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建築家に聞く、心地よいバリアフリー住宅をつくるヒント
家族や自分が車椅子を使う暮らしになった時、家づくりはどう考えていけばいい?住み心地を大切に考える建築家2人に聞きました。
Mamiko Nakano
2021年9月16日
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家族や自分の体が不自由になり、車椅子を利用するようになった時、住まいをどのようにつくっていけば良いのでしょうか?高齢者や、車椅子を使う住まい手のための住宅設計を手がける建築家2人に、考え方の基本ポイントを聞きました。
アドバイスをくれた専門家たち:アウラ建築設計事務所の山下一寛さん、株式会社島田宇啓建築研究所の島田宇啓さん。
*それぞれの写真をクリックすると、同じプロジェクトの他の写真もみられます。
アドバイスをくれた専門家たち:アウラ建築設計事務所の山下一寛さん、株式会社島田宇啓建築研究所の島田宇啓さん。
*それぞれの写真をクリックすると、同じプロジェクトの他の写真もみられます。
住まいの「バリアフリー」とは?
車椅子を使って暮らす家を考える時、まず浮かぶのが「バリアフリー」という言葉でしょう。
バリアフリーとは、生活の中で様々な活動をしようとする時の障壁(バリア)をなくすこと。住宅の場合、車椅子でも移動しやすいよう、居室や出入り口等の段差をなくることは、最もわかりやすいバリアフリーの一つと言えるかもしれません。
「室内床のバリアフリーはもちろん重要なポイントですが、外との出入りがスムーズに行えることも必要です」と話すのは、北海道で数多くの車椅子住宅を手がけてきた建築家の山下一寛さんです。山下さんは「車椅子を使ってご自身が自由に動き回れるのであれば、テーブル、洗面、カウンターなどの高さが、使う人に合うようレベル設計することも考慮すべき点です」と続けます。
東京を拠点にする建築家・島田宇啓さんは「空間的なバリアフリーも考えることが大事だと思います」と話します。「高齢者の場合、移動が困難なために同じ環境にいることも多いと思います。家の中にいながら時間の変化、季節の移ろいを感じるように空間を作ることも重要でしょう」
車椅子を使って暮らす家を考える時、まず浮かぶのが「バリアフリー」という言葉でしょう。
バリアフリーとは、生活の中で様々な活動をしようとする時の障壁(バリア)をなくすこと。住宅の場合、車椅子でも移動しやすいよう、居室や出入り口等の段差をなくることは、最もわかりやすいバリアフリーの一つと言えるかもしれません。
「室内床のバリアフリーはもちろん重要なポイントですが、外との出入りがスムーズに行えることも必要です」と話すのは、北海道で数多くの車椅子住宅を手がけてきた建築家の山下一寛さんです。山下さんは「車椅子を使ってご自身が自由に動き回れるのであれば、テーブル、洗面、カウンターなどの高さが、使う人に合うようレベル設計することも考慮すべき点です」と続けます。
東京を拠点にする建築家・島田宇啓さんは「空間的なバリアフリーも考えることが大事だと思います」と話します。「高齢者の場合、移動が困難なために同じ環境にいることも多いと思います。家の中にいながら時間の変化、季節の移ろいを感じるように空間を作ることも重要でしょう」
島田さん設計の「テルヤマモミジの家」。庭の景色と開放感を楽しめる。
暮らしやすい家をつくる時の考え方
では、快適な家づくりのために知っておきたいことや、考慮すべきポイントは何でしょうか?
山下さんは「受けられる地域の社会福祉サービスを知ったり、少し先の将来どのような機能が住まいに必要になるかを考えたりするのは大事だと思います」と言います。
島田さんも「ご自身でできること、介助者が必要なこと、これから介助が必要になりそうなことについて、具体的なイメージを持つのが良いと思います」と話します。「バリアフリーの家も、通常の家づくりと変わりません。どのような生活をしたいかというイメージを持つのは、住まいづくりには大事です。車椅子に乗っていても乗っていなくても、家で何をしている時が楽しいかを考えるのも、快適な家づくりのためには必要です」(島田さん)
暮らしやすい家をつくる時の考え方
では、快適な家づくりのために知っておきたいことや、考慮すべきポイントは何でしょうか?
山下さんは「受けられる地域の社会福祉サービスを知ったり、少し先の将来どのような機能が住まいに必要になるかを考えたりするのは大事だと思います」と言います。
島田さんも「ご自身でできること、介助者が必要なこと、これから介助が必要になりそうなことについて、具体的なイメージを持つのが良いと思います」と話します。「バリアフリーの家も、通常の家づくりと変わりません。どのような生活をしたいかというイメージを持つのは、住まいづくりには大事です。車椅子に乗っていても乗っていなくても、家で何をしている時が楽しいかを考えるのも、快適な家づくりのためには必要です」(島田さん)
山下さんが設計した「車椅子対応住宅 house@h&m」の玄関スロープ。スロープの上を庇がカバーしているため、積雪の影響も受けづらい。
バリアフリーの家づくりで気をつけたいポイント
バリアフリーの家づくりの際に、配慮が必要な箇所など、気をつけるべきポイントはどこなのでしょうか?
「玄関まわりに注意を払うことが重要です。出入りの動線を考え、ストレスが減らせるようにしましょう。また、手すりをつけすぎないように気をつけるのがおすすめです。代わりになるものは案外多いですよ」と山下さん。
山下さんは、車椅子対応住宅では、落ち着いた空間を保つために、手すりや福祉器具などをなるべく少なく使うようにしているそうです。理由は、施設のような雰囲気ではなく「住宅ならではの落ち着いたデザインを大切にしたいから」だといいます。
Houzzで住まいの専門家を探す
バリアフリーの家づくりで気をつけたいポイント
バリアフリーの家づくりの際に、配慮が必要な箇所など、気をつけるべきポイントはどこなのでしょうか?
「玄関まわりに注意を払うことが重要です。出入りの動線を考え、ストレスが減らせるようにしましょう。また、手すりをつけすぎないように気をつけるのがおすすめです。代わりになるものは案外多いですよ」と山下さん。
山下さんは、車椅子対応住宅では、落ち着いた空間を保つために、手すりや福祉器具などをなるべく少なく使うようにしているそうです。理由は、施設のような雰囲気ではなく「住宅ならではの落ち着いたデザインを大切にしたいから」だといいます。
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山下さんが設計した「-モビリティハウスの試み-house @ tk」の玄関にある、手かけにもなる大黒柱。
「一般的なバリアフリー住宅には、デザインよりも機能を重視しすぎたものもありますが、デザインは住み心地に影響してきます。住空間が“良い雰囲気”であることは重要です」と山下さん。「そのため、手すりや福祉器具など将来への備えをどの程度取り入れるべきかは、ご家族の皆さんと考えながら進めていきます。ハードを整える事も必要ですが、ソフト面、つまり心構えや気持ちや考え方を整えることも、とても大切だと考えています」
例えば、山下さんが手掛けたこちらの住まいの大黒柱は、玄関からの動線上にあるもの。「手かけとして使えるようつくりましたが、いわゆる手すりに見えないようにしています」(山下さん)
「一般的なバリアフリー住宅には、デザインよりも機能を重視しすぎたものもありますが、デザインは住み心地に影響してきます。住空間が“良い雰囲気”であることは重要です」と山下さん。「そのため、手すりや福祉器具など将来への備えをどの程度取り入れるべきかは、ご家族の皆さんと考えながら進めていきます。ハードを整える事も必要ですが、ソフト面、つまり心構えや気持ちや考え方を整えることも、とても大切だと考えています」
例えば、山下さんが手掛けたこちらの住まいの大黒柱は、玄関からの動線上にあるもの。「手かけとして使えるようつくりましたが、いわゆる手すりに見えないようにしています」(山下さん)
山下さん設計の「-モビリティハウスの試み #札幌の車椅子住宅」のガレージ。車椅子と車の乗り降りを、車庫の空間の中で完結できるようになっている。
出入りをする玄関やガレージは使う人に合わせて
「外との出入りがスムーズに行えるようにしましょう」と話す山下さんは、通常の住宅とは違う仕様を取り入れるべく箇所として玄関ドアをあげます。
「例えば、玄関ドアが重すぎて開けづらいケースがあるかもしれません。その場合、例えば、来客が玄関でインターホンを押したら、来た人をモニターで確認し、リビングにあるボタンでドアを開けられるような仕様にするとか。住まい手の状況に合わせて、相談しながらカスタマイズすると良いと思います」
また、車で移動し、帰宅後に室内用車椅子に乗り換えることもあるでしょう。こちらは車から室内用車椅子への乗り換えをガレージ内で行い、スムーズに室内に入ることができる仕様になっている事例です。
出入りをする玄関やガレージは使う人に合わせて
「外との出入りがスムーズに行えるようにしましょう」と話す山下さんは、通常の住宅とは違う仕様を取り入れるべく箇所として玄関ドアをあげます。
「例えば、玄関ドアが重すぎて開けづらいケースがあるかもしれません。その場合、例えば、来客が玄関でインターホンを押したら、来た人をモニターで確認し、リビングにあるボタンでドアを開けられるような仕様にするとか。住まい手の状況に合わせて、相談しながらカスタマイズすると良いと思います」
また、車で移動し、帰宅後に室内用車椅子に乗り換えることもあるでしょう。こちらは車から室内用車椅子への乗り換えをガレージ内で行い、スムーズに室内に入ることができる仕様になっている事例です。
「テルヤマモミジの家」の、お母様の部屋のそばに設けられた広めのトイレ・洗面所。
トイレ・洗面所は居室のそばに
島田さんは、90代と70代の親子が住まう「テルヤマモミジの家」を設計した際、90代のお母さまの部屋を洗面所と直結させ、洗面所内にトイレを設置する設計にしました。
「すぐにトイレに行ける、介助しやすい、洗濯物がシンクやお風呂、洗濯機ですぐに洗いやすいなど、色々な理由からこのような形に決まりました。洗面所とトイレを一体の広いスペースにし、高齢者の部屋と直結させることで、使い勝手が良くなったと思います」
トイレ・洗面所は居室のそばに
島田さんは、90代と70代の親子が住まう「テルヤマモミジの家」を設計した際、90代のお母さまの部屋を洗面所と直結させ、洗面所内にトイレを設置する設計にしました。
「すぐにトイレに行ける、介助しやすい、洗濯物がシンクやお風呂、洗濯機ですぐに洗いやすいなど、色々な理由からこのような形に決まりました。洗面所とトイレを一体の広いスペースにし、高齢者の部屋と直結させることで、使い勝手が良くなったと思います」
山下さんが設計した「-モビリティハウスの試み-house @ tk」のダイニングの床材は畳の雰囲気のあるビニール製。車椅子もスムーズに動ける。
丈夫で質感の良い素材を選ぶ
住まいに取り入れる建材や素材については、山下さんも島田さんも、丈夫さと質感の良さが両立するものをおすすめしていました。
山下さんが設計した上の写真の住宅では、リビングダイニングに畳のように見える塩ビの床材を使用。車椅子が走っても痛みにくい仕様になっているそうですが、畳の雰囲気を十分楽しめるそうです。
「床や手すりなどは肌触りの良い素材を選ぶようにします」と話すのは島田さんです。「壁や天井は光や外の景色を綺麗に引き立てるもの、水回りはタフな使い方をしても大丈夫なもの、という考え方で検討をしています」
丈夫で質感の良い素材を選ぶ
住まいに取り入れる建材や素材については、山下さんも島田さんも、丈夫さと質感の良さが両立するものをおすすめしていました。
山下さんが設計した上の写真の住宅では、リビングダイニングに畳のように見える塩ビの床材を使用。車椅子が走っても痛みにくい仕様になっているそうですが、畳の雰囲気を十分楽しめるそうです。
「床や手すりなどは肌触りの良い素材を選ぶようにします」と話すのは島田さんです。「壁や天井は光や外の景色を綺麗に引き立てるもの、水回りはタフな使い方をしても大丈夫なもの、という考え方で検討をしています」
社会と繋がっていられる家づくり
これまで、車椅子を使う様々な年齢層の住まい手のために家づくりをしてきた山下さんは「車椅子を使う人を、家の中に閉じ込めたくない」と話します。
「自分も外に出られない、友達にもきてもらえない、そういう家はつくりたくありません。社会と繋がりを持ち続けられる家であることが、幸せな住まいだと思っています」
「住まいのバリアフリー」で家族に配慮した家をつくるには?
「ユニバーサルデザイン」の基礎知識:「バリアフリー」とどう違う?
これまで、車椅子を使う様々な年齢層の住まい手のために家づくりをしてきた山下さんは「車椅子を使う人を、家の中に閉じ込めたくない」と話します。
「自分も外に出られない、友達にもきてもらえない、そういう家はつくりたくありません。社会と繋がりを持ち続けられる家であることが、幸せな住まいだと思っています」
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