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レトロな「アールサッシ」を活かした、築40年RC造住宅のリノベーション
角の丸い窓を持つ、RC造の中古物件。建築家であるご主人と施工会社のチームによる「建築を素に戻す」リノベーションが、建物のポテンシャルを引き出しました。
田中祥子
2021年10月7日
家族が増え、広めの家を探していた建築家の木村太一さんと奥さま。ある日、奥さまが不動産サイトでちょっと変わった物件を見つけます。それは、築40年の鉄筋コンクリート造3階建ての戸建て。2階には角の丸い「アールサッシ」の入った窓が並び、1階のピロティの壁も曲線(アール)で面取りされているという、70年代のレトロな雰囲気が魅力的な家でした。
どんなHouzz?
所在地:東京都東村山市
住まい手:ご夫妻と子供1人
建築面積:57.52㎡
延床面積:143.28㎡
設計:木村 太一
施工:相羽建設
竣工時期:2019年3月
どんなHouzz?
所在地:東京都東村山市
住まい手:ご夫妻と子供1人
建築面積:57.52㎡
延床面積:143.28㎡
設計:木村 太一
施工:相羽建設
竣工時期:2019年3月
実際に物件を見に行ってみると、前のオーナーが丁寧な維持管理をしていたことが分かりました。古さはあるものの、建物は良い状態だったのです。
「前のオーナーにお願いして、購入前に非破壊の強度検査をしました。今後100年は大丈夫だという構造躯体へのお墨付きをもらえたので、購入に踏み切りました」と木村さんは振り返ります。
さらに、保管されていた図面からは、既存の間仕切り壁がすべて取り払えることが確認できました。
「前のオーナーにお願いして、購入前に非破壊の強度検査をしました。今後100年は大丈夫だという構造躯体へのお墨付きをもらえたので、購入に踏み切りました」と木村さんは振り返ります。
さらに、保管されていた図面からは、既存の間仕切り壁がすべて取り払えることが確認できました。
「このリノベーションで大切にしたのは、元々の建物の良さを活かして魅力を高めるための『建築を素に戻す』こと。不要なものをそぎ落とすために、過去に行われた改修部分を撤去し、さらに内装は一旦すべて取り払って、スケルトンの状態からリノベーション工事を行うことにしました」(木村さん)
普段は設計事務所で住宅以外の建築設計を手がけているという木村さん。自邸の設計を自身で手がけることを決め、施工をしてくれる地元の工務店を探す中で、相羽建設と出会いました。「多くの建築家と組んで住宅を建設している工務店なので、安心して頼めました」と木村さん。
Houzzで住まいの専門家を探す
普段は設計事務所で住宅以外の建築設計を手がけているという木村さん。自邸の設計を自身で手がけることを決め、施工をしてくれる地元の工務店を探す中で、相羽建設と出会いました。「多くの建築家と組んで住宅を建設している工務店なので、安心して頼めました」と木村さん。
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外構は、門柱とブロック塀を撤去してオープンな雰囲気に。3階バルコニーの手すりを外壁に沿ったシンプルなデザインに変えることで、建物の外観の美しさが引き立つようになりました。
入り口階段横のコンクリート舗装の一部は削り、植栽スペースに。新たに植えた木々が大きく育つのが楽しみです。
入り口階段横のコンクリート舗装の一部は削り、植栽スペースに。新たに植えた木々が大きく育つのが楽しみです。
2階は、アールサッシの窓から陽がたっぷりと入る広いリビングダイニング。建物のシンボルともいえるアールサッシの窓の形には、レトロで可愛らしい魅力があります。しかし、リノベーション前は障子がついており、内側からは形状が見えないようになっていました。
「室内からもアールサッシを美しく見せるために、集成材を切り出した枠を太めに回してもらいました。上部にはブラインドが収納できるようになっています。それとは対照的に、扉などのその他の部分は装飾や線を減らし、シンプルにしています」と木村さん。サッシ枠の設計時には詳細な模型を作成し、相羽建設の現場監督の和田宏康さんとも綿密な打ち合わせを重ねた上で、大工さんに作り上げてもらったそうです。
「リノベーションの現場では、時折新築よりも難解な場面に遭遇します。設計と監督、職人がコミュニケーションを重ねながら、美しく機能的に収める方法を検討しています。木を手仕事で加工することに長けた職人がいてこその強みです」と相羽建設の伊藤夕歩さんは話します。
窓の下にぴったりと設えた木の収納家具は、無印良品の既製品に木村さんがDIYで手を加えたもの。3歳の息子さんの大好きなプラレールのおもちゃがぎっしりと収納されています。
「リノベーションの現場では、時折新築よりも難解な場面に遭遇します。設計と監督、職人がコミュニケーションを重ねながら、美しく機能的に収める方法を検討しています。木を手仕事で加工することに長けた職人がいてこその強みです」と相羽建設の伊藤夕歩さんは話します。
窓の下にぴったりと設えた木の収納家具は、無印良品の既製品に木村さんがDIYで手を加えたもの。3歳の息子さんの大好きなプラレールのおもちゃがぎっしりと収納されています。
リビングダイニングのもう一つの顔が3階へ通じる階段。こちらも木村さんが模型で試作を繰り返しながらオリジナルでデザインしました。
「階段もできる限りシンプルにすることを意識して、黒皮鉄骨で組み上げた構造体に木の踏み面を載せました。時々階段に座ってお茶を飲んだりして、家族のお気に入りの空間になっています」(木村さん)
リビングダイニングの床材は幅広のオーク複合材。天井材は木毛セメント板を梁の面に揃えて貼っています。
「階段もできる限りシンプルにすることを意識して、黒皮鉄骨で組み上げた構造体に木の踏み面を載せました。時々階段に座ってお茶を飲んだりして、家族のお気に入りの空間になっています」(木村さん)
リビングダイニングの床材は幅広のオーク複合材。天井材は木毛セメント板を梁の面に揃えて貼っています。
キッチンは比較的新しかった既存のものをきれいに外してもらい、寸法を調整するなどして転用しました。扉の面材は木村さんが張り替えています。
設計と施工のスムーズなコミュニケーションについて、「解体工事の前に現場に入って、残してほしいものには養生テープでしるしをしておきました。それが工事監督さんも分かり易かったのだと思います」と木村さんはポイントを教えてくれました。
キッチンのL字のカウンターと吊り戸は木村さんによるDIY。本体はIKEAのキッチンを利用し、天板には床材と同じPタイル。見切り材には無垢の真鍮を使用しました。
設計と施工のスムーズなコミュニケーションについて、「解体工事の前に現場に入って、残してほしいものには養生テープでしるしをしておきました。それが工事監督さんも分かり易かったのだと思います」と木村さんはポイントを教えてくれました。
キッチンのL字のカウンターと吊り戸は木村さんによるDIY。本体はIKEAのキッチンを利用し、天板には床材と同じPタイル。見切り材には無垢の真鍮を使用しました。
「家の足りないところを作りながら暮らすことを楽しんでいます。手をかけながら住んでいくのは大事ですね。リビングの白い壁は小さな子供がいるのですぐに汚れてしまいますが、珪藻土塗装仕上げになっているので、自分で簡単に塗り直せます。ぜひたくさんの人に、家に自分で手を入れる楽しさを知ってほしいと思っています」と木村さんは話します。
浴室はTOTOのハーフユニットバスを使用し、壁は樹脂モルタルに外壁用のフッ素系塗料を塗っています。
「2階の水回りの部分は、元々1階より張り出して作られていました。配管が外に出ている設計だったため移設が容易で、台所と浴室の位置を簡単に動かすことができました。当時この建物を設計された方の配慮に感服します」(木村さん)
「2階の水回りの部分は、元々1階より張り出して作られていました。配管が外に出ている設計だったため移設が容易で、台所と浴室の位置を簡単に動かすことができました。当時この建物を設計された方の配慮に感服します」(木村さん)
1階のアトリエはご夫妻の仕事場です。アトリエは解体工事後に下地まで施工をしてもらい、内装は木村さんが暮らしながら、ゆっくりと手を加え続けています。縫製の仕事をしている奥さまが糸巻きを掛けるラックや、本棚などもすべて手作りです。
木村さんは「家づくりはコロナが流行する前に計画しましたが、リモートワークになっても、この部屋のおかげでストレスはありませんでした」と話します。
木村さんは「家づくりはコロナが流行する前に計画しましたが、リモートワークになっても、この部屋のおかげでストレスはありませんでした」と話します。
古い家を解体せずに「住み継ぐ」ことで、ご近所の方々にも受け入れてもらいやすかったと話す木村さん。解体工事で天井をはがした際に出てきた新築時の棟札は、元の建て主の娘さんである前のオーナーへ届けました。
「前のオーナーは『父が建てた家だから』とこの家がどうなるか気にされていました。家を住み継ぐからには、家の歴史を残してあげたいと思い、新築時の墨出し跡をそのまま残しています。3階は未改修ですし、手を入れたい箇所もまだまだたくさんあります。100年もつと言われた建物ですから、子どもの成長に合わせて手を加えながら、ゆっくりと楽しんで住み続けていくつもりです」(木村さん)
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「前のオーナーは『父が建てた家だから』とこの家がどうなるか気にされていました。家を住み継ぐからには、家の歴史を残してあげたいと思い、新築時の墨出し跡をそのまま残しています。3階は未改修ですし、手を入れたい箇所もまだまだたくさんあります。100年もつと言われた建物ですから、子どもの成長に合わせて手を加えながら、ゆっくりと楽しんで住み続けていくつもりです」(木村さん)
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