人と猫と本に優しい、自然素材に包まれた住まい
グラフィックデザイナーの女性オーナーが、数学者のパートナーと2匹の愛猫と暮らす家。ご実家の思い出も息づく、温故知新を大切にしたお宅です。
Miki Anzai
2022年5月26日
都内のご実家を突然受け継ぐことになり、オーナーがネット検索で探しあてたのが、神奈川県を拠点とする建築士事務所の株式会社古今でした。住み手の暮らしに寄り添い、自然素材を大切にする同社の姿勢に惚れ込んだオーナーは、代表の元井史朗さんに、長文で"思いの丈"を綴って送りました。
その「熱い想い」に惹かれつつ、元井さんは家の設計だけでなく現場監督もするため、自宅から往復6時間かかる場所での仕事に初めは躊躇したそうです。それでも、グラフィックデザイナーのオーナーと会ってみると「感性がピタッと合い、意見を出しあえば、きっとよい家ができる!」とお互いに確信したそうです。
完成したお宅は、大工職人だったオーナーのお父様が建てたご実家の柱や梁を再利用し、お母様が大切にされていた樹木や石を残しながら、数学者のパートナーが所有する無数の書物をしっかりと納め、2匹の愛猫と安心して暮らせる住まいです。
その「熱い想い」に惹かれつつ、元井さんは家の設計だけでなく現場監督もするため、自宅から往復6時間かかる場所での仕事に初めは躊躇したそうです。それでも、グラフィックデザイナーのオーナーと会ってみると「感性がピタッと合い、意見を出しあえば、きっとよい家ができる!」とお互いに確信したそうです。
完成したお宅は、大工職人だったオーナーのお父様が建てたご実家の柱や梁を再利用し、お母様が大切にされていた樹木や石を残しながら、数学者のパートナーが所有する無数の書物をしっかりと納め、2匹の愛猫と安心して暮らせる住まいです。
住宅密集地の中にオアシスのように佇む家。平屋建てのようですが、屋根の高い部分にロフトスペースを組み込んだ2階建てです。
どんなHouzz?
所在地:東京都
住まい手:オーナーご夫妻+猫2匹+たくさんの書籍
延床面積:79.32㎡ (24坪)
構造:木造軸組
設計/施工/撮影:株式会社古今
竣工:2021年
ご両親が大切にされていたモミジの木(写真中央)は、この土地の生き字引として残しました。そのモミジを愛でるための窓や玄関引き戸を、オーナー念願の木製にするため、防火地域内の建物を、前面道路から奥まった位置に配しました。
どんなHouzz?
所在地:東京都
住まい手:オーナーご夫妻+猫2匹+たくさんの書籍
延床面積:79.32㎡ (24坪)
構造:木造軸組
設計/施工/撮影:株式会社古今
竣工:2021年
ご両親が大切にされていたモミジの木(写真中央)は、この土地の生き字引として残しました。そのモミジを愛でるための窓や玄関引き戸を、オーナー念願の木製にするため、防火地域内の建物を、前面道路から奥まった位置に配しました。
下駄を愛用し、「和」のテイストを好むオーナーお気に入りの玄関。茶室の床の間のように、土壁に掛けた一輪挿しが映えます。
造作の腰掛けと手すりは便利なだけでなく、オーナーいわく「元井さんが丁寧に磨いてくれたので、スベスベで手触りが抜群!」なのだそう。
造作の腰掛けと手すりは便利なだけでなく、オーナーいわく「元井さんが丁寧に磨いてくれたので、スベスベで手触りが抜群!」なのだそう。
オーナーの発案で、本棚には猫ちゃんたちが上下運動をできる、猫ステップも付けました。撮影日には、自らステップに立ちポーズを決める愛猫のたつこさん。猫モデルの鏡です。
このリビングから玄関に通じるガラスの引き戸(写真右)と、玄関を挟んだ先のシューズクロークとの境の引き戸は、猫ちゃんたちの脱走防止の役割も果たしています。
このリビングから玄関に通じるガラスの引き戸(写真右)と、玄関を挟んだ先のシューズクロークとの境の引き戸は、猫ちゃんたちの脱走防止の役割も果たしています。
リビングから見たダイニングキッチンと2階のオーナーの仕事場
勾配天井の天窓からは、気持ちのよい自然光が差し込みます。「毎朝ここから空の様子を見上げるのが楽しみ」というオーナー。
存在感のある杉無垢の階段は、燃え代(しろ)設計として材厚を60mm確保しました。「ここの手すりも、元井さんが丁寧に磨いてくれたので、スベスベして気持ちが良いんです」というオーナー。仕事場にしている2階に上り下りする際、いつも手すりを触っているそうです。
勾配天井の天窓からは、気持ちのよい自然光が差し込みます。「毎朝ここから空の様子を見上げるのが楽しみ」というオーナー。
存在感のある杉無垢の階段は、燃え代(しろ)設計として材厚を60mm確保しました。「ここの手すりも、元井さんが丁寧に磨いてくれたので、スベスベして気持ちが良いんです」というオーナー。仕事場にしている2階に上り下りする際、いつも手すりを触っているそうです。
キッチンから見たダイニングとリビングの眺め
2階で仕事をしながら、オーナーがいつも感動するのがツガ材の羽目板を貼った天井です。天井(写真右)の端は、自然光をデッキ側から屋内に引き込むために、リビングの壁が内部に斜めに入り込んでいる分、大工さん泣かせでした。「端まで綺麗に仕上げてあって、惚れ惚れします」というオーナー。
床材と同じホワイトオークで造作した全長2.7mのテーブルは、食卓兼パートナーの仕事場でもあります。建具にはマンガシロ、本棚に赤ラワンと、あえて木材を統一しないことで、素材感を際立たせているのもこの家の特長のひとつです。
2階で仕事をしながら、オーナーがいつも感動するのがツガ材の羽目板を貼った天井です。天井(写真右)の端は、自然光をデッキ側から屋内に引き込むために、リビングの壁が内部に斜めに入り込んでいる分、大工さん泣かせでした。「端まで綺麗に仕上げてあって、惚れ惚れします」というオーナー。
床材と同じホワイトオークで造作した全長2.7mのテーブルは、食卓兼パートナーの仕事場でもあります。建具にはマンガシロ、本棚に赤ラワンと、あえて木材を統一しないことで、素材感を際立たせているのもこの家の特長のひとつです。
ご実家にあった石を利用して造った坪庭
「ほぼ毎日、ここに出て雑草取りをするのが楽しい」と語るオーナー。自然石・苔・つくばい・杉の板塀など、日本人の感性や美意識を呼び起こしてくれる空間です。庭を愛でるためのウッドデッキも併設し、境には猫ちゃんが庭に飛び出さないように扉もつけたので、安心してデッキで愛猫ちゃんと戯れることもあるのだそう。
杉の板塀は、かつての民家でよく見られた“大和張り”です。杉板を1枚おきにズラして重ねて張るので、隣家からの目線を防ぎながら、光や風はしっかりと入ってきます。
「ほぼ毎日、ここに出て雑草取りをするのが楽しい」と語るオーナー。自然石・苔・つくばい・杉の板塀など、日本人の感性や美意識を呼び起こしてくれる空間です。庭を愛でるためのウッドデッキも併設し、境には猫ちゃんが庭に飛び出さないように扉もつけたので、安心してデッキで愛猫ちゃんと戯れることもあるのだそう。
杉の板塀は、かつての民家でよく見られた“大和張り”です。杉板を1枚おきにズラして重ねて張るので、隣家からの目線を防ぎながら、光や風はしっかりと入ってきます。
ところで当初50代のオーナーは、年上のパートナーとの家をバリアフリーの平屋にすることを希望していました。しかし、それではお二人の蔵書を収納しきれないため、ロフトスタイルにして、壁面いっぱいに本棚を造作することにしました。
各棚には蔵書が2列に納まっています。「木材を無駄にしない奥行き寸法で造作したのが、功を奏しました」と言う元井さん。しかも本の荷重に耐えられ、かつ金物が見えないように、職人さんたちがビスを一切使わずに、縦板に溝を掘って、横板をはめ込んでくれました。
本棚の裏側の洗面エリアにもトップライトを設けたので、自然光が差し込み、「暗かった実家とは大違いで明るく快適です」と喜ぶオーナー。
各棚には蔵書が2列に納まっています。「木材を無駄にしない奥行き寸法で造作したのが、功を奏しました」と言う元井さん。しかも本の荷重に耐えられ、かつ金物が見えないように、職人さんたちがビスを一切使わずに、縦板に溝を掘って、横板をはめ込んでくれました。
本棚の裏側の洗面エリアにもトップライトを設けたので、自然光が差し込み、「暗かった実家とは大違いで明るく快適です」と喜ぶオーナー。
シューズクローゼットから寝室を望む裏動線
元井さんが設計で一番こだわったのが、水回りを中心に据え置き、玄関、サニタリー、寝室を介し、家を回遊できる動線でした。「贅沢ではありますが、湿気やカビ、光の明暗や風の抜けを考慮すると、回遊動線に勝るものはない」と断言する元井さん。
「収納が足りなくなる」と訴えるオーナーに対して、何度もプレゼンテーションをして、納得してもらったのだそう。「逆に衣服を断捨離できてよかったです。クローゼットに扉が無くても全く気になりません」(オーナー)
元井さんが設計で一番こだわったのが、水回りを中心に据え置き、玄関、サニタリー、寝室を介し、家を回遊できる動線でした。「贅沢ではありますが、湿気やカビ、光の明暗や風の抜けを考慮すると、回遊動線に勝るものはない」と断言する元井さん。
「収納が足りなくなる」と訴えるオーナーに対して、何度もプレゼンテーションをして、納得してもらったのだそう。「逆に衣服を断捨離できてよかったです。クローゼットに扉が無くても全く気になりません」(オーナー)
愛猫のたつこさんが真ん中に鎮座するのが、シンボルツリーのモミジを愛でたり、読書やお昼寝をするために窓際に造作したソファベッド。猫と人間が陣取り合戦をする、くつろぎのコーナーです。
壁は猫ちゃんたちが引掻くかもしれないので、硬めの漆喰にするか迷った末、古今オリジナルの珪藻土を塗りました。元井さんいわく、「クロスや漆喰は補修しにくいですが、水を混ぜるだけで簡単に補修できる」のだそう。実際、猫ちゃんたちが爪とぎをしたことはまだ無いそうです。
「本当に古今さんにお願いしてよかった」と、オーナーがしみじみと語るように、木や土のぬくもりが感じられる、人や猫、そして本にとっても快適なご自宅兼仕事場でした。
こちらの記事もあわせて
・快適な場所は猫が知っている。猫のお昼寝スポット40選
・猫と暮らす住まいづくりで、押さえておきたい基本のポイント
・猫がインテリアの達人である7つの理由とは?
壁は猫ちゃんたちが引掻くかもしれないので、硬めの漆喰にするか迷った末、古今オリジナルの珪藻土を塗りました。元井さんいわく、「クロスや漆喰は補修しにくいですが、水を混ぜるだけで簡単に補修できる」のだそう。実際、猫ちゃんたちが爪とぎをしたことはまだ無いそうです。
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