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色彩豊かなロシアのアパートに残された歴史
家族が大切に維持してきた住まいの一部が、Houzzで出会ったデザイナーの手で、21世紀の姿へ生まれ変わりました。
Яна Иванченко
2021年11月25日
このアパートは、ロシアのエカテリンブルクにあるウラル州立鉱業大学で、鉱山技術者としてかつて教授の職にあった親戚から、オーナーが相続したものです。成人して以降、ほとんど別の場所で暮らしてきたオーナーですが、ここで暮らした親族たちの人生や、ライフスタイルの記憶を残していきたいと望んでいました。Houzzのサイトでみつけたインテリアデザイナーに依頼したアパートのリノベーションプロジェクトは、オーナーの希望通り、この一家の過去60年間の歴史を保存するものとなりました。
写真: Michail Pomortsev
どんなHouzz?
住まい手:通訳者のカップル
所在地:エカテリンブルク、ロシア
面積:90平方メートル
インテリアデザイナー: Svetlana Pakhomova(スヴェトラーナ・パホモワ)
このアパートは、オーナーの曽祖母が60年前に、向かいに立っていた歴史ある住宅と交換したものです。家のほうは、近隣の再開発の際に取り壊されてしまいました。
アパートは、思い出の品々やさまざまな時代に作られた歴史のある工芸品で彩られ、そしてもちろん書物であふれていました。
またこのアパートには、スターリン体制下において迫害を受けた曽祖父に関する書類も残っていました。曽祖父が約10年間を強制収用所で過ごしたことを、オーナーは、リノベーションをする過程で、初めて知ることになりました。
どんなHouzz?
住まい手:通訳者のカップル
所在地:エカテリンブルク、ロシア
面積:90平方メートル
インテリアデザイナー: Svetlana Pakhomova(スヴェトラーナ・パホモワ)
このアパートは、オーナーの曽祖母が60年前に、向かいに立っていた歴史ある住宅と交換したものです。家のほうは、近隣の再開発の際に取り壊されてしまいました。
アパートは、思い出の品々やさまざまな時代に作られた歴史のある工芸品で彩られ、そしてもちろん書物であふれていました。
またこのアパートには、スターリン体制下において迫害を受けた曽祖父に関する書類も残っていました。曽祖父が約10年間を強制収用所で過ごしたことを、オーナーは、リノベーションをする過程で、初めて知ることになりました。
オーナーは、デザイナーのスヴェトラーナ・パホモワさんをHouzzのサイトで見つけました。彼女はオーナーが幼少期を過ごした住宅内の配置や配色を、可能な限り残すよう努めました。歴史のある室内装飾の一部については、もともとあった場所にそのまま残されています。
3ヶ月間にわたっておこなわれたリノベーションにより、アパートは一変しました。写真は、リノベーション後の廊下から見たダイニングルームの眺めです。
インテリアデザイナーを探す
3ヶ月間にわたっておこなわれたリノベーションにより、アパートは一変しました。写真は、リノベーション後の廊下から見たダイニングルームの眺めです。
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平面配置はほとんど変更していません。玄関(1)は左側にあります。玄関を抜けると、廊下(8)、トイレ(2)、納戸(9)、浴室(3)、そしてキッチン(4)へと続きます。部屋のいくつかは機能を入れ替えており、かつての子ども部屋はダイニングルームに、寝室(5)はリビングルーム(7)に、またダイニングルーム(6)はウォークインクローゼット(10)付きの寝室に変更しました。
自宅のリフォーム・リノベーションを進める前に考えるべきこと
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ビフォー:リノベーションが始まった時点で、玄関で興味を引いたのは、年代物の電気メーターとそのプラグだけでした。装飾は時代遅れで、露出した配線は壁の見た目を良くしているとはいえないものでした。
アフター:玄関のリノリウムの床材をカーペット模様の薄いグレーの磁器タイルに変更し、廊下は木の床材で仕上げました。壁は床から天井まで、涼しげなグレーカラーで塗装されています。
玄関からキッチンに向かって廊下を進むと、引き戸のついた納戸が右手にあります。その向かいにある2つの開き戸は、トイレと浴室に通じています。
リフォーム・リノベーションのヒントについての記事を読む
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ビフォー:リノベーション前、この部屋は寝室で、壁は濃い青色のストライプ模様でした。ドアの向いには、スターリンの時代に作られたガラス扉付きの本棚と、60年代に作られた、ドイツ民主共和国(東ドイツ)製の長いスタンドと可動式のアームにランプシェードが取り付けられたフロアランプが置かれていました。美術品や骨董品が飾られてはいたものの、アパートの他の部分と同様、この部屋も物であふれていました。
アフター: 壁は、オーナーが覚えている幼少期と同じ色味でありながら、より彩度の高い青色の無地に変更されました。カーブを描く側板が特徴のアンティークの本棚と非常にモダンなヴィンテージのフロアランプは、かつてあった場所にそのまま残しました。
壁紙の写真をみる
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リビングルームになったこの空間には、明るいコーラルピンクのソファを選んで、気品のある青色の壁を、鮮やかに彩りました。壁には大きな絵画(Elena Rufova作)を掛けています。
また、5本のアームが伸びる天井照明が、この部屋の60年代の雰囲気を強調しています。
また、5本のアームが伸びる天井照明が、この部屋の60年代の雰囲気を強調しています。
ビフォー:ダイニングルームは、以前は子ども部屋で、オリーブイエローの壁にはバーガンディのボーダーがあしらわれていました。戸口に掛けられた厚手のカーテン(ロシアでは「教授の部屋」を連想させる)が、空間に重々しい雰囲気を与えていました。
部屋の片隅には多くの本が積み上げられ、その上には1980年のモスクワオリンピックの熊のマスコットが吊り下げられていました。
部屋の片隅には多くの本が積み上げられ、その上には1980年のモスクワオリンピックの熊のマスコットが吊り下げられていました。
アフター:壁はそれぞれ、石膏ボードで真っ直ぐになるよう修正しました。オリーブイエローの塗装は、より親しみやすいセージの色に置き換えました。また他の部屋と同様に、陰影が深く、高さの低い廻り縁を設置しました。
ドアに掛けられていたバーガンディカラーのカーテンは取り外しましたが、その色は窓の装飾に取り入れ、再現しました。もともとアパートにあった本棚をドアの右側に置き、一家のコレクションであるカスリ鋳鉄の置物を本と並べてディスプレイしています。
オリーブイエローをアクセントカラーにつかった住まいの写真をもっとみる
ドアに掛けられていたバーガンディカラーのカーテンは取り外しましたが、その色は窓の装飾に取り入れ、再現しました。もともとアパートにあった本棚をドアの右側に置き、一家のコレクションであるカスリ鋳鉄の置物を本と並べてディスプレイしています。
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ビフォー:この部屋には、窓の近くにもうひとつ別のドアがありました。このドアは、現在はリビングルームとなったあの青色の寝室に通じていましたが、デザイナーは、塞ぐことを提案しました。
アフター:ドアを塞いだあとには、装飾的なマントルピースが置かれ、その上には絵画が掛けられました。古典的なこの手法により、ラッカー塗装の木製家具による重い雰囲気は和らげられ、部屋が生き生きしました。マントルピースの上には、これも一家に伝わる財産であるドイツ製の陶磁器のバレリーナ人形が置かれています。
現代的なドイツ製の照明器具が、マントルピースとヴィンテージソファ(次の写真)の間のリラックスした空間を照らし出しています。ディナーテーブルの上には、黄色い球状のペンダントライトが長いケーブルに下げられています。円形のダイニングテーブルと明るい色の椅子は、夫人のご両親からの贈り物だといいます。これらは前に住んでいたアパートから施主が持ってきたものですが、オリーブ色のダイニングルームに完璧にマッチして、アカデミック雰囲気を活気のあるものにしています。
ビフォー:キッチンはリノリウム貼りの床、白のキャビネット、くすんだ色の壁で構成されていましたが、他の部屋の彩度の高い色と比べると、アクセントになるような明るい要素が十分ではありませんでした。
ビフォー:別のスペースと同様、キッチンは、古びて煤けていました。
アフター:もともとのキッチンのレイアウトは残しています。コンパクトな作業エリアは、ガス管がある窓の左側に配置されたままです。
最大の変更点は、ファロー&ボール社のラディッキオ(チコリ)カラーで塗装された壁です。床はクラシックなタイルと小さめの黒い正方形のタイルで仕上げました。
最大の変更点は、ファロー&ボール社のラディッキオ(チコリ)カラーで塗装された壁です。床はクラシックなタイルと小さめの黒い正方形のタイルで仕上げました。
ビフォー:もともとキッチンには、シンクの水はねやコンロの油はねを受け止めるバックスプラッシュとして、ライトブルーの正方形タイルが貼られていました。その他の壁には、バックスプラッシュと同じ高さまで大理石模様の壁紙が貼られていました。壁の上部は白の漆喰で仕上げていたものの、年月を経て色あせてしまっていました。
アフター:ガス管は隠され、古いライトブルーのタイルの上に、薄い浮き彫りを施したさまざまな濃さのボルドー色(ツヤあり)のサブウェイタイルをはっています。
キャビネット上部の帯壁を廊下と同じ落ち着いたグレーで塗装することで、空間の圧迫感を抑えています。
サブウェイタイルを使ったキッチンのアイディアをもっとみる
キャビネット上部の帯壁を廊下と同じ落ち着いたグレーで塗装することで、空間の圧迫感を抑えています。
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ビフォー:窓台の下の壁には、農産物を収納するためのニッチが設けられていました。その右側には鋳鉄製のラジエーターが設置され、窓の右側の壁のほとんどを塞いでしまっていました。
アフター:長いラジエーターは、スリムで、背の高いモデルに交換されました。これにより壁側のスペースが増え、テーブルの周りに座る空間が広くなりました。
窓台下のニッチには、ガラス製品を収めるための棚を組み込みました。
窓台下のニッチには、ガラス製品を収めるための棚を組み込みました。
窓の右側には、著名なロシアの芸術家であるエルンスト・ネイズヴェスヌイによるエッチングが飾られています。これは、ネイズウェスヌイが芸術家のミーシャ・ブラシロフスキーに贈り、そのブラシロフスキーからオーナー家族の手に渡ったものです。絵には、「エルンストからミーシャに。ネイズウェスヌイからブラシロフスキーへ愛を込めて、1968年」と刻まれています。その隣には、デザイナーのウリ・ゴードンとヘザー・ハーミット(本名イリーナ・ゴリヤチェワ)による《私のモスクワ》と題されたポスターが掛けられています。
ビフォー:浴室には、ドアの反対側に設置された流し台に向かう細い通路がありました。水道管は丸見えになっていました。
アフター:流し台と浴槽の位置を入れ替えました。ライトブルーの正方形タイルに代わって、ニュートラルホワイトの正方形タイルで、浴槽の前面と周辺の壁を覆うように変更しました。壁面の残りの部分は、トランプテーブルのカバーをイメージした、彩度の高い緑色で塗装されました。
流しの下に引き出しの付いた市販の化粧テーブルを追加し、白のタイル貼りのバックスプラッシュを設けました。六角形のタイルは、上部に設置されたミラーの形状と呼応しています。
バックスプラッシュのアイディアをもっとみる
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ビフォー:模様のあるベージュ色の壁紙が貼られ、茶色の家具と額に入れられた版画が数点置かれていたこの部屋は、リビング・ダイニングとして使用していました。
アフター:その部屋を寝室に変更し、空間を分割することによりウォークインクローゼットを追加しました。
寝室エリアの壁は、ゴールデンカレー色で塗装し、ヘッドボード部分の壁は、花模様の壁紙を貼ることで、アクセント壁として生まれ変わりました。
寝室エリアの壁は、ゴールデンカレー色で塗装し、ヘッドボード部分の壁は、花模様の壁紙を貼ることで、アクセント壁として生まれ変わりました。
ビフォー:窓の左側には背の低い本棚が置かれていました。この部分の壁は少しむき出しになっており、日当たりは良いものの、特筆すべき点のないコーナーになっていました。
アフター:本棚は、処分せずに残しましたが、設置場所をベッドの向かいの左側に移動しました。そして窓の隣に、オーナーの父親のものだったアンティークの机を置きました。机の天板だけ交換し、修復をしています。
机の前の壁には、エカテリンブルクの芸術家であるVitali Volovich(1928-2018)による《Icelandic and Irish Sagas》シリーズのうちの2枚のスケッチを飾り、その隣には、このアパートの最初の持ち主であるオーナーの曽祖母の写真が掛けられています。
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