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出だしの失敗を乗り越えた、美しく機能的に改修した住まい
どうにもうまくいっていない進行中の改修プロジェクト。しびれを切らしたオーナーは、Houzzで見つけた専門家にプロジェクトへの参加を依頼しました。
Agnès Carpentier
2022年5月24日
フランスのパリ地域圏、ビエーブル近郊のイニーに1950年代に建てられた、自身が子ども時代を過ごした大切な家を相続した40代のオーナー。オーナーとパートナーは、家を現代的なものへと進化させ、敷地を囲む美しい庭とのつながりを改善しながら、床面積を増やしたいと考えました。
そこで2人は、リノベーション会社の指揮のもと、建築家が作成した図面をベースに、大がかりな増築プロジェクトにとりかかりました。しかし、新しい空間がつくられるたびに期待は裏切られ続け、ついには、頭をもたげる疑念を無視できない状態になりました。これ以上前に進めなくなった2人は、プロジェクトを完成させるために、別のデザイナーに助けを求めたのです。
Houzzで専門家を探すことにした2人は、そこで事例写真や過去のオーナーが残したレビューを調べました。オーナーが文字通り助けを求めて連絡をすると、インテリアデザイナーのMary Reille(マリー・レイユ)さんは素早く対応してくれたといいます。初回のミーティングは順調に進み、レイユさんがいきなり主な問題点を指摘したことで、オーナーは安心し、自信を取り戻しました。そして数ヶ月後には、自分たちが夢見た通りの住まいを手にしたのです。
そこで2人は、リノベーション会社の指揮のもと、建築家が作成した図面をベースに、大がかりな増築プロジェクトにとりかかりました。しかし、新しい空間がつくられるたびに期待は裏切られ続け、ついには、頭をもたげる疑念を無視できない状態になりました。これ以上前に進めなくなった2人は、プロジェクトを完成させるために、別のデザイナーに助けを求めたのです。
Houzzで専門家を探すことにした2人は、そこで事例写真や過去のオーナーが残したレビューを調べました。オーナーが文字通り助けを求めて連絡をすると、インテリアデザイナーのMary Reille(マリー・レイユ)さんは素早く対応してくれたといいます。初回のミーティングは順調に進み、レイユさんがいきなり主な問題点を指摘したことで、オーナーは安心し、自信を取り戻しました。そして数ヶ月後には、自分たちが夢見た通りの住まいを手にしたのです。
どんなHouzz?
住まい手:60代のご夫妻と、若い2人の子どもたち
所在地: イニー(フランス)の1950年代に建てられた住宅
面積:44平方メートルから90平方メートルに増築
施工時期:10ヶ月の作業と改修を経て、2020年10月に竣工
デザイナー:Mary Reille(マリーレイユ)
予算:改修費用3万9千ユーロ(約524万円)と、建具費用4万5千ユーロ(約605万円)
写真:Antoine Huot
住まい手:60代のご夫妻と、若い2人の子どもたち
所在地: イニー(フランス)の1950年代に建てられた住宅
面積:44平方メートルから90平方メートルに増築
施工時期:10ヶ月の作業と改修を経て、2020年10月に竣工
デザイナー:Mary Reille(マリーレイユ)
予算:改修費用3万9千ユーロ(約524万円)と、建具費用4万5千ユーロ(約605万円)
写真:Antoine Huot
当初は44㎡だった1階を、90㎡に改築
珍しい依頼に興味をもったレイユさんは、オーナーからの問い合わせにすぐに応じました。「家を訪れてすぐに、どうしたら空間をもっとよくできるか、この家族に自分が何を提供できるかが頭に浮かびました。私が新しい図面を引くあいだ、作業を止めるようお願いしました」とレイユさんは話します。
珍しい依頼に興味をもったレイユさんは、オーナーからの問い合わせにすぐに応じました。「家を訪れてすぐに、どうしたら空間をもっとよくできるか、この家族に自分が何を提供できるかが頭に浮かびました。私が新しい図面を引くあいだ、作業を止めるようお願いしました」とレイユさんは話します。
ビフォー:もともとこの住宅は、1階が44平米のキューブ型をしていました。平面図を見ると、もともとの立方体の側面に、建築家の図面を元にして、オーナー家族がつくり始めていた2つの増築部分が付け加えられていることがわかります。床面積は合計で90平米に増えています。
建築家が思い描いたのは次のような計画でした。
建築家が思い描いたのは次のような計画でした。
- 玄関は元の場所、つまり建物側面の施主が車を停める場所の後ろに残す
- 一番大きな部屋はキッチンダイニングへと改修し、家とはドアと階段でつながる庭に面した増築部分はリビングとする
- 小さい方の増築部は、洗濯室とキッチンとして使う
アフター:インテリアデザイナーのレイユさんは、オーナーが作業を進めるうちに疑念を募らせていった理由をすぐに理解しました。「この計画のすべてが、家族で使うには実用的ではありませんでした。収納も靴を脱ぐスペースもない小さな玄関が、駐車場に一番近い側面に配置されています。キッチンは家の裏手にあるテラスからとても遠く、リビングはほかの空間から切り離され、そして空間は壁に遮られているために、日当たりが良くなかったのです」
数々の不満要素に直面したレイユさんは、「オーナーのニーズを実現するために、あえてすべてを引っかき回す」ことを提案しました。
Houzzで住まいの専門家を探す
数々の不満要素に直面したレイユさんは、「オーナーのニーズを実現するために、あえてすべてを引っかき回す」ことを提案しました。
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ビフォー:レイユさんが初めてこの家を訪れた際の写真は、この2枚しか残っていません。ここに写っているのは、もともと家の中心だった場所で、小さい方の増築部分によって、奥に拡張されています。建築家の計画では、奥にキッチンを置き、天井に設けた2つのベルックス社製の天窓から光を取り入れる予定でした。
ダイニングとなるはずの空間に地下室への進入路を見つけた時、レイユさんは心からオーナーを助けたいと思いました。「小さい子どもが2人もいるのに、部屋の真ん中に地下に降りる階段があるのは危険です!」
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アフター:住宅に対するレイユさんのスタイルは、「機能性と美しさが調和し、より良い暮らしを生み出す流動的で光溢れる空間」であるといいます。
これを実現するために、レイユさんは動かすことが難しい間仕切りではなく、造作を使って空間をつくります。ここでは、1階の中央にあった構造壁さえも取り払うことで、横につながった空間を生み出しています。「カスタムメイドの家具は、空間を最大限活用するのに最適です。部屋を形づくりながらも機能性をもたらします」とレイユさんは語ります。「ル・コルビュジエやシャルロット・ペリアンの時代にそうであったように、カスタムメイドの家具と建築は切り離すことができないものなのです」
また、オーナーからの要望が「収納、収納、とにかく収納!」であったため、レイユさんは巨大でありながらほとんど目につかないクローゼットを、玄関の間仕切りとして設置しました。「気づかれない収納こそ、良い収納です」とレイユさん。
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また、オーナーからの要望が「収納、収納、とにかく収納!」であったため、レイユさんは巨大でありながらほとんど目につかないクローゼットを、玄関の間仕切りとして設置しました。「気づかれない収納こそ、良い収納です」とレイユさん。
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この家族は全員スポーツ好きです。父親はゴルフを、子どもたちはサッカーやテニスを、そして母親はピラティスをします。
そこでレイユさんは、1人につき戸棚1つを割り当てることで、それぞれが必要なものをすべて持って出かけられるようにしました。
戸棚の中はあつらえでつくられています。小物用の棚、キャップや日除け帽子用の引出し、そして洋服用のレールはそれぞれのコートやジャケットに高さが合わせてあります。「ディテールにこだわりがあるんです」とレイユさんは語ります。
そこでレイユさんは、1人につき戸棚1つを割り当てることで、それぞれが必要なものをすべて持って出かけられるようにしました。
戸棚の中はあつらえでつくられています。小物用の棚、キャップや日除け帽子用の引出し、そして洋服用のレールはそれぞれのコートやジャケットに高さが合わせてあります。「ディテールにこだわりがあるんです」とレイユさんは語ります。
レイユさんは、玄関収納の装飾を忘れませんでした。Egger(エガー)のオーク突板で仕上げられた収納の中央には、絵画で強調されたベンチが設けられています。
「ベンチをつくった理由は、子どもたちがイケアのスツールに座って靴を脱ぐのを目にしたからです」とレイユさん。「ベンチの下には買物バッグを収納するための大きな引出しがあります」
「ベンチをつくった理由は、子どもたちがイケアのスツールに座って靴を脱ぐのを目にしたからです」とレイユさん。「ベンチの下には買物バッグを収納するための大きな引出しがあります」
リビング側には別の戸棚があり、テレビ台や本棚として機能しながら、その後ろにある2階へ向かう階段の手すりの役割も果たしています。レイユさんは、光を取り入れるために木製ルーバーに角度を付けた間仕切りへと、注意を向けさせています。巧みなディテールを好むレイユさんは、ルーバーをひとつひとつ回転台に載せてその場で調整することで、不規則な壁の高さという避けることのできない問題を解決しました。
カスタムメイドの家具の青色は、オーナーがクロマティックカラー(有彩色)の色見本から選び、工場で吹き付け塗装されています。「MDFに現場で塗装したときのような、ざらざらした仕上げは好きではないんです」
カスタムメイドの家具の青色は、オーナーがクロマティックカラー(有彩色)の色見本から選び、工場で吹き付け塗装されています。「MDFに現場で塗装したときのような、ざらざらした仕上げは好きではないんです」
中央の壁がなくなったことで、リビングは広々として気持ちのいい空間となり、北東側のファサードと南東側の庭の間を通り抜ける光を享受できるようになりました。
「配置計画で大切なのはプロポーションと、交流のシーンを強調する流れです。私はリビングの大きさを優先しましたが、それはここがとくに重要な団らん空間だからであり、そのうえで10人収容できるダイニングと、内と外の境目にあるキッチンとの理にかなった流れを考えました。家中を歩き回って洗面所を探す必要のない、合理的な解決策です」とレイユさんは語ります。
しかしながら、レイユさんはデザインに個性をもたせるために、元からある要素もいくつか残すことを好みます。そこで、くせのある年代物の窓の登場です。改修前の家から保存されたこの窓は、Securit製のペアガラスによって、現代的にアップデートされています。
「配置計画で大切なのはプロポーションと、交流のシーンを強調する流れです。私はリビングの大きさを優先しましたが、それはここがとくに重要な団らん空間だからであり、そのうえで10人収容できるダイニングと、内と外の境目にあるキッチンとの理にかなった流れを考えました。家中を歩き回って洗面所を探す必要のない、合理的な解決策です」とレイユさんは語ります。
しかしながら、レイユさんはデザインに個性をもたせるために、元からある要素もいくつか残すことを好みます。そこで、くせのある年代物の窓の登場です。改修前の家から保存されたこの窓は、Securit製のペアガラスによって、現代的にアップデートされています。
個性を尊重しながら、住み心地の良さを追求するため、床のタイルは柔らかいグレーの、高品質なイタリアのポーセリンストーンを採用しました。
レイユさんは、採光にも気を配り、建築家が提案したキッチンの2つの天窓についても再考を促しました。「防水加工などにかかる費用や、夏場に強い光がはいりすぎて室内が熱くなり過ぎることが気になったので、天窓の代わりにガラス張りの扉を導入することを提案しました」(レイユさん)
レイユさんは、採光にも気を配り、建築家が提案したキッチンの2つの天窓についても再考を促しました。「防水加工などにかかる費用や、夏場に強い光がはいりすぎて室内が熱くなり過ぎることが気になったので、天窓の代わりにガラス張りの扉を導入することを提案しました」(レイユさん)
家具についても、最初に決めずに3D間取り図を使って、「この場所に合う家具をクライアントに提示して、ひとつひとつご納得いただいてから、決めていくように心がけました」(レイユさん)
たとえば、3D間取り図で提示したSilestone製カウンタートップMarquinaも、クライアントがひと目見て気に入って、キッチンに導入することになりました。
キッチンは、当初の計画でリビングルームがあるはずだった場所に配しました。テラス付きの庭に面しているこちらの位置に移したので、食事をキッチンでもテラスでも楽しめます。
造作家具については、レイユさんがまずイメージ画像を提示して、オーナーが気に入ったものを、10年以上つき合いのあるポルトガルの建具屋に発注する方式を取りました。「こうすることで、手頃な価格でクオリティーの高い家具をつくることができるのです」(レイユさん)
ランドリーとの仕切りに設置した縦溝ガラス付きのパーティションもポルトガルで製作しました。
ランドリーは当初、玄関の横の狭いスペースに計画されていましたが、レイユさんはキッチン側に持ってきました。
ランドリーは当初、玄関の横の狭いスペースに計画されていましたが、レイユさんはキッチン側に持ってきました。
キッチンとランドリーの境に設置したパーティションを更に延長して、ワインクーラー付きのバーカウンターも造りました。
「オーナーの希望をただ叶えるだけでなく、美しく仕上げるのが私の仕事です」(レイユさん)
「オーナーの希望をただ叶えるだけでなく、美しく仕上げるのが私の仕事です」(レイユさん)
ゲスト用トイレの位置は、庭に続く扉の近くに移動させました。ご友人たちとBBQを外のテラスですることの多いオーナーにとって、トイレを庭の近くにすることは理にかなっていました。
また既に購入してあった人工大理石コーリアンは、無駄にすることなく、洗面台のカウンタートップに採用しました。
また既に購入してあった人工大理石コーリアンは、無駄にすることなく、洗面台のカウンタートップに採用しました。
レイユさんの仕事に大満足したオーナーご夫妻は、次なるプランもレイユさんに依頼することにしたそうです。それは、屋根をあげて延床面積を200平方メートル増やすこと。完成が待ち遠しいと言います。
今回の改修を無事に終えたレイユさんはこう語ります。「リノベーションする際、確固たる最終イメージをつかめないままプロジェクトを進めると、今回のように途中で行き詰まってしまいます。専門家の役割は、お施主様にご納得いただけるまで、きちんとデザインをすることです」
レイユさんはコミュニケーションの重要性についても言及してくれました。「今回、お施主様と何度もやりとりを重ねたので、最終的にとても喜んでいただけました。もとはと言えば、Houzzが結んでくれたオーナーご夫妻とのご縁。素敵な出会いに感謝しています!」
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