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変形地でもあきらめないで!設計次第で叶う理想の住まい
変形地ってどんな土地? 建てにくいって本当? 建築家が気になる疑問にお答えします。
安井俊夫
2023年6月28日
天工舎一級建築士事務所主宰。神奈川県小田原市に事務所を構え、住宅や店舗などの設計監理業務を行っています。書評やコラムなども執筆中。
変形地とは
そもそも「変形地」とは、具体的にどのような土地なのかをご説明しましょう。変形地は大まかに、「旗竿敷地」「狭小地」「多角形地」「傾斜地」の4つに分類することができます。
そもそも「変形地」とは、具体的にどのような土地なのかをご説明しましょう。変形地は大まかに、「旗竿敷地」「狭小地」「多角形地」「傾斜地」の4つに分類することができます。
○ 旗竿敷地―公道から奥まった場所に土地があり、その土地に入るために狭い通路を通る土地。上から見ると、文字通り旗竿のような形をしていることから「旗竿地」と呼ばれます。通路部分の幅が狭く、かつ細長いことが特徴で、敷地全体の面積は広くても、建物を建てようとする場所の面積が狭くなってしまうケースが多いので、建物計画の際には注意が必要です。
旗竿地でも快適に暮らせる住まいのつくり方
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■良い点
通路となる部分に車を縦列に停めることができる場合には、道路から建物までの引きが生まれ、奥行きのある家とすることも可能です。道路からの騒音や視線の干渉なども避けることのできる、隠れ家的な家を建てることも可能となるでしょう。
通路となる部分に車を縦列に停めることができる場合には、道路から建物までの引きが生まれ、奥行きのある家とすることも可能です。道路からの騒音や視線の干渉なども避けることのできる、隠れ家的な家を建てることも可能となるでしょう。
■悩ましい点
通路幅は一般的に約2.0m、広くても3.0m程。このとき前面道路の幅や通路脇に設けられた塀や植栽などの影響で、大型の工事車両や資材運搬車両が入れないこともあり、人力で作業を行うことや資材の運搬を行うこともあります。その結果、工事期間が長くなることや、建設コストが割高になるケースもあります。
また、まれに通路幅が建築基準法で必要とされる2.0mに満たない場合もあり、隣家から土地の一部を借りる形で基準法をクリアすることになりますが、後々隣家とのトラブルが生じてしまうと、新築や増改築ができなくなる可能性があります。土地の資産価値も大きく下がってしまうので、注意が必要です。
通路幅は一般的に約2.0m、広くても3.0m程。このとき前面道路の幅や通路脇に設けられた塀や植栽などの影響で、大型の工事車両や資材運搬車両が入れないこともあり、人力で作業を行うことや資材の運搬を行うこともあります。その結果、工事期間が長くなることや、建設コストが割高になるケースもあります。
また、まれに通路幅が建築基準法で必要とされる2.0mに満たない場合もあり、隣家から土地の一部を借りる形で基準法をクリアすることになりますが、後々隣家とのトラブルが生じてしまうと、新築や増改築ができなくなる可能性があります。土地の資産価値も大きく下がってしまうので、注意が必要です。
○狭小地―比較的狭い面積の土地を狭小地と呼びます。面積に対する明確な定義はありませんが、一般的に20坪(約66平方メートル)以下の土地を指して狭小地と呼ぶことが多いようです。
■良い点
面積が狭いため、金融機関からの融資条件の対象面積から外れてしまうケースもあり、購入希望者が少ないと考えられます。その結果、周辺の相場よりも割安になり、かつ敷地面積が狭いことも重なって、比較的安価で販売されていることが多いようです。
狭小地に建つ工夫に満ちた家11選
■良い点
面積が狭いため、金融機関からの融資条件の対象面積から外れてしまうケースもあり、購入希望者が少ないと考えられます。その結果、周辺の相場よりも割安になり、かつ敷地面積が狭いことも重なって、比較的安価で販売されていることが多いようです。
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■悩ましい点
土地が狭いため、用途地域などの規制によっては、希望する大きさの建物が建たない可能性もあります。また駐車スペースを複数台確保したいといった、建物以外のスペースを確保することは難しいでしょう。
土地が狭いため、用途地域などの規制によっては、希望する大きさの建物が建たない可能性もあります。また駐車スペースを複数台確保したいといった、建物以外のスペースを確保することは難しいでしょう。
○多角形地―一般的な土地が正方形あるいは長方形だとしたら、三角形や五角形、あるいはそれ以上の多角形の土地を指します。大規模な宅地開発や区画整理などで、うまく整理できない土地が生じ、結果的に多角形地として残ってしまうケースもあるようです。
三角形の土地に建つ、自然と暮らしと仕事を楽しむ家
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■良い点
建物以外の余白として残ってしまいがちな土地を、有効に活用できる建物計画が出来れば、外部との繋がりを多角的に取り入れることのできる、開放感に溢れた建物となります。それが小さな外部空間だったとしても、外部から視線の干渉を受けることなく、外とつながることができれば、小さな室内空間を広く感じさせられることも可能でしょう。
建物以外の余白として残ってしまいがちな土地を、有効に活用できる建物計画が出来れば、外部との繋がりを多角的に取り入れることのできる、開放感に溢れた建物となります。それが小さな外部空間だったとしても、外部から視線の干渉を受けることなく、外とつながることができれば、小さな室内空間を広く感じさせられることも可能でしょう。
■悩ましい点
土地が広ければ多角形地でも問題なく一般的な家を建てられますが、土地が狭い場合には、整形な建物を建てることにこだわると、建物計画自体が立ち行かなくなる可能性があります。また上手く建物を計画したとしても、平面的に凸凹の多い建物となってしまうと、外壁や基礎の面積が増えて、工事費が割高になる可能性もあります。
土地が広ければ多角形地でも問題なく一般的な家を建てられますが、土地が狭い場合には、整形な建物を建てることにこだわると、建物計画自体が立ち行かなくなる可能性があります。また上手く建物を計画したとしても、平面的に凸凹の多い建物となってしまうと、外壁や基礎の面積が増えて、工事費が割高になる可能性もあります。
○傾斜地―斜めに角度のある土地。敷地の上に道路がある場合もあれば、下にある場合もあります。傾斜地には、ロケーションが良く、見晴らしの良い土地が多いイメージがあります。市街地でも景勝地の場合でも同じです。
土地の魅力を引き出すデザインで快適に。横浜に建つ13の住まい
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■良い点
傾斜の具合にもよりますが、隣接する建物に視界や風を遮られることなく、見晴らしの良い建物が建てられるケースが多いです。
■悩ましい点
傾斜した土地が地震などで滑る可能性もあるため、土地の様子を入念に調査し把握する必要があります。もちろん、建物の基礎工事には費用が掛かるでしょう。ほかにも、建設費用全般に、平坦地に建てる際よりも割高となります。工事期間も平坦地に比べて、長くなる可能性が高いでしょう。
傾斜の具合にもよりますが、隣接する建物に視界や風を遮られることなく、見晴らしの良い建物が建てられるケースが多いです。
■悩ましい点
傾斜した土地が地震などで滑る可能性もあるため、土地の様子を入念に調査し把握する必要があります。もちろん、建物の基礎工事には費用が掛かるでしょう。ほかにも、建設費用全般に、平坦地に建てる際よりも割高となります。工事期間も平坦地に比べて、長くなる可能性が高いでしょう。
○変形地は相手を選ぶ
価格や環境だけで変形地を選んでしまうと、後悔することになると思います。変形地を購入するには、土地のマイナスポイントをマイナスと感じずに、プラスとして捉えられる発想力やイメージする力が必要ですし、建築家と一緒に「住むことに対する楽しみ方」を共有できる想像力が必要になります。
また、工事の依頼先は良質な規格型住宅を提供するハウスメーカーではなく、個性ある土地に対して魅力的な空間づくりを提案できる柔軟な建築家の思考と、その無理難題を楽しみながら施工する建設会社が必要です。それらのパートナーがしっかりとタッグを組んでこそ、変形地に建つ魅力的な住宅が実現できるのです。
価格や環境だけで変形地を選んでしまうと、後悔することになると思います。変形地を購入するには、土地のマイナスポイントをマイナスと感じずに、プラスとして捉えられる発想力やイメージする力が必要ですし、建築家と一緒に「住むことに対する楽しみ方」を共有できる想像力が必要になります。
また、工事の依頼先は良質な規格型住宅を提供するハウスメーカーではなく、個性ある土地に対して魅力的な空間づくりを提案できる柔軟な建築家の思考と、その無理難題を楽しみながら施工する建設会社が必要です。それらのパートナーがしっかりとタッグを組んでこそ、変形地に建つ魅力的な住宅が実現できるのです。
○建設費用は割高になる
どのような変形地の場合であっても、整形地での工事と比べれば、工事費用は割高になると考えた方が良いでしょう。
どのような変形地の場合であっても、整形地での工事と比べれば、工事費用は割高になると考えた方が良いでしょう。
例えば狭い敷地の場合には、工事車両を敷地内に停めておくことさえままならないかもしれません。その場合には近くの有料駐車場を利用する必要が生じ、その費用は見積もりに反映されます。また、大型クレーン車などが入れない場合にも、必要な作業を手で行う必要があり、その費用は割増経費となります。
さらに、それほどまでに苦労して建てた家でも、何らかの事情で売却しなくてはいけなくなった場合、売却価格は想像よりも低くなる可能性があります。変形地としての個性が、市場においては残念ながらマイナスポイントとして評価されてしまうからです。
さらに、それほどまでに苦労して建てた家でも、何らかの事情で売却しなくてはいけなくなった場合、売却価格は想像よりも低くなる可能性があります。変形地としての個性が、市場においては残念ながらマイナスポイントとして評価されてしまうからです。
○楽しい家になる可能性は大
個性のある変形地に、こだわりの家を建てるのですから、楽しい家にならないはずがありません。
建築家と一緒に創意工夫を凝らした家は、住まい手のためだけの唯一無二の家なのです。
個性のある変形地に、こだわりの家を建てるのですから、楽しい家にならないはずがありません。
建築家と一緒に創意工夫を凝らした家は、住まい手のためだけの唯一無二の家なのです。
○良好な立地に変形地は隠れている可能性大
家には共通したイメージがあります。「閑静な住宅街、東南の角地の広い敷地、大きく庭に開いた窓からは、さわやかな風と一緒に聴こえる鳥の声……」といった具合に、たいていの方は希望する土地にイメージをお持ちのはず。ですからどんなに立地条件が良くても、変形地は敬遠されてしまいがちなのです。
ですが、少しだけ違った視点を持つ方が見れば、とても魅力的な土地が、ひっそりと隠れるように存在していることがあります。問題はその変形地が持つ個性を、最大限に生かせる家をイメージできるかに掛かっています。つまり相棒となる建築家が大切だということ。
できれば土地を購入する前に、建築家に土地を見てもらいましょう。そうすればきっと、変形地で楽しく暮らすイメージを共有できるはず。もちろん、問題点に関するアドバイスも頂けることでしょう。想像を超える変形地ライフを、ぜひお楽しみください。
建築家を探す
家には共通したイメージがあります。「閑静な住宅街、東南の角地の広い敷地、大きく庭に開いた窓からは、さわやかな風と一緒に聴こえる鳥の声……」といった具合に、たいていの方は希望する土地にイメージをお持ちのはず。ですからどんなに立地条件が良くても、変形地は敬遠されてしまいがちなのです。
ですが、少しだけ違った視点を持つ方が見れば、とても魅力的な土地が、ひっそりと隠れるように存在していることがあります。問題はその変形地が持つ個性を、最大限に生かせる家をイメージできるかに掛かっています。つまり相棒となる建築家が大切だということ。
できれば土地を購入する前に、建築家に土地を見てもらいましょう。そうすればきっと、変形地で楽しく暮らすイメージを共有できるはず。もちろん、問題点に関するアドバイスも頂けることでしょう。想像を超える変形地ライフを、ぜひお楽しみください。
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