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現代家具とデザインの最新情報。NYの見本市から解くトレンド
ニューヨークで開催された2つの見本市をHouzz米国編集部が取材。2022年の主要テーマは、持続可能性、ウェルネス、革新性、伝統工芸でした。
Suzanne Ennis
2022年6月17日
近年、家具メーカーはサステナビリティ(持続可能性)に関してより高い目標を設定し、ウェルネスに全面的に取り組み、テクノロジーと伝統工芸の融合を進めています。こうした傾向は、先月同時開催された国際現代家具見本市(ICFF)とウォンテッドデザインマンハッタンでも重要なポイントとなりました。会場では、ハイコンセプト、ハンドメイド、モジュラー、そしてカラフルなデザインが多く見られました。
以下では、5月15日〜17日の間にニューヨークのジェイコブ・ジャビッツ・コンベンション・センターで開催されたこれらの見本市で、有名デザイナーや新進気鋭のデザイナーによる最新のプロダクトに見られたトレンドをご紹介します。
以下では、5月15日〜17日の間にニューヨークのジェイコブ・ジャビッツ・コンベンション・センターで開催されたこれらの見本市で、有名デザイナーや新進気鋭のデザイナーによる最新のプロダクトに見られたトレンドをご紹介します。
一歩先のサステナビリティ
テーマの1つはサステナビリティでした。ほとんどの出展者が、自社ブランドの環境への配慮に関する取り組みをおこなっているようでした。
ただ、より大きなテーマは、単に害を減らすだけではもはや十分ではないということでした。家具メーカーは、優れたデザインを通じて社会や環境にプラスの影響を与える方法について、より総合的に考えるようになっています。コンベンション・センターのフロアをICFFと共有していたウォンテッドデザインでは、より革新的なアプローチが見られました。ウォンテッドデザインは、北米のハイエンド系のデザイナーと新進気鋭の国際的なデザイナーのためのプラットフォームであり、前者はルックブック(Look Book)、後者はローンチパッド(Launch Pad)というプログラムで展示をおこないます。たとえば、ローンチパッドの参加者であるエリカ・クロスがデザインしたこのAnvilテーブルは、リサイクル可能な天然の再生可能素材であるコルクから作られています。
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テーマの1つはサステナビリティでした。ほとんどの出展者が、自社ブランドの環境への配慮に関する取り組みをおこなっているようでした。
ただ、より大きなテーマは、単に害を減らすだけではもはや十分ではないということでした。家具メーカーは、優れたデザインを通じて社会や環境にプラスの影響を与える方法について、より総合的に考えるようになっています。コンベンション・センターのフロアをICFFと共有していたウォンテッドデザインでは、より革新的なアプローチが見られました。ウォンテッドデザインは、北米のハイエンド系のデザイナーと新進気鋭の国際的なデザイナーのためのプラットフォームであり、前者はルックブック(Look Book)、後者はローンチパッド(Launch Pad)というプログラムで展示をおこないます。たとえば、ローンチパッドの参加者であるエリカ・クロスがデザインしたこのAnvilテーブルは、リサイクル可能な天然の再生可能素材であるコルクから作られています。
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建設廃棄物をデザインに取り入れたり、製造工程から廃棄物や有害物質を除去したり、衰退する工芸を復活させたり、廃棄する代わりに簡単に修理できる家具を製作したりといった取り組みをおこなっているメーカーもありました。
このFyrn社のMariposaチェアは、何度でも100%交換・修理が可能なパーツから作られています。
このFyrn社のMariposaチェアは、何度でも100%交換・修理が可能なパーツから作られています。
主流となったウェルネス
ウェルネスには、身体および精神の両面における健康が含まれます。新型コロナウイルスの流行以来、ウェルネスは建築とデザインの分野で大きな注目を集めています。ICFFでも、多くのプロダクトがウェルネスの効果を強調しています。
中でも、このArchilume社のOvolo OLED照明は際立っていました。有機物質から作られたOLED(有機発光ダイオード)パネルは、太陽光のような広域のスペクトルを提供することでムードと意識レベルを高めると言われています。
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照明のコーディネートをプロに依頼するメリットとは?
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自然界に見られる反復パターン(フラクタル)からなる環境は、ストレスを軽減する効果があることが研究で示されています。
そのコンセプトは、リラクシング・フロアーズ(Relaxing Floors)のベースとなっています。リラクシング・フロアーズは、Fractals Research社とMohawk Group社とのコラボレーションにより、13&9がデザインした新しいモジュラーシステムです。このカーペットのパターンは、ストレスの多い商業環境において人々を落ち着かせ、デジタル世界からの視覚的休息をもたらすと考えられています。
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ストレスを和らげる住まいづくり。「ウェルネス・デザイン」とは?
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身体の健康には安全・衛生が不可欠であり、当然のことながら、ウェルネスはバスルームにも適用されます。ICFFで話を聞いたバスルーム器具メーカーは、Duravit社のSensoWashシャワートイレ(ナイトライト機能も搭載)のモーションセンサーによる便座カバーの開閉など、衛生的なハンズフリー機能を指摘しています。
アメリカインテリアデザイナー協会のCEOであるゲイリー・E・ウィーラーは、業界全体のトレンドに焦点を当てたパネルディスカッションで、ウェルネスの機能が建築法規にも影響を与え始めていることを指摘しています。ウェルネスは一過性の流行ではなく、サステナビリティのような思考の変化になっているようです。
アメリカインテリアデザイナー協会のCEOであるゲイリー・E・ウィーラーは、業界全体のトレンドに焦点を当てたパネルディスカッションで、ウェルネスの機能が建築法規にも影響を与え始めていることを指摘しています。ウェルネスは一過性の流行ではなく、サステナビリティのような思考の変化になっているようです。
テクノロジーと伝統の融合
今回の見本市では、伝統工芸、テクノロジー、デジタル世界が同時に花開いたことにより、魅力的なハイコンセプトのアイテムが登場しました。
たとえば、ローンチパッドの参加者であるアドヴァ・クレマーの「実験値の美術館(The Museum of Empiric Values)」プロジェクト(写真はその一例)では、Googleトレンドにリンクされたジャカード織機を使用して芸術作品の複製が織られています。
今回の見本市では、伝統工芸、テクノロジー、デジタル世界が同時に花開いたことにより、魅力的なハイコンセプトのアイテムが登場しました。
たとえば、ローンチパッドの参加者であるアドヴァ・クレマーの「実験値の美術館(The Museum of Empiric Values)」プロジェクト(写真はその一例)では、Googleトレンドにリンクされたジャカード織機を使用して芸術作品の複製が織られています。
同様の組合せには、AIによるデザインをハンドメイドで製作した陶器や、木製家具に埋め込まれた充電技術などが含まれます。
Model No.社によってデジタル製作されたこのSlottedサイドテーブルは、FSC認証を受けたハードウッド製で、オプションとして一体型の充電技術が付いています。
Model No.社によってデジタル製作されたこのSlottedサイドテーブルは、FSC認証を受けたハードウッド製で、オプションとして一体型の充電技術が付いています。
機能性
選ぶのはあなた
ICFFでは、モジュール式でカスタマイズ可能な多機能家具が多く見られました。特注のパターンが印刷されたタイルや、成形可能な素材で作られた照明などの柔軟なデザインにより、デザイナーではなく消費者がデザインを決定することが可能になります。
特に目を引いたのは、PiscinaのLedouxモジュラーシェルフシステムです。ナタリー・シュークが率いるこのブルックリンのデザインスタジオは、今年のICFFエディターズアワードで最優秀賞(Best in Show)と最優秀新人デザイナー賞(Best Emerging Designer)を受賞しました。
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素材
混合素材
ICFFに出展された高級家具メーカーによる最も印象的なプロダクトには、混合素材や対照的な質感をはじめ、自然の影響を受けたアイテムが多く見られました。
レヴィ・クリスチャンセンによるこのウォールナットと大理石のPluralテーブルは、ソノラ砂漠からインスピレーションを得ています。
混合素材
ICFFに出展された高級家具メーカーによる最も印象的なプロダクトには、混合素材や対照的な質感をはじめ、自然の影響を受けたアイテムが多く見られました。
レヴィ・クリスチャンセンによるこのウォールナットと大理石のPluralテーブルは、ソノラ砂漠からインスピレーションを得ています。
コンクリートのような確固としたアイデア
コンクリート製(一部リサイクル材)のタイル、カラフルでマットな質感の洗面台、無骨なテイストの家具なども存在感を示していました。
リリースされたばかりのThatcher社のEtherタイルは、ハンドメイドの着色コンクリートからできています。
コンクリート製(一部リサイクル材)のタイル、カラフルでマットな質感の洗面台、無骨なテイストの家具なども存在感を示していました。
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驚きの木製家具
合板を使った真に革新的な家具を製作しているデザイナーたちは、端材を最小限に抑えてカットした合板からモジュール式の家具を作り、さらに物理的限界を追求しています。
写真の丈夫で柔軟な片持ち式のIso-Loungeチェアを製作するために、デザイナーのジャスパー・モリソンとIsokon Plus社のチームは、合板の厚さと向きをさまざまな形で調整しました。
合板を使った真に革新的な家具を製作しているデザイナーたちは、端材を最小限に抑えてカットした合板からモジュール式の家具を作り、さらに物理的限界を追求しています。
写真の丈夫で柔軟な片持ち式のIso-Loungeチェアを製作するために、デザイナーのジャスパー・モリソンとIsokon Plus社のチームは、合板の厚さと向きをさまざまな形で調整しました。
他にも、北米産のハードウッド製を使ってハンドメイドされた質の高い製品を発表した家具製作スタジオもあります。これらは、現代的であると同時に時代を超越したデザインになっています。
たとえば、カナダを拠点とするHamilton Holmes社のDesertチェアは、伝統的な木工と現代の生産技術を組み合わせて作られています。
たとえば、カナダを拠点とするHamilton Holmes社のDesertチェアは、伝統的な木工と現代の生産技術を組み合わせて作られています。
この鍛造ブロンズのディテールを備えたチェリー材製のSiggiアームチェアは、ブルックリンを拠点とするVulpe Works社によりハンドメイドで作られたものです。
木製のインテリア家具で最も人気のある色調は、ウォールナット、ナチュラルオーク、そしてブラックオークでしたが、この美しいチェアは、温かみのある色調のチェリーの復活の兆しを感じさせるものでした。
木製のインテリア家具で最も人気のある色調は、ウォールナット、ナチュラルオーク、そしてブラックオークでしたが、この美しいチェアは、温かみのある色調のチェリーの復活の兆しを感じさせるものでした。
形状
丸みを帯びた形
ここ数シーズン、アーチや曲線状の家具が主流となっています。 いくつかのエッジの効いた作品は、より工業的で四角いシルエットを持っていましたが、一般的な丸みを帯びた傾向は、非対称で有機的な作品として、ICFFでも多く展示されていました。
こちらのソファも、その例のひとつ。メキシコシティを拠点とするMool社による、可動式の背もたれが付いた、快適で曲がりくねったソファです。
丸みを帯びた形
ここ数シーズン、アーチや曲線状の家具が主流となっています。 いくつかのエッジの効いた作品は、より工業的で四角いシルエットを持っていましたが、一般的な丸みを帯びた傾向は、非対称で有機的な作品として、ICFFでも多く展示されていました。
こちらのソファも、その例のひとつ。メキシコシティを拠点とするMool社による、可動式の背もたれが付いた、快適で曲がりくねったソファです。
ドアのノブやハンドルも、Robert A.M. Stern ArchitectsのデザインによるRocky Mountain Hardware社の新しいシリーズから出展されたキャビネット用の取手、Opheliaに見られるように、非対称で有機的な造形のものが多く見られました。
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ラグにおいても、既成概念の枠を飛び出して、不規則でソフトな輪郭のものが出展されました。ローンチパッドの参加者であるソフィー・ダンニンがデザインしたこのラグは、売れ残りのカーペットと端材を利用して作られています。
カラー
すべてがバラ色
明るいピンク、テラコッタ、マゼンタ、モーブなどのカラーが、タイルからテキスタイルに至るまであらゆるアイテムで見られました。
ルカ・ニケットが、Brown Jordan Outdoor Kitchens社のためにデザインした新しいモジュール式のCube屋外用キッチンシリーズは、綿菓子色と唐辛子色を組み合わせた大胆な色使いになっています。
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色に包まれて
バラ色のトーンが全体をリードしているなかで、色全般が大胆なかたちで復調の兆しを見せています。ICFFエディターズアワードを受賞した学際的デザイナーのマナ・サゼガラによるこの作品のコレクションは、その傾向を反映しています。
人気のある配色には、原色(バウハウス風)、ネオンのようなタンジェリンとライム、アクアとピーチ、そしてモスグリーンも含まれています。
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