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3世代で暮らした築100年超の古民家。新旧を調和させた家に再生
「次の100年にバトンを繋ぎたい」と、空き家だった思い出の古民家を再生。現代の建築基準に合う性能を確保しながら、歴史ある建物の趣が保たれた家です。
Miki Anzai
2021年8月16日
埼玉県狭山市で狭山茶の生産をしていたお祖父さまが、大正9年に建てた平屋住宅を、お孫さんであるオーナーが再生させました。この家で子どもの頃、盆棚飾りなど四季の行事を大家族でおこなっていたオーナー。お母様がおうどんを打っていた姿も懐かしく思い出されます。10年ほど空き家でしたが、「100年もった家なので、次の100年にバトンを繋ぎたい」と再生を決断しました。
まず、同じ県内で古民家再生を手がける設計事務所の独楽蔵をネット検索でみつけて相談すると、瓦屋根の状態は良く、構造体を補強すれば再生可能だと分かりました。「梁を見せて欲しい」という要望だけ伝えて、あとはお任せしたそうです。昔懐かしい建具、梁、柱は残しながら、要所要所に新しい木材を使った、新旧の木の調和を楽しめる、快適な住まいが完成しました。
まず、同じ県内で古民家再生を手がける設計事務所の独楽蔵をネット検索でみつけて相談すると、瓦屋根の状態は良く、構造体を補強すれば再生可能だと分かりました。「梁を見せて欲しい」という要望だけ伝えて、あとはお任せしたそうです。昔懐かしい建具、梁、柱は残しながら、要所要所に新しい木材を使った、新旧の木の調和を楽しめる、快適な住まいが完成しました。
土間からのリビングの眺め。昔の家は、玄関土間と座敷の段差が約500mmもあるので、新しくヒノキ製の式台を設置しました。リビングのフローリングはオークの無垢材。新しい木材と年季の入ったスギ板の框(かまち)のコントラストが鮮やかです。
千本格子の両引き戸は、長い間、台所の隅の家具の後ろに置きっ放しだった引き違い戸をリメイクして、表舞台に出してあげました。もともとの建具の高さ1760mmを1900mmに変更するため、額状に新しくマツ科のスプルス材の枠をはめて寸法と強度を調整して、塗装で色あわせをした後に、ガラスをはめ込みました。
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千本格子の両引き戸は、長い間、台所の隅の家具の後ろに置きっ放しだった引き違い戸をリメイクして、表舞台に出してあげました。もともとの建具の高さ1760mmを1900mmに変更するため、額状に新しくマツ科のスプルス材の枠をはめて寸法と強度を調整して、塗装で色あわせをした後に、ガラスをはめ込みました。
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広い土間は、以前の位置のままに残し、奥にスギ材で納戸スペースを設けました。登山やマウンテンバイクが趣味のオーナーにとって、バイクや用具類をたっぷり収納できる理想のスペースです。
玄関正面からは、オーナーの寝室の明かり取りの障子窓と飾り棚が綺麗に見えます。この空間でも、新旧の木部の対比が光ります。
玄関正面からは、オーナーの寝室の明かり取りの障子窓と飾り棚が綺麗に見えます。この空間でも、新旧の木部の対比が光ります。
開放的なLDK。間取りを変更する際、昔の家の特徴である一番明るく広い客間を、日常的にオーナーがくつろげる空間にするように計画されました。
ちなみに、古民家再生で苦労するのは、天井の低さです。小屋裏を剥き出しにする方法もありますが、空調効率が悪くなるため、今回は床を約15cm下げることで、圧迫感を解消しました。ケヤキの大黒柱の接合部のホゾ(凹型の穴)に埋木(うめき)を施した部分の高さだけ、床を下げたことがわかります。
天井には、オーナーの念願だった梁が綺麗に見えています。この梁の一段下に胴差(どうざし)と呼ばれる1階と2階の通し柱の胴に差す横架材が、(和室や土間との境に)走っていました。構造上、どうしても取り除くことができなかったため、床を下げることで開放的な空間を捻出できました。
胴差に使われているのはスギです。黒光りした古材が、天井の梁とともに家に風格をもたらしています。
胴差に使われているのはスギです。黒光りした古材が、天井の梁とともに家に風格をもたらしています。
すっきりとしたモザイクタイルのキッチン腰壁。実はオーナーは「アントニオ・ガウディ風に鮮やか色彩で遊んでみては?」と提案したそうですが、「このお宅の良さは、立派な古材や漆喰、新規の無垢材などの素材感なので、新しい部分は脇役に徹するように」と、独楽蔵の建築家からのアドバイスもあり、シンプルに仕上げてもらいました。
腰壁には、奥行き約150mmのT字の袖をつけています。ここにティッシュボックスやサプリメントのボトルなどを置けるので、テーブルの上をいつも綺麗にしておけます。
腰壁には、奥行き約150mmのT字の袖をつけています。ここにティッシュボックスやサプリメントのボトルなどを置けるので、テーブルの上をいつも綺麗にしておけます。
薪ストーブは、オーナーが「シンプルなデザインが気に入って即決した」と言う英国のハンターストーブです。
「庭の不要な木を切って薪にして、燃やして、暖を取った後、灰は肥料にしています。この循環サイクルに、とても満足しています」(オーナー)。
「庭の不要な木を切って薪にして、燃やして、暖を取った後、灰は肥料にしています。この循環サイクルに、とても満足しています」(オーナー)。
神棚はもともとは、リビングと和室の境にありました。その名残りが分かるように、胴差の溝をあえて残しています。
以前からあった和室の床柱と長押(なげし)は残して、それに調和するように新しくスギで「神棚の枠」と床の間の「落とし掛け」(横木)を造作しました。新旧の木部が、互いの良さが引き立てながら共存しています。
今回のリノベーションにあたっては、建物の外周に、まるで洋服を着せるかのように、コンクリートの基礎を増設しています。こうすることで、現在の建築基準に近づくように、耐震性、耐久性、断熱性の確保を目指したそうです。
お仕事の関係で京都に暮らしていたこともあるというオーナー。当時はよく、町屋を改装した飲食店に通っていただけに、「古い建物の再生」には興味があったそうです。たくさんの思い出が詰まった築100年の建物を、次世代にも愛着を持って引き継げる家に再生できて、とても喜んでおられました。
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お仕事の関係で京都に暮らしていたこともあるというオーナー。当時はよく、町屋を改装した飲食店に通っていただけに、「古い建物の再生」には興味があったそうです。たくさんの思い出が詰まった築100年の建物を、次世代にも愛着を持って引き継げる家に再生できて、とても喜んでおられました。
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