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クライアントとの衝突を回避するためのヒント
コミュニケーションは、住まいづくりにおける問題回避や問題解決には欠かせないもの。では、よいコミュニケーションはどのようなものなのでしょうか?
Erin Carlyle
2021年8月8日
プロジェクトがスムーズに進行し、予期せぬ問題もなく、クライアントが忍耐強くいてくれるという状況は、専門家にとっても理想的です。でも現実には、家づくりはクライアントにとってストレスである場合が多いものです。予期せぬ問題が発生した場合はなおさらで、専門家との間に軋轢が生じやすくなることもあります。
今回は、米国の専門家たちにクライアントとの衝突を回避するためのコツを伝授してもらいました。
今回は、米国の専門家たちにクライアントとの衝突を回避するためのコツを伝授してもらいました。
価格、スケジュール、デザインについてしっかり話し合う
基本的なことですが、プロジェクトにおいてクライアントとの衝突を避けるために重要なのは、とにかくコミュニケーションをとることです。
「クライアントが知りたいのは、価格、スケジュール、仕上げ(デザイン)の3つです。多くの建築業者はこれら3つを伝えきれていないことが原因で失敗しています。あとになってから請求書を出し、クライアントに『それは最初の契約に含まれていると思っていたのに』と言われてしまうのです」。そう語るのは米フロリダ州の施工会社41 WestのBJ・バローネさんです。
専門家に依頼したことがない住まい手は特に、予期せぬ問題やプロジェクト途中での変更がスケジュールや総額に与える影響を当然ながら分かっていません。そのため、バローネさんや彼のスタッフは、クライアントからプロジェクト内で変更の可能性を持ち出された場合、すぐに「価格」「スケジュール」「デザイン」の3つについて話を詰めるようにしています。
またバローネさんの会社では、変更によって生じる価格、スケジュール、デザインへの影響を詳細に記した仕様変更をすぐに送付します。クライアントがそれにサインをするまで、作業を進めることはありません。
基本的なことですが、プロジェクトにおいてクライアントとの衝突を避けるために重要なのは、とにかくコミュニケーションをとることです。
「クライアントが知りたいのは、価格、スケジュール、仕上げ(デザイン)の3つです。多くの建築業者はこれら3つを伝えきれていないことが原因で失敗しています。あとになってから請求書を出し、クライアントに『それは最初の契約に含まれていると思っていたのに』と言われてしまうのです」。そう語るのは米フロリダ州の施工会社41 WestのBJ・バローネさんです。
専門家に依頼したことがない住まい手は特に、予期せぬ問題やプロジェクト途中での変更がスケジュールや総額に与える影響を当然ながら分かっていません。そのため、バローネさんや彼のスタッフは、クライアントからプロジェクト内で変更の可能性を持ち出された場合、すぐに「価格」「スケジュール」「デザイン」の3つについて話を詰めるようにしています。
またバローネさんの会社では、変更によって生じる価格、スケジュール、デザインへの影響を詳細に記した仕様変更をすぐに送付します。クライアントがそれにサインをするまで、作業を進めることはありません。
もう一つの良いコミュニケーション方法は、話し合った内容をすべて記録することです。「すべての会話の後にその内容をまとめたメールを送るようにと部下たちに伝えています」とバローネさん。
Houzz Proのような案件管理ソフトウェアを使えば、クライアントとのやりとりやお互いに合意した内容を記録することができます。またクライアントとのメール、ダイレクトメッセージ、電話を建築家やリフォーム業者が管理することもできます。さらに、プロジェクトの進行に合わせて、見積書や仕様変更、プロジェクトの工程表、進捗記録を共有することも可能です。
Houzz Proについて詳しい情報を見る
Houzz Proのような案件管理ソフトウェアを使えば、クライアントとのやりとりやお互いに合意した内容を記録することができます。またクライアントとのメール、ダイレクトメッセージ、電話を建築家やリフォーム業者が管理することもできます。さらに、プロジェクトの進行に合わせて、見積書や仕様変更、プロジェクトの工程表、進捗記録を共有することも可能です。
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プロセスを伝える
クライアントとのコミュニケーションは、解体や着工に先立って始まっています。プロジェクトの各段階で想定される事項をクライアントに説明することが重要です。
米フロリダ州にある In Detail Interiorsのシェリル・キース・クレンデノンさんは、「私たちはクライアントに仕事の進め方をしっかりと説明しているので衝突はあまりおこりません」と話します。
クレンデノンさんは、デザイン提案書を作成する前に、自分たちの仕事のプロセスを5回にわたって見込み顧客に説明します。そのプロセスをまとめた「クライアント・イントロダクション」は、この会社に依頼をするメリットを住まい手に伝えるための資料です。彼女は初回の電話の前にまずこの資料をメールで送り、追ってプロセスを繰り返し伝えていきます。
クライアントとのコミュニケーションは、解体や着工に先立って始まっています。プロジェクトの各段階で想定される事項をクライアントに説明することが重要です。
米フロリダ州にある In Detail Interiorsのシェリル・キース・クレンデノンさんは、「私たちはクライアントに仕事の進め方をしっかりと説明しているので衝突はあまりおこりません」と話します。
クレンデノンさんは、デザイン提案書を作成する前に、自分たちの仕事のプロセスを5回にわたって見込み顧客に説明します。そのプロセスをまとめた「クライアント・イントロダクション」は、この会社に依頼をするメリットを住まい手に伝えるための資料です。彼女は初回の電話の前にまずこの資料をメールで送り、追ってプロセスを繰り返し伝えていきます。
「初回の電話では、まず送った資料をざっと説明するところから始めます」とクレンデノンさん。クライアントは電話の後に送られてくるフォローアップメールで、そのプロセスを再度確認します。
また、第一回目の打ち合わせでは、クライアントの家を訪問しますが、その際にもプロセスを確認します。また会社のウェブサイトにFAQとしてプロセスが掲載されており、クライアントがいつでも確認できるようになっています。
デザインやリノベーションのプロセスをクライアントに明確に伝える良い方法は繰り返すということ。あなたはテキパキとこなせていても、多くのクライアントにとっては初めての経験であることを忘れてはいけません。
また、第一回目の打ち合わせでは、クライアントの家を訪問しますが、その際にもプロセスを確認します。また会社のウェブサイトにFAQとしてプロセスが掲載されており、クライアントがいつでも確認できるようになっています。
デザインやリノベーションのプロセスをクライアントに明確に伝える良い方法は繰り返すということ。あなたはテキパキとこなせていても、多くのクライアントにとっては初めての経験であることを忘れてはいけません。
未完成な部分は正直に伝える
新しいプロジェクトに取り掛かるまで、あるいはデザイン段階に入るまでの時間を、依頼を希望しているクライアントに伝えることも重要です。コロナ禍で作業が遅れてしまう可能性を見込み顧客に伝えることも含まれます。
米ウィスコンシン州にあるGinkgo Leaf Studioのランドスケープデザイナー、ジム・ジェヴィエツキさんは、プロジェクトの問い合わせが滞ったのは2、3週間であったのに対し、業務は長期間にわたって中断せざるを得なかったといいます。通常は、仲間のデザイナー、ハンナ・ポールソンさんとオフィスで仕事をしています。
パンデミックにより、ジェヴィエツキさんらは3か月間、それぞれの自宅で仕事をしながら毎日メールで連絡を取り合うワークスタイルに切り替えました。また5月には、ジェヴィエツキさんの父親が亡くなったことも相まって、彼らの生産性は低下してしまいました。
新しいプロジェクトに取り掛かるまで、あるいはデザイン段階に入るまでの時間を、依頼を希望しているクライアントに伝えることも重要です。コロナ禍で作業が遅れてしまう可能性を見込み顧客に伝えることも含まれます。
米ウィスコンシン州にあるGinkgo Leaf Studioのランドスケープデザイナー、ジム・ジェヴィエツキさんは、プロジェクトの問い合わせが滞ったのは2、3週間であったのに対し、業務は長期間にわたって中断せざるを得なかったといいます。通常は、仲間のデザイナー、ハンナ・ポールソンさんとオフィスで仕事をしています。
パンデミックにより、ジェヴィエツキさんらは3か月間、それぞれの自宅で仕事をしながら毎日メールで連絡を取り合うワークスタイルに切り替えました。また5月には、ジェヴィエツキさんの父親が亡くなったことも相まって、彼らの生産性は低下してしまいました。
現在はオフィスに戻り、プロジェクトの問い合わせも増えてきました。しかし、ジェヴィエツキさんとポールソンさんは変化した業務プロセスやパンデミックによる常態化したストレスに加え、愛する人を失った悲しみから抜けだせずにいます。そのため、新しいデザインを生み出すまでの時間も長くかかってしまいます。
プロジェクトを開始するまでには「忙しさの度合いにもよりますが、6、8、10あるいは12週間かかると伝えています。でも中には4週間しか経たないうちに連絡をくださる方もいます」とジェヴィエツキさん。「まさに即納が当たり前とする『アマゾン・メンタリティ』の時代ですね」
ジェヴィエツキさんは、見込み顧客から連絡があった際には長めに納期を伝え、待ち時間の長さで争いが起きないようにしています。
プロジェクトを開始するまでには「忙しさの度合いにもよりますが、6、8、10あるいは12週間かかると伝えています。でも中には4週間しか経たないうちに連絡をくださる方もいます」とジェヴィエツキさん。「まさに即納が当たり前とする『アマゾン・メンタリティ』の時代ですね」
ジェヴィエツキさんは、見込み顧客から連絡があった際には長めに納期を伝え、待ち時間の長さで争いが起きないようにしています。
それでもクライアントとの衝突が発生したら
プロジェクト全体を通してコミュニケーションを徹底し、クライアントの決定事項をすべて文書化していれば、意見の相違が生じることはほとんどないはずです。しかし、時に意見の相違が不可避な場合もあり、そうなってしまった場合、念頭に置かなければならないことは、正しくあろうという姿勢とクライアントを満足させるということです。
「事業にコストの発生はつきものです」とクレンデノンさん。「黄色い取っ手を発注した後に、突然赤い取っ手に変更したいとクライアントが言えば、赤い取っ手を再発注しなければなりません。」
これは特殊なケースですが、契約後にプロジェクトの方向性についてクライアントと意見の相違が生じることがあります。米国ニューヨークにある Crisp Architectsのジミー・クリスプさんはこのように話します。「私は『お客様は神様』と自分に言い聞かせ、規約に反するものや危険なものでない限りはクライアントにこう伝えるようにしています…『もしあなたが紫色の塔を家に付け足したいのなら、私は最高の紫色の塔を作りましょう』と」
「『その建物にはミスマッチだ』とか『近隣の家と調和しない色だ』と私が言ったとしても、最終的にそれは彼らの家なのですから」
プロジェクト全体を通してコミュニケーションを徹底し、クライアントの決定事項をすべて文書化していれば、意見の相違が生じることはほとんどないはずです。しかし、時に意見の相違が不可避な場合もあり、そうなってしまった場合、念頭に置かなければならないことは、正しくあろうという姿勢とクライアントを満足させるということです。
「事業にコストの発生はつきものです」とクレンデノンさん。「黄色い取っ手を発注した後に、突然赤い取っ手に変更したいとクライアントが言えば、赤い取っ手を再発注しなければなりません。」
これは特殊なケースですが、契約後にプロジェクトの方向性についてクライアントと意見の相違が生じることがあります。米国ニューヨークにある Crisp Architectsのジミー・クリスプさんはこのように話します。「私は『お客様は神様』と自分に言い聞かせ、規約に反するものや危険なものでない限りはクライアントにこう伝えるようにしています…『もしあなたが紫色の塔を家に付け足したいのなら、私は最高の紫色の塔を作りましょう』と」
「『その建物にはミスマッチだ』とか『近隣の家と調和しない色だ』と私が言ったとしても、最終的にそれは彼らの家なのですから」
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