルな形に発展をとげてきたのだ。
1. カルキートの山の家 〈ジェームズ・ストックウェル・アーキテクツ〉
カルキート山に抱かれて立つ、モダンでありながらラスティックな風情もある家。山肌を直接彫刻したかのように、スノーウィ―マウンテンズの眺めに溶け込んでいる。中へ入れば木のぬくもりが感じられ、外がどんなに寒い日でも暖かく心地よい。
「莫大な予算をかけなくても、ひらめきに満ちたデザインが実現できることを示したかったんです。建築においては、デザインに工夫をすると、素材選びよりも組み立てのほうが重要になるということがわかる実例ですね」と設計を手がけた建築家のジェームズ・ストックウェルさんは話す。
カルキート山に抱かれて立つ、モダンでありながらラスティックな風情もある家。山肌を直接彫刻したかのように、スノーウィ―マウンテンズの眺めに溶け込んでいる。中へ入れば木のぬくもりが感じられ、外がどんなに寒い日でも暖かく心地よい。
「莫大な予算をかけなくても、ひらめきに満ちたデザインが実現できることを示したかったんです。建築においては、デザインに工夫をすると、素材選びよりも組み立てのほうが重要になるということがわかる実例ですね」と設計を手がけた建築家のジェームズ・ストックウェルさんは話す。
コンクリートの床は山の気候を考えると冷たく思えるかもしれないが、屋内には北からの自然光が降りそそいでいる。効果の高い断熱材を入れ、薪の暖炉でお湯をつくり、温水循環式の床暖房を温める。この暖房システムでかなりの熱量が得られるので、家の中は冬の間も心地よく暖かい。合板やトタン板、打ちっ放しのコンクリートなど加工のほとんどいらないシンプルな素材はコストを抑えるだけでなく、切り立つ山々になじむ家の表情をつくりだしている。
放物線のようなカーブを描いた形は外見が印象的なだけでなく、強風にあおられるのを防ぐ効果もある。カーブを波型のトタン板でつくる手法は、山小屋や戦前にみられた組み立て式のかまぼこ型兵舎から着想を得たものだが、低いコストと強固な構造を実現できた。また、雪が積もるのを防ぎ、雨水を集めやすいため、大自然の真ん中で公共の電力や水道に頼らない、オフグリッドな生活に適している。
家は山地でのサステナビリティの追求と実践を体現している。塗装など外装のメンテナンスは不要で、外部から供給されるエネルギーも使わない。薪を燃やすことによる温水循環式の暖房と太陽光発電システムのおかげで、必要な電気も暖房も自家発電でまかなえる。ごみは敷地内で処理し、水はすべて雨水を利用している。
家は山地でのサステナビリティの追求と実践を体現している。塗装など外装のメンテナンスは不要で、外部から供給されるエネルギーも使わない。薪を燃やすことによる温水循環式の暖房と太陽光発電システムのおかげで、必要な電気も暖房も自家発電でまかなえる。ごみは敷地内で処理し、水はすべて雨水を利用している。
2. クラッケンバック湖畔のロッジ 〈ランス・ワークショップ・アーキテクチャ&デザイン〉
ニューサウスウェールズ州クラッケンバック湖畔に立つ、スタイリッシュなスキーロッジ。設計の原点になったのは、あっと驚くような斬新なものを造りたいという気持ちだった。「大胆でダイナミックな家にしたいと思いました。自然に囲まれたすばらしい立地を生かしながら、前年にすぐそばに建ててあった家を引き立てるデザインを考えました。山の家らしくしたかったんです。ファームハウスや海辺の家ではなく」と建築家のヘンリー・ランスさんは語る。コンテンポラリースタイルの建物がスノーウィ―マウンテンの地にラグジュアリーな雰囲気を加えている。印象的な屋根のライン(1番目の家と同様、強度を増すためカーブをつけている)と、石や木など自然素材の利用はその例だ。スキーに興じたアクティブな一日の終わりは、日本の浴槽をヒントにしたバスルームでくつろぐ。
山の家を設計する際、最大の課題になるのが気候だとランスさんは言う。「温暖な気候の土地とくらべて、暖房と電気代を抑えながら住み心地のいい家になるよう、設計にも建築にも気を使います。雪の荷重と時速150キロメートルの風にも耐えるよう考慮しなくてはいけませんし」
ニューサウスウェールズ州クラッケンバック湖畔に立つ、スタイリッシュなスキーロッジ。設計の原点になったのは、あっと驚くような斬新なものを造りたいという気持ちだった。「大胆でダイナミックな家にしたいと思いました。自然に囲まれたすばらしい立地を生かしながら、前年にすぐそばに建ててあった家を引き立てるデザインを考えました。山の家らしくしたかったんです。ファームハウスや海辺の家ではなく」と建築家のヘンリー・ランスさんは語る。コンテンポラリースタイルの建物がスノーウィ―マウンテンの地にラグジュアリーな雰囲気を加えている。印象的な屋根のライン(1番目の家と同様、強度を増すためカーブをつけている)と、石や木など自然素材の利用はその例だ。スキーに興じたアクティブな一日の終わりは、日本の浴槽をヒントにしたバスルームでくつろぐ。
山の家を設計する際、最大の課題になるのが気候だとランスさんは言う。「温暖な気候の土地とくらべて、暖房と電気代を抑えながら住み心地のいい家になるよう、設計にも建築にも気を使います。雪の荷重と時速150キロメートルの風にも耐えるよう考慮しなくてはいけませんし」
寒冷な気候の山地では適切な暖房の設置が必須だが、周辺の環境にも配慮が求められる。この家には、それをふまえてサステナブルな家にする工夫が随所にみられる。「日当たりを含め、配向を考慮して建てていますし、全体に断熱効果の高い素材を使用する、熱の逃げ道を最小限にする、二重ガラスや雨水の集水設備も設けています」とランスさん。
夜、暖炉を囲んでくつろげる部屋ももちろんある。先のカルキート山の家と同じく、床は磨き仕上げをしたコンクリートで、床のスラブに配した温水循環式の暖房で暖めている。スラブ暖房は数ある暖房システムのなかでも快適性が高く、エアコンのように肌の乾燥やくちびるのひび割れも起こることもない。また、ラジエータやダクト類、空調機器などがないため、すっきりと美しいラインが実現した。
夜、暖炉を囲んでくつろげる部屋ももちろんある。先のカルキート山の家と同じく、床は磨き仕上げをしたコンクリートで、床のスラブに配した温水循環式の暖房で暖めている。スラブ暖房は数ある暖房システムのなかでも快適性が高く、エアコンのように肌の乾燥やくちびるのひび割れも起こることもない。また、ラジエータやダクト類、空調機器などがないため、すっきりと美しいラインが実現した。
バスルームには、日本の浴槽をイメージした打ちっ放しのコンクリート製バスタブを設置いた。山で一日スキーを楽しんだあと、ここで熱い湯につかってゆったり手足を伸ばすのは至福のときにちがいない。
3. 南部の高地に立つ家 〈ベン&ペナ・アーキテクツ〉
水槽を横長にしたような形が目を引くこちらの家。周辺の山岳地帯で一般的なファームハウスのスタイルを参考に、カラーボンドを外壁に用いた山の家だ。カラーボンドはメンテナンスの手がかからないうえ耐久性が高く、厳しい気候に適した素材といえる。また、森林火災から家を守る素材としてもふさわしい。
水槽を横長にしたような形が目を引くこちらの家。周辺の山岳地帯で一般的なファームハウスのスタイルを参考に、カラーボンドを外壁に用いた山の家だ。カラーボンドはメンテナンスの手がかからないうえ耐久性が高く、厳しい気候に適した素材といえる。また、森林火災から家を守る素材としてもふさわしい。
コンパクトなワークスペース。建物全体の中では広さのあるスペースだ。家はワークスペースとリビングエリア、寝室エリアを意図的に分け、自然とのつながりを意識している。
ワークスペースの床は磨き仕上げとホーニング加工を施したコンクリートスラブで、外部の動力や機械設備を使わないパッシブソーラーシステムを取り入れた。太陽光エネルギーを利用して空間を暖めるよう設計されている。小型の暖炉は、二酸化炭素の排出を抑えながら、ソーラーシステムを補う形でコンクリートの部屋を暖かくしてくれる。計算された設計とほどよいサイズのため、家の外が寒いときでも暖かく快適だ。
4. アルパイン・ハウス 〈ハビテック・システムズ〉
プレハブ式の山の家からは、ヴィクトリア州ブラー山のみごとな姿を望むことができる。家は丘の輪郭に沿うように立ち、南半球では陽が射しこむ北側に、中庭を設けてある。
プレハブ式の山の家からは、ヴィクトリア州ブラー山のみごとな姿を望むことができる。家は丘の輪郭に沿うように立ち、南半球では陽が射しこむ北側に、中庭を設けてある。
パッシブソーラーシステムの効果を最大限に引き出すため、南向きの景色は窓枠で切り取って熱の損失を最小限に抑え、天井は北向きに傾斜させて、家の中まで自然光が届くよう配慮している。磨き仕上げのコンクリート床と石造りの暖炉は太陽光を受け、外の気温が下がっても昼夜を問わず室内を暖かく保ってくれる。
人の住む集落からは完全に離れているため、公共の電気や水道は通っておらず、完全なオフグリッドだ。「エネルギーも水道も全部自前で用意しています。電気は太陽光発電で自家発電、暖房は森林から出た間伐材を燃やしていますし、水はすべて雨水を利用し、生活排水は敷地内で処理しています」と建築家のヴォン・ヤンさんは話してくれた。
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