コメント
Houzzツアー:犬猫と暮らす、職住が心地よくつながった見通しのよい家
小さくても広がりを感じさせる居住空間。家族もペットものびのびと過ごせる、仕事場併設の住まい。
田村敦子|Atsuko Tamura
2015年9月30日
Freelance Editor
田んぼに囲まれた見晴らしのよい敷地に建つ、ガルバリウム外壁の細長い一軒家。ドッグサロンを営むオーナーの住まいと仕事場を兼ねたこの家では、お客様を迎えるドッグサロン側のパブリックスペースと、庭に面したプライベートスペースが、中央に位置するバスルームとトイレを境として、スムーズにつながっています。その上にちょこんとのっかった形の、細長いロフトスペースは、お嬢さんが使っている子ども部屋。ここからは、LDKの様子もドッグサロンの様子も、そして通りを隔てたオーナーのご実家も眺められる見晴らしのよさ。限られた空間を最大限に利用し、オーナーもお嬢さんも、そしてペットも快適に過ごせる工夫がいっぱいです。
それでは、庭に面したプライベートスペースサイドの方から順番にHouse Tour(ハウスツアー=各部屋のご案内)をしていきましょう。
まずはインナーバルコニー。自転車を収納してガレージのように使っているほか、晴れた気持ちのいい日はガラス戸を開け放し、寒い日や雨の日には閉めて、どんな天気でも屋外の気分を楽しみながら過ごせる多目的スペースとして活用しています。
まずはインナーバルコニー。自転車を収納してガレージのように使っているほか、晴れた気持ちのいい日はガラス戸を開け放し、寒い日や雨の日には閉めて、どんな天気でも屋外の気分を楽しみながら過ごせる多目的スペースとして活用しています。
インナーバルコニーに続くのは、家族がくつろぐLDK。ステンレス製のシンプルなキッチンが壁に沿って設置され、シンクやコンロの下もオープンにして、選び抜いた最小限の道具を整然と収納。道具類や器なども、壁に取り付けたシェルフを上手に使い、ハンギングやディスプレイで見せる収納を楽しんでいます。無駄なものを持たず、本当に必要なものだけを選んですっきりと暮らしている様子が伝わってきます。
レンジフードに鎮座してキッチンの様子をじっと見ているのは、愛猫の「たま子」。家族と同じく彼女も、好きな場所でのびのびと過ごせるこの家のオープンな雰囲気が大好き。
キッチンの向かい側の壁にはリビングボードとTVボードをレイアウト。これら収納家具やダイニングテーブルなど、オーナーがもともと持っていた家具の雰囲気に合わせて、天井や建具の木部の色合いを決めたので、全体のインテリアテイストにしっくりとなじんでいます。
カーテンやソファまわりなど、ファブリック類で味わいのある色合いをプラスし、インテリアグリーンでリラックスした空気感を演出。単なるシンプルなインテリアにならない、ぬくもりのある部屋づくりが上手です。
現在の家族の生活スタイルを考えると、独立した寝室はこの際不要、との判断で、LDKに続くスペースに収納つきのデイベッドをつくり、昼間はソファ、夜はベッドとして使用することにしました。ちょっと思い切ったプランですが、これが今の暮らしにぴったり合って、スペースも有効に使え、とても快適だとか。デイベッドの真上から奥にかけて設置されているのが、お嬢さんの部屋である細長いロフトスペースです。
ロフトへのはしごと手すりも、たま子の格好の遊び場。「ロフトにご案内しまーす、早くおいでよ!」
住まいの真ん中の上部に位置する、秘密基地のようなこのロフトは、ある意味この家の「展望台」。前述の通り、LDK、ドッグサロン、そして家の外も見渡すことができます。
ロフトスペースの真下では、お嬢さんと、ボストンテリアの「課長」がデイベッドで遊んでいるところです。本棚のあるこの場所は昼間、楽しい遊び場になりますね。
空間はオープンですが、低い天井の少し奥まった感じが別のスペースであることを意識させ、とても落ち着けるスペースになっています。夜はきっとリラックスしてゆっくり眠れるでしょう。
LDKで「課長」と遊んでいるのは、この家を設計した堀部建築事務所の堀部直子さんの愛犬、「くるり」です。
LDKで「課長」と遊んでいるのは、この家を設計した堀部建築事務所の堀部直子さんの愛犬、「くるり」です。
さて、さらにその奥へ。デイベッドスペースに隣接しているのは水まわりエリア。バスルームとトイレが並んでいます。バスタブのあるあたりが、家のほぼ真ん中になります。
そして水まわりの隣が、オーナーが経営するドッグサロンのシャワー&トリミングスペース。ここはプライベートスペースとの境なので、ガラス戸で仕切られていますが、LDKの方から歩いてくる「くるり」の姿でわかるように、家の中はすべてひと続きになっています。また、写真右上にも注目! お嬢さんのロフトスペースもここまで続いているので、小窓からこんなふうにお仕事中の様子を見ることもできるのです。
こちらはトリミングスペースの隣、ドッグサロンを訪れたお客さんのための待合室。この場所がこの家のもう一方の端、ハウスツアーの終点になります。
パブリックスペースサイドの端、ドッグサロンの入り口方向から見た風景。待合室からトリミングスペースを経て、水まわり、ロフトとベッドスペース、LDK、インナーバルコニー、そして庭と、一列に並んだ空間を包み込む外観です。
ドッグサロンの待合室から外を眺める「課長」と「たま子」。今日、お客さんと訪れる予定のお友達を待っているのでしょうか。
多くの要素をコンパクトなスペースに効率的に配置した、おおらかでいて快適な、工夫がいっぱいの住まい。オーナーがお仕事を終えた夕刻、あたたかな光がもれるリビングを外から眺めたこの風景は、どことなくあの国民的アニメ「サザエさん」のエンディングテーマの最後に写る、楽しげで愛らしい、小さな三角屋根の家の姿に重なります。
おすすめの記事
Houzzツアー (お宅紹介)
軽井沢の究極の隠れ家。地元の土と木でつくった心地のよい別荘
長野と近隣の木や素材をふんだんに使った、地産地消の住まい。まるで森のような空気感を醸し出しています。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
親子の暮らしを穏やかに包み込む、自然素材が心地よい住まい
文/田中祥子
生活に必要な機能が緩やかにつながる間取りを、一つの大きな屋根の下に。建築材料と設備の面がしっかり考えられたデザインは、親子2人の穏やかな暮らしを支えています。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
自分たちの「好き」を詰め込んだ、大阪の建築家の自邸
文/杉田真理子
旅先で集めたアートや小物、ワインなど、夫婦の「好き」が詰まった建築家の自邸。光が差し込む内部の土間の吹き抜けには高さ4mの木もあり、家にいながら自然を感じられる空間となっています。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
個室を作らず余白を楽しむ。住まい手とともに成長する家
文/杉田真理子
京都・岩倉の豊かな景観を満喫しながら、将来のライフスタイルや家族構成の変化にも対応してくれる、可変性のある住まいです。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(国内)
杉と漆喰に包まれた健康的な家。回遊空間に愛猫も大喜び!
Houzzで見つけた建築家に設計を依頼。アイデアを出し合いながら、想像以上に満足のいく家ができました。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
複数世代が生活し、この地で年齢を重ねていくために裏庭に建てられた「付属居住ユニット」
娘の住宅の敷地内に建てられた新しい建物。ミニマリスト風でありつつ温かみのある空間と、美しいプライベートな庭を母親に提供します。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(海外)
広々と暮らせるカリフォルニアの家
1組の夫婦と1人の建築家がHouzzを通じてつながり、「大きいことが常に良いわけではない」ことを証明するような、無駄のない、緑にあふれた家を建てました。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
美しい木立と海の眺めを見渡す、自然と調和したキューブの家
地形から導き出された、自然に抱かれた建築。大胆でモダンなフォルムでありながら、周囲の木立や海の眺めを存分に楽しめる、自然と調和した極上の住宅です。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(国内)
崖の上のショーケースのよう! 驚きと感動が広がる南葉山のシーサイドハウス
文/小川のぞみ
東京在住のオーナー夫妻が、週末の別荘として建てた「非日常」がテーマの家。若くて伸び盛りだと感じた建築家にHouzzで出会い、期待以上の住まいが完成しました。
続きを読む