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Houzzツアー:ロンドン東部のヴィクトリア朝スタイルの家をリノベーションでエコ住宅に
ハックニー地区に建つ、明るくシンプルなこの家は、美しいだけではありません。優れたエネルギー効率性とサステナビリティを実現したエコ住宅なのです。
Kate Burt
2015年4月7日
もともとジェームズ・ライト(James Wright)さんは、リノベーションするための家ではなく、家を建てるための土地を探していた。「一から家を新築するつもりだったんです。建築家ですからね。でも数年経って、自分たちの探している地域では到底無理だとわかりました。それで、中古住宅を探してリノベーションすることにしたんです」とジェームズさんは話す。
まず、ジェームズさんの妻は地元の不動産業者を訪ね歩き、ようやく一家の住まい候補となる家を見つけた。「でも、雨漏りはするし、配線や配管の工事が必要だし、壁や天井も塗り直さなくてはならない状態でした。築100年以上の家だから当然のことですが、中もジメジメとしていました」とジェームズさん。「大幅に手を加える必要がありましたが、それはむしろ歓迎でした。だって、そうしたいと思っていたのですからね」。ではどんな家にするつもりだったのだろう? 「美しく改装することなら簡単です。でも、省エネルギーの家にしたいと考え、それをモチベーションしたんです」
まず、ジェームズさんの妻は地元の不動産業者を訪ね歩き、ようやく一家の住まい候補となる家を見つけた。「でも、雨漏りはするし、配線や配管の工事が必要だし、壁や天井も塗り直さなくてはならない状態でした。築100年以上の家だから当然のことですが、中もジメジメとしていました」とジェームズさん。「大幅に手を加える必要がありましたが、それはむしろ歓迎でした。だって、そうしたいと思っていたのですからね」。ではどんな家にするつもりだったのだろう? 「美しく改装することなら簡単です。でも、省エネルギーの家にしたいと考え、それをモチベーションしたんです」
どんなHouzz?
居住者:建築家のジェームズ・ライトさん、妻のタマラさん、3人の幼い子供たち
所在地:ロンドン東部のハックニー地区
竣工年:1893年
規模:ベッドルーム×5、バスルーム(トイレ含む)×2、トイレ×1
建築家:マクドナルド・ライト・アーキテクツのジェームズ・ライトさん
「イギリスの二酸化炭素排出量のうち約4分の1を住宅が排出しています」と、ジェームズさんは言う。「二酸化炭素排出量を削減するため、新築の住宅ではさまざまな試みが行われています。でも私は、歴史保全地区にある築120年の建物でも省エネルギー化できることを証明したいと思いました」
床はサステナブルに調達できるベイマツ材を使用。幅木の脇につくった溝が、個性的な影をつくっている。「床が図面にはめ込まれた巨大なパズルピースのように見える効果があります」とジェームズさんは説明する。
居住者:建築家のジェームズ・ライトさん、妻のタマラさん、3人の幼い子供たち
所在地:ロンドン東部のハックニー地区
竣工年:1893年
規模:ベッドルーム×5、バスルーム(トイレ含む)×2、トイレ×1
建築家:マクドナルド・ライト・アーキテクツのジェームズ・ライトさん
「イギリスの二酸化炭素排出量のうち約4分の1を住宅が排出しています」と、ジェームズさんは言う。「二酸化炭素排出量を削減するため、新築の住宅ではさまざまな試みが行われています。でも私は、歴史保全地区にある築120年の建物でも省エネルギー化できることを証明したいと思いました」
床はサステナブルに調達できるベイマツ材を使用。幅木の脇につくった溝が、個性的な影をつくっている。「床が図面にはめ込まれた巨大なパズルピースのように見える効果があります」とジェームズさんは説明する。
今回の大規模なリノベーションについて、ジェームズさんは「既存のヴィクトリア朝スタイルのファサードの中に、モダンで省エネルギーの住宅をつくることが目標でした」と話す。ファサードは残したまま、元の家をいったん解体し、屋根、壁、床、床下暖房を新しくして組み立て直した。地下室とロフトを増築し、さらに、断熱材、パッシブソーラー暖房、トイレと洗濯機と庭の水まきに利用する高性能の排水再利用システムなど、エコ設備も数多く取り入れている。
「この辺りは歴史保全地区です。だから、外から見えないように工事を進めなければなりませんでした」とジェームズさん。同じ理由により、ガラス張りの玄関ドアと窓はもともとあったものを、わざわざ修復して使っている。
排水再利用システム: ハンスグローエ
「この辺りは歴史保全地区です。だから、外から見えないように工事を進めなければなりませんでした」とジェームズさん。同じ理由により、ガラス張りの玄関ドアと窓はもともとあったものを、わざわざ修復して使っている。
排水再利用システム: ハンスグローエ
炉胸(壁の中の煙突が室内に張り出した部分)は、取り壊さずに残した数少ない部分の1つ。「この家はテラスハウスで、炉胸は共用壁の一部なんです。だからそのままにしておいた方がいいと思いました」とジェームズさん。床暖房を補うため、デンマークのモルソー社(Morso)製薪ストーブを設置。「モルソーはエネルギー効率が高いストーブのメーカーです」と、ジェームズさん。
大きなダイニングテーブルは、キッチンと同じく、ブルトハウプ社(Bulthaup)の特注品。「ハンスウェグナーのC24ウィッシュボーンチェアにぴったりの高さです。このチェアを10脚並べられる長さを指定して作ってもらいました」とジェームズさん。
大きなダイニングテーブルは、キッチンと同じく、ブルトハウプ社(Bulthaup)の特注品。「ハンスウェグナーのC24ウィッシュボーンチェアにぴったりの高さです。このチェアを10脚並べられる長さを指定して作ってもらいました」とジェームズさん。
家のデザインについて、ジェームズさんは思い切りモダンにしたいと考えていた。「ヴィクトリア朝スタイルの家によくある、物が多くて狭苦しい部屋とは対照的なインテリアにしました」とジェームズさん。
梁ではなく方形に組んだ鉄骨フレームを使うと、構造の補強になるだけでなく、(壁を撤去して)ゆったりと開放的な間取りの建物をつくれるようになった。家の奥にはテラスとダイニングキッチンを設置。キッチン・ダイニングは家の既存部分とつながっている。
梁ではなく方形に組んだ鉄骨フレームを使うと、構造の補強になるだけでなく、(壁を撤去して)ゆったりと開放的な間取りの建物をつくれるようになった。家の奥にはテラスとダイニングキッチンを設置。キッチン・ダイニングは家の既存部分とつながっている。
さまざまな天然材料も使用している。建具も含め、地元かEU圏内で生産されたものを選んだ。「サセックス州で伐採されたクリ材の柵、ウェールズ州のスレート、フランスの石灰石、デンマークの床板、イギリスの真鍮の被覆材を使いました」と、ジェームズさん。「取引先の多くも地元の業者でした。工事中も、毎朝材料を届ける車の少なさに安心しました。逆に自転車で来る人もたくさんいましたし」
馬のワイヤーアートはデビ・オヘアの作品、家の中には、他にも彼女の作品が。「妻のタマラは馬が大好きなんです。フォルムが面白いですよね」
馬のワイヤーアートはデビ・オヘアの作品、家の中には、他にも彼女の作品が。「妻のタマラは馬が大好きなんです。フォルムが面白いですよね」
上げ下げ式の窓は1893年の竣工当時からあったもの。「ガラスが古いため、景色が歪んで見えるんです。でも、新しい窓では同じ効果を再現できませんでした」。しかし窓は一つ一つ取り外して分解し、必要な部分は木材で継ぎ合わせ、金具も付け直して、元に戻した。目張りもして、暖房効率も改善した。
「ソファやコーヒーテーブルやテレビはありません。ものすごくシンプルな暮らしをしているんです」とジェームズさん。窓の下にあるイングリッシュオーク材の金庫は16世紀のもので、子供のおもちゃ入れにしている。「家の中の家具は、ときどき置く部屋を変えています」
「ソファやコーヒーテーブルやテレビはありません。ものすごくシンプルな暮らしをしているんです」とジェームズさん。窓の下にあるイングリッシュオーク材の金庫は16世紀のもので、子供のおもちゃ入れにしている。「家の中の家具は、ときどき置く部屋を変えています」
暖炉の上のル・コルジュビエのオリジナルの銅版画は、ジェームズさんとタマラさんがハネムーン中にパリの画廊で見つけたものだ。「私のお気に入りの絵です」と、ジェームズさん。
鉄骨フレームを使うことで、元の家の内壁を撤去。すると、1階全体を光があふれる空間になった。
壁には装飾品を飾るためのくぼんだ棚をつくった。「家のエネルギー効率を高めるため、外壁は全てしっかりと断熱しました。そのために、壁の内部に150ミリメートル以上の空間を持たせたので、それを使って、いろいろなところに窪みをつくり、LEDライトで照らして、アート作品を飾る場所にしたんです。家の他のところでも、内壁に空間があるところでは、同じようにしています」とジェームズさん。
「壁内ディスプレイのサイズはアート作品に合わせました。絵や子供がつくった粘土のモデルを代わる代わる飾っています」
壁には装飾品を飾るためのくぼんだ棚をつくった。「家のエネルギー効率を高めるため、外壁は全てしっかりと断熱しました。そのために、壁の内部に150ミリメートル以上の空間を持たせたので、それを使って、いろいろなところに窪みをつくり、LEDライトで照らして、アート作品を飾る場所にしたんです。家の他のところでも、内壁に空間があるところでは、同じようにしています」とジェームズさん。
「壁内ディスプレイのサイズはアート作品に合わせました。絵や子供がつくった粘土のモデルを代わる代わる飾っています」
キッチンはブルトハウプb3のデザイン。ジェームズさんがスペースに合わせてサイズを注文してつくったもの。キッチンユニットとカウンターは9メートルの長さがあり、幅6メートルの天窓から光が降り注ぐ。
シンプルなボックス型のリビングとキッチンは増築部分にあたる。
増築部分の外壁は、ブロートーチで処理をした再生真鍮パネルを貼っている。「酸化するとこんな色になるんです。グリニッジの建築家が同じことをしているのを見たことがあって、〈カピスコ(Capisco)〉という業者で、実はすぐそこのプラネタリウムの裏にある会社でした。プラネタリウムを覗いたときに、すぐ近所にあることを知り、早速連絡をして、小さい仕事だけれどうちでもやってくれないか、と頼みました」とジェームズさん。
増築部分の外壁は、ブロートーチで処理をした再生真鍮パネルを貼っている。「酸化するとこんな色になるんです。グリニッジの建築家が同じことをしているのを見たことがあって、〈カピスコ(Capisco)〉という業者で、実はすぐそこのプラネタリウムの裏にある会社でした。プラネタリウムを覗いたときに、すぐ近所にあることを知り、早速連絡をして、小さい仕事だけれどうちでもやってくれないか、と頼みました」とジェームズさん。
「1階をワンルームにすると、空間も住む人も生き生きとします」と、ジェームズさん。「庭とテラスも部屋ようにつかえるため、家と庭の境界が曖昧になります。ガラスのドアを開ければ、敷居に段差がないので子供たちは自転車に乗ったまま外に出掛けていけるんです」
ダークな色調が贅沢な雰囲気のバスルームは、ウェットルーム(バスタブの外でもシャワーを浴びられる仕様)になっている。壁と床はカウトイブガイル(Cwt-y-Bugail)のウェールズ製スレートタイルを貼っている。バスタブは19世紀後半のフランス製ダブルエンドモデルの複製品だ。
子供用寝室の1つは奥の増築部分にある。
マスターベッドルームは夫妻が使うスイートの一部にある。「ベッドルーム、バスルーム、化粧室、それとデスクを置くスペースがあります。ベッドルームは開放感がありながら、閉じるとプライバシーをしっかり確保できる空間にしたいと考えました」とジェームズさん。
めずらしい外見のドアの横幅は1.8メートルで、ジェームズさんがデザインしたもの。「水平に設置した手すりは、実は接合部分なんです。ドアが大きすぎて、階段を通って2階に運ぶことはできませんでした。重さも150キロ近くありますし」
「家の中で使った塗料はビオファ(Biofa)のもの。揮発性有機化合物を含んでいないので、ふつうのものより健康的な塗料です」とジェームズさん。
省電力のウォールライト: John Cullen Lighting.
めずらしい外見のドアの横幅は1.8メートルで、ジェームズさんがデザインしたもの。「水平に設置した手すりは、実は接合部分なんです。ドアが大きすぎて、階段を通って2階に運ぶことはできませんでした。重さも150キロ近くありますし」
「家の中で使った塗料はビオファ(Biofa)のもの。揮発性有機化合物を含んでいないので、ふつうのものより健康的な塗料です」とジェームズさん。
省電力のウォールライト: John Cullen Lighting.
5つあった寝室の1つは書庫として使っている。「シンプルで落ち着いた家です」と、ジェームズさんは言う。「だから、事務所で一日を終えて帰ってくると、ほっとしますね」
ジェームズさんによる家の改築計画。
リノベーションの途中で、家はいったん骨組みがむき出しの状態に。「この状態にしてみるまで、どんな風にリノベーションするかイメージが固まっていませんでした。ここまでしたので、イチから家を建てたいという当初の思いが叶ったも同然ですね」と、ジェームズさん。
屋根に取り付けたソーラー温水装置はフィースマン社(Viessmann)製。「屋根には『真空管』と呼ばれるものが付いています。2平方メートルほどのスペースを占めるので、どの家庭にも合うものではないですね。管から太陽光を取り込み、内側の金属板を温め、その熱を、普通の貯湯槽より一回り大きいサイズのタンクに利用します。装置の費用は1,600ポンド。タンクも調達しなくてはいけないので、高く思われるかもしれませんが、7、8年ほどで回収できます。それに、もっと安価なタイプもあります。こちらは最高ランクのものですから」
おしえてHouzz
エコ・フレンドリーな家に住みたいと思いますか? 下のコメント欄でご意見をお聞かせください。
おしえてHouzz
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