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インダストリアルとシャビーシック。人気のスタイルはヴィンテージ家具で味わいを加えて
在イギリス20年のアンティークのプロによる連載第8回は、より気軽に今風のスタイルがつくれる「ヴィンテージ」の取り入れ方です。
西谷典子|Noriko Nishiya
2015年6月29日
人気のインダストリアルスタイルとシャビーシックスタイルはまったく雰囲気が違うものですが、どちらも錆び感やガラクタ感がある「古いもの」を使ってモダンな空間にちょっとした深みを加えるという意味では共通しています。「アンティーク」が生産から100年以上経過したものを指すのに対し、「ヴィンテージ」はおもに1940年代以降のもの。ラフに使い古してあるヴィンテージものをインテリアに取り入れるのは、アンティークを使うのとはまたちょっと違った意味のある楽しいチャレンジかもしれません。今回はこの2つの異なるスタイルをテーマに、ヴィンテージアイテムを上手に使った趣のある空間づくりの例をご紹介します。
公共スペースのイメージで
インダストリアルスタイルは工場や学校など公共の場で使われていた家具や部材を取り入れたスタイルですが、その素材の主流は錆びついたメタル。壁のセラミックタイルも同様によく使われる素材で、ヴィクトリア時代の地下鉄や学校、公衆トイレなどで多く使われていた伝統的なものです。機能的で耐久性のあるメタルのシャープさを感じるスタイルに、長年使われたヴィンテージの錆びの風合いがインテリアに温かさを加えています。
インダストリアルスタイルは工場や学校など公共の場で使われていた家具や部材を取り入れたスタイルですが、その素材の主流は錆びついたメタル。壁のセラミックタイルも同様によく使われる素材で、ヴィクトリア時代の地下鉄や学校、公衆トイレなどで多く使われていた伝統的なものです。機能的で耐久性のあるメタルのシャープさを感じるスタイルに、長年使われたヴィンテージの錆びの風合いがインテリアに温かさを加えています。
大きめのサイズ感
大きなサイズを選ぶことも重要なポイントです。広いパブリックスペースで使われていたイメージなので、家具や照明は基本的にビッグサイズが自然。大きさによる圧迫感を軽減するために、まわりはすっきりシンプルにしましょう。明るい色の小物でスタイリングして、家具のダークトーンに彩りを添えてください。
大きなサイズを選ぶことも重要なポイントです。広いパブリックスペースで使われていたイメージなので、家具や照明は基本的にビッグサイズが自然。大きさによる圧迫感を軽減するために、まわりはすっきりシンプルにしましょう。明るい色の小物でスタイリングして、家具のダークトーンに彩りを添えてください。
メタルの部材を取り入れる
棚受けに使われているのは古い配管用のパイプ。棚も古材を使用して渋いヴィンテージ感を出しています。細長いパイプなら縦にして壁に2本取り付けて支柱にし、棚板を何枚かつけたりもできます。工業用のメタルの部材は、他にもホールテーブルやコーヒーテーブルのベース部分としても利用できます。メタルの部材は、必ずしも海外のものである必要はなく、十分にインダストリアルな雰囲気を演出することができる、注目のアイテムです。
棚受けに使われているのは古い配管用のパイプ。棚も古材を使用して渋いヴィンテージ感を出しています。細長いパイプなら縦にして壁に2本取り付けて支柱にし、棚板を何枚かつけたりもできます。工業用のメタルの部材は、他にもホールテーブルやコーヒーテーブルのベース部分としても利用できます。メタルの部材は、必ずしも海外のものである必要はなく、十分にインダストリアルな雰囲気を演出することができる、注目のアイテムです。
がっしりした工業用の棚を利用
ナンバーやネームプレートがついている棚は工場で使われていたもので、業務用らしい実用的で頑丈なつくりをしています。このキッチンでは、工場で使われていたメタルの棚に工具を入れるのと同じちょっとラフな感覚で、機能的にすっきり整理整頓されています。フライパンやお鍋などの重いものも、安心して置くことができます。
ナンバーやネームプレートがついている棚は工場で使われていたもので、業務用らしい実用的で頑丈なつくりをしています。このキッチンでは、工場で使われていたメタルの棚に工具を入れるのと同じちょっとラフな感覚で、機能的にすっきり整理整頓されています。フライパンやお鍋などの重いものも、安心して置くことができます。
大きい業務用家具の使い方
ドイツのビアガーデンで使われていた長いテーブルとベンチスツールを、インダストリアルスタイルにアレンジしたキッチンスペース。工業用のランプをウォールランプやペンダントライトとして使い、ニューヨークのロフトのような雰囲気の空間をつくっています。このビアガーデンテーブルは、子ども用の勉強机としても使えそうですね。ワークスペースにも重宝しそうなテーブルです。
ドイツのビアガーデンで使われていた長いテーブルとベンチスツールを、インダストリアルスタイルにアレンジしたキッチンスペース。工業用のランプをウォールランプやペンダントライトとして使い、ニューヨークのロフトのような雰囲気の空間をつくっています。このビアガーデンテーブルは、子ども用の勉強机としても使えそうですね。ワークスペースにも重宝しそうなテーブルです。
風合いのある色褪せ感、地中海スタイル
対するシャビーシックスタイルはもともと、地中海のセカンドハウスのイメージが原型。ゆっくり年月を重ねて色褪せていくことで、写真のように家具も日焼けした、しっとりとしたセピア色の風合いが加わります。年に数回しか使われないセカンドハウスでは、万一泥棒に入られても惜しくないように、あまり高価な家具は置かなかったようですが、そんなふうに古びていったスタイルがかえってアメリカ西海岸ではシックと捉えられ、非常に人気を呼んだというストーリーがあります。こういったイメージの「色褪せ感」がシャビーシックの真髄と言えるでしょう。
対するシャビーシックスタイルはもともと、地中海のセカンドハウスのイメージが原型。ゆっくり年月を重ねて色褪せていくことで、写真のように家具も日焼けした、しっとりとしたセピア色の風合いが加わります。年に数回しか使われないセカンドハウスでは、万一泥棒に入られても惜しくないように、あまり高価な家具は置かなかったようですが、そんなふうに古びていったスタイルがかえってアメリカ西海岸ではシックと捉えられ、非常に人気を呼んだというストーリーがあります。こういったイメージの「色褪せ感」がシャビーシックの真髄と言えるでしょう。
ガーデンアイテムをインテリアに
シャビーシックにはコテージのイメージもあり、そこからガーデンアイテムもインテリアによく取り入れられます。折りたたみ式チェアは定番アイテムですし、後ろの壁を部分的にシャビーシックに見せるために納屋のドアなども多く利用されます。シャビーシックの大切なエッセンスは燦々と降り注ぐ太陽光のイメージ。この雰囲気を出すには鏡で明るさを確保しなければならないので、ヴィンテージの鏡もマストアイテムです。この3つが揃えば、シャビーシックの基本型が完成です。
シャビーシックにはコテージのイメージもあり、そこからガーデンアイテムもインテリアによく取り入れられます。折りたたみ式チェアは定番アイテムですし、後ろの壁を部分的にシャビーシックに見せるために納屋のドアなども多く利用されます。シャビーシックの大切なエッセンスは燦々と降り注ぐ太陽光のイメージ。この雰囲気を出すには鏡で明るさを確保しなければならないので、ヴィンテージの鏡もマストアイテムです。この3つが揃えば、シャビーシックの基本型が完成です。
もうひと手間かけるとまた味わいが
過去に幾重にも塗られたペンキがはげて下地の色が見えるのもシャビーシックな家具の定番です。下にのぞいている色を見ると、その時代のトレンドだった色が見えて大変興味深いもの。下地のペイントの色が2〜3種類見えているようなものの方がより風合いが増すので、時にはもう少しサンディングしてみるのもいいでしょう。また、クリアではなく少し濃い色のワックスをかけると、古びた風合いが出せます。そんなひと手間でお好きな味わいを加えてみてください。
過去に幾重にも塗られたペンキがはげて下地の色が見えるのもシャビーシックな家具の定番です。下にのぞいている色を見ると、その時代のトレンドだった色が見えて大変興味深いもの。下地のペイントの色が2〜3種類見えているようなものの方がより風合いが増すので、時にはもう少しサンディングしてみるのもいいでしょう。また、クリアではなく少し濃い色のワックスをかけると、古びた風合いが出せます。そんなひと手間でお好きな味わいを加えてみてください。
ヘビーユースも平気なヴィンテージ家具
頑丈なホールテーブルを改造して、シャビーシックスタイルのシンクにリメイク。天板に直接水が触れないように、耐水の素材(大理石など)でカバーされていれば、ヴィンテージのホールテーブルもこんなふうにバスルームに活用できます。ヴィンテージの照明やバスケットなども一緒にコーディネートしてインダストリアルスタイルのテイストも少し効かせれば、甘すぎない大人のシャビーシックにスタイリングできます。
頑丈なホールテーブルを改造して、シャビーシックスタイルのシンクにリメイク。天板に直接水が触れないように、耐水の素材(大理石など)でカバーされていれば、ヴィンテージのホールテーブルもこんなふうにバスルームに活用できます。ヴィンテージの照明やバスケットなども一緒にコーディネートしてインダストリアルスタイルのテイストも少し効かせれば、甘すぎない大人のシャビーシックにスタイリングできます。
布張りのアームチェア
アンティークのアームチェアの上の生地をはがしてみると、たいていが内部はキャラコ(ドレスの仮縫いなどにも使用される木綿の安価な生地)で覆われています。シャビーシックスタイルではこの内布のキャラコむき出しのままの状態で使うので、ちょっと悪趣味な生地のアームチェアでもはがしてしまえば立派なシャビーシックのチェアに。この色褪せたセピア色のキャラコが部屋をナチュラルな雰囲気に演出してくれますが、クッションもヴィンテージの布で作られたもので合わせ、柔らかい雰囲気を出すアクセントとして一緒にコーディネートしてみてください。
アンティークのアームチェアの上の生地をはがしてみると、たいていが内部はキャラコ(ドレスの仮縫いなどにも使用される木綿の安価な生地)で覆われています。シャビーシックスタイルではこの内布のキャラコむき出しのままの状態で使うので、ちょっと悪趣味な生地のアームチェアでもはがしてしまえば立派なシャビーシックのチェアに。この色褪せたセピア色のキャラコが部屋をナチュラルな雰囲気に演出してくれますが、クッションもヴィンテージの布で作られたもので合わせ、柔らかい雰囲気を出すアクセントとして一緒にコーディネートしてみてください。
インダストリアルスタイルはマスキュリン、シャビーシックはフェミニンなムードのインテリア。選んだヴィンテージ家具によりそれぞれの持ち味を生かすほか、2スタイルをうまくミックスすれば、両性的でクールなインテリアにコーディネートできます。センスが試されるちょっと上級のスタイルかもしれませんが、きりりとしたコンテポラリーなリビングにちょっとホッとしたヴィンテージの優しい空間があるのも、なかなかよいものではないでしょうか。
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