明るいイエローと光に満ちたパリの家
このアパートは使用不能に近い状態でしたが、建築家の手によって、安全になったのはもちろんのこと、居心地の良い隠れ家へと変貌しました。
人生で初めての住宅を購入するのは、不安でいっぱいの大冒険になりかねません。そこでこの28歳の男性は、人脈をたどって、内覧に同行し物件の将来性についてアドバイスしてくれる建築家に連絡を取りました。彼は、最終的にサント・マルト通りに面した中庭の奥にあるメゾネットの1階のアパートを選びました。サント・マルト通りは、ボヘミアンな魅力を保っているパリ10区にある芸術的な地区に位置しています。この男性は、大規模な改装を行えば多くの可能性が出てくると助言した建築家にプロジェクトを委託しました。
ビフォー:「1階はかなり酷い状態にあり、じめじめしていました。湿気の影響を壁の足元に見てとることができます。それに悪臭も漂っていました。まともな状態のものは1つもありませんでした」と建築家は言います。
建物の狭い床下空間からの湿気に起因する問題がほとんどだったため、バスルームの床モルタルと壁に対策を施す必要がありました。
建物の狭い床下空間からの湿気に起因する問題がほとんどだったため、バスルームの床モルタルと壁に対策を施す必要がありました。
「物件は使用不可能に近い状態で、そのうえ深刻な遮音性の問題も抱えていて、オーナーはそれも直したいと思っていました。天井の板を撤去してみて、その深刻な状態に驚きました。天井下地はひどい有様で、いくつもの穴があり、そこから隣接する住宅の洗濯機などが頭上に見えていました。天井は崩壊寸前だったのです」と建築家は言います。
アフター:この小さなエリアの改修だけでも、相当な量の下地作業が必要でした。下地板を塞いだあと、「木毛繊維、硬質合成素材、BA13遮音石膏ボード(テーパー目地付き12.5ミリ厚の石膏ボード規格)からなる10センチ厚の防音材料」で遮音処理が施されました。
ビフォー:サヴァジョルさんはまた、水分を多く含み不陸が生じた床の既存のモルタルを撤去し、新しいモルタルを敷設しました。「新しいモルタルには、強力な撥水剤を塗布し、それを平らに均して、断熱材を設置し、その上に新しいオーク材のフローリングを敷きました」と彼は言います。更に、サヴァジョルさんは、衛生設備、電気設備、木工造作、およびラジエーターも交換しました。
アフター:この改修された安全なアパートの玄関の左側に位置する一番大きい窓の近くには、拡張されたキッチンコーナーが設けられています。玄関の脇の特注の戸棚には、ガスメーターと分電盤が隠されています。「私たちは、このスペースを活用して鍵と傘を収納できるドア付き収納スペースを作りました。この上部には本棚もあります。」と建築家は言います。
オーナーは、50年代か60年代ごろのヴィンテージのメラミン化粧板のテーブルと椅子を見つけました。
「冷蔵庫が、このアパートの色づかいを決定づけています。私たちは、オーナーがヴィンテージ風の自立式の冷凍冷蔵庫を切望していたので、鮮やかな色の中から選べるSchneider(シュナイダー)製の新型の冷凍冷蔵庫を提案しました。中でも私たちは、空間を明るくするイエローを選択して、その色味をリビングエリアのメインの色にもしたのです」とサヴァジョルさんは言います。
建築家は、十分な大きさの作業面と収納スペースを確保するためにパラレル型のキッチンのレイアウトを提案しました。
「奥行き60センチのキャビネットには、シンクとスパイスラックに加えて、コンロが備わっていて、天板下には奥行き45センチの食洗機が収まっています。反対側の奥行き40センチのバーカウンターには、一体型の電子レンジと収納用のスペースが収まっています」と彼は言います。
「奥行き60センチのキャビネットには、シンクとスパイスラックに加えて、コンロが備わっていて、天板下には奥行き45センチの食洗機が収まっています。反対側の奥行き40センチのバーカウンターには、一体型の電子レンジと収納用のスペースが収まっています」と彼は言います。
キッチンのベースキャビネットはIKEA製で、天板にはメラミン仕上げのカウンタートップが採用されました。突板仕上げのドアは、大工のデザインによるものです。
上部の亜鉛メッキが施されたパイプは、新たに設置された換気扇にマッチしています。「このパイプは既存のもので、あまり機能していませんでした。しかし、私は、この古いワークショップ風の建物に、くだけたインダストリアルなタッチを加えるために残置すべきだと進言しました」と建築家は言います。
上部の亜鉛メッキが施されたパイプは、新たに設置された換気扇にマッチしています。「このパイプは既存のもので、あまり機能していませんでした。しかし、私は、この古いワークショップ風の建物に、くだけたインダストリアルなタッチを加えるために残置すべきだと進言しました」と建築家は言います。
ビフォー:この小さなスペースには多くの間仕切がありましたが、若いオーナーはそれをさらに分割して、ベッドルーム、リビングルーム、そして大きなバスルームを作ることを計画していました。これに対し建築家は、このスペースを可能な限り開放的に使うよう説得しましたが、それでも、エリアは用途ごとにしっかり分けるようにデザインしました。
アフター:オーナーは、洗濯機、ウォークインシャワー、収納庫を備えた広いバスルームを希望しましたが、バスルームにはその全てを収めるスペースは残っていませんでした。そのため、建築家は間取りを変更して、これら全てを収める方法を見つけ出しました。
多くの棚を備えた大型の多機能収納システムこそが、スペース効率の良い最適なソリューションでした。「これこそが、このプロジェクトの中で最も頭を使って工夫を凝らしたところだと思います」とサヴァジョルさんは言います。
多くの棚を備えた大型の多機能収納システムこそが、スペース効率の良い最適なソリューションでした。「これこそが、このプロジェクトの中で最も頭を使って工夫を凝らしたところだと思います」とサヴァジョルさんは言います。
この収納システムには、アパートの様々なゾーンのための重要な機能と収納スペースが組み込まれています。キッチン側の下段には洗濯機用のスペース(木製のドアの後ろ)があり、その上のニッチにはミキサー、トースター、コーヒーメーカー用の電源が備えられています。これにより、キッチンのカウンターをスッキリした状態に保つことができます。
リビングに面した側には、オーナーの本が収納されています。そして、バスルーム側にもいくつかの驚きの機能が備わっています。
リビングに面した側には、オーナーの本が収納されています。そして、バスルーム側にもいくつかの驚きの機能が備わっています。
最上部には透明なシリコン目地を使用したフレームレスのガラス窓があり、これによりバスルームに自然光が入るようになっています。「日中、歯を磨くために電気を付ける必要はありません。ただ、私は、これが逆向きにも機能するようにするようにしました。夕方には、バスルームの照明がリビングエリア用の明りとして機能します」と建築家は説明します。
バスルームのドアを閉めて中の電気を消した状態では、上部のガラスは見えにくくなります。
この効果により、バスルームの床面積を最小限に抑えることができました。
この効果により、バスルームの床面積を最小限に抑えることができました。
このよく考えられたコンパクトなバスルームに欠けているものはありません。トイレは、2階のアパートに昇るための階段の下の、天井が一番低いスペースに設置されています。また、シャワーは、段差やカーテンのない一体型のウォークインシャワーになっています。「排水口に水が流れるように床タイルに勾配をつけています」と建築家は説明します。
天井の斜めにカットされたコーナーは問題にはなりませんでした。「上げ床と下がり天井があっても、2.4メートルの高さが確保されています」と彼は言います。
天井の斜めにカットされたコーナーは問題にはなりませんでした。「上げ床と下がり天井があっても、2.4メートルの高さが確保されています」と彼は言います。
洗面台を置ける場所は、1ヶ所(入口のドアの左側)しかありませんでした。「洗面台は、多機能収納システムの洗濯機の上のスペースにちょうど収まります」とサヴァジョルさんは言います。彼は、このテトリスのようなレイアウトに薬棚を収めることもできました。
洗面台は2つの壁の間に挟まれていて、その下には奥行き10センチの棚があります。オーナーは、キッチンのイエローに合うようにグリーンのゼリージュタイルを選びました。
アフター:このエリア全体がPlaco社製の防水石膏ボードと断熱層で覆われました。壁面は、ベッドルームに明るく暖かいタッチを添えるイエローで塗装されました。
サヴァジョルさんは、既存の枠付きの開口部を再設計するために、構造部材ではなかった補強梁を移設しました。「ベッド周りの収まりを完璧にするために間仕切り壁を調整しました」と建築家は言います。
これらの3Dイメージには、サヴァジョルさんが当初この部屋のためにデザインした造作家具が描かれています。コスト管理のために、高さ90センチの収納ユニットにベッドを載せる案は断念しなければなりませんでした。
「150ユーロのイケアの引出し付きベッドを前提に設計することで5,000ユーロを節約することができました。つまり、パーティションをベッドに合わせることで、あたかもオーダーメイドのように見せることができたのです」とサヴァジョルさんは言います。
「150ユーロのイケアの引出し付きベッドを前提に設計することで5,000ユーロを節約することができました。つまり、パーティションをベッドに合わせることで、あたかもオーダーメイドのように見せることができたのです」とサヴァジョルさんは言います。
ベッドの隣に特注のワードローブが取り付けられるはずでしたが、これはカーテンで仕切られた型破りなクローゼットに置き換えられました。このフィッティングルームのようなクローゼットには、服を掛けたりスーツケースを隠しておいたりすることができます。
ベッド下の引出しには洋服を畳んで収納することができます。
「オーナーのすべての要望を予算内に収めることや、オーナーに妥協を促すことは大きなチャレンジでしたが、結果的には非常にうまくいきました。そのうえオーナーは、私が彼の同僚のアパートの再設計を担当することを勧めてくれました」とサヴァジョルさんは言います。
サヴァジョルさんは、装飾的な特徴を維持しながらも建築をより手の届くものにするべきだと考えています。そして、それこそが、彼がこのプロジェクトで真剣に取り組んだ課題でした。
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サヴァジョルさんは、装飾的な特徴を維持しながらも建築をより手の届くものにするべきだと考えています。そして、それこそが、彼がこのプロジェクトで真剣に取り組んだ課題でした。
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どんなHouzz?
住まい手: 28歳の男性
所在地:パリ10区
面積: 27平方メートル
設計: f PS Studio
施工:Hellys
予算: €45,000