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カラフルで生分解可能。未来のテキスタイルとは?【ハイムテキスタイル2022予測】
サステナブルな素材はアースカラーの天然素材だけだと思っていたら、とんでもない!ハイムテキスタイル2022のトレンド予測を見ていきましょう。
Thomas Helbing
2021年9月17日
パンデミックによる長い休止期間を経て、誰もが新鮮なアイデアや人との交流、さらには業界の変化を求めている今、デザイン・インテリアデザイン業界が活気づいています。ハイムテキスタイル見本市のトレンド協議会が、2022/23シーズンのデザイントレンド予測をオンラインイベントで発表しました。この予測から、2022年1月11日から14日にドイツ・フランクフルトで開催される次のハイムテキスタイル見本市でどんなものが展示されるのかについて、イメージを膨らませていきましょう。
サステナビリティへ、より踏み込んだアプローチを
新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、住まいを快適で美しくすることがいかに重要かを浮き彫りにしました。もちろんテキスタイルも大切な要素ですが、サステナビリティというテーマも並行して考えていかねばなりません。これからのテキスタイル業界はどこへ向かうのか。関係者の間ではっきりしているのは、「今までどおり」はない、ということです。
サステナビリティへ、より踏み込んだアプローチを
新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、住まいを快適で美しくすることがいかに重要かを浮き彫りにしました。もちろんテキスタイルも大切な要素ですが、サステナビリティというテーマも並行して考えていかねばなりません。これからのテキスタイル業界はどこへ向かうのか。関係者の間ではっきりしているのは、「今までどおり」はない、ということです。
写真はすべて、SpottがHeimtextilのために撮影したもの。未来の素材として期待されるヘンプの繊維。古代からすでに使われていたヘンプは、栽培が容易でメンテナンスも少なく、成長が早く、害虫にも強いといった特徴があるほか、コットンよりもはるかに少ない水でどの栽培種よりも多くのバイオマスを生成します。
ロンドンにあるスタジオ、フランクリン・ティル社(Franklin Till)のキャロライン・ティル氏は、「サステナビリティは、もはや選択肢のひとつでも、望ましい付加価値でもなく、なくてはならないものです」と語ります。「私たちが地球に与えている悪影響は明らかです。ですから、個人、ブランド、メーカーのいずれにとっても、サステナビリティへの明確なアプローチを持つことが最も重要なのです」
大量生産についてはどうでしょう?「私たちは変革の時代にいます」と語るのは、フランクリン・ティル社やアン・マリー・コマンドール氏が代表を務めるスタイルインスティテュート・アムステルダム社(Stijlinstituut Amsterdam)とともにトレンド協議会に参加し、ハイムテキスタイルのために新しいトレンドを調査・発表したデンマークのスポット・トレンド・アンド・ビジネス社(Spott Trends & Business)のアーニャ・ビスガード・ゲーデ氏です。
ロンドンにあるスタジオ、フランクリン・ティル社(Franklin Till)のキャロライン・ティル氏は、「サステナビリティは、もはや選択肢のひとつでも、望ましい付加価値でもなく、なくてはならないものです」と語ります。「私たちが地球に与えている悪影響は明らかです。ですから、個人、ブランド、メーカーのいずれにとっても、サステナビリティへの明確なアプローチを持つことが最も重要なのです」
大量生産についてはどうでしょう?「私たちは変革の時代にいます」と語るのは、フランクリン・ティル社やアン・マリー・コマンドール氏が代表を務めるスタイルインスティテュート・アムステルダム社(Stijlinstituut Amsterdam)とともにトレンド協議会に参加し、ハイムテキスタイルのために新しいトレンドを調査・発表したデンマークのスポット・トレンド・アンド・ビジネス社(Spott Trends & Business)のアーニャ・ビスガード・ゲーデ氏です。
デンマークのVIAユニバーシティカレッジの作品。天然染料、サステナブルプリント、サンプリント、デジタルプリントによる、化学薬品を使わないテキスタイルデザインの好例です。
「私たちは現在も大量生産をおこなってはいますが、より持続可能な方法にシフトしていかなければなりません。サステナブルな生産への働きかけを続けるとともに、その方法についてのアイデアを皆さんに提供していきたいと考えています」とビスガード・ゲーデ氏。
「今の若い世代のデザイナーたちは、気候変動問題をめぐる主たる議論への参加を私たちに呼びかけると同時に、環境や社会に対する強い価値観に沿った、革新的でインパクトのあるアイデアを生みだしています」とティル氏は言います。
自然界とのバランスが取れる技術が必要
トレンド協議会は、製品がサステナブルであるためには、もはやエコラベルを貼るだけでは不十分であることを明確に訴えています。「今日の生産については、抜本的に考え方をシフトする必要があります」とビスガード・ゲーデ氏。「これからのホームテキスタイルは、自然界における合理的なシステムを理解することが求められます。そしてそのバランスを崩さないために、自然界が実際にどうバランスをとっているのかを学ぶ必要があるのです」
「私たちは現在も大量生産をおこなってはいますが、より持続可能な方法にシフトしていかなければなりません。サステナブルな生産への働きかけを続けるとともに、その方法についてのアイデアを皆さんに提供していきたいと考えています」とビスガード・ゲーデ氏。
「今の若い世代のデザイナーたちは、気候変動問題をめぐる主たる議論への参加を私たちに呼びかけると同時に、環境や社会に対する強い価値観に沿った、革新的でインパクトのあるアイデアを生みだしています」とティル氏は言います。
自然界とのバランスが取れる技術が必要
トレンド協議会は、製品がサステナブルであるためには、もはやエコラベルを貼るだけでは不十分であることを明確に訴えています。「今日の生産については、抜本的に考え方をシフトする必要があります」とビスガード・ゲーデ氏。「これからのホームテキスタイルは、自然界における合理的なシステムを理解することが求められます。そしてそのバランスを崩さないために、自然界が実際にどうバランスをとっているのかを学ぶ必要があるのです」
サステナブルなテキスタイルは、必ずしもアースカラーである必要はありません。写真は、クリスティーナ・イングシグ氏による柄物生地のはぎれとラフィア椰子のリボンで作られた生地。
ティル氏が提案する2つの可能なアプローチ。それは、「自然由来の素材を生物学的なサイクルの中にとどめ腐蝕させる」あるいは「技術的なサイクルの中に完全にとどめることができる合成素材のみを利用して、無限のループを実現する」というもの。
トレンド協議会のビデオメッセージにあるように、「これからのモノは、無駄や不均衡を生まないものであればよい」のです。
菌糸や動物の内臓、農業廃棄物などを利用した生分解性のテキスタイルや、バクテリアによる自然な染色などの例がプレゼンテーションで紹介されました。また、伝統的な職人技術を重視することで、サステナブルな変化を促すことができます。
ティル氏が提案する2つの可能なアプローチ。それは、「自然由来の素材を生物学的なサイクルの中にとどめ腐蝕させる」あるいは「技術的なサイクルの中に完全にとどめることができる合成素材のみを利用して、無限のループを実現する」というもの。
トレンド協議会のビデオメッセージにあるように、「これからのモノは、無駄や不均衡を生まないものであればよい」のです。
菌糸や動物の内臓、農業廃棄物などを利用した生分解性のテキスタイルや、バクテリアによる自然な染色などの例がプレゼンテーションで紹介されました。また、伝統的な職人技術を重視することで、サステナブルな変化を促すことができます。
未来の布は、環境や身体に反応し、適応することができる応答性のある素材になっていくでしょう。あるいは、AR(拡張現実)を通じて、自然界とバーチャルに接することができる素材です。上の写真は、VIAユニバーシティカレッジによる反射素材のテキスタイルデザイン。
「自然とのつながりがない西洋では、生態系がバランスを欠いた状態になっています。そこで、自然界とのつながりを深め、強化する上でテクノロジーが大きな役割を担っています」
ティル氏は、革新的な生産プロセスとデジタル経済商品に期待しています。デジタル経済商品とは、物理的には存在せず、ARを通して仮想的に体験する商品のこと。「人々は実際に、バーチャル空間用のインテリアやデジタルアバターのファッションアイテムに多額のお金を費やすことを惜しみません。私たちはバーチャルな世界で創造性と消費意欲を満たす未来を模索しているのです」
「自然とのつながりがない西洋では、生態系がバランスを欠いた状態になっています。そこで、自然界とのつながりを深め、強化する上でテクノロジーが大きな役割を担っています」
ティル氏は、革新的な生産プロセスとデジタル経済商品に期待しています。デジタル経済商品とは、物理的には存在せず、ARを通して仮想的に体験する商品のこと。「人々は実際に、バーチャル空間用のインテリアやデジタルアバターのファッションアイテムに多額のお金を費やすことを惜しみません。私たちはバーチャルな世界で創造性と消費意欲を満たす未来を模索しているのです」
この写真の素材は、玉ねぎの皮やアボカドの種で染めたもの。これが大量生産に適しているか、研究が続けられています。
責任を持って資源を使用する
今回打ち出された4つのトレンドテーマは「ディープ・ネイチャー(Deep Nature)」「ハイパー・ネイチャー(Hyper Nature)」「ビヨンド・アイデンティティ(Beyond Identity)」「エンパワード・アイデンティティ( Empowered Identity)」。これらに共通するのは、産業界が今後、より責任を持って資源を使用していくという考え方です。
新たな素材たちが、未来のファブリックとどうつながり、どのような形になっていくのか。次に、ハイムテキスタイルのトレンド協議会がまとめた、来シーズン注目の色と素材を4つずつ、ご紹介していきましょう。
責任を持って資源を使用する
今回打ち出された4つのトレンドテーマは「ディープ・ネイチャー(Deep Nature)」「ハイパー・ネイチャー(Hyper Nature)」「ビヨンド・アイデンティティ(Beyond Identity)」「エンパワード・アイデンティティ( Empowered Identity)」。これらに共通するのは、産業界が今後、より責任を持って資源を使用していくという考え方です。
新たな素材たちが、未来のファブリックとどうつながり、どのような形になっていくのか。次に、ハイムテキスタイルのトレンド協議会がまとめた、来シーズン注目の色と素材を4つずつ、ご紹介していきましょう。
ハイムテキスタイルのトレンド協議会が注目する色
上の写真、左上から時計回りに。
上の写真、左上から時計回りに。
- 左上:ピスタチオやピーチ、ダスティスカイブルーなどのパワフルなパステルトーンに、グレーやライトカーキなどのニュートラルトーンをソフトにミックス。鮮やかなイエローやオレンジがアクセントになっています。
- 右上:珍しいグリーンから濃いパープルまで、生き生きとした超自然的なパレット。クリアで明るい色調に、グリーンやグレーの色調を拡散させ、アクセントとしてサーモンとラズベリーを加えています。
- 右下:エッセンシャルカラー&オーガニックカラー:湿地帯や植物の色調、サンドベージュやブラウンなどの染料を使わない色調。天然染料は、繊細でくすんだブルーの色合いやソフトな赤を生み出します。
- 左下:伝統的な原色(イエロー、レッド、ブルー)に、コーラル、キウイグリーン、ダスティライラックなどの色が加わっています。
ハイムテキスタイルのトレンド協議会が注目する素材
上の写真、左上から時計回りに。
Houzzで住まいの専門家を探す
上の写真、左上から時計回りに。
- 左上:ジュート、亜麻、ヘンプ、リネン、植物の皮、パームレザー、ココナッツ繊維、菌糸など、循環型プロセスで入手、加工、再利用できる天然素材や色。
- 右上:タフティング、クロスステッチ、ウィービングなどの伝統技術や、実験的なステッチ方法。手織りのタペストリーや、世界中の伝統的な柄を現代風にアレンジした手工芸品。ファーンのスカーフ、エステダケンのテキスタイル、イカットのキッチンタオル、クロッケストレンゲの柄(写真)などの伝統的なスカンジナビアのテキスタイルを、プリントやペイントなどでアレンジしたもの。再利用された素材を使った伝統的な毛織物。再生合繊織物。
- 右下:応答性材料、再生合成繊維、自然な風合いを持つテクニカルファイバー、スマートテキスタイル、微視的構造、デジタルサステナブルテキスタイルの使用。
- 左下:手織りのリサイクル・ポリエステルに、デジタルプリントまたは光技術を用いてプリントしたもので、再びリサイクルすることが容易に。染色にはバクテリアや天然植物の色素を使用しています。使ううちに変化する顔料。ミクロフィブリル化セルロースを使ったパフ状のテキスタイル。伝統的なシルク。
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