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子ども時代の思い出を大切にする住まい
現代的な素材を取り込みながら、歴史的な建物の伝統を継承した、リノベーションの事例をご紹介します。

Rafael F. Bermejo
2023年3月10日
Marta Moreno(マルタ・モレノ)さんは、サンタ・クルス・デ・テネリフェにある、文化財に指定されたこの家で幼少期を過ごし、現在も自分の家族と暮らしています。建物自体の状態は良かったものの、90年代からそのままになっていたこの住まいをリノベーションすることにしました。
Photos by Maria Laura Benavente / ©Houzz Spain 2022
どんなHouzz?
住まい手: 歯医者と経済学者の夫妻+3人の子供
所在地: サンタ・クルス・デ・テネリフェ、スペイン
延床面積:150平方メール
設計: AS Architects
どんなHouzz?
住まい手: 歯医者と経済学者の夫妻+3人の子供
所在地: サンタ・クルス・デ・テネリフェ、スペイン
延床面積:150平方メール
設計: AS Architects
庭に面した開放的な間取りを希望していたモレノさんは、施工業者の紹介のもと、建築家のAnnika Schollin(アニカ・ショリン)さん(写真左)にリノベーションを依頼。「文化財に指定されている建物ですから、好き勝手にはできません。建物を管理するサンタクルス市役所との間に問題が起きないよう、細心の注意を払いながらプロジェクトを進めました」
「私はこの家で小さい頃から育ったの。だから、セメントタイルの床、階段、モールディングなんかの細かな装飾、正面ファサードの建具はそのままに残しておきたかったのね。あと、1階はアイランドキッチンにして、広々と開放し的にしようと思ってたわ。モダンで、人が集う空間にしたかったの」とモレノさんは話します。
依頼主と建築家の間には完璧な信頼がありました。ショリンさんは、「お互いに良い関係を築くことができ、プロジェクトもやりがいを感じました。建材については、必要なものとそうでないものについてはとことん話し合いました。しかも、オーナーが、ひとつひとつの家具を自ら選ぶなど、それぞれの工程に積極的に関わってくれました」と振り返ります。
彼女にとって最も難しかったのは、プールの施工でした。というのも、向かい側の家の中庭は、この家のより4メートル低い位置にあるため、急斜面の端にプールを作るには、緻密な構造計算が必要でした。
数字が正しいことを確かめながら工事を進めたものの、騒音や粉塵など近隣からの苦情にも対応しなければなりませんでした。
広々としたキッチンでひときわ目を引くセメントや鉄といった素材のミックスが、品のあるインダストリアルスタイルを演出しています。
この家で復元した場所とその理由を、建築家に尋ねました。「リビングルームと階段です。キッチンと階段とを仕切る耐力壁を撤去したいというオーナーに対し、キッチンは独立すべきだと説得しました」
「階段とキッチンを一体化することは非現実でした」とショリンさんは言います。
いずれにしても、広く空間を使うためには、「耐力壁を取り壊し、金属製の補強材を埋め込まなければなりませんでしたが、既存のモールディングを残し、オーナーの希望通り、LEDストリップ照明を設置することもできました。失敗すれば、モールディングが破損する可能性もありましたが、結果は素晴らしい仕上がりになりました」
いずれにしても、広く空間を使うためには、「耐力壁を取り壊し、金属製の補強材を埋め込まなければなりませんでしたが、既存のモールディングを残し、オーナーの希望通り、LEDストリップ照明を設置することもできました。失敗すれば、モールディングが破損する可能性もありましたが、結果は素晴らしい仕上がりになりました」
キッチンへのこだわりは、建築家に依頼する前からすでに決まっていたというモレノさん。選んだのはCesar(シーザー)のもので、彼女が特に気に入っていたという三つのモデルのキッチンを組み合わせました。
サンタクルスのBolero(ボレロ)というショップで購入した黒いアイアンの扉は、鉄骨の梁とぴったりです。
サンタクルスのBolero(ボレロ)というショップで購入した黒いアイアンの扉は、鉄骨の梁とぴったりです。
2階へ続く階段は、ほとんどそのままの状態で残っています。
「やったことと言えば、階段の石を磨き、手すりを塗り直し、巾木をやすりで磨くくらいです」とショリンさん。
「やったことと言えば、階段の石を磨き、手すりを塗り直し、巾木をやすりで磨くくらいです」とショリンさん。
「色を組み合わせたり、エレガントな丸みを帯びた形や、変わったもの、ほかとは違ったものが好き」と語るモレノさん。
「私は本当にインテリアが好きで、気に入ったものがあると、すぐ家の中に取り入れたくなるのです」
「私は本当にインテリアが好きで、気に入ったものがあると、すぐ家の中に取り入れたくなるのです」
主寝室のバスルームは、大理石のシャワー壁面クラッディング、コンクリートの床、黒いシャワー金具とトリムの上品な組み合わせが印象的です。
プールの設置以外にも、元々あったセメントタイルの床の周りにコンクリートを敷き詰める作業は、このプロジェクトで苦労した点だそうです。
子ども部屋の写真からその出来栄えがわかります。
子ども部屋の写真からその出来栄えがわかります。
ダイニングテーブルは、オーナーの趣味だという折衷的なスタイルが反映されています。
彼女自ら鍛冶屋に出向き、図面を描いてもらい、大理石職人に3種類のパーツをカット、組み立ててもらったほどのこだわりようです。
「椅子は、最初に購入したものが1年待っても届かなかったため、ネット通販で9種類選んだものです」
彼女自ら鍛冶屋に出向き、図面を描いてもらい、大理石職人に3種類のパーツをカット、組み立ててもらったほどのこだわりようです。
「椅子は、最初に購入したものが1年待っても届かなかったため、ネット通販で9種類選んだものです」
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