ひとりきりになりたいときに。自分だけの居場所がある家
家族や友人と一緒に過ごす時間も楽しいけれど、誰でもひとりになりたい時はあるのではないでしょうか。階段の下からロフトやトイレ、屋根の上まで、快適にひとりになれる場所をしつらえた家をご紹介します。

Naoko Endo
2015年10月9日
出版社、不動産ファンド、代理店勤務を経て、フリーランス・ライター。
個人ブログ「a+e」http://a-plus-e.blogspot.jp/
出版社、不動産ファンド、代理店勤務を経て、フリーランス・ライター。
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住まいとは、人がリラックスして過ごすことを前提に建てられる。それでも、時には家族やパートナーと少しだけ離れて、ひとりきりになる、そんな自分だけの「居場所」をつくってほしいとの声は少なくないようだ。考えごとをしたかったり、気分が落ち込んだとき、何かに集中したいときに篭(こも)ることができるように。
そんなささやかな願いを叶えた事例、我が家にもこんな空間があるといいなと思わず羨ましくなるような、題して「ひとりきりになれる空間」事例を特集する。取材を進めてみると、写真を見ただけではわからなかった、その家それぞれのストーリーが浮かび上がった。いかに住まい手に快適に過ごしてもらうかを考えた設計者の創意工夫、居心地の良さが伝わってくる。時として「小宇宙」のような拡がりも感じさせる不思議な小空間。もしかしたら、われわれ生きものの本能として、棲家(すみか)的な匂いがする穴ぐらのような空間に安心感を覚え、惹かれるのかもしれない。
そんなささやかな願いを叶えた事例、我が家にもこんな空間があるといいなと思わず羨ましくなるような、題して「ひとりきりになれる空間」事例を特集する。取材を進めてみると、写真を見ただけではわからなかった、その家それぞれのストーリーが浮かび上がった。いかに住まい手に快適に過ごしてもらうかを考えた設計者の創意工夫、居心地の良さが伝わってくる。時として「小宇宙」のような拡がりも感じさせる不思議な小空間。もしかしたら、われわれ生きものの本能として、棲家(すみか)的な匂いがする穴ぐらのような空間に安心感を覚え、惹かれるのかもしれない。
大人のための遊びの空間
《百日紅の家》
設計:M アーキテクツ / 前田康憲
床の下はガレージ、天井の上は寝室、出入りは階段途中にある片引き扉から。まるで秘密基地のような空間である。当初は収納庫だけをつくる予定だったが、工事の途中に施主から出された要望を盛り込んで、1.4mの天井高はそのままに、半分を「洞穴(どうくつ)のような遊びの空間」とした。
使っているのは主にご主人。寝転んで本を読んだり、そのままうたた寝したり、考え事をしたり、好きな時に好きなように過ごしている。友人を招いた時には、ここで車座になって酒を酌み交わすことも。内部には換気扇と除湿装置も備えてあるので快適に過ごすことができる。
敷かれている絨緞も含め、まわりに置かれているのは、日本ではなかなか手に入りにくい、海外有名ブランドのハイクラスのコレクション。愛着が染み込んだ品々に囲まれた、狭いながらも極上の空間となっている。
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Houzz父の日企画「男の空間」
《百日紅の家》
設計:M アーキテクツ / 前田康憲
床の下はガレージ、天井の上は寝室、出入りは階段途中にある片引き扉から。まるで秘密基地のような空間である。当初は収納庫だけをつくる予定だったが、工事の途中に施主から出された要望を盛り込んで、1.4mの天井高はそのままに、半分を「洞穴(どうくつ)のような遊びの空間」とした。
使っているのは主にご主人。寝転んで本を読んだり、そのままうたた寝したり、考え事をしたり、好きな時に好きなように過ごしている。友人を招いた時には、ここで車座になって酒を酌み交わすことも。内部には換気扇と除湿装置も備えてあるので快適に過ごすことができる。
敷かれている絨緞も含め、まわりに置かれているのは、日本ではなかなか手に入りにくい、海外有名ブランドのハイクラスのコレクション。愛着が染み込んだ品々に囲まれた、狭いながらも極上の空間となっている。
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リビングの隅の「もう1つの家」
《下岡部の家》
ALTS DESIGN OFFICE / 水本純央、久我義孝
1階のリビング・ダイニングの隅に、小さな家型の小屋空間が設けられている。内部に1台設置されたテレビで映画や音楽鑑賞を楽しむための部屋だ。防音仕様になっているが、完全な密室ではなく、ガラス扉と内窓によって周囲の空間と緩やかに繋がっている。
施主は自宅のキッチンを開放して料理教室を開催したり、客を招いてもてなすシーンが多い社交的な方。「半公共的に使われるダイニングに対して、この家に暮らす家族5人が好きに過ごせる空間が必要だと考えました」(ALTS DESIGN OFFICE 代表の水本純央氏、久我義孝氏談)
家の中に小さな家をつくったのはもうひとつ理由がある。「一帯は冷え込みが厳しい土地で、冬はどうしても家の中に閉じこもりがちになります。そんな冬場でも室内で快適に過ごしたいというのが施主の希望でした。そこで、重層的な幾つかの空間を室内に設けることで、それぞれのプライバシーを確保しつつ、豊かで開放的な場にもなるのではないかと考えました」
「家の中の家」はもうひとつ、ダイニングの吹き抜けを利用した2階部分にロフトも用意された(左の写真、上部右)。1階の防音室と対になるこの"ツリーハウス"は主に子どもたちの部屋だが、大人でも時にはひとりきりになれるだろう。
《下岡部の家》
ALTS DESIGN OFFICE / 水本純央、久我義孝
1階のリビング・ダイニングの隅に、小さな家型の小屋空間が設けられている。内部に1台設置されたテレビで映画や音楽鑑賞を楽しむための部屋だ。防音仕様になっているが、完全な密室ではなく、ガラス扉と内窓によって周囲の空間と緩やかに繋がっている。
施主は自宅のキッチンを開放して料理教室を開催したり、客を招いてもてなすシーンが多い社交的な方。「半公共的に使われるダイニングに対して、この家に暮らす家族5人が好きに過ごせる空間が必要だと考えました」(ALTS DESIGN OFFICE 代表の水本純央氏、久我義孝氏談)
家の中に小さな家をつくったのはもうひとつ理由がある。「一帯は冷え込みが厳しい土地で、冬はどうしても家の中に閉じこもりがちになります。そんな冬場でも室内で快適に過ごしたいというのが施主の希望でした。そこで、重層的な幾つかの空間を室内に設けることで、それぞれのプライバシーを確保しつつ、豊かで開放的な場にもなるのではないかと考えました」
「家の中の家」はもうひとつ、ダイニングの吹き抜けを利用した2階部分にロフトも用意された(左の写真、上部右)。1階の防音室と対になるこの"ツリーハウス"は主に子どもたちの部屋だが、大人でも時にはひとりきりになれるだろう。
和室の中の穴ぐら的な書斎
《F-WHITE》
設計:山本卓郎建築設計事務所
和室の隅に用意された"穴ぐら"的な書斎である。和室への出入りからして"穴ぐら"的要素が強いのだが、それについて説明する前に、先ずは下の内観全景を見て、平面レイアウトを確認してほしい。
中心部に大きな中庭空間をとった平屋の住まいである。間仕切り壁はなく、ぐるりと繋がった一体空間となっている。玄関を入ってからの生活動線は、中庭を右手にみながら時計まわりに進み、リビング、ダイニング、ピアノルーム、最後にプライベート空間である夫妻の寝室に辿り着く。
そう、この生活動線上に和室は存在しない。当初の設計プランにも実は無かったのだが、開放的な住まいのどこかに身を潜ませられるような小さな居場所が欲しいとの要望がご主人から出され、広めに設定していた寝室のクローゼットの一部を窪ませて、和室と書斎スペースを確保した。つまり、この和室は寝室の隣にあるのだが、扉がないため出入りはできない。ではいったいどこに扉があるのか?
《F-WHITE》
設計:山本卓郎建築設計事務所
和室の隅に用意された"穴ぐら"的な書斎である。和室への出入りからして"穴ぐら"的要素が強いのだが、それについて説明する前に、先ずは下の内観全景を見て、平面レイアウトを確認してほしい。
中心部に大きな中庭空間をとった平屋の住まいである。間仕切り壁はなく、ぐるりと繋がった一体空間となっている。玄関を入ってからの生活動線は、中庭を右手にみながら時計まわりに進み、リビング、ダイニング、ピアノルーム、最後にプライベート空間である夫妻の寝室に辿り着く。
そう、この生活動線上に和室は存在しない。当初の設計プランにも実は無かったのだが、開放的な住まいのどこかに身を潜ませられるような小さな居場所が欲しいとの要望がご主人から出され、広めに設定していた寝室のクローゼットの一部を窪ませて、和室と書斎スペースを確保した。つまり、この和室は寝室の隣にあるのだが、扉がないため出入りはできない。ではいったいどこに扉があるのか?
この和室に入るためには、前述の生活動線を逆に辿り、玄関まで戻らねばならない。さらにいったん靴を履き、玄関をわたった先に用意された扉から入る。これが唯一のアクセス方法である。
いささか面倒に思える長いアプローチには理由がある。建築家の山本卓郎氏が意図した仕掛けは次の通り。「家族が生活している日常空間から徐々に遠ざかることで、非日常空間への移行を味わってもらおうと考えました。玄関で靴を脱いだり履いたりするひと手間も、茶会の際に路地空間で発生する所作と似たようなものです。部屋の場所は物理的には近いけれども心理的にちょっとだけ遠い。そんな演出の先に用意した"穴ぐら"空間です」
次に紹介する住まいも似たような一室空間ながら、この《F-WHITE》とは対照的な平面計画となっている。
いささか面倒に思える長いアプローチには理由がある。建築家の山本卓郎氏が意図した仕掛けは次の通り。「家族が生活している日常空間から徐々に遠ざかることで、非日常空間への移行を味わってもらおうと考えました。玄関で靴を脱いだり履いたりするひと手間も、茶会の際に路地空間で発生する所作と似たようなものです。部屋の場所は物理的には近いけれども心理的にちょっとだけ遠い。そんな演出の先に用意した"穴ぐら"空間です」
次に紹介する住まいも似たような一室空間ながら、この《F-WHITE》とは対照的な平面計画となっている。
開放的なようで「篭もれる」空間
《House I》
設計:篠崎弘之建築設計事務所
この家を真上からみると、玄関から奥に約13.5m、横に約10m幅の変形八角形をしている。2階はなく、91.76平米の平屋である(外装特集にて大谷石 [おおやいし] による壁の内外装を紹介した住まい)。八角形の頂点の対角線同士を結んでたてられた4枚の内壁が屋根を支える。半円形に切りとられたフロアの中央部分がダイニングで、緩やかに仕切られた8つの空間が、それぞれ玄関、キッチン、テラススペース、ワークスペース、ワークスペース、残り3室がベッドスペースとなっている。
この写真だけではひとりきりどころか丸見えではないかと思うかもしれないが、いずれも一律ではない台形状の部屋に"お篭り"してしまえば、完全ではないけれども壁の陰に隠れられるし、ベッドスペースやワークス ペースの手前には細いテンションワイヤーも用意されているので、カーテンで空間を仕切ることもできる。
思い切った形状と平面プランとなった背景について、設計者である建築家の篠崎弘之氏に話を聞いた。「敷地は低層住宅地の奥まったところです。建ぺい率が小さく、周囲5軒との境は、地元産の大谷石のブロック塀や駐車場と接していました。周囲のどの家とも正対しない多角形を敷地の中心に据えて、大谷石のファサードで堅固に守りつつ、隣家の庭や敷地を内部に引き込むような緩やかな囲いとしたほうが、家の内外に広がりが生まれるのではないかと考えました。家の中もその延長で、食事や団欒の時には家族が中心に集まって、そうでない時には、放射線状に用意したそれぞれの空間で過ごす。集まったり離れたり、ちょっと隠れたりという生活を楽しみながら暮らしていただいています」とのこと。
《House I》
設計:篠崎弘之建築設計事務所
この家を真上からみると、玄関から奥に約13.5m、横に約10m幅の変形八角形をしている。2階はなく、91.76平米の平屋である(外装特集にて大谷石 [おおやいし] による壁の内外装を紹介した住まい)。八角形の頂点の対角線同士を結んでたてられた4枚の内壁が屋根を支える。半円形に切りとられたフロアの中央部分がダイニングで、緩やかに仕切られた8つの空間が、それぞれ玄関、キッチン、テラススペース、ワークスペース、ワークスペース、残り3室がベッドスペースとなっている。
この写真だけではひとりきりどころか丸見えではないかと思うかもしれないが、いずれも一律ではない台形状の部屋に"お篭り"してしまえば、完全ではないけれども壁の陰に隠れられるし、ベッドスペースやワークス ペースの手前には細いテンションワイヤーも用意されているので、カーテンで空間を仕切ることもできる。
思い切った形状と平面プランとなった背景について、設計者である建築家の篠崎弘之氏に話を聞いた。「敷地は低層住宅地の奥まったところです。建ぺい率が小さく、周囲5軒との境は、地元産の大谷石のブロック塀や駐車場と接していました。周囲のどの家とも正対しない多角形を敷地の中心に据えて、大谷石のファサードで堅固に守りつつ、隣家の庭や敷地を内部に引き込むような緩やかな囲いとしたほうが、家の内外に広がりが生まれるのではないかと考えました。家の中もその延長で、食事や団欒の時には家族が中心に集まって、そうでない時には、放射線状に用意したそれぞれの空間で過ごす。集まったり離れたり、ちょっと隠れたりという生活を楽しみながら暮らしていただいています」とのこと。
階段室の奥の隠れ家
《Quartz》
設計:アーキシップス古前建築設計事務所 / 古前 極
玄関を入って右手側、吹き抜けが連続する階段室の奥に、隠れ家のような空間がみえる。
「この家の敷地は多角形状をしており。変形地を最大限に活用したワンルームのプランを進めていくと、階段下に小さな三角スペースが生まれました。収納庫にするとそこだけ閉じた空間になってしまい、せっかくテラスにも接しているのに勿体ない。そこで、カウンターと本棚を設け、コンセント口やエアコンも完備したスタディコーナーとして設えました」(事務所代表 / 古前 極氏談)。
部屋の隅に位置しているが、互いの気配は感じ取れるという。反対側にあるキッチンからも声を掛ければ届く距離だ。施主夫妻がパソコンを使ったり、子どもが宿題を持ち込んだり、その勉強を親がみたり、めいめいが活用できる多目的な空間となっている。
なお、作品名の"Quartz"には、多角形の敷地を活かした住まいという意味と、施主が選びぬいたインテリアに囲まれ、家族の思いが結晶化した住まいという二重の意味が込められている。
《Quartz》
設計:アーキシップス古前建築設計事務所 / 古前 極
玄関を入って右手側、吹き抜けが連続する階段室の奥に、隠れ家のような空間がみえる。
「この家の敷地は多角形状をしており。変形地を最大限に活用したワンルームのプランを進めていくと、階段下に小さな三角スペースが生まれました。収納庫にするとそこだけ閉じた空間になってしまい、せっかくテラスにも接しているのに勿体ない。そこで、カウンターと本棚を設け、コンセント口やエアコンも完備したスタディコーナーとして設えました」(事務所代表 / 古前 極氏談)。
部屋の隅に位置しているが、互いの気配は感じ取れるという。反対側にあるキッチンからも声を掛ければ届く距離だ。施主夫妻がパソコンを使ったり、子どもが宿題を持ち込んだり、その勉強を親がみたり、めいめいが活用できる多目的な空間となっている。
なお、作品名の"Quartz"には、多角形の敷地を活かした住まいという意味と、施主が選びぬいたインテリアに囲まれ、家族の思いが結晶化した住まいという二重の意味が込められている。
読書のための「洞穴」
《日野の家》
設計:荒木毅建築事務所
施主夫妻とお母様は3人とも本が大好きで、それぞれに蔵書が多い。東京郊外の丘の上に2世帯住宅を建てるにあたり、南に面して大きく開かれた1階のダイニングと2階のホールの片側の壁は一面、本棚となっており、本で埋まっている。庭の緑を眺めながらの読書もいいが、ときにはひとり、集中して読書に没頭したい。そんな”篭もり部屋”が別にほしいというご主人の要望を受け、2階のホールには背を向けるようにして、北側に6.62平米で用意されたのがこちらの書斎である。
開放的なホールとは対照的に、窓は小さく2つだけ。洞穴のような雰囲気を醸し出している。北窓からの採光は、デッサンを集中して描く美術室などでも理想とされるもので、日中は安定した光を室内にもたらす。
左右の本棚は、新書や文庫のサイズにぴったりと収まるように造作されている。 向かって左側の本棚は、この家の柱や梁、床板と同じ「智頭杉(ちずすぎ)」。木肌が美しい赤みを帯びた天然杉である。右側は落葉松のパネルによるもの。温かみが感じられる木と、お気に入りの書物に囲まれた、本好きには理想的な空間となっている。
《日野の家》
設計:荒木毅建築事務所
施主夫妻とお母様は3人とも本が大好きで、それぞれに蔵書が多い。東京郊外の丘の上に2世帯住宅を建てるにあたり、南に面して大きく開かれた1階のダイニングと2階のホールの片側の壁は一面、本棚となっており、本で埋まっている。庭の緑を眺めながらの読書もいいが、ときにはひとり、集中して読書に没頭したい。そんな”篭もり部屋”が別にほしいというご主人の要望を受け、2階のホールには背を向けるようにして、北側に6.62平米で用意されたのがこちらの書斎である。
開放的なホールとは対照的に、窓は小さく2つだけ。洞穴のような雰囲気を醸し出している。北窓からの採光は、デッサンを集中して描く美術室などでも理想とされるもので、日中は安定した光を室内にもたらす。
左右の本棚は、新書や文庫のサイズにぴったりと収まるように造作されている。 向かって左側の本棚は、この家の柱や梁、床板と同じ「智頭杉(ちずすぎ)」。木肌が美しい赤みを帯びた天然杉である。右側は落葉松のパネルによるもの。温かみが感じられる木と、お気に入りの書物に囲まれた、本好きには理想的な空間となっている。
打たせ湯の下で瞑想を
家の中でひとりきりになれる空間といえば、先ず考えつくのがバスルーム、そしてトイレだろう。
バスルームでは湯舟にゆったりと浸かるのも良いが、打たせ湯までついていたらなお嬉しい。目を閉じれば、滝にうたれる修行僧の気分も味わえる?
写真はは海外の施工事例で、Action Supply社の「Waterfall」が納められている。
Tyner Construction Co Inc
施工:Classic Shake and Stone
続いてトイレルームの事例を紹介するが、こちらは空間そのものがストイックにデザインされている。
家の中でひとりきりになれる空間といえば、先ず考えつくのがバスルーム、そしてトイレだろう。
バスルームでは湯舟にゆったりと浸かるのも良いが、打たせ湯までついていたらなお嬉しい。目を閉じれば、滝にうたれる修行僧の気分も味わえる?
写真はは海外の施工事例で、Action Supply社の「Waterfall」が納められている。
Tyner Construction Co Inc
施工:Classic Shake and Stone
続いてトイレルームの事例を紹介するが、こちらは空間そのものがストイックにデザインされている。
アートのようなトイレルーム
《ASAHI D》
設計:清正崇建築設計スタジオ 一級建築士事務所
トップライトから降りそそぐ光に包まれ、アート作品のように浮かび上がる白い便器。まるで瞑想するために用意されたようなトイレルームである。トイレの外にある、庭と一体化して開放感あふれたリビングとは対照的な空間だ。こんなトイレがほしいと施主が出した希望は、落ち着いた雰囲気で、長時間過ごすことができ、そして唯一無二の空間であること。この三つの願いを見事に叶えている。この家を初めて訪れたゲストがトイレを拝借した際に、扉の前で驚嘆の声があがるというのも無理からぬこと。
放物線をえがいた壁は、炭を混ぜた珪藻土による刷毛引き(はけびき)仕上げ。影による縞模様が強すぎず弱くもならないよう、左官職人に依頼したとのこと。高い天井から落ちてくる光を優しく受け止め、水平方向に広がりを生み出すように。
家の中でひとりきりになる瞬間、それは夜、目を閉じて眠るとき、というのはいささか観念的な解釈ではあるが、寝室の事例もみてみよう。
《ASAHI D》
設計:清正崇建築設計スタジオ 一級建築士事務所
トップライトから降りそそぐ光に包まれ、アート作品のように浮かび上がる白い便器。まるで瞑想するために用意されたようなトイレルームである。トイレの外にある、庭と一体化して開放感あふれたリビングとは対照的な空間だ。こんなトイレがほしいと施主が出した希望は、落ち着いた雰囲気で、長時間過ごすことができ、そして唯一無二の空間であること。この三つの願いを見事に叶えている。この家を初めて訪れたゲストがトイレを拝借した際に、扉の前で驚嘆の声があがるというのも無理からぬこと。
放物線をえがいた壁は、炭を混ぜた珪藻土による刷毛引き(はけびき)仕上げ。影による縞模様が強すぎず弱くもならないよう、左官職人に依頼したとのこと。高い天井から落ちてくる光を優しく受け止め、水平方向に広がりを生み出すように。
家の中でひとりきりになる瞬間、それは夜、目を閉じて眠るとき、というのはいささか観念的な解釈ではあるが、寝室の事例もみてみよう。
快適に篭もれるロフト
《猫洞通(ねこがはらどおり)のリノベーション》
設計:AIRHOUSE DESIGN OFFICE / 桐山啓一
2軒隣りあわせで建っていた築40年の町家を、ひとつ屋根を繋げて住居兼店舗にリノベーションした事例である。1階の半分は奥様が衣料雑貨などを販売する店舗で、もう半分は広いダイニングキッチンとなっている。施主夫妻は自宅に友人を招いてホームパーティーを開催することが多いため、ダイニングの中央には大きなテーブルとベンチが用意されている。店舗と住まいは緩やかに仕切ってあればいいという希望も反映させて、2階の居住エリアと空間を共有する大きな吹き抜けとなっている。
昼も夜も人々の訪れが絶えない賑やかな住まいにしつらえられたベッドルームである。6畳ほどの広さがある納戸の上にあり、梯子で出入りする。
ロフトをつくる際に注意したいのが空調の処理。このベッドルームも熱気がこもりやすい高い場所に位置する。リノベーションの際にどんな工夫をしたか、設計した建築家の桐山啓一氏に確認した。「屋根裏には断熱材を吹き付け、ベッド付近には新たに窓を設けて風通しを良くしました。ベッドを囲むような低い腰壁は、エアコンの冷気が少しでも停滞するようにした造作です。快適に過ごしていただけています」とのこと。
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設計:AIRHOUSE DESIGN OFFICE / 桐山啓一
2軒隣りあわせで建っていた築40年の町家を、ひとつ屋根を繋げて住居兼店舗にリノベーションした事例である。1階の半分は奥様が衣料雑貨などを販売する店舗で、もう半分は広いダイニングキッチンとなっている。施主夫妻は自宅に友人を招いてホームパーティーを開催することが多いため、ダイニングの中央には大きなテーブルとベンチが用意されている。店舗と住まいは緩やかに仕切ってあればいいという希望も反映させて、2階の居住エリアと空間を共有する大きな吹き抜けとなっている。
昼も夜も人々の訪れが絶えない賑やかな住まいにしつらえられたベッドルームである。6畳ほどの広さがある納戸の上にあり、梯子で出入りする。
ロフトをつくる際に注意したいのが空調の処理。このベッドルームも熱気がこもりやすい高い場所に位置する。リノベーションの際にどんな工夫をしたか、設計した建築家の桐山啓一氏に確認した。「屋根裏には断熱材を吹き付け、ベッド付近には新たに窓を設けて風通しを良くしました。ベッドを囲むような低い腰壁は、エアコンの冷気が少しでも停滞するようにした造作です。快適に過ごしていただけています」とのこと。
ハンモックに包まれて
《ろじのさき》
ギルド・デザイン一級建築士事務所 / 磯村一司+政本邦彦
都内の狭小地に建てられた3階建ての住宅である。建築面積は8坪強(約27平米)で、奥行きは約9.5メートル強と長いが、横幅は約4.8メートルほど。敷地じたいも細い路地の突き当たりにあり、接する道も2メートル未満。左右を他家の壁に挟まれ、さらに奥は崖地という敷地に家を建てることにした若夫婦は、やがて生まれてくる子どものためにも、小さいながらも、明るく広く感じられる我が家を建ててほしいと希望した。
この難題に挑んだのが、コンペによって設計者に選出された建築家の磯村一司氏と政本邦彦氏のふたり。「施主が求めた"広さ"とは何か。それは日常生活のなかに見通しの良さがあれば、広く感じられるのではないかと考えました。そこで、敷地の長さを活かすように計画し、建物の内部を大きく三角形にくり抜いて、光庭にもなるバルコニーを家の中に確保しました。南側に隣家との目隠しとしてたてたレッドシダーの格子と同じようにバルコニーの床を張ることで、暗くなりがちな1階にも柔らかな光がもたらされます」(磯村氏談)
左の写真は、目隠し壁を支える構造体を利用して、三角形のバルコニーの隅に施主一家が吊るしたハンモックである。一度でも揺られたことがある人なら共感してもらえると思うが、ネットに身を委ねてすっぽりと包まれると、どこか懐かしいような安心感と共に、"ひとりきり"感覚に浸ることができる。Houzzサイトに登録されている数多くのハンモック写真のなかでも、この《ろじのさき》の事例はベストポジションといえるのではないだろうか。
《ろじのさき》
ギルド・デザイン一級建築士事務所 / 磯村一司+政本邦彦
都内の狭小地に建てられた3階建ての住宅である。建築面積は8坪強(約27平米)で、奥行きは約9.5メートル強と長いが、横幅は約4.8メートルほど。敷地じたいも細い路地の突き当たりにあり、接する道も2メートル未満。左右を他家の壁に挟まれ、さらに奥は崖地という敷地に家を建てることにした若夫婦は、やがて生まれてくる子どものためにも、小さいながらも、明るく広く感じられる我が家を建ててほしいと希望した。
この難題に挑んだのが、コンペによって設計者に選出された建築家の磯村一司氏と政本邦彦氏のふたり。「施主が求めた"広さ"とは何か。それは日常生活のなかに見通しの良さがあれば、広く感じられるのではないかと考えました。そこで、敷地の長さを活かすように計画し、建物の内部を大きく三角形にくり抜いて、光庭にもなるバルコニーを家の中に確保しました。南側に隣家との目隠しとしてたてたレッドシダーの格子と同じようにバルコニーの床を張ることで、暗くなりがちな1階にも柔らかな光がもたらされます」(磯村氏談)
左の写真は、目隠し壁を支える構造体を利用して、三角形のバルコニーの隅に施主一家が吊るしたハンモックである。一度でも揺られたことがある人なら共感してもらえると思うが、ネットに身を委ねてすっぽりと包まれると、どこか懐かしいような安心感と共に、"ひとりきり"感覚に浸ることができる。Houzzサイトに登録されている数多くのハンモック写真のなかでも、この《ろじのさき》の事例はベストポジションといえるのではないだろうか。
屋根の上、空の下でひとりになる
《草屋根ブランチ》
設計・施工:株式会社イケガミ
広い青空の下、男の子が腰を降ろしているのは地上の原っぱではない。自宅の屋根の上だ。立地は東京都内。木造2階建ての家が竣工して3年経った後に、ガルバリウム鋼板が張られていた屋根を、夏場の冷却効果などを期待して緑化した。
勾配のついた切り妻屋根を緑化するには、自然の重力と風雨で土が流れ落ちないようにする必要がある。この家では人工地盤による草屋根工法を採用している。保水と透過および通気性を兼ね備えたシートを屋根に敷き、アクアソイルという人工土壌を厚さ約10cmで敷設した。通常の土に比べて重さは約1/3で済み、約80平米の荷重にも耐える。
スプリンクラーは設けず、天からの自然な恵みに任せてワイルドに育っている草屋根を、施主一家はとても気に入っている。「子どもが小さいうちは絶対に一人で屋根に上がってはいけないと、男の約束を交わしていました。小学校5年生になって立ち入りを解禁してからは、家の中に姿が見えないなと思うと、だいたい屋根の上に居ます。音楽を聴いたり、一人の時間を楽しんでいるようです」。
屋外なのに家の一部。子どもも大人もホッと一息つける場所だ。都内の住宅地では今や殆ど見かけない、独り占めできる原っぱは、究極の「ひとりきりになれる空間」といえるだろう。
教えてHouzz:コメント募集中!
家の中にひとりきりになれる場所はありますか?
《草屋根ブランチ》
設計・施工:株式会社イケガミ
広い青空の下、男の子が腰を降ろしているのは地上の原っぱではない。自宅の屋根の上だ。立地は東京都内。木造2階建ての家が竣工して3年経った後に、ガルバリウム鋼板が張られていた屋根を、夏場の冷却効果などを期待して緑化した。
勾配のついた切り妻屋根を緑化するには、自然の重力と風雨で土が流れ落ちないようにする必要がある。この家では人工地盤による草屋根工法を採用している。保水と透過および通気性を兼ね備えたシートを屋根に敷き、アクアソイルという人工土壌を厚さ約10cmで敷設した。通常の土に比べて重さは約1/3で済み、約80平米の荷重にも耐える。
スプリンクラーは設けず、天からの自然な恵みに任せてワイルドに育っている草屋根を、施主一家はとても気に入っている。「子どもが小さいうちは絶対に一人で屋根に上がってはいけないと、男の約束を交わしていました。小学校5年生になって立ち入りを解禁してからは、家の中に姿が見えないなと思うと、だいたい屋根の上に居ます。音楽を聴いたり、一人の時間を楽しんでいるようです」。
屋外なのに家の一部。子どもも大人もホッと一息つける場所だ。都内の住宅地では今や殆ど見かけない、独り占めできる原っぱは、究極の「ひとりきりになれる空間」といえるだろう。
教えてHouzz:コメント募集中!
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其々のスペースを考えるオーナー様の模様を拝見させて頂きました。
一人と言う「個」の単体をいかなるモノから排除して、個の「独立性」を確保するかが面白い形に現れていました。
私の「個」と言う独立性は、さほど特ベルに設えたスペース的なモノでは無くてもどんな家でもお気に入りの場所を見つけ出す事が出来る筈です。
私の場合には座り心地(パーソナル・リクライニングソファーが1台)やカーテン越しに差し込む光の光線や心地よい風通し等々が織りなす絶妙の場所であれば、そこで十分な独立性を確保する術を知っていますので敢えて独立したスペースはいりませんね!
どの様な家庭でもお金を掛ける事撒く誰もが探し出し作れるスペースが必ずあると思いますよ。要は「集中力」のモチベーションをいかに継続させるかがカギとなります。
これが私的な感想です。