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集合住宅の新しい可能性。6戸の個別注文住宅が共存する住まい
3世代が集まりつつも、それぞれが暮らしを妥協せずに実現させた6戸の集合住宅。以前の家からの思い出のアイテムを、各所に取り入れているのもポイントです。
Miki Anzai
2021年10月4日
世田谷区の閑静な住宅街に誕生した6戸の集合住宅です。1つの建物の中に、親族からなる各4世帯のA・B・C・D棟に加え、2つの賃貸住宅(E・F棟)が、それぞれ完全に独立しながら共存しています。
当初、この土地に長く暮らしていたご一家は、老朽化した家の建替えを、ハウスメーカーに依頼しました。ところが、単純な長方形が並んだ「羊羹型」のアパートを提案され、C棟のオーナーは「とても笑顔で暮らせない」と驚愕したそうです。
オーナーは、自身のパリ留学の際に、同じくパリで建築を学んでいた建築家の下川太郎さんに相談を持ちかけることにしました。現在は東京で合同会社あまね設計を主宰する下川さんは、ほぼ同じ床面積と費用ながら、全く新しい住宅を提案。各住戸に固有のアプローチがあって、東西南北から採光換気ができる、雁行型の個性豊かなプランを導きだしてくれました。
当初、この土地に長く暮らしていたご一家は、老朽化した家の建替えを、ハウスメーカーに依頼しました。ところが、単純な長方形が並んだ「羊羹型」のアパートを提案され、C棟のオーナーは「とても笑顔で暮らせない」と驚愕したそうです。
オーナーは、自身のパリ留学の際に、同じくパリで建築を学んでいた建築家の下川太郎さんに相談を持ちかけることにしました。現在は東京で合同会社あまね設計を主宰する下川さんは、ほぼ同じ床面積と費用ながら、全く新しい住宅を提案。各住戸に固有のアプローチがあって、東西南北から採光換気ができる、雁行型の個性豊かなプランを導きだしてくれました。
1つの建物ながら、住戸ごとに異なる要望を具現化した、各世帯が一戸建て感覚で住まえる集合住宅です。下川さんは、それぞれの家族からヒアリングをし、個別でありながら繋がりがある、この住まいをつくり上げていきました。
どんなHouzz?
所在地:世田谷区
住まい手:親族世帯4戸(A棟、B棟、C棟、D棟)、賃貸2戸(E・F棟)
敷地面積:391.07㎡
延床面積:395.19㎡
構造:RC造
設計:合同会社あまね設計(下川太郎)
施工:北信土建株式会社
竣工時期:2019年
今回は、C棟のオーナーが、ご主人と3人の小さなお子さんとお住まいの空間を中心にご紹介します。「良質なものは受け継ぐ」「素材感を大切にする」「最初から全てをつくりこまない」「照明は明るくしすぎない」など、パリの暮らしで培われた美意識が息づく住まいです。
どんなHouzz?
所在地:世田谷区
住まい手:親族世帯4戸(A棟、B棟、C棟、D棟)、賃貸2戸(E・F棟)
敷地面積:391.07㎡
延床面積:395.19㎡
構造:RC造
設計:合同会社あまね設計(下川太郎)
施工:北信土建株式会社
竣工時期:2019年
今回は、C棟のオーナーが、ご主人と3人の小さなお子さんとお住まいの空間を中心にご紹介します。「良質なものは受け継ぐ」「素材感を大切にする」「最初から全てをつくりこまない」「照明は明るくしすぎない」など、パリの暮らしで培われた美意識が息づく住まいです。
真鍮のハンドル付きの玄関扉も、旧家の扉を再利用しました。木を鱗(うろこ)のように貼り合わせた玄関扉を、オーナーは、とても気に入っておられます。
「ハウスメーカーからは、リサイクルは不可能と言われたのですが、こうして、引き継げてよかったです」(オーナー)
Houzzで建築家を探す
「ハウスメーカーからは、リサイクルは不可能と言われたのですが、こうして、引き継げてよかったです」(オーナー)
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C棟は、2階・3階が居住空間です。地上階から2階までの階段空間は、さながら広いシューズ・クロークのようで、踊り場に靴箱と姿見が設置されています。
素材の質感を重視するご夫妻のリクエストに応え、打ち放しのコンクリート壁は、化粧型枠できれいに仕上げず、あえて継ぎ目のズレなども残しています。「こうすることで壁面に光があたると不均一な凸凹が強調され、素材そのものの特性を味わえます」(下川さん)。
素材の質感を重視するご夫妻のリクエストに応え、打ち放しのコンクリート壁は、化粧型枠できれいに仕上げず、あえて継ぎ目のズレなども残しています。「こうすることで壁面に光があたると不均一な凸凹が強調され、素材そのものの特性を味わえます」(下川さん)。
たとえば、漆喰壁は、スサの細かい粒を残し、光と影が織りなす表情を楽しめる「中塗り仕上げ」に。フローリングも、あえて節や傷のあるオークを選びました。
「子供たちには、裸足で無垢の木の良さを感じて欲しかった」というオーナー。
汚される心配をしだしたら、大切な家具や、張り替えの利かない漆喰壁は避けるところですが、ご夫妻は一貫して、「自分たちの好きなスタイルで、好きなものに囲まれて過ごす家づくり」を目指されました。
「子供たちには、裸足で無垢の木の良さを感じて欲しかった」というオーナー。
汚される心配をしだしたら、大切な家具や、張り替えの利かない漆喰壁は避けるところですが、ご夫妻は一貫して、「自分たちの好きなスタイルで、好きなものに囲まれて過ごす家づくり」を目指されました。
リビングで特筆すべきは、照明の無い天井です。海外生活の長いご夫妻は、「部屋全体を照らすのではなく、夜は暗さを楽しみながら、必要に応じてランプを置いて、ぼんやりと光を照らしたかった」そうです。パリで建築を学んだ下川さんと「暗さの感覚」を共有できたのも良かったと語ります。
採光は入念に検討し、南側に広い開口を設け、隣家の迫っている西側は、足元に横長のFIX窓を入れました。「日中は自然光だけで暮らせます。光は生活のリズムにも影響するみたいで、ぐっすり眠れるようになりました」(オーナー)
採光は入念に検討し、南側に広い開口を設け、隣家の迫っている西側は、足元に横長のFIX窓を入れました。「日中は自然光だけで暮らせます。光は生活のリズムにも影響するみたいで、ぐっすり眠れるようになりました」(オーナー)
2階のトイレの天井にも照明はつけていません。間接照明が生み出す陰影が、落ち着いた空間を創り出しています。
リビングの北側の一角に設けたポケット空間。今はお祖母さまから譲り受けた大きな箪笥を置いて、玩具などを収納しているそうですが、「ここは住まいながら考えていくスペースです」というオーナー。家具の配置などをかちっと決めずに、暮らしながら、大らかに考えるスタイルもフランス流です。
3階の洗面室には、「マーモリウム」という、天然成分からつくられたリノリウムの床材を採用しました。
「化学的な塩化ビニルは避けたいと思っていたので、天然素材のリノリウムを見つけて、とても気に入りました」というオーナー。C棟の洗面室や廊下だけでなく、A棟や賃貸棟の床材にも使うように提案されたそうです。
「化学的な塩化ビニルは避けたいと思っていたので、天然素材のリノリウムを見つけて、とても気に入りました」というオーナー。C棟の洗面室や廊下だけでなく、A棟や賃貸棟の床材にも使うように提案されたそうです。
最後にA棟も少し覗いてみましょう。
お手洗いの床材には、C棟のオーナーのアドバイスを受け、自然素材のリノリウムを導入しました。人工的なアクセントクロスとの質感の対比が愉しめます。
お手洗いの床材には、C棟のオーナーのアドバイスを受け、自然素材のリノリウムを導入しました。人工的なアクセントクロスとの質感の対比が愉しめます。
奥行きの深いキッチンの出窓は、以前のお宅と同じようにカウンター奥に設置しました。
空間ごとにインパクトのある壁紙を巧みに活用することで、それぞれの部屋に変化を与えているのも、A棟の魅力です。
空間ごとにインパクトのある壁紙を巧みに活用することで、それぞれの部屋に変化を与えているのも、A棟の魅力です。
「『集まって住む』ということは、それぞれの要望を平均化することではありません。光や風、眺望といった『当たり前のこと』を全世帯で享受してもらいながら、個々の好みを充足させることができる形態と意匠を模索しました。6戸の注文住宅ということで、建物はフランス語でles six portes(6つの扉)と名づけました」(下川さん)。
パリをベースとする共通の感性を持つ施主と建築家によって実現した、個性的で表情豊かな集合住宅。住まい手のみなさんが、それぞれ満足のいく住まいを手にいれ、暮らしに笑顔がたえないことでしょう。
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パリをベースとする共通の感性を持つ施主と建築家によって実現した、個性的で表情豊かな集合住宅。住まい手のみなさんが、それぞれ満足のいく住まいを手にいれ、暮らしに笑顔がたえないことでしょう。
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