小さなコテージに光と広さを与える、すっきりとしたデザイン
1階に2部屋、2階に2部屋しかない、ビクトリア時代の小さなテラスハウス。無駄をそぎ落としたデザイン手法でその欠点を補うことで、落ち着いた憩いの場へと変身させました。
建築家Nilesh Patel(ニレーシュ・パテル)さんとパートナーが、このハートフォードシャーの小さなコテージこそ自分たちの次の住まいになるだろうと確信したのは、家そのものに惹かれただけでなく、地域の魅力のせいもありました。「まさにに、チョーリーウッドに恋に落ちたのです」と彼は言います。「ここはまるで100年前のハムステッドを思わせます。だいたいいつも道路の真ん中を馬に乗った人が通っているんです」
もちろん、家自体も大きな魅力でした。「建築家として、ポテンシャルのある物件を探していたのです」と彼は言います。「ごく普通の物件と平均的な予算でどこまでできるか示したかったのです」
もちろん、家自体も大きな魅力でした。「建築家として、ポテンシャルのある物件を探していたのです」と彼は言います。「ごく普通の物件と平均的な予算でどこまでできるか示したかったのです」
前のオーナーはすでに、1階を裏手に拡張し、屋根裏部屋を改装する建築許可を取得していましたが、ニレーシュさんにはそのプランはあまり持続的でないように感じられました。
そこで彼はガラス面を減らし、増築部の屋根をサッシではなく緑化する計画にして、レンガも可能な限り再利用する方針としました。また寒かった家の断熱も行いました。「家の幅が狭いので、内断熱ではなく外断熱としました」と彼は語ります。
そこで彼はガラス面を減らし、増築部の屋根をサッシではなく緑化する計画にして、レンガも可能な限り再利用する方針としました。また寒かった家の断熱も行いました。「家の幅が狭いので、内断熱ではなく外断熱としました」と彼は語ります。
狭苦しいキッチンはもともと庭に面する家の裏手に位置していましたが、ニレーシュさんは配置を完全にひっくり返し、キッチンを家の表側に移動させました。
その結果キッチンの場所はこの窓辺になりました。玄関扉が直接キッチンに面することがないよう、ニレーシュさんは長さ2メートルの廊下をつくりました。「オープンプランの空間とするのではなく、引き戸で仕切っています」と彼は話します。この部屋の先の、家の裏手はすべてオープンプランになっています。
キッチンを表側に移動したことで、細長いキッチンではなく正方形のキッチンとすることができ、複数人が同時に快適に作業可能です。
ニレーシュさんが吊戸に使ったのはバーチ材合板、下台はプレーンなホワイトです。ドア面からハンドルをなくすことですっきりとした見た目とし、コンロ上部の換気扇も隠しました。
「とても小さな家なのでデザインをシンプルに保つよう心掛けました。ワークトップを邪魔するものが何もないよう、コンセントやスイッチが見えないように気を付けました」と彼は言います。「みんな私たちが料理しないんじゃないかとか、デリバリーを頼むしかないんじゃないかと思うようですが、実はたくさん料理します。散らからないキッチンがすごく好きなだけなんです」
タンブル仕上げの敷石によってデザインが完成されるとともに、ビクトリア朝にさかのぼるコテージの歴史にも敬意を表しています。
ニレーシュさんが吊戸に使ったのはバーチ材合板、下台はプレーンなホワイトです。ドア面からハンドルをなくすことですっきりとした見た目とし、コンロ上部の換気扇も隠しました。
「とても小さな家なのでデザインをシンプルに保つよう心掛けました。ワークトップを邪魔するものが何もないよう、コンセントやスイッチが見えないように気を付けました」と彼は言います。「みんな私たちが料理しないんじゃないかとか、デリバリーを頼むしかないんじゃないかと思うようですが、実はたくさん料理します。散らからないキッチンがすごく好きなだけなんです」
タンブル仕上げの敷石によってデザインが完成されるとともに、ビクトリア朝にさかのぼるコテージの歴史にも敬意を表しています。
元の物件は収納がとても少なかったので、ニレーシュさんはこの写真にも写っているように、できる限り目立たないように気を付けながら、可能な箇所にはすべて戸棚を取り入れることにしました。
照明も目立たないようにしています。ダイニングエリアでは、ウォールナットのテーブルの上に、天井のレールから小さなスポットライトが吊るされていて、テーブルやチェアに光だまりを落としながら、温かい親密な灯りを作り出しています。写真にはありませんが2つのフロアランプも組み合わされており、どこにでも移動できるうえ、「消灯時にも趣あるオブジェになる」ということです。
リビングエリアは2段下げることで壁を用いずに空間を分節しています。エリア分けをより明確にするために、ニレーシュさんはアッシュ材のフローリングの方向を上段エリアと下段エリアで変えています。
照明も目立たないようにしています。ダイニングエリアでは、ウォールナットのテーブルの上に、天井のレールから小さなスポットライトが吊るされていて、テーブルやチェアに光だまりを落としながら、温かい親密な灯りを作り出しています。写真にはありませんが2つのフロアランプも組み合わされており、どこにでも移動できるうえ、「消灯時にも趣あるオブジェになる」ということです。
リビングエリアは2段下げることで壁を用いずに空間を分節しています。エリア分けをより明確にするために、ニレーシュさんはアッシュ材のフローリングの方向を上段エリアと下段エリアで変えています。
リビングエリアでは、キッチン用のウォールユニットによってさらなる収納が用意されています。収納の中央部分の扉は、開けるとテレビが現れます。
全体に色数を抑えた淡い色合いによって入ってくる光を最大限生かすほか、空間のレイアウトも、玄関ドアから庭まで視線が抜けるようになっています。
全体に色数を抑えた淡い色合いによって入ってくる光を最大限生かすほか、空間のレイアウトも、玄関ドアから庭まで視線が抜けるようになっています。
リビングルームの裏にある小さなアルコーブも、もうひとつの座ってくつろげる場所となっており、伝統的な木の家具が温かみをそえています。「新旧をミックスしたいと思ったのです」とニレーシュさんは言います。
カーテン:Clarke & Clarke.
カーテン:Clarke & Clarke.
階段を設計しなおし、規制ぎりぎりまで勾配をつけることで、ニレーシュさんは前のオーナーの飼い猫が寝るのに使っていた階段下に小さなお手洗いを設けることができました。
お手洗いのデザインについては、派手にやるのではなく、その対極にしました。「レンガも階段の裏面も露出しています。床下暖房のポンプやパイプも見えています」とニレーシュさんは語ります。「ここにはリビングエリアとはまったく違う美学があるのです。もっと実用的な美学です」
お手洗いのデザインについては、派手にやるのではなく、その対極にしました。「レンガも階段の裏面も露出しています。床下暖房のポンプやパイプも見えています」とニレーシュさんは語ります。「ここにはリビングエリアとはまったく違う美学があるのです。もっと実用的な美学です」
暗く、狭苦しくなりがちなエリアである階段室に光をあふれさせることで、コテージの軽やかな感じがここでも維持されています。
視覚的なごちゃつきを最小限に抑えるため、2階の主寝室では、ドアノブ、ベッドサイドテーブル、ベッド上の小さな照明器具が、すべてレンガ壁と同じRALカラーでスプレー塗装されています。「物件が非常に狭いので、造作や器具はすべて目立たないように配置したり、サイズを決めたりしています」とニレーシュさんは語ります。
小さなオフィスから1階増築部の緑化した屋根が見えます。ここは弁護士であるニレーシュさんのパートナーが家で仕事をするときの拠点になっています。
バスルームでも、同じ抑制された色使いが繰り返されています。ここでもキッチン用の戸棚を使うことで、2人暮らしで洗面台をすっきりさせておくのには十分な収納が確保されています。
洗面台の横にあるシャワーエリアは耐水石膏で仕上げ、シャワーウォールによって窓からの視線をさえぎっています。小部屋の全長にわたる棚もあります。「ものを置ける場所は本当にいくらあっても足りませんからね」とニレーシュさんは言います。
屋根裏部屋を改装した予備の寝室は、夫婦が客を迎えたときにゆったり使える空間です。「ここを訪れた誰もが、とても安らげる家だと言います」とニレーシュさんは語ります。
庭いじりが大好きだという夫婦は、緑と深紅の抑制された色使いの中に白い花がいくつか散りばめられた、現代的な庭を設計しました。連続性を意識して、家のそばのテラスエリア(最初の写真)には屋内と同じライムストーンの敷石を使っており、そこから折れ曲がった小径へと続いています。小径の先には座れる場所があって、ニレーシュさんは今、ここでも仕事ができるようにガーデンスタジオに改造することを考えています。
「庭は私のお気に入りです」とニレーシュさんは言います。「屋内は基本的に変化しませんが、庭は日々変化するのが面白いところです。それに牧歌的でもあります。ここに座って、道行く馬のひづめの音を聞いているのは魅力的です」
「庭は私のお気に入りです」とニレーシュさんは言います。「屋内は基本的に変化しませんが、庭は日々変化するのが面白いところです。それに牧歌的でもあります。ここに座って、道行く馬のひづめの音を聞いているのは魅力的です」
所在地:イギリス設計: The Architects Film Studio
コテージは暗く荒れ果てており、極端に狭い空間でした。「1階に2部屋、2階に2部屋しかないコテージで、内部は幅3.5メートルしかありませんでした。ロンドンの地下鉄トンネルより狭かったのです」とニレーシュさんは言います。
彼はレイアウト面で、少しでも空間を広げつつ今ある強みを最大化するには何ができるかという観点から、物件のあり方を再考しはじめました。