Houzzツアー:里山に抱かれた東青梅の家
真夏の強い日差し、蝉の声、雨の匂い、時折木々からそよぐ涼しい風。都市で暮らしていた家族が手に入れた自然とともにある生活。
東京都青梅市に2011年9月に完成した「陽傘の家」は、団塊世代の夫婦2人とその子ども、犬が暮らす住宅である。もともと川崎のマンションに暮らしていた家族は、青梅市にあるご主人の実家で暮らす年老いた親の近くに住むため、青梅市への引越を決めた。引越に際して、実家を改築して二世帯住宅を建てようと考えていたが、実家の敷地条件などから、近くの別の場所を探すことになる。訪れた不動産屋と新築、購入、賃貸などの可能性を探っていた際に出会ったのが、現在、「陽傘の家」が建つ敷地であった。
どんなHouzz?
所在地:東京都青梅市
居住者:3人家族(夫婦と息子)と愛犬
設計:池田雪絵建築設計事務所
規模:木造2階、延床面積86平方メートル
施工:藤建設工房
構造:MID研究所
写真:Jimmy Cohrssen Photography ジミー・コールセン・フォトグラフィー
どんなHouzz?
所在地:東京都青梅市
居住者:3人家族(夫婦と息子)と愛犬
設計:池田雪絵建築設計事務所
規模:木造2階、延床面積86平方メートル
施工:藤建設工房
構造:MID研究所
写真:Jimmy Cohrssen Photography ジミー・コールセン・フォトグラフィー
奥様と息子さんは、緑溢れる里山を背景にした敷地を一目で気に入り、一般の建て売り住宅を購入するのと大差ない価格だったこともあり、現実的に購入を検討。それをご主人に伝えたところ、「普段あまり主張しない2人がそれほどまでに言うなら」と敷地をまだ見ていなかったご主人も同意。奥様が「トトロの森」と表現するほど、緑が深い敷地をめでたく手にすることになった。そしてご主人の友人の不動産屋から紹介されたのが、建築家の池田雪絵さんと大野俊治さんであった。
若い頃は建築家になりたいと思ったことがあったとおっしゃる奥様は、川崎でのマンション暮らしの経験から、例えば、廊下は掃除するだけのデッドスペースだと思うのでなくしてほしい、など、家を建てる時の希望を明確に持っていた。また川崎に住んでいた頃は勤めていたので、合理性が徹底された家が良いと思っていたが、仕事を辞めて主婦として暮らす青梅の家では手間をかけながら生活を楽しむというライフスタイルに変化させてもいいと考えていた。
奥様からの希望をふまえ、池田さんと大野さんが提案した中で、息子さんが強く推したのが、「陽傘の家」の原案。ちなみに息子さんは、「陽傘の家」で暮らし始めてから、いつかここでアコーディオンを弾きながらカフェのような空間を作れたらなというアイディアを持ったそう。やさしい曲線で人を招き入れるような佇まいをもつこの家ならではの発想ではないかと思う。
池田さんと大野さんが考えたのは、「冬の寒さや夏の暑さの影響を最小限に抑えながら、緑の展望を楽しむ家。」敷地から風景をあまねく享受する配置や平面プランとし、夏の日射を遮る深い庇や、井戸水を使った1階屋根と2階の周囲の冷却(朝夕に屋根に水をまくことで1度ほど周りの気温が下がる)、太陽光パネルの設置などエネルギー負荷が少なく快適に暮らせる工夫を取り込んだ住宅である。
1階は傘状垂木が建物全体を巻き込む深い天井によって空間を広く感じる。外壁からキッチンの壁までグレーのグラデーション(外:薄いグレー→内:濃いグレー)で塗装することで、より広く見せる工夫をしている。また垂木の下にある、ぐるっと内部空間をつなぐ白い帯状のボックスは、カーテンレールやピクチャーレールを隠しながら、外からの自然光を反射し、やんわりとした光を木漏れ日のように落とす。
2階、デッキ、太陽光パネル屋根がずれて重なり、周囲の段々畑や空にとけ込む。蛍が飛んでくるという裏手の里山からは澄んだ空気が運ばれて来る。たった1時間前には都会の喧噪の最中にいたのに、この家に着くなり、自然を感じながら、五感が解放されて行くのが分かった。
「以前は鳩や虫が苦手だった」とおっしゃる奥様も、今では木や花の名前や鳥の鳴き声に詳しくなり、蝉の声で夏の時期が分かるようになったそう。季節感を満喫し、趣味のステンドグラス制作にも没頭している。庭では野菜や果物の木が育ち、実をつけていた。丁寧な暮らしぶりを垣間みて、竣工から4年経ったこの家が住み手によって育てられていることを実感した。
取材している最中に雷が鳴り、大粒の雨が降って来た。まさに山の天気という感じだが、「サンルームがやっぱり欲しかったかなあ」という奥様に「増築もできますよ」と応える池田さんの信頼関係が表れているやりとりを聞きながら、住宅を建てるということは人生に寄り添うということなのだなと改めて思った。
取材している最中に雷が鳴り、大粒の雨が降って来た。まさに山の天気という感じだが、「サンルームがやっぱり欲しかったかなあ」という奥様に「増築もできますよ」と応える池田さんの信頼関係が表れているやりとりを聞きながら、住宅を建てるということは人生に寄り添うということなのだなと改めて思った。