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和のテイストを取り入れた、家族がつながる家
スペイン人と日本人の建築家チームが、住まい手である建築構造のプロと一緒にデザインした家。周辺環境の緑とリンクするグリーンカラーも印象的です。
杉田真理子
2021年12月29日
埼玉県・越谷市。YSLA(YAMAMURA SANZLAVINA ARCHITECTS)を主宰する二人の建築家、ナタリア・サンツさんと山村健さんが手掛けた戸建て住宅「Casa Eri」には、まるで映画のワンシーンのような雰囲気があります。施主の実家がある敷地内に建つこの家は、限られたスペースのなかで、詩的かつ機能的な暮らしを実現しています。
どんなHouzz?
所在地:埼玉県・越谷市
住まい手:ご夫婦と2人のお子様たち
敷地面積:173.88㎡
建築面積:52.91㎡
延床面積:76.29㎡
設計:YAMAMURA SANZLAVINA ARCHITECTS
施工:ワシン建築事務所
竣工時期:2021年5月
写真:小野寺宗貴
建築構造を専門とされている施主の宮津裕次さん。今回設計を担当したYSLAの建築家・山村さんとは大学時代の同級生であり、日本建築学会でも親交が深かったと言います。山村さんのパートナーであるナタリアさんはスペイン出身で、日本人が当たり前と思っていることを新鮮な視点で捉え直し、デザインすることも多いそうです。Casa Eriは、この3人のエキスパートと、宮津さんの奥さま、えりさんがチームで作り上げました。
今まで引越しが多かったという宮津夫妻。「結婚してから今回で6回目の引越しで、マンションにもアパートにも、いろんな種類の住まいに住んできました。だからこそ、こういう暮らしがいい、という具体的な要望は、比較的クリアにあったと思います」とえりさん。
引っ越す前に家具や電化製品を全て紙に書き出し、収納の中身など細かい要望はしっかり伝え、寸法に関してもYSLAの2人と相談しました。「細かいところまでめんどくさがらずに付き合ってくれて、頼んでよかったなと、改めて思います」とえりさんは話します。
所在地:埼玉県・越谷市
住まい手:ご夫婦と2人のお子様たち
敷地面積:173.88㎡
建築面積:52.91㎡
延床面積:76.29㎡
設計:YAMAMURA SANZLAVINA ARCHITECTS
施工:ワシン建築事務所
竣工時期:2021年5月
写真:小野寺宗貴
建築構造を専門とされている施主の宮津裕次さん。今回設計を担当したYSLAの建築家・山村さんとは大学時代の同級生であり、日本建築学会でも親交が深かったと言います。山村さんのパートナーであるナタリアさんはスペイン出身で、日本人が当たり前と思っていることを新鮮な視点で捉え直し、デザインすることも多いそうです。Casa Eriは、この3人のエキスパートと、宮津さんの奥さま、えりさんがチームで作り上げました。
今まで引越しが多かったという宮津夫妻。「結婚してから今回で6回目の引越しで、マンションにもアパートにも、いろんな種類の住まいに住んできました。だからこそ、こういう暮らしがいい、という具体的な要望は、比較的クリアにあったと思います」とえりさん。
引っ越す前に家具や電化製品を全て紙に書き出し、収納の中身など細かい要望はしっかり伝え、寸法に関してもYSLAの2人と相談しました。「細かいところまでめんどくさがらずに付き合ってくれて、頼んでよかったなと、改めて思います」とえりさんは話します。
広い範囲に使われた緑色が印象的な室内。南側の公園に緑がたくさんあり、その緑が家にも繋がっていくイメージで作ったと言います。「1色でも、光の入り方によって濃淡が出て、変化して見えるのも魅力です」とナタリアさん。
Houzzで住まいの専門家を探す
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階段横のルーバーやキッチン収納の取手など、随所に真鍮が散りばめられているのは、山村さんのアイデアです。
「日本建築で、金箔が暗闇のなかで浮かび上がるのが素敵だなと思って。この家も直射日光が入らないようにしているので、中庭から入ってきた光が真鍮に反射して、綺麗に浮かび上がる様子をイメージました」
「日本建築で、金箔が暗闇のなかで浮かび上がるのが素敵だなと思って。この家も直射日光が入らないようにしているので、中庭から入ってきた光が真鍮に反射して、綺麗に浮かび上がる様子をイメージました」
建築構造のエンジニアリングを専門とする宮津さんの提案で、通常であればコンクリートを使用する基礎のくいは、木材にしました。「くいには、昔は松などが使われていました。環境さえしっかり整えば、腐りません。でも、戸建てでくいを木材にしているのは、珍しいんじゃないかな」と宮津さん。
地震の揺れを抑えてくれる装置、制振ダンパーも導入しました。「繰り返しの強い揺れにはダンパーが有効です。この家には40本ほどのオイルダンパーが入っています」と宮津さん。山村さんの粋な計らいで、書斎の一角からダンパーが見える小窓を設けました。
地震の揺れを抑えてくれる装置、制振ダンパーも導入しました。「繰り返しの強い揺れにはダンパーが有効です。この家には40本ほどのオイルダンパーが入っています」と宮津さん。山村さんの粋な計らいで、書斎の一角からダンパーが見える小窓を設けました。
階段の1段目が延長されている小上がりのスペースは、子供が遊んだり、本を読んだりと、腰掛にもなる縁側のようです。
子供たちの活動が常にまめに目に入るように、上下階を出入りするときでも、必ず視線が交わるのが安心です。
リビングの床には床暖房も入っており、冬も気持ちよく使用できる"ゴロゴロスペース"となっています。ウッドデッキのあるテラスとひと続きになっているのも開放感があります。
子供たちの活動が常にまめに目に入るように、上下階を出入りするときでも、必ず視線が交わるのが安心です。
リビングの床には床暖房も入っており、冬も気持ちよく使用できる"ゴロゴロスペース"となっています。ウッドデッキのあるテラスとひと続きになっているのも開放感があります。
階段に向かって正面には、宮津さんの書斎があります。パンデミックの影響もありつつ、元々リモートワークのためのスペースを所望していたという宮津さん。公園に面する窓から視線が直接入ってこないよう、窓が45度の角度で設定されているのが嬉しい工夫です。
敷地は、中庭を介して母屋と繋がっています。正方形ではないウッドデッキは、母屋と家を繋ぐ家族のための勝手口です。「母屋と近いんだけど独立している、という距離感が気に入っています。繋がりを一番喜んでいるのが子供たち」とえりさん。は、子供たちだそう。母屋とのゆるやかなつながりを作ることで、広々とした雰囲気も演出できます。
昔から代々伝わる石を沓脱石として使用し、家族の記憶の継承も意識しました。「ウッドデッキが、存在感の面で"石に負けている"状態が面白いのでは、と思っています」と山村さん。
屋外だけではなく、室内でも繰り返される幾何学模様のグラフィックも印象的です。
Houzzでウッドデッキのアイディアをもっとみる
屋外だけではなく、室内でも繰り返される幾何学模様のグラフィックも印象的です。
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勾配屋根で光を取り込み、明るい雰囲気の2階の寝室は和室。畳の色はグレーです。この色を選んだのは、ナタリアさんのアイデアでした。「日本人であれば畳は緑、と先入観的に思い込んでしまっているところがありますが、新鮮な視点で提案してもらえたと思います」と山村さん。
「日本人とスペイン人2人でやっているからこそ、お互い当たり前だと思っていることが当たり前ではない。外からの視点で、日本の伝統が新しく見える、それを現代にアレンジして作るのが私たちは得意です。今回の設計も、どこかに日本の伝統を想起させるようなものになっています」
「日本人とスペイン人2人でやっているからこそ、お互い当たり前だと思っていることが当たり前ではない。外からの視点で、日本の伝統が新しく見える、それを現代にアレンジして作るのが私たちは得意です。今回の設計も、どこかに日本の伝統を想起させるようなものになっています」
収納はたっぷりまとめて収納したい、という希望に合わせ、和室らしく襖を設置。布団だけでなく、上にも仕切りを入れることで使いやすさをアップしました。
幾何学模様のグラフィックは高さが工夫されており、襖の扉を動かすことで様々なパターンを楽しめるようになっています。一番右側には、テラスに出るための出入り口があります。
もう一つのポイントは、茶室のように、寝室の窓が低く設定されていること。「家の前の電線に目線が行かないように、ちょっとした工夫です」と山村さん。
幾何学模様のグラフィックは高さが工夫されており、襖の扉を動かすことで様々なパターンを楽しめるようになっています。一番右側には、テラスに出るための出入り口があります。
もう一つのポイントは、茶室のように、寝室の窓が低く設定されていること。「家の前の電線に目線が行かないように、ちょっとした工夫です」と山村さん。
家に複数置かれた濃いめの緑のスツールは家具としてもオブジェとしても使え、空間を引き締めるアクセントにもなっています。
「家づくりのチームが現場監督も含めて全員30代後半と、同世代だったことも楽しかったです」とえりさん。チームワークの力が感じられる住まいとなりました。
デザイナーハウスでありながら、「Casa Eri」は、自然環境に配慮した工夫を多く施している点が評価されて、第8回埼玉県環境住宅賞に入選しています。
Houzzツアー (お宅紹介) の記事をもっと読む
「家づくりのチームが現場監督も含めて全員30代後半と、同世代だったことも楽しかったです」とえりさん。チームワークの力が感じられる住まいとなりました。
デザイナーハウスでありながら、「Casa Eri」は、自然環境に配慮した工夫を多く施している点が評価されて、第8回埼玉県環境住宅賞に入選しています。
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