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ニューヨーク州北部の自然の中に佇む住宅
ルイス・カーンの建築からインスピレーションを得た建築家たちが、数学的な秩序を応用して、キャッツキル山地を望む絶好の場所に建てた、環境に配慮した家です。
Paco Casas
2022年2月3日
アメリカ・ニューヨーク州のキャッツキルには、キャッツキル山地や緑豊かな森林、多くの湖やダムがあります。「キャッツキルの山々は、“ハドソン・リバー派”(理想化された自然主義で知られる19世紀の風景画家のグループ)にとってのインスピレーションの源でした。彼らはモットーである“発見、探検、移住”に基づいて、落葉樹の森の移りゆく、自然の美しさを描きました」と話すのは、マリア・ミラン・デル・ボッシュと住宅を共同設立した、Donair Milans Arquitectosの建築家、イエス・ドネアです。
住宅にとって、これ以上美しい環境はありません。設計者はこの景観を侵すことを自覚したうえで、周囲に配慮した住宅をつくることを目標としました。
住宅にとって、これ以上美しい環境はありません。設計者はこの景観を侵すことを自覚したうえで、周囲に配慮した住宅をつくることを目標としました。
写真:モンセ・サモラーノ
どんなHouzz?
住まい手:家族
所在地:ニューヨーク州、キャッツキル(アメリカ)
面積: 205平方メートル
建築家: Donaire Milans Arquitectosのイエス・ドネア
構造: LIA Engineering, LLCのルーク・アメイ
カエデやオーク、バーチなどからなる深い森の木陰にたたずむこの住宅は、南北方向の斜面と、東西方向のさらに急な斜面が交わる、開けた場所に注意深く建てられました。雪に覆われているため写真には写っていませんが、「コンクリートの床とコの字の擁壁が道路の反対側に向けて開き、山々と谷の絶景を望むことができます」とドネアは言います。
どんなHouzz?
住まい手:家族
所在地:ニューヨーク州、キャッツキル(アメリカ)
面積: 205平方メートル
建築家: Donaire Milans Arquitectosのイエス・ドネア
構造: LIA Engineering, LLCのルーク・アメイ
カエデやオーク、バーチなどからなる深い森の木陰にたたずむこの住宅は、南北方向の斜面と、東西方向のさらに急な斜面が交わる、開けた場所に注意深く建てられました。雪に覆われているため写真には写っていませんが、「コンクリートの床とコの字の擁壁が道路の反対側に向けて開き、山々と谷の絶景を望むことができます」とドネアは言います。
外観の木のテクスチャは、季節や時間によって移りかわる光や色を反映して、さまざまな色に変化します。
「炭化させた杉を使っているのですが、これは日本の焼杉板の技術を利用したものなんです。水や火、害虫に対して耐性があり、メンテナンスも不要です」とドネアは話します。
「炭化させた杉を使っているのですが、これは日本の焼杉板の技術を利用したものなんです。水や火、害虫に対して耐性があり、メンテナンスも不要です」とドネアは話します。
ショールームとして建てられたこの住宅は、その後、現在の所有者である家族に売却されました。一家が入居したのは、ニューヨークのロックダウン中のことだったといいます。
この住宅は二階建てで、1階に寝室が2部屋、2階にもう2部屋がシンプルにレイアウトされています。主寝室とひと続きとなったものや1階の来客用など、大きさの異なる4つの洗面室があります。
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ドネアは伝統的な切妻屋根ではなく、住宅を2つのボリュームに分け、それぞれに反対向きの勾配屋根を付けました。
それによって、1つの断面では通常よりも高い吹抜け空間を、もう1つの断面では広々とした階段室を実現しています。また、緩やかな勾配によって、住宅と山々、そして谷の間に、視覚的なつながりをつくることができました。
それによって、1つの断面では通常よりも高い吹抜け空間を、もう1つの断面では広々とした階段室を実現しています。また、緩やかな勾配によって、住宅と山々、そして谷の間に、視覚的なつながりをつくることができました。
「環境に十分配慮しながら計画する」という、建築家のコミットメントも満たしています。「自然換気を行え、太陽からの熱を適度に受けられ、さらに主に南北方向に吹く風を遮られるため、ほとんどの開口は東西方向に面しています」とドネア。
建設上の問題を未然に防ぐため、1階にはコンクリートを採用しましたが、それ以外には木を選んだとドネアはいいます。地元の大工たちはほとんど木材しか扱わないのです。
吹抜け空間にある7つに分けられた3段の本棚は、窓枠を形づくる架構のパターンに対応しています。2つのフィックス窓は、一部が開閉可能な3つの縦長の窓パネルと互い違いに並べられています。このデザインは、1961年に、この住宅からほど近いフィラデルフィアに建てられた、ルイス・カーンのエシェリック邸を連想させます。
天井の梁は、“1・2・1・2・1”という窓のパターンを繰り返し、パターンや幾何学、つまり数学によって秩序と静けさをつくり出すデザインの必要性を強調しています。そういった意味で、このデザインは、建築的な脈絡を意図的に取り違えることによって、ポストモダン的な遊び心や、ぎこちなさをなくしているのです。
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名作デザイン:ルイス・カーンの建築
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部屋の反対側(勾配屋根全体の長さに渡る書斎エリアの隣)にも本棚があります。西側の壁には開口がないため、この空間は、吹抜けのある中央空間と反対側の大きな開口から光を取り入れています。
「家の内外には木を使っています。室内でいうと、天井の合板や、柱と梁のパララム、それに根太の無垢材ですね」とドネア。
同様に、「高い断熱性と耐湿性があり、公称寸法から若干のばらつきのある、木繊維とセメントによる複合材料であるヴィロックパネルが、2階の床とすべての洗面室、そしてキッチンの壁に使われています。この家の床暖房や水まわりが適切に機能するためには、これらが欠かせません」
同様に、「高い断熱性と耐湿性があり、公称寸法から若干のばらつきのある、木繊維とセメントによる複合材料であるヴィロックパネルが、2階の床とすべての洗面室、そしてキッチンの壁に使われています。この家の床暖房や水まわりが適切に機能するためには、これらが欠かせません」
カーンのエシェリック邸と同じように、窓やヴォイド(構造物のない空間)が、この主寝室の階段まわりのような静かなスペースをつくりだしています。
暗い雪の降る夜、この家から漏れ出すあたたかな光のみが、木々の影の中に存在するこの家の存在をほのめかします。
この家が最も輝くのは、雪から反射した光を受けるときでしょうか? それとも、春の緑に囲まれたときでしょうか? どちらも捨てがたい魅力があります。
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