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【メゾン・エ・オブジェ2022】エリザベス・ルリッシュが語る、今年の注目トレンド
インテリアの「パリコレ」とも称される国際見本市で、「What’s New」エリアの展示「 Elements of Nature」を手がけたトレンドコンサルタントに聞きます。
Agnès Carpentier
2022年3月28日
2022年3月24日から28日にパリで開催されたメゾン・エ・オブジェで人気だったのが、「What’s New」エリアです。展示を手がけたエリザベス・ルリッシュが、同見本市で発表された最新コレクションをもとに、オブジェ、家具、テキスタイル、テーブルウェアのトレンドをピックアップしました。
今年のメゾン・エ・オブジェでは、出展者が参加できなかったり、新しいコレクションを発表できなかったりと、混乱も見られました。そのような中、トレンド予測を専門とし、自身の名を冠したスタイルエージェンシーの創立者であるルリッシュは、「Elements of Nature(自然の要素)」をテーマに、最新トレンドの展示をキュレーションしました。「困難な時代に何よりも安らぎを与えてくれるもの」とルリッシュが語る、インテリアにおける価値あるものを、展示の内容にそってご紹介します。
今年のメゾン・エ・オブジェでは、出展者が参加できなかったり、新しいコレクションを発表できなかったりと、混乱も見られました。そのような中、トレンド予測を専門とし、自身の名を冠したスタイルエージェンシーの創立者であるルリッシュは、「Elements of Nature(自然の要素)」をテーマに、最新トレンドの展示をキュレーションしました。「困難な時代に何よりも安らぎを与えてくれるもの」とルリッシュが語る、インテリアにおける価値あるものを、展示の内容にそってご紹介します。
インテリアのトレンドセッターとして活躍するエリザベス・ルリッシュ
自然への賛歌
メゾン・エ・オブジェでは、「What’s New」エリアが毎年話題となります。今年の「What’s New」エリアでは、エリザベス・ルリッシュが「Elements of Nature」と題した展示を開催し、3つのテーマを取り上げました。ここでご紹介する3つのインテリアデザインの世界観を採り入れれば、皆さんの住まいに新しい風を吹き込み、疲れ切った心を癒すことができるでしょう。
思索を深める自然
物ごとの本質を再発見したいという私たちのニーズに呼応して、軽やかさと透け感が強調されました。青という癒しの色が中核にすえられ、透明な家具、食器類の釉薬、軽やかなファブリックのドレープなど、水の流動性の表現を追求したスタイルが展開されました。
自然への賛歌
メゾン・エ・オブジェでは、「What’s New」エリアが毎年話題となります。今年の「What’s New」エリアでは、エリザベス・ルリッシュが「Elements of Nature」と題した展示を開催し、3つのテーマを取り上げました。ここでご紹介する3つのインテリアデザインの世界観を採り入れれば、皆さんの住まいに新しい風を吹き込み、疲れ切った心を癒すことができるでしょう。
思索を深める自然
物ごとの本質を再発見したいという私たちのニーズに呼応して、軽やかさと透け感が強調されました。青という癒しの色が中核にすえられ、透明な家具、食器類の釉薬、軽やかなファブリックのドレープなど、水の流動性の表現を追求したスタイルが展開されました。
ルリッシュによる「Elements of Nature」と題した展示
本質的な自然
素朴さ、手仕事、そして地域性が重視されました。ルリッシュは、デジタルアーティストのリッカルド・フォルノーニの手を借りて3Dデザイン技術を用い、このテーマを金色に輝く、小麦畑に佇むコンテンポラリーな農場として表現しました。
リネンなどの自然繊維や木材、テラコッタやサンドなどのアースカラーは、未来への不安を感じる私たちに寄り添い、導いてくれることでしょう。
本質的な自然
素朴さ、手仕事、そして地域性が重視されました。ルリッシュは、デジタルアーティストのリッカルド・フォルノーニの手を借りて3Dデザイン技術を用い、このテーマを金色に輝く、小麦畑に佇むコンテンポラリーな農場として表現しました。
リネンなどの自然繊維や木材、テラコッタやサンドなどのアースカラーは、未来への不安を感じる私たちに寄り添い、導いてくれることでしょう。
ルリッシュによる「Elements of Nature」と題した展示
彫刻的な自然
鉱物的、あるいはブルータリスト的ともいえる世界観に基づいたテーマです。この無機質で現代的なデザインテーマは、大理石やトラバーチンといった素材の力強さや、トーテムのような造形を持つ家具の彫刻性へと私たちを駆り立てます。また、焔の芸術によって生まれた白色から(無煙炭もしくは暗赤色のような)黒色にわたる多様な色彩は、大地を肌で感じるような効果を生んでいます。
Houzzで住まいの専門家を探す
彫刻的な自然
鉱物的、あるいはブルータリスト的ともいえる世界観に基づいたテーマです。この無機質で現代的なデザインテーマは、大理石やトラバーチンといった素材の力強さや、トーテムのような造形を持つ家具の彫刻性へと私たちを駆り立てます。また、焔の芸術によって生まれた白色から(無煙炭もしくは暗赤色のような)黒色にわたる多様な色彩は、大地を肌で感じるような効果を生んでいます。
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ルリッシュによる「Elements of Nature」と題した展示
2022年の注目トレンド
経験豊富なトレンド予測の専門家をもってしても、展示の企画は簡単な仕事ではありません。「数あるトレンドをまとめて、それぞれのトレンドが映し出す世界観をつくり上げていく際、私は来場者の心に訴えかけることを常に意識しています。なぜなら、感情は普遍的なものだからです。目を閉じて感情や感覚を探り、素材や色彩の雰囲気を想像することで、見本市でこれらのオブジェに接する来場者と心でつながることができます」とルリッシュは話します。
しかし、彼女にはスタイルエージェンシーで20年以上にわたってファッション、インテリア装飾、デザイン、そしてテクノロジーのトレンドを分析してきたというキャリアがあります。また、ルリッシュは、La Redoute Interiorsのコンサルタントとして家具、インテリア装飾、テキスタイルのすべてのコレクションの方向性を見出す中で培った経験を活かしています。
2022年の注目トレンド
経験豊富なトレンド予測の専門家をもってしても、展示の企画は簡単な仕事ではありません。「数あるトレンドをまとめて、それぞれのトレンドが映し出す世界観をつくり上げていく際、私は来場者の心に訴えかけることを常に意識しています。なぜなら、感情は普遍的なものだからです。目を閉じて感情や感覚を探り、素材や色彩の雰囲気を想像することで、見本市でこれらのオブジェに接する来場者と心でつながることができます」とルリッシュは話します。
しかし、彼女にはスタイルエージェンシーで20年以上にわたってファッション、インテリア装飾、デザイン、そしてテクノロジーのトレンドを分析してきたというキャリアがあります。また、ルリッシュは、La Redoute Interiorsのコンサルタントとして家具、インテリア装飾、テキスタイルのすべてのコレクションの方向性を見出す中で培った経験を活かしています。
Atelier Germainの塗料コレクションHorizonのBrunante色
モーヴカラーの躍進
このようにルリッシュは、事前にトレンドをとらえ、数か月後、さらにはもっと先の未来の住まいの姿を見通しています。「10年前、ベージュがソファの色の主流だった頃、私はローズカラーを提案しました。ベージュを王座から降ろすには、アプリコットやテラコッタ、カーキ、ユーカリ色が登場した2020年まで待たなくてはなりませんでした。
ベッドに関しては、一番売れている色は、今でもブルーとマスタードカラーです。また、私たちがすでに5年前に提案したアールデコのモチーフは、今でも多くの人に愛されています。今シーズン以降は、パステルカラー、特にモーヴ系とヴァイオレット系の色がインテリアデザイン業界を席巻するでしょう」とルリッシュは語ります。
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モーヴカラーの躍進
このようにルリッシュは、事前にトレンドをとらえ、数か月後、さらにはもっと先の未来の住まいの姿を見通しています。「10年前、ベージュがソファの色の主流だった頃、私はローズカラーを提案しました。ベージュを王座から降ろすには、アプリコットやテラコッタ、カーキ、ユーカリ色が登場した2020年まで待たなくてはなりませんでした。
ベッドに関しては、一番売れている色は、今でもブルーとマスタードカラーです。また、私たちがすでに5年前に提案したアールデコのモチーフは、今でも多くの人に愛されています。今シーズン以降は、パステルカラー、特にモーヴ系とヴァイオレット系の色がインテリアデザイン業界を席巻するでしょう」とルリッシュは語ります。
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デザイナー、クロード・カルティエのフランス・リヨンにあるアパートの一室
ヴィンテージ、色彩、そして曲線の美
そのほかに注目すべき2022年のトレンドはどのようなものでしょうか?「最も注目度の高いトレンドは、オーセンティックで本質に迫るスタイルをテーマにした住まいで、これは自然からインスピレーションを得ています。同様の理由から、1970年代に思いを馳せ、リサイクルショップでの買い物やリサイクルに対する意識が高い30代の人々の間でヴィンテージへの注目も集まっています」と言うルリッシュ。
「このオリジンへの回帰といえる現象がある一方で、色彩や曲線的なデザインの復活など、より楽観的かつ回帰的な傾向も見られます。トレンド予側の専門家であるヴァンサン・グレゴワールが、今回のメゾン・エ・オブジェのテーマを『ニューラグジュアリー』と名付けたように、既存のラグジュアリーの概念を超越した、ファンタジーのようなスタイルが生まれています」(ルリッシュ)
ヴィンテージ、色彩、そして曲線の美
そのほかに注目すべき2022年のトレンドはどのようなものでしょうか?「最も注目度の高いトレンドは、オーセンティックで本質に迫るスタイルをテーマにした住まいで、これは自然からインスピレーションを得ています。同様の理由から、1970年代に思いを馳せ、リサイクルショップでの買い物やリサイクルに対する意識が高い30代の人々の間でヴィンテージへの注目も集まっています」と言うルリッシュ。
「このオリジンへの回帰といえる現象がある一方で、色彩や曲線的なデザインの復活など、より楽観的かつ回帰的な傾向も見られます。トレンド予側の専門家であるヴァンサン・グレゴワールが、今回のメゾン・エ・オブジェのテーマを『ニューラグジュアリー』と名付けたように、既存のラグジュアリーの概念を超越した、ファンタジーのようなスタイルが生まれています」(ルリッシュ)
ローラ・ゴンザレスが手掛けたLa Gare
写真:Jérome Galland
ミックスアンドマッチ
とはいえ、ルリッシュは、私たちとトレンドとの関係がどのように変化してきたかを指摘します。「ある種の社会的背景を持つベビーブーム世代の人々は、今でもトレンドをルールとして使っています。しかし、ミレニアル世代の人たちは、自分のスタイルを自由につくり上げることを重視しています。今日の世界では、トレンドに絶対的な命令を下す力はないのだと私は話してきました。トータルルックの時代は終わり、ミックスアンドマッチの時代が始まったのです」
ルリッシュは、このトレンドの代表する人物としてインテリアデザイナーのローラ・ゴンザレスの名前を挙げました。ゴンザレスは、制約のないトレンドのファンタジーと古い伝統を衝突させて、色彩の爆発を起こすといったような、折衷的なスタイルを非常に好んでいます。
写真:Jérome Galland
ミックスアンドマッチ
とはいえ、ルリッシュは、私たちとトレンドとの関係がどのように変化してきたかを指摘します。「ある種の社会的背景を持つベビーブーム世代の人々は、今でもトレンドをルールとして使っています。しかし、ミレニアル世代の人たちは、自分のスタイルを自由につくり上げることを重視しています。今日の世界では、トレンドに絶対的な命令を下す力はないのだと私は話してきました。トータルルックの時代は終わり、ミックスアンドマッチの時代が始まったのです」
ルリッシュは、このトレンドの代表する人物としてインテリアデザイナーのローラ・ゴンザレスの名前を挙げました。ゴンザレスは、制約のないトレンドのファンタジーと古い伝統を衝突させて、色彩の爆発を起こすといったような、折衷的なスタイルを非常に好んでいます。
フランス・パリにある120平方メートルの広さの室内。 OUI Architectureによって改装された。
写真:Thomas De Bruyne
一点ものや自然の素材への愛
ルリッシュは、折衷主義的なスタイルの他に、ボヘミアンスタイルや、リネン素材などの自然繊維の根強い人気に着目しています。また、過激な消費社会から距離を置き、一点ものの工芸品を愛するミニマリズムも同様に人気を誇っています。「デジタル化が進む社会では、自然素材や陶磁器の魅力がかつてないほどに人気を集めています」とルリッシュは話します。
今後の住まいの展望は?
この先数年の間に住まいがどのように発展していくのかという、今まさにインテリアデザインの転換期にいる私たちにとって答えづらい質問をルリッシュに投げかけました。
室内の生活必需品の無駄をなくす
「住まいと呼べる場所を持っていることに対する感謝の気持ちを持てるかどうかは私たち次第です」とルリッシュは言います。
この不安に満ちた時代に、彼女は、室内空間のなかの優先順位をアップデートすることの必要性を指摘します。「私たちは、原産地やサプライチェーンを簡単に追跡することができる物を置き、自然との繋がりをより強く感じられるような健康的で快適な住まいを好みます」とルリッシュ。
エコ・サステナブルの記事を読む
写真:Thomas De Bruyne
一点ものや自然の素材への愛
ルリッシュは、折衷主義的なスタイルの他に、ボヘミアンスタイルや、リネン素材などの自然繊維の根強い人気に着目しています。また、過激な消費社会から距離を置き、一点ものの工芸品を愛するミニマリズムも同様に人気を誇っています。「デジタル化が進む社会では、自然素材や陶磁器の魅力がかつてないほどに人気を集めています」とルリッシュは話します。
今後の住まいの展望は?
この先数年の間に住まいがどのように発展していくのかという、今まさにインテリアデザインの転換期にいる私たちにとって答えづらい質問をルリッシュに投げかけました。
室内の生活必需品の無駄をなくす
「住まいと呼べる場所を持っていることに対する感謝の気持ちを持てるかどうかは私たち次第です」とルリッシュは言います。
この不安に満ちた時代に、彼女は、室内空間のなかの優先順位をアップデートすることの必要性を指摘します。「私たちは、原産地やサプライチェーンを簡単に追跡することができる物を置き、自然との繋がりをより強く感じられるような健康的で快適な住まいを好みます」とルリッシュ。
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写真:Libeco Home
ルリッシュは、最近では、食料やエネルギーなどを自給自足する生活や自然を求めて郊外に移り住む家族も増えていると言及しました。
また、彼女は住まいの未来予想図を教えてくれました。それは、「繭玉のように包み込みつつも穴のような隙間がいくつもある」、つまり「(人と自然を)切り離さずに守る」住まいです。ルリッシュは、テクノロジーが私たちと地球がつながりを保つために大きな役割を果たすと考えています。「(テクノロジーは)つながりやすさを促進し、個人宅のオートメーション化を実現し、私たちの生活をシンプルにするでしょう」とルリッシュは語ります。
また、ルリッシュはテレワークが定着すると考えており、住まいにできる限り良いオフィスを設けることの必要性が高まると予想しています。さらに、「備え付けではないフレキシブルな室内家具を選ぶこと」の重要性を強調しています。フレキシブルな家具を選べば、異なる世代の人々が一つ屋根の下で暮らすことによって生じるニーズに対応し、住まい手のライフステージに合わせた室内環境を作ることができるからです。
最後にルリッシュは、将来の住まいを描くためのキーワードを教えてくれました。
「快適さと安らぎ、そして独創性と創造力」。これらの要素を上手に組み合わせて、より良い住まいを作っていきましょう!
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また、ルリッシュはテレワークが定着すると考えており、住まいにできる限り良いオフィスを設けることの必要性が高まると予想しています。さらに、「備え付けではないフレキシブルな室内家具を選ぶこと」の重要性を強調しています。フレキシブルな家具を選べば、異なる世代の人々が一つ屋根の下で暮らすことによって生じるニーズに対応し、住まい手のライフステージに合わせた室内環境を作ることができるからです。
最後にルリッシュは、将来の住まいを描くためのキーワードを教えてくれました。
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