ゆとりと変化をもたらす、セミパブリック空間の自由な活用法
屋外と屋内、パブリック空間とプライベート空間の接点となる場所を、もっと豊かにするアイデア集。設計者の方々にもインタビューしました。

福住敏昭
2015年11月28日
Houzz コントリビュータ―
これまで、ハウスメーカーでより快適に安心して暮らせる住宅を確実にお引き渡しできることを目指して参りました。これからは、住まうモノから住み続けるコトにギアチェンジ。いまあるモノを活かすにはどのように考えるコトが必要か。そんなモノコト文化の発想転換を社会に発信することに日々奮闘中。永く使うコト、活かすコトの素晴らしさに共感して頂くよう。まずは住まいから考えていければと思います。
Houzz コントリビュータ―
これまで、ハウスメーカーでより快適に安心して暮らせる住宅を確実にお引き渡しできることを目指して参りました。これからは、住まうモノから住み続けるコトにギアチェンジ... もっと見る
住まいには、使い方の目的で分けると3つの空間が考えられます。1つめは居間や応接間などのパブリックな空間、2つめは個室やバス・トイレなどのプライベートな空間、そして3つめは、これらの2つの空間や屋外と屋内の接点となる、いわばセミパブリックの空間です。今回は、そのセミパブリック空間のなかで、ほどよいスパイスとなるプラスアルファの発想、「ゆとりと変化」を住まいづくりに取り入れた、8つの事例を紹介します。
1. 細長の玄関土間
玄関扉を開くと細長い土間。初めて訪れた人は少し驚くかもしれませんが、まるで家の中に縦長の広場ができたようです。
「平屋のコートハウスの”通り土間”です。長方形の間取りをゾーニングする際に、土間や中庭によって中間領域を確保させました。この土間は玄関と勝手口の両端で外部とつなげ、古くからある路地をイメージして動線を確保しています。この土間により、家族の場と個室、内部の居住空間と外部をほどよく分離させています」と語ってくれた、荒木毅建築事務所の荒木毅氏。出会いの空間であるからこそ、奥の深い演出へのこだわりが感じられます。
玄関扉を開くと細長い土間。初めて訪れた人は少し驚くかもしれませんが、まるで家の中に縦長の広場ができたようです。
「平屋のコートハウスの”通り土間”です。長方形の間取りをゾーニングする際に、土間や中庭によって中間領域を確保させました。この土間は玄関と勝手口の両端で外部とつなげ、古くからある路地をイメージして動線を確保しています。この土間により、家族の場と個室、内部の居住空間と外部をほどよく分離させています」と語ってくれた、荒木毅建築事務所の荒木毅氏。出会いの空間であるからこそ、奥の深い演出へのこだわりが感じられます。
昔の民家は土間が作業場や炊事場を兼ねており、家の中で大切な役割を果たしていました。現代でも、スペースにゆとりのある玄関は訪れた人と気軽に語り合える絶好の空間になりそうです。
2. 階段の踊り場をステージに
階段の踊り場に、少し余裕を持たせた事例です。通常より広さがあることで、ステージのように見えます。
「階段や廊下などは、単なる移動のためのスペースと捉えるのではなく、生活空間へ積極的に取り入れることで暮らしが豊かになります。玄関、ダイニング、リビングをゆるやかに仕切るイメージで、階段の踊り場を家の中心に配置。写真の手前側のリビングは段差をつけて低くし、踊り場を境にしてスペースが分かれる役目を持たせています」と語るのは、ブリックス。一級建築士事務所の柳 勉氏。
ただの通り道ではなく、家の中央でどこからも視線が集まることから、そこがステージのような存在に。ここで会話をするとちょっと舞台で話しているような感じになる、楽しい仕掛けになっています。
階段の踊り場に、少し余裕を持たせた事例です。通常より広さがあることで、ステージのように見えます。
「階段や廊下などは、単なる移動のためのスペースと捉えるのではなく、生活空間へ積極的に取り入れることで暮らしが豊かになります。玄関、ダイニング、リビングをゆるやかに仕切るイメージで、階段の踊り場を家の中心に配置。写真の手前側のリビングは段差をつけて低くし、踊り場を境にしてスペースが分かれる役目を持たせています」と語るのは、ブリックス。一級建築士事務所の柳 勉氏。
ただの通り道ではなく、家の中央でどこからも視線が集まることから、そこがステージのような存在に。ここで会話をするとちょっと舞台で話しているような感じになる、楽しい仕掛けになっています。
3. 家族をつなぐ中2階のホール
「生活感があまり出ないように、それでいたワクワクする家にして欲しい」というお施主さんの要望に応え、大きな吹き抜けのリビングを主体に、垂直方向に変化をつけたスキップフロアを採用。この中2階のホールについて、納得住宅工房のご担当者に聞きました。「階下の天井高が高く、手すりも横格子として視界が広がるので、中2階のホールにも開放感が味わえます。個室の前にこのようなスペースがあることで、声も遮断されずに人の気配を感じることができます。家族をつなぐ場所のご提案にもなりました」
「生活感があまり出ないように、それでいたワクワクする家にして欲しい」というお施主さんの要望に応え、大きな吹き抜けのリビングを主体に、垂直方向に変化をつけたスキップフロアを採用。この中2階のホールについて、納得住宅工房のご担当者に聞きました。「階下の天井高が高く、手すりも横格子として視界が広がるので、中2階のホールにも開放感が味わえます。個室の前にこのようなスペースがあることで、声も遮断されずに人の気配を感じることができます。家族をつなぐ場所のご提案にもなりました」
このホールには、カウンターを設け椅子を1脚置くことで、誰でも座れる自由席をつくることもできます。気分の赴くままに自由な時間をこの特別な席で過ごすことができそうです。
4. 廊下に設けた小さなリビング
ゆとりのある廊下スペースのサイドに、階段下部分を利用してミニソファと本棚のオープンなスペースをつくっています。読書コーナーとして、また、廊下の絵を眺めながらちょっと座ってくつろぐなど、小さなリビングとしても活用できそうです。
階段下は斜めの天井で低い部分もあるため、座ったときに囲まれた感じになり、天井の高いリビングのソファコーナーに比べ、ちょっと個室のような落ち着き感があります。
ゆとりのある廊下スペースのサイドに、階段下部分を利用してミニソファと本棚のオープンなスペースをつくっています。読書コーナーとして、また、廊下の絵を眺めながらちょっと座ってくつろぐなど、小さなリビングとしても活用できそうです。
階段下は斜めの天井で低い部分もあるため、座ったときに囲まれた感じになり、天井の高いリビングのソファコーナーに比べ、ちょっと個室のような落ち着き感があります。
5. 縁側テラス
「縁側テラス」と名づけた、バルコニーとリビングの間の空間。この石床のワンクッションによって、外と内をゆるやかにつないでいます。石畳の床は、靴でもスリッパでも裸足でも、使い手に合わせた利用が可能です。
「日の光が差し込む昼間はお子様の遊び場に、月の夜は杯を傾けながらの読書や、また仕事場にも活用できます。共働きのご夫婦にとっては洗濯物を干す場所にも有効です。領域が分かれる工夫を凝らして、日々の暮らしにプラスワンの魅力を提供しました」とリノベエステイトの松山氏。南向きのリビングや和室をリノベーションするときに活用してみたいアイデアです。
「縁側テラス」と名づけた、バルコニーとリビングの間の空間。この石床のワンクッションによって、外と内をゆるやかにつないでいます。石畳の床は、靴でもスリッパでも裸足でも、使い手に合わせた利用が可能です。
「日の光が差し込む昼間はお子様の遊び場に、月の夜は杯を傾けながらの読書や、また仕事場にも活用できます。共働きのご夫婦にとっては洗濯物を干す場所にも有効です。領域が分かれる工夫を凝らして、日々の暮らしにプラスワンの魅力を提供しました」とリノベエステイトの松山氏。南向きのリビングや和室をリノベーションするときに活用してみたいアイデアです。
6. リビングテラス
「リビングテラス」と呼びたい、アウトドアの空間。手入れの手間のかからない庭を、との要望に合わせ、ウッドデッキと砂利敷きを主体に、シンプルに仕上げています。設計されたW.D.Aの和田学治氏によれば、 土地の広さと北側隣地への影響を考慮して、周囲からの視線が気にならないように、建物の中心に庭を配置したのだとか。「中庭側は室内とひと続きとなるような空間とし、リビングやダイニングなど一日の大半を過ごす場所では、どこにいても庭を感じることができます。庭を眺めながら家族やゲストと話をしていると、どこの部屋でもついつい長居をしてしまうそうです」
「リビングテラス」と呼びたい、アウトドアの空間。手入れの手間のかからない庭を、との要望に合わせ、ウッドデッキと砂利敷きを主体に、シンプルに仕上げています。設計されたW.D.Aの和田学治氏によれば、 土地の広さと北側隣地への影響を考慮して、周囲からの視線が気にならないように、建物の中心に庭を配置したのだとか。「中庭側は室内とひと続きとなるような空間とし、リビングやダイニングなど一日の大半を過ごす場所では、どこにいても庭を感じることができます。庭を眺めながら家族やゲストと話をしていると、どこの部屋でもついつい長居をしてしまうそうです」
長い廊下が続き、廊下とテラスが一体化して存在感を高めています。室内のリビングとこのセカンドリビングを使い分けることによって、ちょっと得した気分が味わえます。
7. コの字プランのパティオ
敷地は駅から徒歩圏という恵まれた立地環境でご夫婦2人の専用住宅。玄関側の前面道路は狭く、周りの建物が迫っていたので、「外に閉じて、中に開いた家」というコンセプトを思い立ったそうです。コの字型の間取りで、パティオを中心としたリビング、玄関ホール、和室を配置しています。
「シンボルツリーの楓は、『日本人らしく、四季を感じられる落葉樹に』との奥様のご選択です。どの部屋からもこの木とパティオを目にすることができ、まさしくこの家のシンボルにもなっているようです」とは豊田空間デザイン室 一級建築士事務所の豊田 悟氏。心地よい日差しが3方向から差し込んで、どこにいても屋外にいるような気分になれそうです。
敷地は駅から徒歩圏という恵まれた立地環境でご夫婦2人の専用住宅。玄関側の前面道路は狭く、周りの建物が迫っていたので、「外に閉じて、中に開いた家」というコンセプトを思い立ったそうです。コの字型の間取りで、パティオを中心としたリビング、玄関ホール、和室を配置しています。
「シンボルツリーの楓は、『日本人らしく、四季を感じられる落葉樹に』との奥様のご選択です。どの部屋からもこの木とパティオを目にすることができ、まさしくこの家のシンボルにもなっているようです」とは豊田空間デザイン室 一級建築士事務所の豊田 悟氏。心地よい日差しが3方向から差し込んで、どこにいても屋外にいるような気分になれそうです。
玄関ホールを吹き抜けとし、視線や光を遮らないように、階段はスケルトンタイプのものを使用しています。手前側のリビングへ通じた外の景色を取り込める、ギャラリーのような役割です。半屋外の感覚を味わうために、床材にはセメント系人造石を敷いています。
8. ビルトインガレージ
ガレージもビルトインにすることで、外と内の中間的存在に。その境のドアには、お気に入りのきれいな色をペイントしています。
通常は外部にある空間も室内と共存させることができれば、生活に変化がもたらされます。ガラスの建具や扉を使って部屋から車を眺められるようにしたり、広さもあるので、大人数でバーベキューをしたり、自転車置き場や備蓄品の置場に使うなど、活用の仕方はさまざまです。雨の日の荷物運びにも困りません。
セミパブリックな第3の空間は、自分らしい時間を満喫できる自由な工夫をする余地がまだまだあります。8つの事例を参考に、住まいづくりの際にぜひ検討してみてください。
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ガレージもビルトインにすることで、外と内の中間的存在に。その境のドアには、お気に入りのきれいな色をペイントしています。
通常は外部にある空間も室内と共存させることができれば、生活に変化がもたらされます。ガラスの建具や扉を使って部屋から車を眺められるようにしたり、広さもあるので、大人数でバーベキューをしたり、自転車置き場や備蓄品の置場に使うなど、活用の仕方はさまざまです。雨の日の荷物運びにも困りません。
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コの字型のパティオ、いいなあ。
こういう空間のある家に住みたいものです。