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キャンベラのミッドセンチュリー住宅から学ぶ、リノベーションの秘訣
このミッドセンチュリー住宅の繊細なリノベーションの中心となった要素は、色・テクスチャー・そして裏庭とのつながりでした。
Georgia Madden
2022年3月2日
Buck&Simple Architectsの所長である建築家のカート・クリスプさんと、Texture Studioのインテリアデザイナーであるジェン・バージェスさんが共同で手がけた、“エインズリー・コテージ”と呼ばれる4人家族のための小ぶりな戦後期の住宅のリノベーション。その当初の特徴に完全に寄り添いながら、緩やかに現代化するプロセスについて、お二人にお話を伺いました。
写真:Anne Stroud Photography
回答者:建築家でBuck & Simple Architectsの所長であるカート・クリスプさんと、Texture Studioのインテリアデザイナーであるジェン・バージェスさん。
住まい手: 2人の子どもを持つ夫妻
所在地:オーストラリア首都特別地域・キャンベラ
寝室および浴室: 3つの寝室、2つの浴室
住宅の面積: 120平方メートル
予算: 建築およびインテリアデザイン費用として約40万ドル(約3,360万円)
建築家: Buck & Simple Architectsの所長である建築家のカート・クリスプ
インテリアデザイナー、スタイリスト: Texture Studioのデザインディレクターであるインテリアデザイナーのジェン・バージェス
施工業者: WQM Building Group
建具業者: Endeavour Joinery
このプロジェクトでHouzzを利用しましたか?
ジェン・バージェスさん(以下、バージェスさん)「私は画像からインスピレーションを得るためにHouzzを常に参照していますし、ディテールやスタイルについて、クライアントに説明するためのツールとしても利用しています。非常に役立っています」
回答者:建築家でBuck & Simple Architectsの所長であるカート・クリスプさんと、Texture Studioのインテリアデザイナーであるジェン・バージェスさん。
住まい手: 2人の子どもを持つ夫妻
所在地:オーストラリア首都特別地域・キャンベラ
寝室および浴室: 3つの寝室、2つの浴室
住宅の面積: 120平方メートル
予算: 建築およびインテリアデザイン費用として約40万ドル(約3,360万円)
建築家: Buck & Simple Architectsの所長である建築家のカート・クリスプ
インテリアデザイナー、スタイリスト: Texture Studioのデザインディレクターであるインテリアデザイナーのジェン・バージェス
施工業者: WQM Building Group
建具業者: Endeavour Joinery
このプロジェクトでHouzzを利用しましたか?
ジェン・バージェスさん(以下、バージェスさん)「私は画像からインスピレーションを得るためにHouzzを常に参照していますし、ディテールやスタイルについて、クライアントに説明するためのツールとしても利用しています。非常に役立っています」
リノベーション前のキッチン
この住宅について説明してください
バージェスさん:クリスプ「エインズリー・コテージは、戦後期に政府が建設したミッドセンチュリー住宅で、この時代特有の“郊外の夢”を集約したものでした。エインズリー・コテージは平屋の住宅で、3つの寝室と2つの浴室を備えています」
建物はどのような状態でしたか?
カート・クリスプさん(以下、クリスプさん):「この住宅はほぼ当初の状態のままで、建具もそのまま残っていました。よく維持されていましたが、くたびれており、非常に簡素な状態でしたね」
この住宅について説明してください
バージェスさん:クリスプ「エインズリー・コテージは、戦後期に政府が建設したミッドセンチュリー住宅で、この時代特有の“郊外の夢”を集約したものでした。エインズリー・コテージは平屋の住宅で、3つの寝室と2つの浴室を備えています」
建物はどのような状態でしたか?
カート・クリスプさん(以下、クリスプさん):「この住宅はほぼ当初の状態のままで、建具もそのまま残っていました。よく維持されていましたが、くたびれており、非常に簡素な状態でしたね」
クライアントが「機能していない」と感じていたものは何ですか?
クリスプさん:「当初のレイアウトは現代的な生活と娯楽が登場する前のものでしたし、水回りとキッチンの設備・備品間の流れが効率的ではありませんでした。また、屋内からは美しい眺めが遮られていました」
バージェスさん:「各スペースは狭くて暗く、洗濯スペースが屋外にありました。さらに、暖房にも問題がありました」
クリスプさん:「当初のレイアウトは現代的な生活と娯楽が登場する前のものでしたし、水回りとキッチンの設備・備品間の流れが効率的ではありませんでした。また、屋内からは美しい眺めが遮られていました」
バージェスさん:「各スペースは狭くて暗く、洗濯スペースが屋外にありました。さらに、暖房にも問題がありました」
クライアントからはどのような要望がありましたか?
クリスプさん:「彼らの行動的で社交的なライフスタイルに合うように住まいをアップデートし、子どもたちとより良いつながりを生みだせるような場所をつくる、というものでした」
バージェスさん:「既存の住宅の姿を踏まえて階層すること。また、機能性、スペース、および天然素材を優先することが求められました」
クリスプさん:「彼らの行動的で社交的なライフスタイルに合うように住まいをアップデートし、子どもたちとより良いつながりを生みだせるような場所をつくる、というものでした」
バージェスさん:「既存の住宅の姿を踏まえて階層すること。また、機能性、スペース、および天然素材を優先することが求められました」
アフター写真
クライアントが絶対に取り入れて欲しかったものは?
クリスプさん:「より快適な温度、裏庭とのつながり、キッチンのワークトップを拡大、すっきりとした浴室です」
バージェスさん:「開放的な空間とリラックスした雰囲気をつくりだすこと。木製のワークトップを設置し、料理するのが楽しいキッチンをつくること」
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キッチンの印象を決めるワークトップ、どの素材を選ぶ?
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クリスプさん:「より快適な温度、裏庭とのつながり、キッチンのワークトップを拡大、すっきりとした浴室です」
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実現したこと
クリスプさんが回答したのは、以下の通り。
クリスプさんが回答したのは、以下の通り。
- 裏庭への拡張部分とカジュアルな食事スペースを含む、広くて新しいキッチン
- 改装された浴室。独立していたトイレと浴室を統合し、ドアと壁の配置を変えることで以前廊下だった部分へスペースを拡大
- シャワーとトイレを備えた、屋内の新しい洗濯スペース
- 通風を促し、より多くの光を導き入れる新しい窓
- 屋内のいくつかのドアの移動
- 建物裏手の新しいデッキ
- 新しい家具、照明および塗装
- 時代的背景のあるディテールの修復
建築とインテリアデザインのための予算はどれくらいでしたか?
クリスプさん:「約40万ドル(約3,360万円)です」
どこに予算のほとんどが充てられましたか?
クリスプさん:「既存の住宅の改善、私たちの追加要素との調和、無垢木材の建具などです」
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プロに頼んだ方が「お得」なことも。インテリアコーディネートっていくらかかるの?
クリスプさん:「約40万ドル(約3,360万円)です」
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インテリアに関して主な問題または課題と見なされたものは何ですか?
バージェスさん:「住宅をアップデートし、開放的な空間とすることが必要なのは明白でした。ダイニング、キッチン、そしてリビングエリアは分断されていたため、家族がこの家をもっと快適に楽しむには、これらを1つのスペースにすることが必要でした」
クリスプさん:「既存の要素を撤去しすぎないよう、細心の注意を払う必要がありました。達成すべき要望はあったものの、まわりの縁、あるいはモルタル塗りされた“継ぎしゃくり(部材の接合部に沿ってつけられた溝)”といったディテールを見るたびに、そうしたディテールを撤去するのではなく、むしろ利用して改修をする方法はないか検討しました」
バージェスさん:「住宅をアップデートし、開放的な空間とすることが必要なのは明白でした。ダイニング、キッチン、そしてリビングエリアは分断されていたため、家族がこの家をもっと快適に楽しむには、これらを1つのスペースにすることが必要でした」
クリスプさん:「既存の要素を撤去しすぎないよう、細心の注意を払う必要がありました。達成すべき要望はあったものの、まわりの縁、あるいはモルタル塗りされた“継ぎしゃくり(部材の接合部に沿ってつけられた溝)”といったディテールを見るたびに、そうしたディテールを撤去するのではなく、むしろ利用して改修をする方法はないか検討しました」
カラーや素材のパレットの背後にあるあなたの考えは何ですか?
バージェスさん:「住宅内のもとの色に似た、柔らかな緑と白のカラーパレットを選択しました。またクライアントが最近庭に植えた植栽のような、オーストラリアという土地ならではカラーパレットを参考にしました」
「素材は実用性や環境面を考慮して選びました。木製のワークトップやドアには、オーストラリア人が所有する企業が生産しものを使用しましたが、その多くがリサイクルされた素材です。キッチンのキャビネットに使用されているポリテック社の化粧板は、再生可能なマツの植林木から生産されたものです」
バージェスさん:「住宅内のもとの色に似た、柔らかな緑と白のカラーパレットを選択しました。またクライアントが最近庭に植えた植栽のような、オーストラリアという土地ならではカラーパレットを参考にしました」
「素材は実用性や環境面を考慮して選びました。木製のワークトップやドアには、オーストラリア人が所有する企業が生産しものを使用しましたが、その多くがリサイクルされた素材です。キッチンのキャビネットに使用されているポリテック社の化粧板は、再生可能なマツの植林木から生産されたものです」
ミッドセンチュリーの雰囲気を維持しつつ、住宅の外観を一新させた手法が素晴らしいと思います。その方法は目標としていたものだったのですか?
バージェスさん:「もちろんです。こういった特徴のある住宅こそが、私がリノベーションの仕事を好んでいる理由です」
「こうした住宅は風変わりで癖がありますが、楽しく取り組むことができます。住宅に誠実に、そしてそれが建てられた時代への敬意を示すことによって、結果としてユニークで素晴らしい住まいに一変させることができるのです」
バージェスさん:「もちろんです。こういった特徴のある住宅こそが、私がリノベーションの仕事を好んでいる理由です」
「こうした住宅は風変わりで癖がありますが、楽しく取り組むことができます。住宅に誠実に、そしてそれが建てられた時代への敬意を示すことによって、結果としてユニークで素晴らしい住まいに一変させることができるのです」
クリスプさん:「現在の設計手法のなかで、『当初の住宅の設計者が評価するものは何か』を想像するよう努めました。彼らはかなり創意に富んでいて、リスクを取りながらも楽しんでいたように思えます。私たちはかつての仕上げや配置を適合させ、彼らの素材や色のパレットを利用しつつも真似することなく作業しようと努めました。彼らはそうしたやり方を喜んでくれたと思いたいです」
新しいデッキについて教えてください
クリスプさん:「以前あったレンガ製の手すりを備えた狭苦しいコンクリートデッキでは、動きが制限され、視界も妨げられていました。ドアの並び方を変更することで、洗濯スペースの出入口を住宅内に移動し、古いドアを新しいフルハイトのドアに交換することで、キッチン内に自然光と眺望を取り込むことができました」
デッキのアイデアをもっと見る
クリスプさん:「以前あったレンガ製の手すりを備えた狭苦しいコンクリートデッキでは、動きが制限され、視界も妨げられていました。ドアの並び方を変更することで、洗濯スペースの出入口を住宅内に移動し、古いドアを新しいフルハイトのドアに交換することで、キッチン内に自然光と眺望を取り込むことができました」
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今現在、この家を特徴付けているものは何ですか?
バージェスさん:「この家はユニークでありながら、完全にクライアントのニーズに合致したものになっています。温かく、人を招き入れるような雰囲気がありますが、このリノベーションによって快適性がさらに向上しました」
バージェスさん:「この家はユニークでありながら、完全にクライアントのニーズに合致したものになっています。温かく、人を招き入れるような雰囲気がありますが、このリノベーションによって快適性がさらに向上しました」
クリスプさん:「新しいデザイン要素がもとの住宅と競合したり、その背後に隠れたりすることなくシームレスに溶け込んでいます。また、キッチン内の木製建具が非常に良く制作されています。楽しい照明と、すがすがしいほどすっきりした浴室も特徴的です」
浴室のアイデアをもっと見る
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住まいの機能性が改善された理由は何でしょうか?
クリスプさん:「オーナーはこの家がもともと持っていたスタイルを理解していました。時に人は建物を違ったスタイルで着飾らせようとしますが、過去の名残がある状態では、非常に難しいといえます」
「今回のケースでは、ある要素がなぜ特定の在り方で存在しているのを解き明かし、空間を適合させることによって、その存在を讃えようと努めました」
クリスプさん:「オーナーはこの家がもともと持っていたスタイルを理解していました。時に人は建物を違ったスタイルで着飾らせようとしますが、過去の名残がある状態では、非常に難しいといえます」
「今回のケースでは、ある要素がなぜ特定の在り方で存在しているのを解き明かし、空間を適合させることによって、その存在を讃えようと努めました」
屋内の素材パレット
屋外の素材パレット
塗装の色
- トゥールハンマー社の再生木材をキッチンのカウンタートップと吊り棚に使用
- デュラックス社の2液型ポリウレタン塗料“ラモーナ”とポリテック社のフィレンツェクルミの合板をキッチンのキャビネットに使用
- ボーモンとタイル社の壁面タイルを浴室とキッチンで使用
- ペリーニタイル社のパターンセラミックタイルを浴室と洗濯スペースで使用
- ポリテック社のフィレンツェクルミ合板を浴室の洗面台と洗濯スペースの建具に使用
屋外の素材パレット
- スギ材のデッキ
塗装の色
- デュラックス社の“アオラギ”を壁に
- デュラックス社の“ラモーナ”をキッチンのキャビネット
屋内の家具および建具
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自宅のリフォーム・リノベーションを進める前に考えるべきこと
- スメッグ社の電気製品
- ABIインテリア社のヘアライン仕上げのステンレス製水栓金具
- リース社の“カドラックス”バスタブと、“トリュビュートアートラウンド”洗面器。
- ケシー社のブルータスウォールナット材ノブをキッチンと浴室のキャビネットに
- クライアントが購入した鏡とペンダント照明
- 施工会社による窓とドア
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自宅のリフォーム・リノベーションを進める前に考えるべきこと
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