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家づくりの儀式、「地鎮祭」「上棟祭」「竣工祭」とは?
知っているようで知らない家づくりの節目に行われる祭事。その役割と目的をご紹介します。
安井俊夫
2022年1月12日
天工舎一級建築士事務所主宰。神奈川県小田原市に事務所を構え、住宅や店舗などの設計監理業務を行っています。書評やコラムなども執筆中。
家を新築する際や建て替え工事を行う際に、地鎮祭・上棟祭・竣工祭といった祭事を行って、お祓いをすることがあります。名前だけは知っているけれど、内容が分からずに、準備を含めて戸惑う人も多いはず。そんな祭事に関して、ご説明いたします。
地鎮祭
家を建てる時に最初に行われる祭事を、「地鎮祭(じちんさい)」と呼びます。ほかに、「じまつり」や「とこしずめのまつり」とも呼ばれることもあります。
地鎮祭とは建物を建てる前に、工事の無事を祈り、これから建てる家の家内安全を、土地を守る氏神様(うじがみさま)にお願いする儀式です。地鎮祭を取り仕切るのは、その土地の氏神様を祀る神社の神主さん。もし氏神様がわからない場合には、ほかの神主さんにお願いしても問題ありません。また、信心する宗教がある場合には、その宗派にあったお祓いを行うこともあります。
ちなみに筆者はキリスト教式のお祓いや、仏教の道者・山伏が法螺貝を吹くお祓いに立ち会ったこともあります。つまり大切なのは宗派ではなく、土地や家に対する安全を祈願することと、その儀式を一つの節目と理解することです。
家を建てる時に最初に行われる祭事を、「地鎮祭(じちんさい)」と呼びます。ほかに、「じまつり」や「とこしずめのまつり」とも呼ばれることもあります。
地鎮祭とは建物を建てる前に、工事の無事を祈り、これから建てる家の家内安全を、土地を守る氏神様(うじがみさま)にお願いする儀式です。地鎮祭を取り仕切るのは、その土地の氏神様を祀る神社の神主さん。もし氏神様がわからない場合には、ほかの神主さんにお願いしても問題ありません。また、信心する宗教がある場合には、その宗派にあったお祓いを行うこともあります。
ちなみに筆者はキリスト教式のお祓いや、仏教の道者・山伏が法螺貝を吹くお祓いに立ち会ったこともあります。つまり大切なのは宗派ではなく、土地や家に対する安全を祈願することと、その儀式を一つの節目と理解することです。
地鎮祭に用意する物と式次第
神々に奉納する物は「米」「清酒」「海の幸」「山の幸」「塩」「野菜」「水」の7つ。それぞれに意味があるため、建築主が用意する際には、施工者に相談したほうが良いでしょう。また、神主への玉串料も必要です。
式次第を簡単にご説明すると、参列者一同をお祓いする「修祓(しゅばつ)」から始まり、「降神(こうしん)」「献饌(けんせん)」「祝詞奏上(のりとそうじょう)」「清祓い(きよはらい)」「地鎮の儀(じちんのぎ)」「玉串拝礼(たまくじはいれい)」「撤饌(てっせん)」「昇神(しょうしん)」と続きます。ここに挙げたのは一つの参考であり、地域や神社により内容は異なります。
簡単にまとめると、地鎮祭とは「神様に天からお越しいただき、『これから家を建てます』と報告したのちに、天にお帰りいただく」という儀式で、時間は約30分ほどかかります。
また神主さんから「鎮め物(しずめもの)」と呼ばれる小さな桐の箱をいただく地域もあります。鎮め物は建物の下に埋めるお守りのようなもので、箱の中には人形や鏡、刀などが入っているといわれていますが、筆者も中を見たことはないので、正確にはわかりません。これは工事施工者が、工事の際に埋めるのが一般的です。
神々に奉納する物は「米」「清酒」「海の幸」「山の幸」「塩」「野菜」「水」の7つ。それぞれに意味があるため、建築主が用意する際には、施工者に相談したほうが良いでしょう。また、神主への玉串料も必要です。
式次第を簡単にご説明すると、参列者一同をお祓いする「修祓(しゅばつ)」から始まり、「降神(こうしん)」「献饌(けんせん)」「祝詞奏上(のりとそうじょう)」「清祓い(きよはらい)」「地鎮の儀(じちんのぎ)」「玉串拝礼(たまくじはいれい)」「撤饌(てっせん)」「昇神(しょうしん)」と続きます。ここに挙げたのは一つの参考であり、地域や神社により内容は異なります。
簡単にまとめると、地鎮祭とは「神様に天からお越しいただき、『これから家を建てます』と報告したのちに、天にお帰りいただく」という儀式で、時間は約30分ほどかかります。
また神主さんから「鎮め物(しずめもの)」と呼ばれる小さな桐の箱をいただく地域もあります。鎮め物は建物の下に埋めるお守りのようなもので、箱の中には人形や鏡、刀などが入っているといわれていますが、筆者も中を見たことはないので、正確にはわかりません。これは工事施工者が、工事の際に埋めるのが一般的です。
上棟祭(じょうとうさい)
「上棟式」と呼ばれることが多いですが、正確には上棟祭といいます。ほかには、「棟上げ式(むねあげしき)」や「たてまえ」とも呼ばれることもあります。
木造住宅の場合、屋根の一番高い所に「棟木(むなぎ)」と呼ばれる横木がありますが、この棟木を取り付けが完了した際に、家の骨格ができたと考え、そこまでの工事の安全を工匠(こうしょう)の神々に感謝すると共に、職人さんたちへの労いの意味を込めて料理や酒を振舞います。
「上棟式」と呼ばれることが多いですが、正確には上棟祭といいます。ほかには、「棟上げ式(むねあげしき)」や「たてまえ」とも呼ばれることもあります。
木造住宅の場合、屋根の一番高い所に「棟木(むなぎ)」と呼ばれる横木がありますが、この棟木を取り付けが完了した際に、家の骨格ができたと考え、そこまでの工事の安全を工匠(こうしょう)の神々に感謝すると共に、職人さんたちへの労いの意味を込めて料理や酒を振舞います。
(写真:一級建築士事務所 丹羽明人アトリエ提供)
今ではあまり見かけませんが、昔は上棟した際に建築主が屋根の上から餅や米、お金などを投げる、このような「餅撒き」こそが、上棟式のメーン・イベントでした。餅撒きは、家を建てるという「吉=良いこと」をまわりの人にもお裾分けし、吉の裏に隠れる凶を薄めて中和したいという意味もあったようです。
もちろん、ご近所へのご挨拶の意味もあったと思いますが、家を建てる幸せを独り占めすることで、妬みや嫉みを買うことを避けたかったのかもしれません。この祭事でも建物の四方を清めてお祓いしますが、最近では神主を呼ばず、職人がお清めの儀式を執り行うことが多いようです。
こちらもあわせて
上棟式の儀式の一環として「餅撒き」をしたご一家が建てた家の記事を読む。
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もちろん、ご近所へのご挨拶の意味もあったと思いますが、家を建てる幸せを独り占めすることで、妬みや嫉みを買うことを避けたかったのかもしれません。この祭事でも建物の四方を清めてお祓いしますが、最近では神主を呼ばず、職人がお清めの儀式を執り行うことが多いようです。
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上棟祭に用意する物と式次第、費用
祭事に用意する物は、四方をお清めするための「水」「塩」「清酒」「米」の4品。「棟木への幣串(へいぐし)の飾り付け」、建物四方をお清めする「四方固めの儀(しほうがためのぎ)」、建築祈願の挨拶「直来の儀(なおらいのぎ)」、「工事関係者の祈願の挨拶」、「手締め」というのが簡略化された上棟式の流れです。その後、ご祝儀や赤飯などを渡して散会となります。
家づくりのヒントをもっと読む
祭事に用意する物は、四方をお清めするための「水」「塩」「清酒」「米」の4品。「棟木への幣串(へいぐし)の飾り付け」、建物四方をお清めする「四方固めの儀(しほうがためのぎ)」、建築祈願の挨拶「直来の儀(なおらいのぎ)」、「工事関係者の祈願の挨拶」、「手締め」というのが簡略化された上棟式の流れです。その後、ご祝儀や赤飯などを渡して散会となります。
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建築主から、「上棟式はやらないとダメなの?」「職人に渡すご祝儀の相場は?」という質問をいただくことがありますが、これは建築主の考え方次第で、決まりはありません。ハウスメーカーに依頼する場合は、ほぼ必要ないと言われるそうです。
また、現場で酒を振舞われても、職人たちは車の運転などがあるため、飲むことができないので、今は赤飯と缶ビールや清酒を持ち帰っていただくことが多いようです。ご祝儀は心付けなので、額は気にせずとも問題ないと思いますが、どうしても気になる場合には、設計者にコッソリと相談してみてください。
また、現場で酒を振舞われても、職人たちは車の運転などがあるため、飲むことができないので、今は赤飯と缶ビールや清酒を持ち帰っていただくことが多いようです。ご祝儀は心付けなので、額は気にせずとも問題ないと思いますが、どうしても気になる場合には、設計者にコッソリと相談してみてください。
竣工祭(しゅんこうさい)
竣工際は、「竣工式(しゅんこうしき)」や「落成式(らくせいしき)」とも呼ばれ、建物が無事に完成したことを神々に御礼と共に報告する祭事で、家の繁栄や家族の幸せをお祈りします。工事関係者や、お披露目をしたい親類縁者まで参加することもあります。住宅の場合にはほとんど行われることはありません。
竣工際は、「竣工式(しゅんこうしき)」や「落成式(らくせいしき)」とも呼ばれ、建物が無事に完成したことを神々に御礼と共に報告する祭事で、家の繁栄や家族の幸せをお祈りします。工事関係者や、お披露目をしたい親類縁者まで参加することもあります。住宅の場合にはほとんど行われることはありません。
なぜ祭事を行うのか
祭事にはそれぞれ意味があることをご説明しましたが、そもそも「土地の神って何? 工匠の神って誰?」と疑問に思われるかもしれません。
日本には古来より山には山の神がおり、海には海の神、土や石や木にもそれぞれの神が宿るという自然崇拝の考えに基づいた、八百万の神(やおよろずのかみ)を信仰していた国でした。そして事故の危険性が高い建築工事に際して、「どうか無事に、事故の無い安全な工事を」と願ったのです。現代の最新技術を駆使した超高層ビル工事の際でも、安全を祈願して祭事を執り行うのは、そうした願いが込められているからなのです。
今では家を建てる行為が努めて事務的に行われることが多く、祭事を執り行わないケースも増えています。合理的で無駄がなく、余計な出費もしなくて済むので助かりますが、その場合でも、心の中で事故のない安全な工事と、家族の繁栄を願っておくことは大切です。
祭事にはそれぞれ意味があることをご説明しましたが、そもそも「土地の神って何? 工匠の神って誰?」と疑問に思われるかもしれません。
日本には古来より山には山の神がおり、海には海の神、土や石や木にもそれぞれの神が宿るという自然崇拝の考えに基づいた、八百万の神(やおよろずのかみ)を信仰していた国でした。そして事故の危険性が高い建築工事に際して、「どうか無事に、事故の無い安全な工事を」と願ったのです。現代の最新技術を駆使した超高層ビル工事の際でも、安全を祈願して祭事を執り行うのは、そうした願いが込められているからなのです。
今では家を建てる行為が努めて事務的に行われることが多く、祭事を執り行わないケースも増えています。合理的で無駄がなく、余計な出費もしなくて済むので助かりますが、その場合でも、心の中で事故のない安全な工事と、家族の繁栄を願っておくことは大切です。
祭事とコロナ禍の関係
2019年から世界中で猛威をふるい続けている新型コロナウイルスは、建設業界にも大きな影響を与えています。材木や鉄材をはじめとした各種建設資材の価格高騰や、海外で製造される電子部品が組み込まれた製品の入手が難しく、工事期間にも影響が出ています。祭事に関しては、地鎮祭・上棟祭共にコロナ禍の影響により中止になることは少なく、人数を減らして行われているようです。屋外で行われる祭事なので、適切な距離の確保と人数を減らせば、問題ないと考えられているのでしょう。
2019年から世界中で猛威をふるい続けている新型コロナウイルスは、建設業界にも大きな影響を与えています。材木や鉄材をはじめとした各種建設資材の価格高騰や、海外で製造される電子部品が組み込まれた製品の入手が難しく、工事期間にも影響が出ています。祭事に関しては、地鎮祭・上棟祭共にコロナ禍の影響により中止になることは少なく、人数を減らして行われているようです。屋外で行われる祭事なので、適切な距離の確保と人数を減らせば、問題ないと考えられているのでしょう。
地鎮祭も上棟祭も、信仰心や建設費用に余裕のない人にとっては、あまり興味を感じられないイベントかもしれません。仕事が忙しく、日程を合わせることが難しいこともあるでしょうし、玉串料や御祝儀・赤飯代を節約して、ワンランク上のシステムキッチンを狙いたいと考える方もいるでしょう。現代の家づくりには、古い伝統や慣例が似合わないかもしれません。
ですが家を建てることが一生で一度の経験ならば、そのたった一度の大切な機会に、これから住み続ける土地や家に対して、手を合わせることには大きな意味があると思います。自分だけでなく、次の世代に引き継がれる物ならば尚更です。家づくりの祭事に迷われたときには、ぜひ建築家に相談してみてください。きっと状況を鑑みた、最善のアドバイスをしてくれると思いますので。
建築家を探す
工務店を探す
専門家とのコミュニケーションの記事を読む
ですが家を建てることが一生で一度の経験ならば、そのたった一度の大切な機会に、これから住み続ける土地や家に対して、手を合わせることには大きな意味があると思います。自分だけでなく、次の世代に引き継がれる物ならば尚更です。家づくりの祭事に迷われたときには、ぜひ建築家に相談してみてください。きっと状況を鑑みた、最善のアドバイスをしてくれると思いますので。
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