ms3105さんのアイデア
床のタイルも元からあったもの。少々古いがとてもチャーミングだというバルディンさん。〈ラ・エウロペア〉のテーブルと椅子も、エル・ラストロで手に入れた。 フェドゥーチさんは、メキシコの建築家ルイス・バラガンのようにもっと大胆な色を使うことも考えたが、バルディンさんは、抑えた色使いにして、植物を主役にすることを望んだ。「インテリアにある色は物に属するものであり、私がその物を買ったのは色が好きだからではなく、そのアーティストやデザイナーに興味があったからです。ですから、部屋にどれだけの色があるかは、完全に偶然です。パティオでは、敢えて色で冒険したいとは思いませんでした。そこは植物に任せ、植物をいちばんの見所にする方に惹かれました。将来すべての壁が植物で埋め尽くされるのを楽しみにしています」
機能の与えられていない場所からこそ新しい機能が生まれる 「ダイニングテーブルも含め、通常、テーブルの寸法は、機能を充足した寸法にすることが多いと思います。「4人家族ならこれくらいあればいいか」と決めるわけです。でも、そうすると機能以外の「こと」、ダイニングなら「食事すること」以外の「こと」がおきにくい。でも、例えば長さが3メートルのダイニングテーブルにして、それを4人家族で使ったらどうでしょうか。まんなかあたりで食事して、片方の端でパソコンで仕事して、もう片方の端で子供が宿題をして、お父さんが反対側で新聞を読んでいるとか、いろいろな「こと」が1つのテーブルを介して始まりますよね。」 「長さがあれば、機能が与えられていない場所がキッチンの中にできるので、新しい機能が生まれ始める。それはすごく大事なことだと思っています。最近設計した家でも、2.5メートル四方くらいの大きな天板のアイランドをつくりました。それも機能がないテーブルですね。それだけでもう、1つの部屋くらいの面積があるキッチンです。上に布団が敷けるくらいの大きさです。」
内と外のセグメントをなくして化学反応を起こす 「昔は、家の外とか内とかというセグメントがなかったと思います。それが、時代が求めた結果、セグメント化が進んだ。でもまた今、それが1つになり始めている気がします。理由はたぶん、何もかもセグメント化してしまうと、化学反応がおきなくなるからでしょうね。人間は新しいものを求める生き物なので、そこに何もおきなくなると物足りなくなるのではないでしょうか。それが正解かどうかはわかりませんが、僕はそういう風に思っています。」 「〈千葉の家〉(写真上と下)は、増改築のプロジェクト。もとは庭だった部分に、既存の2階建ての建物から新しく大きな屋根をかけた空間にキッチンがあります。そこに住んでいた人が持っていた建物の記憶を逆に利用して、解放感をより助長する、というプロジェクトだったのですが、テーブルは大きめだし、キッチンの中にテレビも組み込んでいる。住まい手はここが庭だった記憶を持っているので、この空間を外のようにも感じます。」
リノベーションが一般化する時代へ 「僕はHOUSE VISIONや無印良品の仕事など、さまざまなプロジェクトを通して住まいのことを考えていて、これからは、住まい手が自分自身で家をつくること、リノベーションをすることがもっと一般化していくと考えています。自分でもリノベーションを経験しましたが、そのときに自分の生活を振り返り、「ここでものを書くんだ」「あそこで料理をするんだ」「ここにはものを飾るんだ」ということを考え、それを形にした家ができたことで、「暮らしの腰が座った」という実感を持っています。「家は3軒建ててみてやっと思い通りのものが手に入る」とよく言われますが、もちろん失敗もありました。でも、それも楽しいことだし、すべてが貴重な経験だったと思います。自分で考えて家づくりをすると、「住宅リテラシー」、すなわち、住まいと暮らしに対する知恵や知識、感性がぐっと深まると思います。だから、みんな一度やってみたらいいのに、と僕は思っているくらいです。」
花を活けるプロセスも楽しむ 「例えば、花を暮らしの中に持ち込むと、とても幸せな暮らしになるもの。立派な花瓶に大きな花束を活けたりしなくても、ありふれた空き瓶をきれいに洗ってそこに花を数本差すだけで、気持ちのいい空間が生まれるものです。そんなとき、キッチンが家の隅の方にあって、瓶をもって水を汲みに行くとなると、たとえそのキッチンにりっぱな浄水器があったとしても、そのプロセスはあまり幸せな感じにはなりません。」 「逆に暮らしの場のすぐ近くに水場があったら、どうでしょうか? フラットなワークトップの上に花瓶を置いて、花を切ったり活けたりする。暮らしの真ん中で行われる花を活ける行為そのものも、それを眺めることも、楽しくなるのではないかな、と思います。水場が生活の中心の近くにある、ということはそういう可能性を開いてくれるのです。使ったグラスを洗うのだって、遠くにあるキッチンよりも、すぐそばにあるキッチンでささっと洗えるほうがいい。自分で住まいをつくっていく人たちは暮らしというプロセスを楽しむ人たちだから、暮らしの真ん中にあるキッチンをというものを選択していくだろうという気がします。」
食洗機とシンクの大きさ 「例えば、僕は食洗機はあったほうがいいと思っています。実は、使いはじめるまでは「食洗機ってどうなのかな?」と思っていたのですが、食洗機で洗い上がった食器をみると、人の手で洗うのとは違う完成度があります。特にグラスなどは食洗機のほうが気持よくきれいに洗い上がります。「どうしたらここまできれいになるのか」と感心してしまうほど(笑)。つまり、食洗機の導入は、暮らしの豊かさにつながったという実感があるわけです。」 「たしかに、食洗機を入れるためにはスペースが必要ですが、今は昔に比べて小さいサイズの食洗機も増えています。それに、食洗機があると、洗い物が減るので、逆にシンクを小さくすることも可能になります。日本では、大きなシンクが人気がありますが、僕はシンクはもっと小さくていいと思っています。」
ヨーロッパと日本の「キッチンの違い」 「僕は仕事でヨーロッパに行くことが多いのですが、ヨーロッパと日本のキッチンは、目指している方向性が違うな、とよく思います。日本のキッチンは、例えば浄水器のスペックにこだわる、ワークトップに水返しをつけるとか、わずかな隙間に包丁をたくさん収納するとか、取手を引っ張ると収納がばっと飛び出してくるといった調理機能の利便性の向上を目指して発展してきたと思います。」 「一方ヨーロッパのキッチンは、引き出しの中はシンプルな木の仕切りがついていたり、瓶がうまく収納できるような金属金具がはめこまれていたりして、引き出しを開け閉めしてもガタガタと音がしないし瓶が倒れたりすることもない。こうした部分の作りこみがよくできていて、開けるたびにちょっと幸せな気分になれる。つまり、暮らしの質の向上につながる工夫がされているのです。」
8. メンタルヘルスの向上 具合が良くないときに、植物や色とりどりの花の贈り物ほど元気付けてくれるものはありません。入院患者の部屋に花や植物があったり、部屋から庭が見えたりする場合、周囲に植物がない患者より回復が早いことが多いとの研究結果もあります。 植物は私たちをポジティブにし、安心してリラックスした気分にさせてくれます。孤独感や憂鬱を和らげる効果もあります。生のあるものの世話をすることで、目的意識が生まれ、やりがいも感じられます。とりわけ、大切に世話してきた植物が花を咲かせたときの喜びはひとしおでしょう。セントポーリアのように簡単に育てられる簡単な植物を選べば、ほんの少し手をかけるだけで、一年中花を咲かせてくれます。
1. 住宅密集地におけるアプローチの工夫 奥行きを感じる路地のようなアプローチは、和モダンなテイストで落ち着きのある空間です。 実は、東京都心の住宅密集地であり、建築可能面積が8坪強、前面道路が狭いという条件の場所ですが、奥へといざなうアプローチが空間を広く感じさせてくれます。
光で導く こちらでは、地面に埋め込んだ直線状のライトが、家のエントランスへと導くラインになっています。角にある縦長窓からの光が外壁を照らし、四角い窓は家庭のぬくもりを感じさせます。 デザイナー設計者は、昼と夜との違いをふまえ、その変化を照明でどのように見せるかを考えます。この家では、シンプルな歩道に小さな工夫を加えて、素敵な夜景を作り出しています。 普通の体験をつくりだす「当たり前」というしばりを超えて考えれば、魅力的な結果が生まれます。写真はまさに、シンプルな手法でそれを実現した例といえます。
トリムに配慮する 埋め込み式の照明で見落とされがちなのが、点灯していないときにどう見えるかということ。内部に電球を収容する部分(トリム)は、天井で存在感を見せます。白い天井にダークトーンのトリムを選べば、幾何学的なかたちがデザインとして強調されます。また、点灯しているときに光源からのグレアを抑える効果もあります。白いトリムを選べば、照明機器を天井面に溶け込ませることができます。 こちらでは、ダークトーンの長方形のトリムを交互にずらして配置し、天井の構造とうまくバランスをとりながら、全体のデザインコンセプトのなかに組みこんでいます。
太陽光を活用する 空間を明るく照らすには、自然光に勝るものはない。太陽光はフルスペクトル光と言われ、すべての波長(色)の光をほぼ均等に含んでいます。人間の知覚にもっともなじみがあるのもこの光で、私たちは自然光の変化を感じ取り、天候や時刻、季節など、その変化の意味を本能的に理解します。室内を暖め明るくしてくれる自然光は、無償で手に入る限りない資源といえます。 壁の高い位置、または天井面に開口部を設けることで、より奥のほうまで室内に自然光を引き入れることができます。注意したいのは、窓の面する方角によって、光の色合いが変わること。北向きの窓なら、光スペクトルのブルー系に近い色味の間接光が安定的に入ってきます。南向きや西向きの開口部の場合、暖かい色味でコントラストの強い光がふんだんに入ってきます。これらを踏まえて、不快なグレアや、室温の過度な上昇、色あせの原因となる紫外線を避けるための対策を考える必要があります。
光源を隠す 隠された光源から空間を照らすことで生まれる効果は2つ。1つは、建築的なフォルムや構造を強調すること。もう1つは、とくに狭い空間の場合に、深みを感じさせることです。この方法を取り入れるには、天窓、スカイライトチューブ、クリアストーリー窓という選択肢があります。 傾斜のある地形にはまり込むように建てられたこちらの家。隠された光源から射し込む光によって、周りを取り囲んでいる大地の重みや、この空間の左右の標高の違いが際立ちます。複雑なフォルムで、全体像がひとめでつかめない家ですが、そのコンセプトに沿った光の取り入れ方になっています。 光がどこから入ってくるのか分からない場合、人間は本能的に、光源のある外部空間まで意識するため、空間のとらえ方が広がります。これは、大きな効果をもたらします。
ペンダントライト
パティオに面した アパートメントは3組の大きなフレンチドアでパティオに向かって開いている。2組はリビングルームから、もう1組は主寝室から。バルディンさんは、「草木を見ながら日の光を浴びて」目を覚ますのが好きだという。 天井も屋外と屋内をつなげるのに役立っている。「ベッドの上にラティスを取り付けたのは、フェドゥーチさんのアイデアです」とバルディンさん。「高さを印象づけるために、ベッドと実際の天井の間にフィルターを付けました。インターナショナル・クライン・ブルー(深い青)に塗った天井は、果てしなく続く空のような印象で、見上げているととてもリラックスできます」
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