Houzzツアー:墓地の中に立つ、美しいガラス箱のようなコンテンポラリー住宅
著名人の墓も多いロンドンのハイゲート墓地の脇に立つガラス箱のような美しい住宅。窓の外には緑が生い茂り、室内はふんだんに光が入る、明るくて静かな家です。
Jo Simmons
2015年12月10日
「目の前が墓地はちょっと」と敬遠する人も少なくないはず。でも、ロンドンの有名なハイゲート墓地にあるこちらの家なら別かもしれません。緑豊かでユニークな立地に建てられたコンテンポラリー建築は、不気味というよりむしろファンタジックな雰囲気。確かに大きな窓からは墓石やオベリスクも見えますが、自然の木立に囲まれた、プライベートな美しい環境です。
「使用する素材を限定し、ガラスを多用しました」と言うのは、この家をデザインした設計事務所〈エルドリッジ・ロンドン〉の建築家、マイク・ギブソンさん。「ユニークな立地で、周囲には木々が自由に生い茂っていましたから、それをそのまま室内に取り込もうと思ったんです」
「使用する素材を限定し、ガラスを多用しました」と言うのは、この家をデザインした設計事務所〈エルドリッジ・ロンドン〉の建築家、マイク・ギブソンさん。「ユニークな立地で、周囲には木々が自由に生い茂っていましたから、それをそのまま室内に取り込もうと思ったんです」
どんなHouzz?
居住者:現在はある家族が住んでいる。写真を撮影した当時は建て主である独身男性が所有していた
所在地:ロンドン北部、ハイゲート墓地
建物: 4階建てのコンテンポラリー住宅。
竣工:2008年
規模:ベッドルーム×4、バスルーム(トイレ含む)×5
建築家:〈エルドリッジ・ロンドン〉。ニック・エルドリッジのデザイン案に基づき、マイク・ギブソン率いるチームが担当
この家があるのは、ロンドン北部、ハイゲート墓地の片隅だ。カール・マルクスやジョージ・エリオットを含め、“近隣住民"はもうこの世にいない人たちばかり。敷地全体がひっそりと穏やかな雰囲気に満たされている。「周囲は自然にまかせた林です。この辺りは墓地の中でもほかの場所より人通りが少ないので、クライアントの庭のようなつもりでデザインに取り入れました」とギブソンさんは言う。
居住者:現在はある家族が住んでいる。写真を撮影した当時は建て主である独身男性が所有していた
所在地:ロンドン北部、ハイゲート墓地
建物: 4階建てのコンテンポラリー住宅。
竣工:2008年
規模:ベッドルーム×4、バスルーム(トイレ含む)×5
建築家:〈エルドリッジ・ロンドン〉。ニック・エルドリッジのデザイン案に基づき、マイク・ギブソン率いるチームが担当
この家があるのは、ロンドン北部、ハイゲート墓地の片隅だ。カール・マルクスやジョージ・エリオットを含め、“近隣住民"はもうこの世にいない人たちばかり。敷地全体がひっそりと穏やかな雰囲気に満たされている。「周囲は自然にまかせた林です。この辺りは墓地の中でもほかの場所より人通りが少ないので、クライアントの庭のようなつもりでデザインに取り入れました」とギブソンさんは言う。
早くから近隣住民やハイゲート墓地との話し合いを行い、事務所が提案する新築物件のクオリティを認めてもらうことができた。とはいえ、まったく不満が出なかったわけではない。「その1つは、高い位置にある家のテラスや大きな窓からお墓に来る人の様子が丸見えになる、というものでした」とギブソンさんは言う。しかし無事に自治体の許可が下り、建設計画が進んだ。
キッチンとダイニングスペースは最上階にあり、スライド開閉式のガラス天井を備えている。「このスカイライトは6×2.5メートルで、ボタンを押すだけで完全にオープンになります」とギブソンさん。
キッチンとダイニングスペースは最上階にあり、スライド開閉式のガラス天井を備えている。「このスカイライトは6×2.5メートルで、ボタンを押すだけで完全にオープンになります」とギブソンさん。
最上階のキッチン・ダイニング部分、その下階のリビング部分をそれぞれ階段とつなぐ床はガラス製で、下にある玄関ホールへと光が射し込むようになっている。「階段は、コンクリート壁からコンクリートの踏板がカンティレバー式に突き出ています」とギブソンさん。「全階を突き抜けて通っている構造用ガラスパネルが中央にあり、手すりと、各階の踏板の何枚かはそのパネルに固定されています」
家は、墓地に隣接する傾斜地に立っており、墓地とはフェンスで区切られている。「墓地は文化財認定されているので、建物もそれに見合う品質であることが条件でした」とギブソンさんは言う。「また保全地区でもあるので、それを考慮して建物も景観に貢献する必要がありました」
上の3つの階は、4本のコンクリート柱からカンティレバーで突き出るかたちになっている。「まるで地上から浮かんでいるように見えます」とギブソンさん。
上の3つの階は、4本のコンクリート柱からカンティレバーで突き出るかたちになっている。「まるで地上から浮かんでいるように見えます」とギブソンさん。
リビングスペースには煙道の長い薪ストーブがある。「煙道はリビングから最上階へのびています」
最上階の書斎には長いガラス製の造り付けのデスクを設置した。「強化ガラスをつなげて作っています。天井から床まであるガラス窓の前に置いても眺めをさえぎらないための工夫です」とギブソンさん。
光を反射する収納とメディアユニットは、木製建具に艶のある黒いラッカー加工を施したもの。美しい景観を反射して、家の内部にまで引き込む効果がある。
上階の人影が、キッチンのガラス床を通って、下階のリビングの壁に映し出されている。
「この家では、使う素材の種類を限定しました」とギブソンさん。「だいたい暗めのトーンの素材で、色彩は抑えています。外に鮮やかな緑がたくさんあるので、その景観を中に取り込むことにしたんです」
ガラス、コンクリート、そしてこちらの床にも使われている黒御影石は、家全体に使われている。「素材はすべて、熱容量を大きくして暖房を最小限に抑えることを考えて選びました。最上階のスカイライトは通気口になります。テラスへの出入口はすべてスライドドアです」
「この家では、使う素材の種類を限定しました」とギブソンさん。「だいたい暗めのトーンの素材で、色彩は抑えています。外に鮮やかな緑がたくさんあるので、その景観を中に取り込むことにしたんです」
ガラス、コンクリート、そしてこちらの床にも使われている黒御影石は、家全体に使われている。「素材はすべて、熱容量を大きくして暖房を最小限に抑えることを考えて選びました。最上階のスカイライトは通気口になります。テラスへの出入口はすべてスライドドアです」
この家を建てた前オーナーのものだったスピーカーが、今もリビングの主役として置かれている。前オーナーの要求はそれほど多くなかったが、〈エルドリッジ・ロンドン〉が得意とするマスキュリンな雰囲気の素材使いが好みだったという。「この立地で、私たちがどんなデザインを考えつくか楽しみにしていましたね」とギブソンさん。「私たちはガラスとコンクリートをよく使います。コンクリートは、手触りと、表面加工法にいろいろな可能性があるのがいいですね。最近はガラスの活用法も進化しているので、どんどん試していきたいと思っています」
御影石やコンクリートが雨風にさらされた外の墓石と美しく調和し、ガラスのおかげで建物が周囲の風景に溶け込む。石碑や木々が屋内のあらゆる場所から見え、まるで家の素材の一部になったかのようだ。
御影石やコンクリートが雨風にさらされた外の墓石と美しく調和し、ガラスのおかげで建物が周囲の風景に溶け込む。石碑や木々が屋内のあらゆる場所から見え、まるで家の素材の一部になったかのようだ。
最上階は窓ガラスを一面に使用しているため、中にいると木々の間に浮かんでいるような気分が味わえる。全開にもできるスカイライトからは自然光が降り注ぎ、キッチンアイランドを照らす。窓の外はダイニングテラスがぐるりと囲んでいる。
シンプルで美しいキッチンも、ほかの部屋と同じく、まるでジェームズ・ボンドの世界のようなマスキュリンな雰囲気。調度をシンプルにして、あくまで墓地の印象的な景観を主役に据えていることがポイントだ。
壁と天井の大部分はコンクリート打ち放しになっている。階段まわりと廊下の壁には、木の板で作った型枠に流し込んで固めたコンクリートを使用。型となった木材の節や木目が表面に現れている。「これを使うとすごく素材感と雰囲気が出ますね」とギブソンさん。
上から3つの階にはテラスがある。「テラスの面する方向は階によって違うので、階を変えればあらゆる方向の眺めが楽しめます」とギブソンさん。
大きなガラス窓にはブラインドを設置。「閉めればセキュリティもプライバシーも確保できます」
大きなガラス窓にはブラインドを設置。「閉めればセキュリティもプライバシーも確保できます」
最上階にある書斎の南向きの窓からは生い茂る木々が見える。「以前はここからロンドンの町がよく見渡せたんですが、新築の頃に比べると木が育ってきて、今では一面、緑の景色ですね」とギブソンさん。
リビングの角からの眺め。墓地の石碑の近さがよくわかる。「もちろん建設中も、敷地の境界から墓地側に出ることはできませんでした」とギブソンさん。「墓地には敬意を払わなくてはいけませんからね」
線状光源をディフューザーで覆い、コンクリート壁と同じ高さに埋め込んだスマートな照明。空間の輪郭部分に柔らかな光を作り出す。
線状光源をディフューザーで覆い、コンクリート壁と同じ高さに埋め込んだスマートな照明。空間の輪郭部分に柔らかな光を作り出す。
家の片側は通りに面している。この面にはシンプルな黒い石材を用いて、墓地の壁との一体感を出している。
コメント募集中
墓地の中でも、こんな美しい家だったら住んでみたいと思いますか? それとも墓地に立つ家は敬遠しますか?
コメント募集中
墓地の中でも、こんな美しい家だったら住んでみたいと思いますか? それとも墓地に立つ家は敬遠しますか?
おすすめの記事
Houzzツアー (お宅紹介)
軽井沢の究極の隠れ家。地元の土と木でつくった心地のよい別荘
長野と近隣の木や素材をふんだんに使った、地産地消の住まい。まるで森のような空気感を醸し出しています。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
親子の暮らしを穏やかに包み込む、自然素材が心地よい住まい
文/田中祥子
生活に必要な機能が緩やかにつながる間取りを、一つの大きな屋根の下に。建築材料と設備の面がしっかり考えられたデザインは、親子2人の穏やかな暮らしを支えています。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
自分たちの「好き」を詰め込んだ、大阪の建築家の自邸
文/杉田真理子
旅先で集めたアートや小物、ワインなど、夫婦の「好き」が詰まった建築家の自邸。光が差し込む内部の土間の吹き抜けには高さ4mの木もあり、家にいながら自然を感じられる空間となっています。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
個室を作らず余白を楽しむ。住まい手とともに成長する家
文/杉田真理子
京都・岩倉の豊かな景観を満喫しながら、将来のライフスタイルや家族構成の変化にも対応してくれる、可変性のある住まいです。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(国内)
杉と漆喰に包まれた健康的な家。回遊空間に愛猫も大喜び!
Houzzで見つけた建築家に設計を依頼。アイデアを出し合いながら、想像以上に満足のいく家ができました。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
複数世代が生活し、この地で年齢を重ねていくために裏庭に建てられた「付属居住ユニット」
娘の住宅の敷地内に建てられた新しい建物。ミニマリスト風でありつつ温かみのある空間と、美しいプライベートな庭を母親に提供します。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(海外)
広々と暮らせるカリフォルニアの家
1組の夫婦と1人の建築家がHouzzを通じてつながり、「大きいことが常に良いわけではない」ことを証明するような、無駄のない、緑にあふれた家を建てました。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
美しい木立と海の眺めを見渡す、自然と調和したキューブの家
地形から導き出された、自然に抱かれた建築。大胆でモダンなフォルムでありながら、周囲の木立や海の眺めを存分に楽しめる、自然と調和した極上の住宅です。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(国内)
崖の上のショーケースのよう! 驚きと感動が広がる南葉山のシーサイドハウス
文/小川のぞみ
東京在住のオーナー夫妻が、週末の別荘として建てた「非日常」がテーマの家。若くて伸び盛りだと感じた建築家にHouzzで出会い、期待以上の住まいが完成しました。
続きを読む
日本でこういう場所に建てたら、「住まい」じゃなくてホラーなアトラクションになってしまうんじゃないかと。
自然の中に溶け込むコンクリート住宅の対比がマッチングしているところが不思議な感じがします。
その他コンクリート住宅の内部には、石やガラスがふんだんに使われて上手く外の自然を無理なく取り込んでいますね。
エクセレントな住宅です。
I have a strange feeling where the contrast of concrete houses blend in nature are matching.
In the interior of the other concrete house, it stones and glass will not capture reasonably the nature of the well outside is used abundantly.
This is an excellent house.