輸送コンテナがオフグリッドの高級住居スペースに大変身!
何の変哲もない輸送コンテナが、どうやって環境負荷が低く、質の高いゲスト小屋に作り変えられたのでしょう?
Vanessa Walker
2022年1月31日
輸送用コンテナを、どこにでも設置可能な小屋に作り変える!といったことが本当にできるのでしょうか?もし、そんな夢のような家が目の前にあらわれたら、「どうやって造ったの?」と問わずにはいられないことでしょう。そして、「予算はどれくらいだったの?」「自分たちでもなにか作業をしたの?」あるいは、「本当にチャレンジしてみる価値がある?」と、質問攻めにするのではないでしょうか?
こうした疑問を解明すべく、ビクトリア州(オーストラリア)のダンデノン山脈にある、輸送コンテナをオフグリッド用に改造したゲスト小屋「ラーノック(Larnook)」のオーナー、ポール・ロウズさん(Paul Rowse)を訪ね、この夢のような宿泊施設を作った経緯について伺いました。
こうした疑問を解明すべく、ビクトリア州(オーストラリア)のダンデノン山脈にある、輸送コンテナをオフグリッド用に改造したゲスト小屋「ラーノック(Larnook)」のオーナー、ポール・ロウズさん(Paul Rowse)を訪ね、この夢のような宿泊施設を作った経緯について伺いました。
どんなHouzz?
場所:ビクトリア州カリスタ(オーストラリア)
敷地:40ヘクタールの花卉農園
農園内の場所:「ラーノック」は、敷地の北西部分にある使用されていない牛舎の隣にあります(敷地は1920年代から1960年代まで酪農場でした)
名前の由来:「ラーノック」という名前は、アボリジニ文化に由来しており、地元のブーンウルング族の言葉で「住まい」または「巣」を意味します。
プロジェクト完成までの期間:構想から着工まで18ヶ月。その後パートタイムで行った施工が10ヶ月。
費用:施工に約13万ドル(約1,040万円)(オフグリッド用の設備要素を含む)。
プロジェクトに関わったその他の専門家:配置の最適化についてのアイディアおよびインテリアデザインの構成については、 KWD 社からの助言を受けています。
場所:ビクトリア州カリスタ(オーストラリア)
敷地:40ヘクタールの花卉農園
農園内の場所:「ラーノック」は、敷地の北西部分にある使用されていない牛舎の隣にあります(敷地は1920年代から1960年代まで酪農場でした)
名前の由来:「ラーノック」という名前は、アボリジニ文化に由来しており、地元のブーンウルング族の言葉で「住まい」または「巣」を意味します。
プロジェクト完成までの期間:構想から着工まで18ヶ月。その後パートタイムで行った施工が10ヶ月。
費用:施工に約13万ドル(約1,040万円)(オフグリッド用の設備要素を含む)。
プロジェクトに関わったその他の専門家:配置の最適化についてのアイディアおよびインテリアデザインの構成については、 KWD 社からの助言を受けています。
ポールさんは不動産開発業者ではなく、園芸や農業に従事してきた人物です。「多くの農業従事者がそうであるように、私には特に得意なものはありませんが、大抵のことはまあまあのレベルでできます。そして、時間をかけることができれば、細かいディテールに注意を払うこともできます」
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ルーバー窓は空気の流れを促し、その隙間からは素朴な古い牛舎を眺めることができる。
ポールさんと、高校の教師であり、デザインやインテリア装飾に見識のある妻のミシェル・ロウズ(Michelle Rowse)さんは、輸送コンテナをラグジュアリーなオフグリッドの宿泊施設へと改造することを決めた時点で、すでに2軒の住宅と1軒の小さなタウンハウスを含む数件のプロジェクトを自ら施工した経験がありました。
「ラーノック」は、コンテナの改造という分野における彼らの最初の試みでしたが、そこからどんな教訓を得たのでしょうか。
ポールさんと、高校の教師であり、デザインやインテリア装飾に見識のある妻のミシェル・ロウズ(Michelle Rowse)さんは、輸送コンテナをラグジュアリーなオフグリッドの宿泊施設へと改造することを決めた時点で、すでに2軒の住宅と1軒の小さなタウンハウスを含む数件のプロジェクトを自ら施工した経験がありました。
「ラーノック」は、コンテナの改造という分野における彼らの最初の試みでしたが、そこからどんな教訓を得たのでしょうか。
まず初めに、夫妻にとって最大の課題であることが明らかになったのは、デザインでした。「施工の工程を通してデザインを洗練させるという経験がこれまでなかったので、難しい課題でした」とポールさんは言います。
「あらゆる天候において質の高い製品を目指すには、利用可能な選択肢の中から最高のものを探しながらも、妥当なレベルに予算を抑えることが求められます」
ポールさんは6ヶ月から8ヶ月かけて、夫婦の当初のデザインコンセプトをCADで平面図などの図面に起こしました。
「あらゆる天候において質の高い製品を目指すには、利用可能な選択肢の中から最高のものを探しながらも、妥当なレベルに予算を抑えることが求められます」
ポールさんは6ヶ月から8ヶ月かけて、夫婦の当初のデザインコンセプトをCADで平面図などの図面に起こしました。
次に、夫妻は高さ6メートルの立方体のワンウェイコンテナ(生産地からの輸送の一回だけ、実入りで使用したコンテナ)を2つ、フェニックス・コンテナ社(Phenix Containers Pty. Ltd.)から購入しました。このコンテナ購入の主な理由は、輸送に小型の荷台傾斜式トラックを使用することができ、運搬が容易だったためです。
フェニックス・コンテナ社は、鋼材の切り抜きと補強の作業も引き受けてくれました。そこには鋼製のドア枠と窓枠を設置しました。その後、コンテナは、夫婦が住んでいる場所の近くに借りた倉庫へと移送されました。夫婦はこの段階で、ガラスや断熱材、木材、鋼材、電気機器を含む多くの建材も注文しました。
フェニックス・コンテナ社は、鋼材の切り抜きと補強の作業も引き受けてくれました。そこには鋼製のドア枠と窓枠を設置しました。その後、コンテナは、夫婦が住んでいる場所の近くに借りた倉庫へと移送されました。夫婦はこの段階で、ガラスや断熱材、木材、鋼材、電気機器を含む多くの建材も注文しました。
ガス式ストーブ
「(倉庫での)施工作業は、新しい家を建てるのと非常に似たものでした」とポールさんは言います。夫妻は以下の作業をおこないました。
・ドアと窓の設置
・内部の下地組み、仕上げ
・配管
・配線
・床の敷設
・マリン合板床材の研磨と平滑化
・内部の下地組み、仕上げ
・ベッドの立ち上がりおよび暖炉の下地組み
・浴室の防水およびタイル貼り
・キャビネットおよび作業台天板の設置
・壁面、引き出しの前面、および洗面所の床のコルクタイル貼り
・コンクリート棚の設置
・ガス式暖炉の設置
・天井の壁紙施工
・内部の配管および配線の調整
・電気機器の設置
・コンポストトイレの設置
・Colorbondスチール屋根材の組み立ておよび調整
・太陽光パネルシステムの設置および調整
これらの作業が完了し、小屋を敷地へ移動する準備が整いました。
「(倉庫での)施工作業は、新しい家を建てるのと非常に似たものでした」とポールさんは言います。夫妻は以下の作業をおこないました。
・ドアと窓の設置
・内部の下地組み、仕上げ
・配管
・配線
・床の敷設
・マリン合板床材の研磨と平滑化
・内部の下地組み、仕上げ
・ベッドの立ち上がりおよび暖炉の下地組み
・浴室の防水およびタイル貼り
・キャビネットおよび作業台天板の設置
・壁面、引き出しの前面、および洗面所の床のコルクタイル貼り
・コンクリート棚の設置
・ガス式暖炉の設置
・天井の壁紙施工
・内部の配管および配線の調整
・電気機器の設置
・コンポストトイレの設置
・Colorbondスチール屋根材の組み立ておよび調整
・太陽光パネルシステムの設置および調整
これらの作業が完了し、小屋を敷地へ移動する準備が整いました。
デッキは鉢植えで外部からの視線を遮り、プライバシーを高めています。
運搬作業は2台のトラックで2回にわたって行われました。最初に屋根部分を運び、2回目で2つのコンテナを移送しました。コンテナを所定の位置に下ろす際にはクレーンを使用しました。
この小屋は処理済みの松材のブロック上に置かれており、「恒久的な建造物ではなく」完全に移動可能であるため、この点は自治体への許認可申請の際に有利に働きます。
この2つのコンテナを合わせると、寝室、デッキのあるリビング空間、小型キッチンおよび浴室を内包した、25平方メートルの小屋を生み出します。
運搬作業は2台のトラックで2回にわたって行われました。最初に屋根部分を運び、2回目で2つのコンテナを移送しました。コンテナを所定の位置に下ろす際にはクレーンを使用しました。
この小屋は処理済みの松材のブロック上に置かれており、「恒久的な建造物ではなく」完全に移動可能であるため、この点は自治体への許認可申請の際に有利に働きます。
この2つのコンテナを合わせると、寝室、デッキのあるリビング空間、小型キッチンおよび浴室を内包した、25平方メートルの小屋を生み出します。
小屋のコンセプトとして重要視したのは、自給自足可能でオフグリッドであることでした。そのため、この小屋は外部からの公共サービスを必要とせず、既存の公共設備の近くに設置する必要がありませんでした。
そのおかげで、ポールさんとミシェルさんは、道路や他の住宅から隠れた、古い牛舎の背後にあるこの場所を選ぶことができました。彼らは北から太陽光と、街やポートフィリップ湾への眺め、また素晴らしい日没を取り込むことを目的として、北西向きの建物配置を選択しました。
そのおかげで、ポールさんとミシェルさんは、道路や他の住宅から隠れた、古い牛舎の背後にあるこの場所を選ぶことができました。彼らは北から太陽光と、街やポートフィリップ湾への眺め、また素晴らしい日没を取り込むことを目的として、北西向きの建物配置を選択しました。
コンテナの費用に加え、オフグリッド化には3kWのソーラーパネル、10kWの充電池、コンポストトイレ、汚水処理/廃棄システム、貯水タンクおよび圧力ポンプを含め、追加で3万ドル(約240万円)がかかっています。
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キングサイズのベッドからは、絶景が眺められます
あえて言うなら、すべてが順風満帆とは行きませんでした。「全体的に見ると、コロナ渦で移動やいくつかの部材の搬入が制限されました」とポールさん。「また2020年9月末に私が事故にあい、2週間を病院で過ごし、その後も回復に2〜3ヶ月かかってしまいました」
あえて言うなら、すべてが順風満帆とは行きませんでした。「全体的に見ると、コロナ渦で移動やいくつかの部材の搬入が制限されました」とポールさん。「また2020年9月末に私が事故にあい、2週間を病院で過ごし、その後も回復に2〜3ヶ月かかってしまいました」
キッチン
成功の秘訣は、KWDによって練り上げられた控えめなインテリアです。「私たちが全ての前提としたのは、この地の名前に負けることのない、ゲストを快適さですっぽりと包み込むような『巣』を作り出すということでした」とKWDのデザイナーは話します。
成功の秘訣は、KWDによって練り上げられた控えめなインテリアです。「私たちが全ての前提としたのは、この地の名前に負けることのない、ゲストを快適さですっぽりと包み込むような『巣』を作り出すということでした」とKWDのデザイナーは話します。
「オーガニックな感覚を生み出すために、私たちは白い色をしたものの使用を避けました。そのため天井にはコルクの壁紙を、壁には六角形のコルクタイルを使いました。このコルクは音の吸収を補助してくれますし、サステナブルな素材でもあります」(KWDのデザイナー)。
機能的で優しいエコ素材、コルクをインテリアに取り入れよう
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シャワー
コルクタイルや浴室のタイルのミツバチの巣のようなハニカム形状など、KDWのチームは「母なる自然を参考にすることを大いに楽しみました」と語ります。
コルクタイルや浴室のタイルのミツバチの巣のようなハニカム形状など、KDWのチームは「母なる自然を参考にすることを大いに楽しみました」と語ります。
ポールさんとミシェルさんの夢だった「完全に自給自足可能でオフグリッドな、ラグジュアリーな住空間」が、現実のものとなりました。
現在、二人はこの経験をいかして、さらにゲストに楽しんでもらえるような小屋を建てようと検討中だそうです。この小屋のように、海岸沿いの敷地、丘上の農場といった、素晴らしい場所に簡単に移設できて、息をのむような眺望を眺められ、プライバシーも確保された小屋がさらにできると思うと心が弾んできますね。
現在、二人はこの経験をいかして、さらにゲストに楽しんでもらえるような小屋を建てようと検討中だそうです。この小屋のように、海岸沿いの敷地、丘上の農場といった、素晴らしい場所に簡単に移設できて、息をのむような眺望を眺められ、プライバシーも確保された小屋がさらにできると思うと心が弾んできますね。
焚き火
「ラーノック」の誕生は、夫妻に多くの学びを与えてくれました。「次の小屋は、ずっと簡単で素早く、より効率的に作ることができるでしょう」とポールさんは言います。
物理的な施工は別として、総合的に見てこの計画の最も困難な部分は、高級宿泊施設のビジネスを立ち上げることだったとポールさんは話します。
「ラーノック」の誕生は、夫妻に多くの学びを与えてくれました。「次の小屋は、ずっと簡単で素早く、より効率的に作ることができるでしょう」とポールさんは言います。
物理的な施工は別として、総合的に見てこの計画の最も困難な部分は、高級宿泊施設のビジネスを立ち上げることだったとポールさんは話します。
「ビジネスを立ち上げることは、ブランディングからマーケティング、ウェブサイトの立ち上げ(www.larnook.co)、予約プラットフォーム、そして法的要件への準拠にいたるまで多方面に渡り、相当に複雑なものでした」とポールさんは振り返ります。
いろいろなプロセスを経て完成した宿泊施設は、夫妻の思い描いた通りの建物になりました。
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断熱さえキッチリ行えば面白い素材だと思います。