和と洋が融合し、美しく調和したニッポンの住まい
畳敷きの和室には襖や障子、リビングにはテーブルやソファを。そんな固定概念にとらわれない、「和✕洋」のハイブリッドなしつらえから生まれる豊穣空間をご紹介します。

Naoko Endo
2015年9月14日
出版社、不動産ファンド、代理店勤務を経て、フリーランス・ライター。
個人ブログ「a+e」http://a-plus-e.blogspot.jp/
出版社、不動産ファンド、代理店勤務を経て、フリーランス・ライター。
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私たち日本人の住まいには、大きく分けて2つの様式がある。和と洋だ。そのふたつは、私たちの生活にすっかり融け込んでいて、境い目を意識することもほとんどない。かろうじて、戸建てやマンション住宅のチラシに「和室」「洋室」などと記されているくらいだが、それすらも、畳が敷かれているかどうかを判断する記号でしかない。
だが、ここでいま一度、目を凝らしてみよう。異なる地で生まれた建築様式やデザインが、ひとつ屋根の下に馴染んでいるさまに。和と洋が静かに響き合い、調和した空間は美しい。
だが、ここでいま一度、目を凝らしてみよう。異なる地で生まれた建築様式やデザインが、ひとつ屋根の下に馴染んでいるさまに。和と洋が静かに響き合い、調和した空間は美しい。
《数寄の家》
設計:M アーキテクツ / 前田康憲
5年前に都内に建てられた、個人邸の2階部分である。キッチン、ダイニング、リビングを壁や建具で分断せずに、空間に対する日本人的な身体感覚を反映させて、それぞれの領域によって緩やかに自立するレイアウトとなっている。
広いリビングの背面に、8畳の和室と並んで、この囲炉裏端が設けられた。この一角は床座式となっており、天然木突き板の床に、黒漆の拭漆仕上げによる低座椅子を配している(製造・販売:輪島キリモト・桐本木工所)。
日本人でも懐かしさを覚える火のしつらえだが、まわりのインテリアはいたってモダン。支柱と横木はステンレス製で、表面はバイブレーション仕上げ。南部鉄器の鉄瓶を引っ掛けた鉤はスチール。まわりを灰で汚さないよう、囲炉裏はスライド開閉式の蓋付き。カッシーナ・イクスシーに依頼した特注品とのこと。
太鼓貼りの障子と共に空間を共有するのはクリエーション バウマンのレースのカーテン。その後ろにあるハンターダグラスの電動カーテンを上げると、リビングから連続するガラスウォールが現われる。施主はこの囲炉裏で鍋料理を楽しんでいるとのことなので、雪が降った日の眺めはまた格別だろう。
設計:M アーキテクツ / 前田康憲
5年前に都内に建てられた、個人邸の2階部分である。キッチン、ダイニング、リビングを壁や建具で分断せずに、空間に対する日本人的な身体感覚を反映させて、それぞれの領域によって緩やかに自立するレイアウトとなっている。
広いリビングの背面に、8畳の和室と並んで、この囲炉裏端が設けられた。この一角は床座式となっており、天然木突き板の床に、黒漆の拭漆仕上げによる低座椅子を配している(製造・販売:輪島キリモト・桐本木工所)。
日本人でも懐かしさを覚える火のしつらえだが、まわりのインテリアはいたってモダン。支柱と横木はステンレス製で、表面はバイブレーション仕上げ。南部鉄器の鉄瓶を引っ掛けた鉤はスチール。まわりを灰で汚さないよう、囲炉裏はスライド開閉式の蓋付き。カッシーナ・イクスシーに依頼した特注品とのこと。
太鼓貼りの障子と共に空間を共有するのはクリエーション バウマンのレースのカーテン。その後ろにあるハンターダグラスの電動カーテンを上げると、リビングから連続するガラスウォールが現われる。施主はこの囲炉裏で鍋料理を楽しんでいるとのことなので、雪が降った日の眺めはまた格別だろう。
《清州の家 リノベーション》
設計:jam. / 村田 純
築35年の住宅兼店舗を、アーティストのためのアトリエ兼作品発表の場としてリノベーションした。写真は南面の1室で、改修前は6畳と8畳の和室だった。床はアッシュ材のフローリングとし、一部に縁(へり)無しの畳を敷いた。改装前の状態など全く想像できないニュートラルな空間に、白いバルセロナチェアがことのほか映える。
施主が求めたのは、作品制作に必要な安定した明るさ。元からあったサッシ窓の開口を引き継いでいるが、そのままでは光が強過ぎるため、新調した障子を嵌め、さらに天井から床までの長い白いカーテンですっぽりと覆っている。障子紙とポリエステル混合綿の布を通過した外光は、適度に拡散され、室内に柔らかな光をもたらす。
設計:jam. / 村田 純
築35年の住宅兼店舗を、アーティストのためのアトリエ兼作品発表の場としてリノベーションした。写真は南面の1室で、改修前は6畳と8畳の和室だった。床はアッシュ材のフローリングとし、一部に縁(へり)無しの畳を敷いた。改装前の状態など全く想像できないニュートラルな空間に、白いバルセロナチェアがことのほか映える。
施主が求めたのは、作品制作に必要な安定した明るさ。元からあったサッシ窓の開口を引き継いでいるが、そのままでは光が強過ぎるため、新調した障子を嵌め、さらに天井から床までの長い白いカーテンですっぽりと覆っている。障子紙とポリエステル混合綿の布を通過した外光は、適度に拡散され、室内に柔らかな光をもたらす。
《TWO TERRACE》
設計:横堀建築設計事務所
開放的で、どことなくオリエンタルな雰囲気に包まれたリビング。都内の住宅地に建ち、両隣も挟まれた立地条件であることなど、全く感じさせない。
ゆったりとしたコの字型のソファは、この家のために造作されたもの。クッションもオリジナルで、生地は絹(シルク)で、朱の生地のクッションには金(ゴールド)で草木紋様が刺繍されている。背面の壁は、金箔押しが施されたような壁紙がほぼ全面を覆う。下からの間接照明と外光によって浮かび上がる文様は、テッセンというキンポウゲ科のツル植物。日本では夏の着物の帯や浴衣、扇子などの絵柄に用いられる草花だ。日本を感じさせる仕様だが、イギリスのデザイナーであるニナ・キャンベルの名を冠するインポートブランドである(国内取り扱い:マナ・トレーディング株式会社)。ソファの左右に置かれたランプスタンドのシェードの素材は麻。脚まで総革張りのカッシーナのテーブル兼チェストを挟んで、床に敷かれているのは、この家を建てる前から主が大事にしていたペルシャ絨毯である。
さて、この家の住まい手だが、日本舞踊と茶道のお師匠さんとのこと。家の中には畳敷きの和室もしつらえられ、茶会用に炉もきられている。日本の伝統文化を体現する住まい手が使う、日本家屋を象徴する和の空間に対して、リビングは「洋」としてくくられるのが常だが、こちらの空間はそのどちらにも属さない。さまざまなテイストが混ざり合い、静かに共鳴した空間となっている。
設計:横堀建築設計事務所
開放的で、どことなくオリエンタルな雰囲気に包まれたリビング。都内の住宅地に建ち、両隣も挟まれた立地条件であることなど、全く感じさせない。
ゆったりとしたコの字型のソファは、この家のために造作されたもの。クッションもオリジナルで、生地は絹(シルク)で、朱の生地のクッションには金(ゴールド)で草木紋様が刺繍されている。背面の壁は、金箔押しが施されたような壁紙がほぼ全面を覆う。下からの間接照明と外光によって浮かび上がる文様は、テッセンというキンポウゲ科のツル植物。日本では夏の着物の帯や浴衣、扇子などの絵柄に用いられる草花だ。日本を感じさせる仕様だが、イギリスのデザイナーであるニナ・キャンベルの名を冠するインポートブランドである(国内取り扱い:マナ・トレーディング株式会社)。ソファの左右に置かれたランプスタンドのシェードの素材は麻。脚まで総革張りのカッシーナのテーブル兼チェストを挟んで、床に敷かれているのは、この家を建てる前から主が大事にしていたペルシャ絨毯である。
さて、この家の住まい手だが、日本舞踊と茶道のお師匠さんとのこと。家の中には畳敷きの和室もしつらえられ、茶会用に炉もきられている。日本の伝統文化を体現する住まい手が使う、日本家屋を象徴する和の空間に対して、リビングは「洋」としてくくられるのが常だが、こちらの空間はそのどちらにも属さない。さまざまなテイストが混ざり合い、静かに共鳴した空間となっている。
「縦格子の建具」
デザイン:ウッドフェイス
部屋の中央にあるリビングを空間として仕切っているのは、1辺が4枚、縦格子の建具である。格子越しに見える世界は曖昧なものとなるが、内と外で、互いの気配は感じとれる程度の境界が引かれる。
格子の芯材は集成材で、垂直の精度を保ち、表面は竹の突き板で風合を添えた。素材と相まって、清涼感が増すしつらえとなっている。
縦格子は日本の伝統的なしつらえのひとつ。家のファサードとしても用いられ、外部からの視線を遮りつつ、光と風を室内まで通してくれる。京都や金沢など、昔ながらの町並みを残した地域でもよく目にする。下の事例は都内のものだが、京都の石塀小路で見かけた仕様から着想を得て、応用したものだ。
デザイン:ウッドフェイス
部屋の中央にあるリビングを空間として仕切っているのは、1辺が4枚、縦格子の建具である。格子越しに見える世界は曖昧なものとなるが、内と外で、互いの気配は感じとれる程度の境界が引かれる。
格子の芯材は集成材で、垂直の精度を保ち、表面は竹の突き板で風合を添えた。素材と相まって、清涼感が増すしつらえとなっている。
縦格子は日本の伝統的なしつらえのひとつ。家のファサードとしても用いられ、外部からの視線を遮りつつ、光と風を室内まで通してくれる。京都や金沢など、昔ながらの町並みを残した地域でもよく目にする。下の事例は都内のものだが、京都の石塀小路で見かけた仕様から着想を得て、応用したものだ。
《Cafe koiwa》
設計:DIG DESIGN / 嶌 陽一郎
都内にある古民家を、多目的に使えるようリノベーションした事例の外観部分。ガスメータと電力メータを、細い木の格子で囲っている。和と洋の融合というよりは、現代の暮らしには不可欠である機器類を、住まいのなかに溶け込ませている好例である。
このメータ類は、住まいの1階に併設したカフェの出入口にある。白さも相まって異物感が強いため、格子によって存在感を和らげた。一部を開閉できるが、格子を透かして数値が読みとれるよう、材をギリギリまで細くし、瀟洒(しょうしゃ)なデザインを心掛けた。
格子の材は、タンニンを含んで腐りにくい米杉を採用。材を細くすると、どうしても屋外では劣化が早いため、傷んだ部分だけを新しい材に取り替えられるようにしている。
設計:DIG DESIGN / 嶌 陽一郎
都内にある古民家を、多目的に使えるようリノベーションした事例の外観部分。ガスメータと電力メータを、細い木の格子で囲っている。和と洋の融合というよりは、現代の暮らしには不可欠である機器類を、住まいのなかに溶け込ませている好例である。
このメータ類は、住まいの1階に併設したカフェの出入口にある。白さも相まって異物感が強いため、格子によって存在感を和らげた。一部を開閉できるが、格子を透かして数値が読みとれるよう、材をギリギリまで細くし、瀟洒(しょうしゃ)なデザインを心掛けた。
格子の材は、タンニンを含んで腐りにくい米杉を採用。材を細くすると、どうしても屋外では劣化が早いため、傷んだ部分だけを新しい材に取り替えられるようにしている。
「籠目くみこ間仕切り」
デザイン:ユタカ建商
直線による六角形の模様は、樹脂ガラスにペイントで描かれたものではない。越前指物(えちぜんさしもの)という伝統技法で、組子細工(くみこざいく)による籠目(かごめ)模様である。指物師(さしものし)と呼ばれる職人は、釘などは一切使わずに、木と木をパズルのように組み合わせて、雪の結晶のような複雑な紋様でも作り上げてしまう(引用元:越前指物組合サイト/解説ページ)。
越前に限らず、日本の組子細工は、欄間や障子、各種調度品など、和の空間を装飾するものだった。近年では、さまざまな素材や空間とコラボレーションして、創作の場を広げている。2005年に竣工した《京都迎賓館》では、京指物による照明オブジェが「水明の間」の天井を飾り、九州を走る豪華客車のインテリアにも大川組子が採用されて話題となった。この越前の「籠目くみこ間仕切り」も、内部にLEDを組み込んで、夜間照明やディスプレイとして使うことができる。
デザイン:ユタカ建商
直線による六角形の模様は、樹脂ガラスにペイントで描かれたものではない。越前指物(えちぜんさしもの)という伝統技法で、組子細工(くみこざいく)による籠目(かごめ)模様である。指物師(さしものし)と呼ばれる職人は、釘などは一切使わずに、木と木をパズルのように組み合わせて、雪の結晶のような複雑な紋様でも作り上げてしまう(引用元:越前指物組合サイト/解説ページ)。
越前に限らず、日本の組子細工は、欄間や障子、各種調度品など、和の空間を装飾するものだった。近年では、さまざまな素材や空間とコラボレーションして、創作の場を広げている。2005年に竣工した《京都迎賓館》では、京指物による照明オブジェが「水明の間」の天井を飾り、九州を走る豪華客車のインテリアにも大川組子が採用されて話題となった。この越前の「籠目くみこ間仕切り」も、内部にLEDを組み込んで、夜間照明やディスプレイとして使うことができる。
《表象の家》
設計:フォルム・木村浩一建築研究所
家の中心に据えられた広いリビング。廊下の先には6畳の和室が位置する。伝統的な組子技法でつくられた引き戸が、和と洋の空間を仕切り、繋げる。この空間にあわせて造作されたオリジナルで、材は加工しやすいスプールス材。
和室には、この組子パターンを踏襲した障子戸がしつらえられている。
設計:フォルム・木村浩一建築研究所
家の中心に据えられた広いリビング。廊下の先には6畳の和室が位置する。伝統的な組子技法でつくられた引き戸が、和と洋の空間を仕切り、繋げる。この空間にあわせて造作されたオリジナルで、材は加工しやすいスプールス材。
和室には、この組子パターンを踏襲した障子戸がしつらえられている。
引き戸を1枚挟んで、和と洋の空間が並び立つ。どちらの空間から眺めても、違和感のないデザインとなっている。
《R10 渋谷 Tさんの家》
設計:atelier137 / 鈴木宏幸
ダイニングテーブルに注目を。 畳敷きの和室と、麻のカーペットを敷いたリビングとで床レベルが異なるため、間に渡されたテーブルの脚の長さを変えることで、和室側からも使えるようになっている。造作にあたり、3つの卓を並べるなどして、使い勝手の良い高さをさまざまに検証した。脚の長さは調整も可能。脚を全て短くして、和室での座卓にもなれば、冬にしつらえる炬燵(こたつ)と並べても違和感がない高さになる。
住まい手は夫婦二人。奥様が床座での食事を、逆にご主人はテーブルと椅子での生活を希望し、この生活習慣の違いが、築22年のマンションをリノベーションする際、設計コンセプトの基本に据えられている。和室の床レベルが高いのは、水屋や炉を併設した茶室としての機能をもたせていることもあるのだが、床座/椅子と明確に空間を分けずとも、和室の縁がベンチがわりに。
和と洋ふたつの空間をつなぐ、このオリジナルのテーブルは、両者を「良い関係」で結ぶブリッジに見えなくもない。境に置かれているのが、イサム・ノグチがデザインしたフロアスタンド「AKARI」というのも、たまたまの画としても象徴的だ。
設計:atelier137 / 鈴木宏幸
ダイニングテーブルに注目を。 畳敷きの和室と、麻のカーペットを敷いたリビングとで床レベルが異なるため、間に渡されたテーブルの脚の長さを変えることで、和室側からも使えるようになっている。造作にあたり、3つの卓を並べるなどして、使い勝手の良い高さをさまざまに検証した。脚の長さは調整も可能。脚を全て短くして、和室での座卓にもなれば、冬にしつらえる炬燵(こたつ)と並べても違和感がない高さになる。
住まい手は夫婦二人。奥様が床座での食事を、逆にご主人はテーブルと椅子での生活を希望し、この生活習慣の違いが、築22年のマンションをリノベーションする際、設計コンセプトの基本に据えられている。和室の床レベルが高いのは、水屋や炉を併設した茶室としての機能をもたせていることもあるのだが、床座/椅子と明確に空間を分けずとも、和室の縁がベンチがわりに。
和と洋ふたつの空間をつなぐ、このオリジナルのテーブルは、両者を「良い関係」で結ぶブリッジに見えなくもない。境に置かれているのが、イサム・ノグチがデザインしたフロアスタンド「AKARI」というのも、たまたまの画としても象徴的だ。
《私たちの家》
設計:ハンズデザイン一級建築士事務所 / 星名岳志+星名貴子
築29年、70平米・3LDKの中古マンションをリノベーションした事例である。玄関を入ってすぐ目の前、部屋の中央にあるこちらのキッチン。施主の希望もあり、インパクトのある個性的な仕様となっている。
設備機器類以外は自然素材を使って造作している。キッチンの足もとには栃木県で採れる大谷石(おおやいし)を据え、側面から連続した天板は無垢のタモ材。反対側の側面と前面にみられる模様は「名栗(なぐり)」という伝統技法で刻まれたもの。"なぐり"には、使う道具や削り具合によってさまざまな種類がある。予め指定した加工を材木店で処理してもらってから、現場に搬入、オリジナルキッチンとして施工した。天板の裏にはLEDも敷設してあり、夜には部屋の雰囲気を変える演出装置にもなる。
設計:ハンズデザイン一級建築士事務所 / 星名岳志+星名貴子
築29年、70平米・3LDKの中古マンションをリノベーションした事例である。玄関を入ってすぐ目の前、部屋の中央にあるこちらのキッチン。施主の希望もあり、インパクトのある個性的な仕様となっている。
設備機器類以外は自然素材を使って造作している。キッチンの足もとには栃木県で採れる大谷石(おおやいし)を据え、側面から連続した天板は無垢のタモ材。反対側の側面と前面にみられる模様は「名栗(なぐり)」という伝統技法で刻まれたもの。"なぐり"には、使う道具や削り具合によってさまざまな種類がある。予め指定した加工を材木店で処理してもらってから、現場に搬入、オリジナルキッチンとして施工した。天板の裏にはLEDも敷設してあり、夜には部屋の雰囲気を変える演出装置にもなる。
《ガエまちや》
設計:一級建築士事務所 河井事務所 / 河井敏明
築100年を越える京町家のリノベーションである。6畳の和室を含めた2間続きだったところを、キッチンとダイニングをつなげた1室空間に。和室時代の名残りである船底天井の下、ダイニングテーブルに注目を。四隅に支える脚がなく、大きなガラスの天板が宙に浮いているかのようにみえる。厚さ15mm、重さ50kgのガラス板の短辺側は壁に溝をきって埋め込み、のこりの重量を丸柱のような脚でガッチリと支えている。木材が複雑にクロスした支点部分は、日本の伝統的組物(くみもの)である「斗栱(ときょう)」で構成されている。
設計:一級建築士事務所 河井事務所 / 河井敏明
築100年を越える京町家のリノベーションである。6畳の和室を含めた2間続きだったところを、キッチンとダイニングをつなげた1室空間に。和室時代の名残りである船底天井の下、ダイニングテーブルに注目を。四隅に支える脚がなく、大きなガラスの天板が宙に浮いているかのようにみえる。厚さ15mm、重さ50kgのガラス板の短辺側は壁に溝をきって埋め込み、のこりの重量を丸柱のような脚でガッチリと支えている。木材が複雑にクロスした支点部分は、日本の伝統的組物(くみもの)である「斗栱(ときょう)」で構成されている。
斗栱とは、日本の伝統的な寺社建築において、屋根を支える軒と柱との接続部分にみられる構造体。学生時代から京都で設計活動を続けている建築家の河井敏明氏が「斗栱」を用いてデザインしたが、作品名としてそのまま英訳すると「Tokyo Table」となり、意味が変わってしまうため、対外的には、京都発のデザインという意を込めて「Kyoto」と逆さの音(おん)でルビをふっているとのこと。
施主夫妻は椅子が大好きで、インテリアショップを巡り、気に入った椅子があればコツコツと買い集めてきた。ダイニングに置く椅子にもこだわり、ハンス・J・ウェグナーの名作椅子「CH30」と「CH-23」を配した。このテーブルなら、腰掛ける際の出し入れもスムーズ。かつ、椅子の脚で床を傷めないよう、フローリングには耐久性に優れたナラの無垢材を採用。2脚ある「CH30」の座面は細かい格子柄のチャコールグレーで、ダイニング空間の色調にあわせて張り直した。都内のインテリアショップで出逢ったという「CH-23」は、造作のダイニングテーブルに合わせて脚の長さをカットしている。
施主夫妻は椅子が大好きで、インテリアショップを巡り、気に入った椅子があればコツコツと買い集めてきた。ダイニングに置く椅子にもこだわり、ハンス・J・ウェグナーの名作椅子「CH30」と「CH-23」を配した。このテーブルなら、腰掛ける際の出し入れもスムーズ。かつ、椅子の脚で床を傷めないよう、フローリングには耐久性に優れたナラの無垢材を採用。2脚ある「CH30」の座面は細かい格子柄のチャコールグレーで、ダイニング空間の色調にあわせて張り直した。都内のインテリアショップで出逢ったという「CH-23」は、造作のダイニングテーブルに合わせて脚の長さをカットしている。
《北広島町の家》
設計:伊藤瞬建築設計事務所
およそ築40年の母家を改修する際、老朽化していた離れもあわせて解体、増築した。全体的な動線も見直し、古くなっていたキッチンは母家から増築部分の離れに移し、広いダイニングと和室を新設している。
母家の外壁に倣い、漆喰や板張りで内外の仕様は整えたが、モダンな空間表現も心掛けた。大きなダイニングテーブルの上に、北欧生まれのペンダント照明を据えたのもその仕掛けのひとつだ。
設計:伊藤瞬建築設計事務所
およそ築40年の母家を改修する際、老朽化していた離れもあわせて解体、増築した。全体的な動線も見直し、古くなっていたキッチンは母家から増築部分の離れに移し、広いダイニングと和室を新設している。
母家の外壁に倣い、漆喰や板張りで内外の仕様は整えたが、モダンな空間表現も心掛けた。大きなダイニングテーブルの上に、北欧生まれのペンダント照明を据えたのもその仕掛けのひとつだ。
ルイス ポールセンの「LCシャッターズ」は、ホワイトバージョンでもかなりデコラティブ。直径も約44cmとボリュームもある。最大の特長は、北欧を代表する照明メーカーが生み出したグレアフリーの光(光源が直接目に入ってこないよう計算された光)。設計者である建築家の伊藤瞬氏は、アルミ金属製のシェードから生み出される光と陰影の造形に日本的な美しさを感じ取り、和室と連続したダイニング空間の中心に、この「LCシャッターズ」をシンボリックに据えた。施主が趣味で制作する刺繍画の額装とのバランスもよく、施主も大いに気に入っている。
日本人には海外の異文化をやすやすと受け容れ、我がものとする才があるという。そこには、今回の紹介事例にもみられたように、小さくともチャレンジングの精神と、調和の心が同居する。このバランスが、つくり手が最も苦慮するところであり、設計やデザインの本質と思われる。
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