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築40年の元公営住宅を、限られた予算内で、快適な住まいにリノベーション
1980年代に建てられた元公営住宅。空間、光、そして低コストの素材を巧みに使用することで、ユニークで新しい個性が与えられました。
Louise O'Bryan
2022年12月12日
1980年代に、イギリス・ロンドン南東部に建てられた元公営住宅を購入したオーナーは、購入当初から、ここがあたたかで魅力的な住まいとなる可能性を見出していました。オーナーはVatraaのBodgan Rusu(ボグダン・ルス)さんに依頼し、限られた予算の中で大金を掛けずに、実用的で創造的かつ持続可能なソリューションを考案してもらいました。その結果、空間、光、素材の組み合わせにより、ユニークで魅力的な住まいが実現したのです。
どんなHouzz?
住まい手: 40代前半の女性
所在地:ロンドン南東部、バーモンドシー
建物:1980年代に建てられた元公営住宅(2ベッドルーム+1バスルーム)
設計:Vatraa(Bodgan Rusu)
写真:Jim Stephenson
限られた予算で築古住宅を、快適な住まいとして再生させるには、独創的で賢いアイデアが必要でした。
「プロジェクト開始時から、予算が限られていることはわかっていましたので、すでにあるものをうまく使い、可能な限り無駄を減らすことにしたのです」と語るボグダンさん。建物を拡張せず、76平方メートルのコンパクトな床面積の中で、広々とした開放感を生み出す方針をたてました。
住まい手: 40代前半の女性
所在地:ロンドン南東部、バーモンドシー
建物:1980年代に建てられた元公営住宅(2ベッドルーム+1バスルーム)
設計:Vatraa(Bodgan Rusu)
写真:Jim Stephenson
限られた予算で築古住宅を、快適な住まいとして再生させるには、独創的で賢いアイデアが必要でした。
「プロジェクト開始時から、予算が限られていることはわかっていましたので、すでにあるものをうまく使い、可能な限り無駄を減らすことにしたのです」と語るボグダンさん。建物を拡張せず、76平方メートルのコンパクトな床面積の中で、広々とした開放感を生み出す方針をたてました。
ボグダンさんは既存の構造を調査し、不要な部分を取り除く一方で、新たに加えるものを最小限に抑えました。その結果、建物は必要最小限まで削ぎ落され、ボグダンさんは自分が何をすべきかをはっきりと見極めることができたといいます。
「家の前後にある2つの庭に向けて室内を開放することで、住宅の表から奥にかけての抜け感をつくることができるのではないかと、すぐに気が付きました。家の表側の庭には常緑樹、そして奥の庭には、季節に応じて表情を変える植栽を計画しました」とボグダンさん。
「家の前後にある2つの庭に向けて室内を開放することで、住宅の表から奥にかけての抜け感をつくることができるのではないかと、すぐに気が付きました。家の表側の庭には常緑樹、そして奥の庭には、季節に応じて表情を変える植栽を計画しました」とボグダンさん。
この公営住宅の外観は守りたいと考えたボグダンさんは、ファサードの変更については慎重でした。
「最大の変更点は、凝りすぎたデザインの出窓をひと回り大きなフレームで囲われた正方形の窓に替えることで、表の庭をフレーミングすると同時に、より多くの自然光を室内に取り込むことでした」と彼は言います。「古びた玄関ポーチは室内の廊下と一体化し、室内空間を広げました」
「最大の変更点は、凝りすぎたデザインの出窓をひと回り大きなフレームで囲われた正方形の窓に替えることで、表の庭をフレーミングすると同時に、より多くの自然光を室内に取り込むことでした」と彼は言います。「古びた玄関ポーチは室内の廊下と一体化し、室内空間を広げました」
古い出窓からクリーンでミニマルなスタイルの窓に替えたことで、表側のプライベートな庭の眺めを十分楽しむことができるうえ、キッチンからダイニングエリアにかけて、取り込まれた自然光が隅々まで広がります。
住み心地を左右する窓の種類と選び方
住み心地を左右する窓の種類と選び方
家の裏側についても構造上大きな変更はしませんでした。ただし、奥の庭の景色をよく眺められるよう、室内からサッシ枠が見えない窓に置き換えられました。
「家の内と外のつながりを強め、かつ豊かな自然光をより多く取り入れるためにシンプルな窓に置き換えた結果、庭の景観が室内からよく見えるようになりました」とボグダンさん。
「家の内と外のつながりを強め、かつ豊かな自然光をより多く取り入れるためにシンプルな窓に置き換えた結果、庭の景観が室内からよく見えるようになりました」とボグダンさん。
内部の機能的なスペースは、もともとあった中央の階段まわりにレイアウトしました。このエリアにはボイラーと貯湯タンクもあり、常に多くの熱を発していました。
「貯湯タンクまわりにランドリールームを配することで、この熱源を衣類の乾燥に利用することにしました」とボグダンさんは語ります。「また、2階のバスルームをタンクの真上に移動することで、タンクからの熱を利用して浴室の床を断続的に温め、床暖房の導入を不要としています」
「貯湯タンクまわりにランドリールームを配することで、この熱源を衣類の乾燥に利用することにしました」とボグダンさんは語ります。「また、2階のバスルームをタンクの真上に移動することで、タンクからの熱を利用して浴室の床を断続的に温め、床暖房の導入を不要としています」
“アフター”の平面図に見られるように、ボグダンさんとチームは、熱源のまわりに家の機能を集約することで、既存の貯湯タンクを最大限に活用したのです。
また、ボグダンさんは廊下の狭苦しさを解決する方法として、古びた玄関ポーチを室内に組み込み、既存の天井を剥がして、新しく屋根の勾配にそった傾斜天井をつくりました。その結果、はるかに開放的で魅力的なエントランスが実現しました。
「古い玄関ポーチを廊下に新たに組み入れることで、ラウンジからキッチン、ダイニングエリアにかけてのアクセスを改善し、階段を中心としたセミオープンプランのレイアウトが生まれました」とボグダンさんは言います。
「古い玄関ポーチを廊下に新たに組み入れることで、ラウンジからキッチン、ダイニングエリアにかけてのアクセスを改善し、階段を中心としたセミオープンプランのレイアウトが生まれました」とボグダンさんは言います。
廊下、キッチン、ダイニングルームの仕切りをなくすことでメインのレセプションルームと繋がり、オープンプランの雰囲気を醸し出す一方で、それぞれが明確な独自性を持つエリアとして存在しています。キッチンからダイニングエリア、そしてその先のリビングルームに至るまで、それぞれの空間はその機能ごとに異なった雰囲気を保っていますが、素材や色彩によって全体の統一感が演出されています。
「リビングルームとダイニングエリアに統一感を生むため、オーナーの趣向に合わせて、オーク材を使った一連の家具をデザインしました」とボグダンさん。
「リビングルームとダイニングエリアに統一感を生むため、オーナーの趣向に合わせて、オーク材を使った一連の家具をデザインしました」とボグダンさん。
フルハイトの戸棚と、キッチン・ダイニングエリアの片側に設けたウォークインパントリーにより、収納スペースは十分。この狭くてコンパクトなエリアもすっきりと見せています。
「階段下に広いウォークインパントリーをつくるため、斜めにドアを設けて一部奥行きを増やしました」とボグダンさん。
「階段下に広いウォークインパントリーをつくるため、斜めにドアを設けて一部奥行きを増やしました」とボグダンさん。
古い家の雰囲気を甦らせるため、ボグダンさんは既存の天井根太を現しとしました。これにより、2.4メートルの天井高がより高く感じられます。また、使用する素材と色合いも限定しています。
「空間、光、そして素材の質感を引き立てるため、それぞれが相互補完する3つの素材に限定して仕上げることにしました」とボグダンさん。
「白く塗装された根太天井と、白く染色されたオーク材の床を、漆喰壁によって繋げています」
「空間、光、そして素材の質感を引き立てるため、それぞれが相互補完する3つの素材に限定して仕上げることにしました」とボグダンさん。
「白く塗装された根太天井と、白く染色されたオーク材の床を、漆喰壁によって繋げています」
漆喰仕上げの壁は、オーナーお気に入りのアート作品にとってあたたかみのある背景となるばかりか、壁に装飾が不要となるため、オーナーにとって大幅な節約となり、工事もスピードアップしました。
漆喰は自然光に対してさまざまな表情を見せ、スペースごとに独特な雰囲気を醸し出します。
たとえば階段室は、太陽光が差し込むと明るく輝いてあたたかみをおび、曇りの日は光が壁に反射し、幅80cmのこの空間を広く感じさせます。
たとえば階段室は、太陽光が差し込むと明るく輝いてあたたかみをおび、曇りの日は光が壁に反射し、幅80cmのこの空間を広く感じさせます。
「自然光、景色、そして素材の美しさに焦点を絞るため、可能な限りミニマルなディテールとなるよう心掛けました」とボグダンさん。
「既存の階段の再利用には難しい点もありましたが、両側の階段のささら(階段を支える梁)を露出させ、家全体で使用している白く染色されたオークの床材で階段を仕上げることで、その難点を乗り越えることができました」
階段にはどんな種類がある?その特徴や配置の基本
「既存の階段の再利用には難しい点もありましたが、両側の階段のささら(階段を支える梁)を露出させ、家全体で使用している白く染色されたオークの床材で階段を仕上げることで、その難点を乗り越えることができました」
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ミニマルなディテールは2階のベッドルームへと続きますが、1階の鮮やかなリビングエリアとは対照的に、2階はニュートラルな雰囲気に仕上がっています。
「夜と昼、それぞれのゾーンの間に気持ちを切り替えることのできる朝の空間をつくりました。オーナーが起きて階段を降りる瞬間、エネルギーに満ち溢れるような感覚を与えたかったのです」とボグダンさん。
「夜と昼、それぞれのゾーンの間に気持ちを切り替えることのできる朝の空間をつくりました。オーナーが起きて階段を降りる瞬間、エネルギーに満ち溢れるような感覚を与えたかったのです」とボグダンさん。
完成した住まいはそのコンパクトさにもかかわらず、家全体に溢れる自然光、ミニマルなディテールと魅力的な素材感のおかげで、落ち着いて広々とした印象を与えています。
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