My Houzz: 陰影の中にデザインしたタイムレスでプリミティブなくつろぎの家
忙しい東京での生活や出張の合間に安らぐことができる、引き算とかけ算でたくみに構成された静の部屋。
柴田直美
2015年10月30日
Houzzコントリビューター。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、建築雑誌「エーアンドユー」編集部、アムステルダムのグラフィックデザイン事務所thonik勤務(文化庁新進芸術家海外研修制度)を経て、以降、編集デザイン・キュレーションを中心に国内外で活動。2015年パリ国際芸術会館(Cité internationale des arts)にて滞在研究。 http://www.naomishibata.com/
Houzzコントリビューター。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、建築雑誌「エーアンドユー」編集部、アムステルダムのグラフィックデザイン事務所thonik勤務(文化庁新進芸術家海外研修制度)を経て、以降、編集デザイン・キュレーションを中心に国内外で活動。2015年パリ国際芸術会館(Cité... もっと見る
建築、インテリア、プロダクト、グラフィックなどジャンルを超えて、幅広い分野で活躍するフランス人デザイナーのグエナエル・ニコラさんとパートナーの宮元玲子さんが2人の娘さんと暮らす家〈TOKYO RESIDENCE〉は、閑静な住宅地にあるマンションの一室で、窓を開けていてもほとんど街の雑音は聞こえない。玄関と部屋を区切る鏡の扉を閉めると、すっぽりとエアポケットに入ったような、外と区切られた時間の流れに包み込まれるような心地よさを感じる。
どんなHouzz?
居住者:デザインスタジオ〈キュリオシティ〉主宰するグエナエル・ニコラさんと宮元玲子さんと娘さん2人。
所在地:東京都渋谷区
規模:187平方メートル、3LDK
築年数:築14年。2014年6月〜12月の6ヵ月でリノベーション
オフィス兼住宅であった〈C-1〉(2005年築)にニコラさん家族も住んでいたが、会社が大きくなるにつれて手狭になり、住居を別にすることになった。仕事場と近い部屋を探していたところ、扉を開けて一目見た瞬間に、この部屋の空間の深さが気に入ったと言う。空間を感じることでわかる、その空間がもつ可能性が大事、というニコラさん。2年間、賃貸契約でこの部屋に暮らした後に、そろそろ自分たちらしい部屋を、と家を探し始めた、ちょうどその頃に建物のオーナーが変わり、退去する部屋から順に分譲していくことが決まった。賃貸契約でなければ、自由にリノベーションもできる。同じ建物内のいくつかの部屋を内見したりもしたが、やはり今の部屋の空間が良いということで、6ヵ月の大規模なリノベーションを経て、今の部屋が完成した。
どんなHouzz?
居住者:デザインスタジオ〈キュリオシティ〉主宰するグエナエル・ニコラさんと宮元玲子さんと娘さん2人。
所在地:東京都渋谷区
規模:187平方メートル、3LDK
築年数:築14年。2014年6月〜12月の6ヵ月でリノベーション
オフィス兼住宅であった〈C-1〉(2005年築)にニコラさん家族も住んでいたが、会社が大きくなるにつれて手狭になり、住居を別にすることになった。仕事場と近い部屋を探していたところ、扉を開けて一目見た瞬間に、この部屋の空間の深さが気に入ったと言う。空間を感じることでわかる、その空間がもつ可能性が大事、というニコラさん。2年間、賃貸契約でこの部屋に暮らした後に、そろそろ自分たちらしい部屋を、と家を探し始めた、ちょうどその頃に建物のオーナーが変わり、退去する部屋から順に分譲していくことが決まった。賃貸契約でなければ、自由にリノベーションもできる。同じ建物内のいくつかの部屋を内見したりもしたが、やはり今の部屋の空間が良いということで、6ヵ月の大規模なリノベーションを経て、今の部屋が完成した。
入り口の扉は、鏡の引き戸になっており、壁面の絵画やキッチンを映し込んで、空間に広がりをもたらしている。
薄いグレーで塗装された壁や扉は、床からあたる照明と自然光によってやわらかな陰影をつくり、宵の口のよう。
薄いグレーで塗装された壁や扉は、床からあたる照明と自然光によってやわらかな陰影をつくり、宵の口のよう。
玄関脇の絵画は、パワーを与えてくれる要素として配置されている。ちなみに〈C-1〉では、パワーを与えてくれる要素は、そこで働く人々であった。
空間を広く見せるために、キッチンを隔離・独立させていないが、照明を消すと闇にとけ込んで存在感がなくなるように、かなり暗いトーンでデザインされている。
時間がある週末にはニコラさんが料理をするというキッチンは、自身が使いやすいかどうか、が重要であり、そこで暮らす家族のパーソナリティや生活に合わせたデザインをするという姿勢があらわれている。
かつての家であった〈C-1〉は、オフィス兼住居だったので、ダイナミックでオープンで機能的な仕事の空間、いわば「仕事のマシン」と してデザインされていた。働きながら小さな子どもも含めた家族の様子が分かるなど、家の空間を全体的にコントロールするためにシームレスなデザインが採用されていたが、徒歩5分以内と近いとはいえオフィスから離れたところに家をデザインする際には違うアプローチになったという。
家=静、仕事場=動として切り離し、「暮らす場所」である〈TOKYO RESIDENCE〉では、自ずと使用する素材も違って来て、落ち着いたくつろげる空間となった。
家=静、仕事場=動として切り離し、「暮らす場所」である〈TOKYO RESIDENCE〉では、自ずと使用する素材も違って来て、落ち着いたくつろげる空間となった。
キッチンから遠いところにダイニングテーブル、近いところにソファがあるが、これはこの空間で「くつろぐ」ことのプライオリティが高いということ。週末はソファの上でご飯を食べることもあるそう。
奥に見えるのは、壁と同じ色の扉のトイレや収納。ぱっと見たところ、どの扉がどれか分からないが、そういったデザインができるのも、「限られた人が使うプライベートな空間だからこそ」とニコラさん。アイカ工業のメラミン化粧板が使われ、色は特注。「収納は想定される2.5倍つくったほうがいい」とはニコラさんの金言。
〈C-1〉では40mm厚だったテーブルの天板もこの家では60mm厚となり、まるで修道院で使われる家具のように、どっしりとした存在感を見せている。
この壁にかけられたオブジェは、広がりをもつ空間の中で、対照的にぎゅっとした密の要素として飾られている。花びらのような陶器が重なりあっている。
ニコラさんにとって、照明は大事なデザイン要素であり、仕事をすることが中心であったC-1では上からの照明を採用したが、〈TOKYO RESIDENCE〉では下からの照明が全体の印象を決めている。
また、飾られている花や絵画も空間の調和させる要素の1つ。
また、飾られている花や絵画も空間の調和させる要素の1つ。
過去の空間体験をひもといてデザインをするというニコラさん。浴室は箱根の露天風呂に夜に入ったときのイメージから。
壁にはテクスチャーがある石が使用され、一般的な浴室のしつらえとはかなり違う。
一度、日本の「当たり前」をリセット=引き算をし、要素の掛け合わせで深みを出すことで、空間が広がり、タイムレスでプリミティブなデザインが完成した。
一度、日本の「当たり前」をリセット=引き算をし、要素の掛け合わせで深みを出すことで、空間が広がり、タイムレスでプリミティブなデザインが完成した。
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壁面の絵画がアートスティック無雰囲気を醸し出し、ここまでミニマムに生活空間を維持しているところが好きですね。