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自分らしさでつくり出す、心地良いインテリアとは?
センス抜群のご自宅が評判のヘザー・ブラッキンさん。海外経験も豊富なインテリアデコレーターならではの、素敵なお部屋づくりのヒントを教えてもらいましょう。
ブラッキン・ヘザー
2022年12月22日
Houzz contributor.
Home Life Style インテリア、収納空間デザイン。
「贅沢な時間を過ごせる、あなたらしい心地よい住まいづくり」をモットーに、一人ひとりの個性や「好き」を引き出しながらのインテリアのコーディネーション、
より快適な暮らしのためのライフスタイルに合わせた収納計画のご提案をいたします。
著書「ふつうの住まいでかなえる外国スタイルの部屋づくり(文藝春秋)
Interior decoration and storage space planning in Tokyo, Japan. English/Japanese bilingual, with interior design and decoration experience in Europe and Japan.
Houzz contributor.
Home Life Style インテリア、収納空間デザイン。
「贅沢な時間を過ごせる、あなたらしい心地よい住まいづくり」をモットーに、一人ひとりの個性や「好き」を引き出しながらのインテリアのコーディネーション、
より快適な暮らしのためのライフスタイルに合わせた収納計画のご提案をいたします。
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世の中のインテリアショップやショールーム、さらにSNSなどを見ていると、住まいに関する夢がどんどん膨らんでいきます。でも、あれもこれも取り入れてしまうと、段々収拾がつかずにチグハグな印象になってしまいがちです。
お店やネットで見たものが好きでも、必ずしもそれが自分らしさを表すものとは限りません。私自身、心ときめくような素敵なインテリアや家具をたくさん見てきました。使ってみたい家具、塗ってみたい色は数えられないくらい。
ただ、本当にそれが自分に合うかはまた別問題です。この家具を今の我が家に入れたらどうなるか。この色を壁に塗ったら果たして心地良い暮らしにつながるかと考えます。統一感のある、心地良いインテリアづくりには「素敵だけれどちょっと違うよね」といった決断も大切なことです。
お店やネットで見たものが好きでも、必ずしもそれが自分らしさを表すものとは限りません。私自身、心ときめくような素敵なインテリアや家具をたくさん見てきました。使ってみたい家具、塗ってみたい色は数えられないくらい。
ただ、本当にそれが自分に合うかはまた別問題です。この家具を今の我が家に入れたらどうなるか。この色を壁に塗ったら果たして心地良い暮らしにつながるかと考えます。統一感のある、心地良いインテリアづくりには「素敵だけれどちょっと違うよね」といった決断も大切なことです。
失敗から学ぶ「自分らしさ」と本当の「好き」
私自身も、その時の感情で動き、後から「好きだけれどちょっと違う」と思った経験はあります。とくに若い頃には、まだ自分の「本当の好き」を見つける以前は、冒険して失敗をしたり、後悔したことも。
その反面、失敗や後悔が自分の「本当の好き」に気づくきっかけにもなりました。まだ若く、インテリアにもそれほどお金を掛けることもできない頃だったので、高額な失敗はなかったことが幸いです。
私自身も、その時の感情で動き、後から「好きだけれどちょっと違う」と思った経験はあります。とくに若い頃には、まだ自分の「本当の好き」を見つける以前は、冒険して失敗をしたり、後悔したことも。
その反面、失敗や後悔が自分の「本当の好き」に気づくきっかけにもなりました。まだ若く、インテリアにもそれほどお金を掛けることもできない頃だったので、高額な失敗はなかったことが幸いです。
20代前半にベルギーのアントワープに住んでいた頃、窓のないキッチンを鮮やかにしようと思い、ミントに近いライトトグリーンのペンキで壁を塗りました。さらに、当時憧れていたロイドルームにやや似ている、淡いグリーンのラタンの椅子をダイニングに置いていました。とても本物は買えない、まだ社会人になったばかりの頃でしたが、自分の給料で買った初めての家具です。その時の判断は今でも大正解だったと思います。その後も何回か引っ越しを繰り返しながら使い続けたお気に入りのチェアとなり、使えば使うほど味わい深くなっていったのです。
日本へ帰国する際どうしても家具を厳選する必要があり、友人に譲ってしまったのは、今になって少し後悔しています。本物のロイドルームの椅子だったら無理をしてでも、コンテナに詰め込んでいたでしょう。今の住まいに置いても違和感なく溶け込んだと思うと、あの椅子が自分流スタイルの発見への第一歩であったのでしょう。良い選択をしたと、昔の自分を心の中で褒めているぐらいです。
日本へ帰国する際どうしても家具を厳選する必要があり、友人に譲ってしまったのは、今になって少し後悔しています。本物のロイドルームの椅子だったら無理をしてでも、コンテナに詰め込んでいたでしょう。今の住まいに置いても違和感なく溶け込んだと思うと、あの椅子が自分流スタイルの発見への第一歩であったのでしょう。良い選択をしたと、昔の自分を心の中で褒めているぐらいです。
壁に話は戻りますが、2脚の椅子の色が部屋に馴染んでいたため、私はこの色が好きなのだと思い込んで、キッチンを似たようなライトグリーンに塗りました。
それが、塗り終わった翌日、キッチンに入った瞬間に大後悔。ものすごい違和感を感じたのです。あれだけ気に入っていた椅子に似ているライトグリーンが、壁の上では全く違うものに。好きなのはライトグリーンではなく、あのラタンの椅子そのものであったことに気づきました。たまたまそれが淡いグリーンであり、明るいダイニングの空間にとても似合っていただけのことだったのです。
それが、塗り終わった翌日、キッチンに入った瞬間に大後悔。ものすごい違和感を感じたのです。あれだけ気に入っていた椅子に似ているライトグリーンが、壁の上では全く違うものに。好きなのはライトグリーンではなく、あのラタンの椅子そのものであったことに気づきました。たまたまそれが淡いグリーンであり、明るいダイニングの空間にとても似合っていただけのことだったのです。
幸いなことに小さなキッチンだったので、その後、優しいオフホワイトに塗り直し、かなり気に入った空間に蘇りました。
その後も、さまざまな経験を経ながら、少しずつ自分の「好き」や「自分らしさ」を整えてきました。でも、ほかにも失敗はあっても、これだけあの時のことがはっきりと記憶に残っているというのは、それだけ自分にとって衝撃的だったからでしょう。
ただ、自分らしさを知るのは失敗からばかりとは限りません。たくさんのものを見たり、良い経験を通しながらわかってくることでもあります。
そして何よりも、厳選することが大切です。どんなに好きでも、自分に合わなければ買わない。ファッションでも同じで、自分に似合わない服は買いませんよね。万が一衝動買いをしてしまっても、全く着ていないと気づくはずです。
大きく異なるのが、ファッションはブティックで試着して、鏡の前で確認ができますが、インテリアはできないということです。
そして何よりも、厳選することが大切です。どんなに好きでも、自分に合わなければ買わない。ファッションでも同じで、自分に似合わない服は買いませんよね。万が一衝動買いをしてしまっても、全く着ていないと気づくはずです。
大きく異なるのが、ファッションはブティックで試着して、鏡の前で確認ができますが、インテリアはできないということです。
ネットでお気に入りのイメージをコレクション!
ネットが普及している今は、好きな画像を集めたり、それを整理しながら自分らしいインテリアづくりへとつなげていける、より便利に部屋づくりできる時代になりました。
ネットが普及している今は、好きな画像を集めたり、それを整理しながら自分らしいインテリアづくりへとつなげていける、より便利に部屋づくりできる時代になりました。
私自身、しょっちゅうさまざまなプラットフォームから、アイディアやインスピレーションを受けています。部屋そのものを真似するというよりも、たった1点の家具の使い方や色の合わせ方など、あらゆる事例からヒントを得て、自分の住まいでどのように取り入れられるかを考えるのが楽しみなのです。
そのままそっくりではなく、そのアイディアから自分らしさを生み出すことが大切です。きっと私が見た素敵なインテリアの持ち主も、どこかで何かを見て同じようにインスピレーションを受け、自分のものにしたのでしょう。その繰り返しでどんどんオリジナリティー溢れたインテリアが広がっていく、面白い世の中になりました。
そのままそっくりではなく、そのアイディアから自分らしさを生み出すことが大切です。きっと私が見た素敵なインテリアの持ち主も、どこかで何かを見て同じようにインスピレーションを受け、自分のものにしたのでしょう。その繰り返しでどんどんオリジナリティー溢れたインテリアが広がっていく、面白い世の中になりました。
今回この記事に掲載している写真も、ここ数年間、個人的にHouzzで集めてきた写真です。ただ好きだから集めたものもありますが、理想な暮らしやシーンを反映するイメージもあれば、「いつかこのアイディアを工夫しながら応用してみたい」というものや、実際にリフォームのためのヒントとなったものもあります。
Houzzの使い方:アイデアブックにお気に入りの写真を保存してみましょう
Houzzの使い方:アイデアブックにお気に入りの写真を保存してみましょう
仕事でもクライアント様がたくさんのイメージを集めて、共有してくださる機会が増えました。統一感があり、目的がはっきりしていることもあれば、自由にただ「好き」を集められる方も。自由に集めれば集まるほど収拾がつかなくなると思われがちですが、そこからヒアリングや一緒にイメージの整理をしながら、計画がまとまっていくプロセスも楽しいものです。
自分らしい空間や本当の「好き」を理解することで、最初はプロの助けを借りても、その後のちょっとした模様替えや買い足しもしやすくなります。そして自分の手によって住まいがどんどん良い方向へと育っていくことでしょう。
自分らしい空間や本当の「好き」を理解することで、最初はプロの助けを借りても、その後のちょっとした模様替えや買い足しもしやすくなります。そして自分の手によって住まいがどんどん良い方向へと育っていくことでしょう。
住みながらしかわからないこともある
先日、SNSでこんな感動的な投稿を読みました。ある女性がフランスの田舎で200年以上建つ古い家を購入し、引っ越した時の言葉です。
「すぐには手をつけません。まずは今の状態で住んでみて、色々なことを発見したい。朝、太陽の光を浴びながらコーヒーが飲めるぴったりな場所を見つけたい。家のハートビート(拍動)を感じたい。本当にその家と私自身がお互いをよく理解し合ってから、この先、この家の将来のことを決めていきたい」
先日、SNSでこんな感動的な投稿を読みました。ある女性がフランスの田舎で200年以上建つ古い家を購入し、引っ越した時の言葉です。
「すぐには手をつけません。まずは今の状態で住んでみて、色々なことを発見したい。朝、太陽の光を浴びながらコーヒーが飲めるぴったりな場所を見つけたい。家のハートビート(拍動)を感じたい。本当にその家と私自身がお互いをよく理解し合ってから、この先、この家の将来のことを決めていきたい」
住まいとは人が住むことで生きてくるものであるものだと、彼女はとても素敵に表現していました。その住まいが語ってくることに耳を傾けることも、大切であると。
古い家であっても、新築であっても、初めて住む家には発見がたくさんあるでしょう。実際に、22年前に新築の建売で購入した我が家も、最初に引っ越してきた時にはお互いに「初めまして」のような状況で、住みながら良いことも悪いことも知っていきました。
古い家であっても、新築であっても、初めて住む家には発見がたくさんあるでしょう。実際に、22年前に新築の建売で購入した我が家も、最初に引っ越してきた時にはお互いに「初めまして」のような状況で、住みながら良いことも悪いことも知っていきました。
使い勝手のような実用的な面はもちろん、一年を通しての光の入り方や窓の外の景色の変わり方など、住みながらしかわからないことはたくさんあります。無表情な新築に少しずつ息を吹き込んでいきながら、今の心地よさに辿り着きました。
22年もの長い年月ですと、自分自身も変わります。その時の気持ちや好み、ライフスタイルで家は常に変化していきました。そして、これからも暮らしと共に少しずつ変わっていくでしょう。さまざまな発見や経験を活かしながら住まいを育ていくことこそが、本物の心地よい暮らしだと思っています。
自分らしさ、本当の「好き」を理解したうえで、しっかりとした軸を持つことはもちろん、自分に対して素直でいながら、これからも自宅と仲良く、心地よく過ごしていきたいと思っています。
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自分らしさ、本当の「好き」を理解したうえで、しっかりとした軸を持つことはもちろん、自分に対して素直でいながら、これからも自宅と仲良く、心地よく過ごしていきたいと思っています。
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