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今こそ見直したい、伝統工法によるサステナブル住宅の可能性
伝統的な建築手法を採用することで、快適かつ環境に優しい住まいを実現した、世界各地の家をご覧に入れます。
Julia Bolotina
2022年4月22日
冬は暖かく、夏は涼しく、湿気のこもらない省エネ住宅をつくるにはどのようにすればよいのでしょうか。そして、同時に二酸化炭素の排出量を最小限に抑えることは可能なのでしょうか。伝統的な建築がその答えの一端を担っていることは、ほとんど定説となっています。
古くから受け継がれてきた技術には、建設や維持にかかるエネルギーを抑え、その地域の地理的条件に適応し、地元の材料を最大限に活用することができるものが多いと考えられてきました。しかし、このような昔ながらの手法は、本当に現代人の好みやライフスタイルに合った形で実現できるのでしょうか?
Houzzに登録している世界各地の建築家や工務店が、伝統技術を現代の住まいにどのように取り入れているかを見てみると、冷暖房の調整から湿度の管理にいたるまで、古き良き伝統手法を活用することのメリットが多くあることが分かりました。
古くから受け継がれてきた技術には、建設や維持にかかるエネルギーを抑え、その地域の地理的条件に適応し、地元の材料を最大限に活用することができるものが多いと考えられてきました。しかし、このような昔ながらの手法は、本当に現代人の好みやライフスタイルに合った形で実現できるのでしょうか?
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断熱・熱制御
熱制御は、現代のサステナブルデザインで最も探求されているテーマの1つといえるでしょう。パッシブハウスやフランスの断熱関係の規制であるRT2012のようなサステナブル建築の基準では、主に熱制御に焦点を当てています。とはいえ、人類はもっと昔から、家庭での温度調節の問題を解決してきました。
厚い壁
最も基本的な技法といえるかもしれません。極端に厚い壁で内と外を仕切る例としては、洞窟の石壁です。厚い壁により、洞窟内の温度を一定に保つことができます。
スペインでは、洞窟居住の魅力が再発見され、現代の生活に合わせて取り入れられ始めています。写真は UMMOestudioによって設計された住居です。アンダルシア地方にあるこの洞窟では、外気温が冬は0℃、夏は40℃にもなりますが、この天然の壁によって室内は15℃から19℃の安定した温度が保たれています。
熱制御は、現代のサステナブルデザインで最も探求されているテーマの1つといえるでしょう。パッシブハウスやフランスの断熱関係の規制であるRT2012のようなサステナブル建築の基準では、主に熱制御に焦点を当てています。とはいえ、人類はもっと昔から、家庭での温度調節の問題を解決してきました。
厚い壁
最も基本的な技法といえるかもしれません。極端に厚い壁で内と外を仕切る例としては、洞窟の石壁です。厚い壁により、洞窟内の温度を一定に保つことができます。
スペインでは、洞窟居住の魅力が再発見され、現代の生活に合わせて取り入れられ始めています。写真は UMMOestudioによって設計された住居です。アンダルシア地方にあるこの洞窟では、外気温が冬は0℃、夏は40℃にもなりますが、この天然の壁によって室内は15℃から19℃の安定した温度が保たれています。
イタリアのプッリァ州には、1000年以上前から写真のような円錐形の石造りの小屋「トゥルッリ」が建てられてきました。厚い石壁に、同様の断熱効果があります。
建築家のEnrico Maria CicchettiさんとFrancesco Palmisanoさんは、この5棟のトゥルッリをリノべーションし、モダンなガラスキューブのエントランスを設けました。
建築家のEnrico Maria CicchettiさんとFrancesco Palmisanoさんは、この5棟のトゥルッリをリノべーションし、モダンなガラスキューブのエントランスを設けました。
ひんやり感を演出する白い壁
もちろん、プッリァの「トゥルッリ」に見られる、いかにも地中海らしい白塗り壁は、空調負荷を軽減するのにも役立ちます。この手法は、ヨーロッパのより北部に位置するドイツのヴィースバーデンのこの家においても、建築家のRoger Christさんによって採用されました。
もちろん、プッリァの「トゥルッリ」に見られる、いかにも地中海らしい白塗り壁は、空調負荷を軽減するのにも役立ちます。この手法は、ヨーロッパのより北部に位置するドイツのヴィースバーデンのこの家においても、建築家のRoger Christさんによって採用されました。
屋上緑化
洞窟住居と同じくらい古い歴史を持つのが、新石器時代から使われてきた緑の屋根(グリーンルーフ)です。現代ではより効率的な断熱方法がありますが、屋上緑化は熱と音の両方を遮断するのに役立ちます。
グリーンルーフは、生物多様性という別の切り口で見ても効果的です。 Patrick Nadeauさんが設計したこのウェーブハウスは 、Ecovegetalにより計画された屋上緑化で、屋根がセダム、グラス、タイム、ラベンダーなどの小さな多年草や芳香植物で覆われています。これらの植物は、昆虫などの野生生物の餌や隠れ家にもなっています。
洞窟住居と同じくらい古い歴史を持つのが、新石器時代から使われてきた緑の屋根(グリーンルーフ)です。現代ではより効率的な断熱方法がありますが、屋上緑化は熱と音の両方を遮断するのに役立ちます。
グリーンルーフは、生物多様性という別の切り口で見ても効果的です。 Patrick Nadeauさんが設計したこのウェーブハウスは 、Ecovegetalにより計画された屋上緑化で、屋根がセダム、グラス、タイム、ラベンダーなどの小さな多年草や芳香植物で覆われています。これらの植物は、昆虫などの野生生物の餌や隠れ家にもなっています。
茅葺き
茅葺き屋根も定番の形です。素朴な風合いながら、断熱性と遮音性に優れ、適切な角度で施工することで建物の外皮から水を逃がします。また、茅葺き屋根は耐久性に優れ、定期的なメンテナンスは必要ですが、何十年も交換することなく使用することができます。Möhring Architectsは、ドイツのこの住宅の屋根と壁の両方に茅葺き屋根を採用しました。
茅葺き屋根も定番の形です。素朴な風合いながら、断熱性と遮音性に優れ、適切な角度で施工することで建物の外皮から水を逃がします。また、茅葺き屋根は耐久性に優れ、定期的なメンテナンスは必要ですが、何十年も交換することなく使用することができます。Möhring Architectsは、ドイツのこの住宅の屋根と壁の両方に茅葺き屋根を採用しました。
デンマークの茅葺き職人Bjarne Johansenさんが、その卓越した技を駆使してつくりあげた、携帯電話で遠隔操作できる茅葺きのスマートサウナです。
伝統的な断熱材
伝統的な建築には、その土地にある資源を工夫して利用している断熱材が豊富に取り入れられています。
バレアレス諸島では、スペインの建築家Marià Castellóさんが手がけた写真のような伝統的な住宅の断熱材には、フェニキアジュニパーのチップと、この地域に豊富に生息する海藻、ポシドニア・オアニカを重ねた「テジェル」がよく使われています。
豆知識ですが、バレアレス諸島の観光客に愛されている透明で青い海は、このポシドニア・オセアニカとその生態系が作り出しています。環境の悪化により、ポシドニアは絶滅の危機に瀕しており、現在では保護種となっていますが、地元の素材をいかに断熱材として活用するかを考える上で、有用なモデルとなっています。
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自然素材にこだわったフォルメンテラ島の住まい
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豆知識ですが、バレアレス諸島の観光客に愛されている透明で青い海は、このポシドニア・オセアニカとその生態系が作り出しています。環境の悪化により、ポシドニアは絶滅の危機に瀕しており、現在では保護種となっていますが、地元の素材をいかに断熱材として活用するかを考える上で、有用なモデルとなっています。
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三重県志摩市に近郊の木・石・土を構造部材にして建てた家があります。なんと、施主の竹内和彦さんと奥様の千鶴さんご夫妻が、自ら断熱材となる燻炭(くんたん)を、籾殻(もみがら)から集めて、燻してつくりました。ご夫妻はできた燻炭を400gずつ袋に入れて、座布団のように折り曲げて、床の下に敷き詰める作業もされました。
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竹内ご夫妻が断熱材となる燻炭を、(炭の消臭効果も得るために)ドラム缶の中で燻している様子
版築
断熱と熱制御に使用される最も普及している方法の1つは、世界中の建設で登場する版築でしょう。版築とは、土を層状につき固めて建物の基壇や壁,築地塀,城壁などをつくる方法です。熱質量が大きく、優れた絶縁体として機能するだけでなく、湿気の制御にも役立ちます。
こちらの写真は南インドのオーロヴィルにあるEartHauz Architecture & Designが手がけた、土とワラなどを混ぜて作ったコブ土壁のある家です。オーロヴィルは、1968年に作られた環境実験小都市で、オーロヴィル土研究所(Auroville Earth Institute)(AVEI)では多用な土を使った建築技術を発展させています。
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オーローヴィルの土を利用した建築
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再び三重県志摩市のお宅を見てみましょう。竹内さんご一家は、東原建築工房の東原達也さんと息子の大地さんの指導のもと、この家を設計したm5_architecte一級建築士事務所の六浦基晴さんと一緒に、この場所に土を運び入れ、突き固め作業をおこない、三和土(たたき)土間を仕上げました。
三和土づくりの様子を見る
三和土づくりの様子を見る
合わせ技
オーストラリアのLuigi Rosselli Architectsによって設計されたこの受賞歴のあるこのアパートは、西オーストラリア州の畜産家と毛皮職人のために建てられたものです。小屋は砂丘地の中に建てられ、天然の冷却効果を利用しています。また、その斜面を利用することで、自然のグリーンルーフを作ることができます。壁は、建築現場から採取した粘土と近くの川から採取した砂利を混ぜた版築壁です。
オーストラリアのLuigi Rosselli Architectsによって設計されたこの受賞歴のあるこのアパートは、西オーストラリア州の畜産家と毛皮職人のために建てられたものです。小屋は砂丘地の中に建てられ、天然の冷却効果を利用しています。また、その斜面を利用することで、自然のグリーンルーフを作ることができます。壁は、建築現場から採取した粘土と近くの川から採取した砂利を混ぜた版築壁です。
光の採り入れ方
寒い季節には太陽光を最大限に利用し、暑い季節には最小限に抑えることは、パッシブハウスの基本です。そのために、高い断熱性能が求められます。
縁側と軒
日本では屋外と屋内の間に縁側を設けることで、夏に強い直射日光が部屋に入るのを防いでいます。さらに深い軒をつくれば、日陰部分ができるので、縁側と軒の効果で、直射日光が室内に入るのを防ぐことができます。
キューボデザイン建築計画設計事務所の猿田仁視さんが設計したこのお宅の縁側は、数寄屋建築に関するオーナーの蔵書に掲載されていた「濡れ縁」を、竹とヒノキ板の面積比率まで、ほぼ同じに再現しています。
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縁側と軒
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もちろん、建物を保護する大きな軒下は日本独自のものではありません。例えば、ドイツの伝統的な住宅である「黒い森の家」でも、同じような役割を担っています。勾配屋根には、雪が積もりすぎるのを防ぐ役割もあります。
ベランダ
アメリカでは、深い軒と同じようにベランダやポーチが強い光を遮り、涼しい風を取り入れる役割を担っています。ベランダは家の中に入る光を制限するだけでなく、室内の暑さから逃れるための快適な場所でもあります。昔は、涼しい夜風に当たるために、網戸のあるポーチに寝泊まりしていた人もいたようです。今日では、虫や風雨から守りながら、快適にくつろぐための空間として利用されることが多くなっています。
アメリカでは、深い軒と同じようにベランダやポーチが強い光を遮り、涼しい風を取り入れる役割を担っています。ベランダは家の中に入る光を制限するだけでなく、室内の暑さから逃れるための快適な場所でもあります。昔は、涼しい夜風に当たるために、網戸のあるポーチに寝泊まりしていた人もいたようです。今日では、虫や風雨から守りながら、快適にくつろぐための空間として利用されることが多くなっています。
米国南部の伝統的な建築様式である「ドッグトロットハウス」も、同様に横風を活用しています。メイン州のCaleb Johnson Studioが設計したポートランドの住宅でも、家の中心を貫くオープンな風の通り道を見ることができます。
換気ができるスクリーン
暑い部屋を冷やし、こもった熱気を取り除くためには換気も重要です。また、今回のパンデミックでも明らかになったように、空気感染の拡大を抑えるという衛生面でも重要な役割を担っています。
インドではジャアリ、アラブではマシュラビーヤと呼ばれる装飾的なスクリーンは、風を通しながら光をコントロールするために使われます。
インドのSpasm Architectsは、アフマダーバードの住宅のために、コールテン鋼を使ったこのジャアリ・スクリーンをデザインしました。「アフマダーバードの素晴らしい建築物であるシディ・サイード・モスクのジャーリに敬意を表して、角には木や枝のパターンが穿たれています」と、このプロジェクトを手がけた建築家のSangeeta Merchantさんは話します。
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インドのSpasm Architectsは、アフマダーバードの住宅のために、コールテン鋼を使ったこのジャアリ・スクリーンをデザインしました。「アフマダーバードの素晴らしい建築物であるシディ・サイード・モスクのジャーリに敬意を表して、角には木や枝のパターンが穿たれています」と、このプロジェクトを手がけた建築家のSangeeta Merchantさんは話します。
高床式で熱を放出
Red Bean Architectsが手がけたシンガポールのこの家は、高床式の住まいの現代版とも言えるでしょう。空気が最下階まで循環できるように計画されています。 レンガの壁面には規則的な穴が設けられており、熱気を外に逃がす役割を担っています。
Red Bean Architectsが手がけたシンガポールのこの家は、高床式の住まいの現代版とも言えるでしょう。空気が最下階まで循環できるように計画されています。 レンガの壁面には規則的な穴が設けられており、熱気を外に逃がす役割を担っています。
英国エジンバラのこのお宅の窓は、上部と下部の両方のガラス窓が開けられるようになっているので、空気を循環することができます。
中庭・坪庭
多くの伝統的な建築では、空気の循環を良くするために、中庭を設けているケースもあります。
日本の町家などでも坪庭がつくられていましたが、そもそも坪庭という概念を、国内のものだけと考える必要は無いと語るのは、石原和幸デザイン研究所代表の石原和幸さんです。「国内外を問わず、どんな小さな場所、使われていない空間でも良いので、坪庭をつくって、その地域の植物を植えてあげれば、緑化に貢献することができるでしょう」(石原さん)
多くの伝統的な建築では、空気の循環を良くするために、中庭を設けているケースもあります。
日本の町家などでも坪庭がつくられていましたが、そもそも坪庭という概念を、国内のものだけと考える必要は無いと語るのは、石原和幸デザイン研究所代表の石原和幸さんです。「国内外を問わず、どんな小さな場所、使われていない空間でも良いので、坪庭をつくって、その地域の植物を植えてあげれば、緑化に貢献することができるでしょう」(石原さん)
調湿と防水
健康的で安全な暮らしには浸水対策はもちろんのこと、湿度管理も重要です。湿度が原因となり、素材が傷んだり、健康に害を及ぼすバクテリアや菌類が繁殖したりする可能性があります。
クイーンズランド州など熱帯気候のオーストラリアの伝統的な住宅建築は、居住部分を洪水や豪雨から守るために高床式で建てられています。
健康的で安全な暮らしには浸水対策はもちろんのこと、湿度管理も重要です。湿度が原因となり、素材が傷んだり、健康に害を及ぼすバクテリアや菌類が繁殖したりする可能性があります。
クイーンズランド州など熱帯気候のオーストラリアの伝統的な住宅建築は、居住部分を洪水や豪雨から守るために高床式で建てられています。
世界各地で見られるのが高床式の家です。イタリアのアドリア海沿岸南部にある「トラブッコ」と呼ばれる伝統的な漁師小屋は、この手法で潮の満潮時よりも構造体を高く持ち上げています。船では危険な海域でも、この小屋があれば漁を行うことができます。このトラブッコはトイレや水道がないため、定住することは難しいのですが、イタリアのstudio zero85は、多目的ルームや地域のコンサートスペースとして生まれ変わらせました。
防湿効果のある素材
もちろん、湿気を制御するためには、物質的なアプローチも取られています。伝統的な建築は、建物の外壁から水を遠ざけ、建設が呼吸できるようにするためのさまざまな創造的なアプローチをとってきました。前述の茅葺きの家など、地元で入手可能な持続可能な材を使用した家がその良い例です。
柿葺き(こけらぶき)
木製の薄板を使用する柿葺きも湿気を調整する機能がある素材で、ロシア、日本、北欧などで伝統的に外装材料として使われています。木材は再生可能な資源であり、コンクリート等と比べ製造時の二酸化炭素の排出量が少ない材料です。木製の屋根板は、樹種や気候、手入れの仕方にもよりますが、何十年も使用することができます。現在では、防カビ・防火処理により、さらに寿命を延ばすことができます。この素材は軽量で多層階建築にも使用することができ、スウェーデンのGert Wingårdhが設計し、同国の木造建築専門会社Folkhemが建設した8階建のビルでもそれが証明されています。
ちなみに、熱質量上のメリットについては、すでに説明した粘土と版築も、湿度の調整に役立ちます。
もちろん、湿気を制御するためには、物質的なアプローチも取られています。伝統的な建築は、建物の外壁から水を遠ざけ、建設が呼吸できるようにするためのさまざまな創造的なアプローチをとってきました。前述の茅葺きの家など、地元で入手可能な持続可能な材を使用した家がその良い例です。
柿葺き(こけらぶき)
木製の薄板を使用する柿葺きも湿気を調整する機能がある素材で、ロシア、日本、北欧などで伝統的に外装材料として使われています。木材は再生可能な資源であり、コンクリート等と比べ製造時の二酸化炭素の排出量が少ない材料です。木製の屋根板は、樹種や気候、手入れの仕方にもよりますが、何十年も使用することができます。現在では、防カビ・防火処理により、さらに寿命を延ばすことができます。この素材は軽量で多層階建築にも使用することができ、スウェーデンのGert Wingårdhが設計し、同国の木造建築専門会社Folkhemが建設した8階建のビルでもそれが証明されています。
ちなみに、熱質量上のメリットについては、すでに説明した粘土と版築も、湿度の調整に役立ちます。
石灰モルタル
伝統的なレンガ造に使われる石灰モルタルの目地は、セメントよりも多孔質で、建物の動きによく対応し、水分を蒸発させやすいという特徴があります。特に、レンガや石材など多孔質な素材を使用した歴史的建造物では、蓄積した水分の逃げ道が必要なため、多孔質
な目地を使用することが重要です。
イタリアでは、石灰モルタルはコチョペストやオプス・シグニーヌムと呼ばれる防水床材にも使用されてきました。これらは、割れたタイルやレンガに石灰モルタルを混ぜたマテリアルで古代ローマ建築でも使用されていました。防水性があることだけでなく、廃材を再利用できる点でも優れています。Studio Talentは、この材料をシャワールームでも効果的に使用し、このマッセリア(農家)を修復させました。
伝統的なレンガ造に使われる石灰モルタルの目地は、セメントよりも多孔質で、建物の動きによく対応し、水分を蒸発させやすいという特徴があります。特に、レンガや石材など多孔質な素材を使用した歴史的建造物では、蓄積した水分の逃げ道が必要なため、多孔質
な目地を使用することが重要です。
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亜鉛
フランスのアルザス地方では、伝統的に農家で亜鉛被覆が使用されていました。亜鉛は耐食性が高く、長持ちし、リサイクル性に優れているため、建築家のSébastien Arnold さんは、アルザス地方のこのモダンな住まいにも採用しました。
伝統と革新の融合
ここでで取り上げた事例を見ると、現代の家づくりに伝統的な技法を採り入れることで、さまざまな効果が得られていることが分かります。重要なポイントは、伝統と革新の良いところを最大限に活用し、うまく融合させていくことでしょう。
当然ながら、社会やライフスタイルが変化するにつれて、私たちの家に対するニーズも変わっていきます。 たとえば、日本の縁側は夏の熱的快適性を保証しますが、断熱をきちんとした家でないと、冬場は寒い場所になってしまいます。
暖房を局所的な設置したり、対応策はあるものの、現代の暮らしをより快適にするには、縁側にしっかりとしたガラスの引き戸を設けるなどの工夫が必要です。
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当然ながら、社会やライフスタイルが変化するにつれて、私たちの家に対するニーズも変わっていきます。 たとえば、日本の縁側は夏の熱的快適性を保証しますが、断熱をきちんとした家でないと、冬場は寒い場所になってしまいます。
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