コメント
2021年欧州デジタル見本市よりひもとく、これからのライフトレンド
インテリアデザイナーである筆者が、チェックしておきたい欧州発のライフスタイルトレンドをご紹介します。
これまで年初に開かれてきた欧州のインテリア見本市は、2021年、コロナ禍による移動制限により、ほとんどがデジタル開催となりました。いまだに影響が続くコロナ禍下で、変化はさらに加速しています。ハイムテキスタイル、メゾン・エ・オブジェ、デコオフなどによるオンラインでの情報発信から、これからのインテリアを考えていく上で押さえておきたいキーワードをまとめてみてきましょう。
Rewild / © SPOTT for Heimtextil
Photographer: Andreas HOUMANN
1. ロングライフ、環境保護、確かな品質への要求
2021年、リアルでの開催が見送られ、オンラインでトレンドが発信されたハイムテキスタイル見本市では、世界的なテーマとなった環境問題を踏まえたキーワードがテーマとなっていました。特にサステナブルな考え方は避けては通れないテーマであり、どの展示会でも多方面から取り上げています。
ハイムの今期トレンドのコアメッセージは、「Nothing New, Everything New(新しくないのに、新しい)」。ロングライフ、環境保護、確かな品質への要求です。昨年のサステナブル、リサイカブルなどの流れをさらに強化。意識の改革とともに、行動を起こすことが提唱されました。
Photographer: Andreas HOUMANN
1. ロングライフ、環境保護、確かな品質への要求
2021年、リアルでの開催が見送られ、オンラインでトレンドが発信されたハイムテキスタイル見本市では、世界的なテーマとなった環境問題を踏まえたキーワードがテーマとなっていました。特にサステナブルな考え方は避けては通れないテーマであり、どの展示会でも多方面から取り上げています。
ハイムの今期トレンドのコアメッセージは、「Nothing New, Everything New(新しくないのに、新しい)」。ロングライフ、環境保護、確かな品質への要求です。昨年のサステナブル、リサイカブルなどの流れをさらに強化。意識の改革とともに、行動を起こすことが提唱されました。
Repurpose / © SPOTTfor Heimtextil
Photographer: Andreas HOUMANN
これにあわせて、4つのキーワード「Repurpose(別の用途に転用する)」「Reinforce(より強固にする)」Re-Wild(自然な状態に戻す)」、「Revive(再びよみがえらせる)」も提示されました。
4つのカテゴリーが持つテイストは、ノスタルジー、丈夫さ、ナチュラル、賑やかさ。どれもが、これから拡大する中古市場を見据えたもので、今あるものやデッドストックを利用し、新たなものに生まれ変わらせる、今ある素材を編集し、集め、繋げるリメイク・リメイドの手法に基づいています。
「新しくないのに、新しいもの」と生きていく【ハイムテキスタイル セミナー】
Photographer: Andreas HOUMANN
これにあわせて、4つのキーワード「Repurpose(別の用途に転用する)」「Reinforce(より強固にする)」Re-Wild(自然な状態に戻す)」、「Revive(再びよみがえらせる)」も提示されました。
4つのカテゴリーが持つテイストは、ノスタルジー、丈夫さ、ナチュラル、賑やかさ。どれもが、これから拡大する中古市場を見据えたもので、今あるものやデッドストックを利用し、新たなものに生まれ変わらせる、今ある素材を編集し、集め、繋げるリメイク・リメイドの手法に基づいています。
「新しくないのに、新しいもの」と生きていく【ハイムテキスタイル セミナー】
Omexco odeのイカット柄の壁紙。先祖代々のサヴォアフェールの再解釈として発表された
- これまでのものを再解釈し、ランクアップさせる
VitraのティプトンRE
都会暮らしの人口が増加する中、これまでのようにゴミをどこかに移動し埋めたり燃やしたりしていては、環境負荷が増すばかりとなってしまうため、作るプロセスから再考する製品が登場してきています。
- 地域の資源を活用したリモデリング
都会暮らしの人口が増加する中、これまでのようにゴミをどこかに移動し埋めたり燃やしたりしていては、環境負荷が増すばかりとなってしまうため、作るプロセスから再考する製品が登場してきています。
Romo Group / Black Edition
クッション:Nuala 9101-03, Otoko 9106-03
椅子張り地:Zafaro 9094-01
2. 真の贅沢。心を動かすインテリア
いつもはパリで開催されるデコオフも、今期の情報発信はデジタルとなりました。Romo Group(ロモ グループ)のブラック・エディションより、シンプルな幾何モチーフを表情豊かな色彩と素材感で表現したファブリックや壁紙が発表されました。
水彩画で描かれたような透明感のある色。万華鏡の中で繰り広げられるような幾何柄が、絶妙な陰影を帯び、情感を動かします。
カットベルベットによる深い色合いや、光や風を感じる立体的なファブリックなど、五感に訴える色づかいと贅沢な質感が奏でる印象深い情景が特徴的です。
クッション:Nuala 9101-03, Otoko 9106-03
椅子張り地:Zafaro 9094-01
2. 真の贅沢。心を動かすインテリア
いつもはパリで開催されるデコオフも、今期の情報発信はデジタルとなりました。Romo Group(ロモ グループ)のブラック・エディションより、シンプルな幾何モチーフを表情豊かな色彩と素材感で表現したファブリックや壁紙が発表されました。
水彩画で描かれたような透明感のある色。万華鏡の中で繰り広げられるような幾何柄が、絶妙な陰影を帯び、情感を動かします。
カットベルベットによる深い色合いや、光や風を感じる立体的なファブリックなど、五感に訴える色づかいと贅沢な質感が奏でる印象深い情景が特徴的です。
Romo Group / BLACK edition カーテン:Susulu 9096-01 光を透過するカラフルで立体的なレース
ロモの3Dで色をまとったレースのカーテンや、オズボーンの3Dの表情をもつグラデーションのカーテンなど、ひと工夫されたレース素材に注目です。
- 視線を避けて光を取り込むカーテン
ロモの3Dで色をまとったレースのカーテンや、オズボーンの3Dの表情をもつグラデーションのカーテンなど、ひと工夫されたレース素材に注目です。
Christian Fischbacher 2021SS新作 ジェンベリズム
3. 大地や豊かな自然の色。小さなピースで作りだす自然の情景
ステイホームによって、人々が自然を求める気持ちは強まったようです。これまでもみられた植物モチーフのアイテムに加え、力強い大地の豊かさを感じさせるものや、自然が育む植物の実りの色も多く見られました。
Christian Fischbacher(クリスチャン・フィッシュバッハ)は、すべての感覚に響く豊かでカラフルなアフリカの文化や多様性に敬意を表したコレクションを発表しました。楽器の名前にちなんだ作品は、落ち着きをもたらすアースカラーで構成され、本来の自然に近づく感覚を呼び起こしてくれます。
3. 大地や豊かな自然の色。小さなピースで作りだす自然の情景
ステイホームによって、人々が自然を求める気持ちは強まったようです。これまでもみられた植物モチーフのアイテムに加え、力強い大地の豊かさを感じさせるものや、自然が育む植物の実りの色も多く見られました。
Christian Fischbacher(クリスチャン・フィッシュバッハ)は、すべての感覚に響く豊かでカラフルなアフリカの文化や多様性に敬意を表したコレクションを発表しました。楽器の名前にちなんだ作品は、落ち着きをもたらすアースカラーで構成され、本来の自然に近づく感覚を呼び起こしてくれます。
OSBORNE & LITTLE 壁紙:Makino W7550-01
壁紙の表現にはより複雑な技法が組み合わされ、3枚で一つの画になるパネル壁紙に仕上げられています。より高度で大胆なテクニックによる絵画のような壁紙が多く出てきています。
- 小さなピースをまとめて作りだした自然の情景
壁紙の表現にはより複雑な技法が組み合わされ、3枚で一つの画になるパネル壁紙に仕上げられています。より高度で大胆なテクニックによる絵画のような壁紙が多く出てきています。
CASAMANCEのKRISTEN GARDEN
- モノトーンのジャングル柄
CAMENGOのJewel
家で籠りがちな気分を明るくする、澄んだカラフルな色も多く見られました。カメンゴのファブリック、Jewelは、孔雀の自然の宝石のような色をもとに、カラフルでフレッシュな作品にしています。
- 大地の記憶・地層柄
家で籠りがちな気分を明るくする、澄んだカラフルな色も多く見られました。カメンゴのファブリック、Jewelは、孔雀の自然の宝石のような色をもとに、カラフルでフレッシュな作品にしています。
Masureel Paradio。我を忘れるおとぎ話のようなマラケシュの庭園をモチーフにした壁紙
4. 旅する郷愁を味わう
移動が制限される中で、インドやアフリカ、日本やウズベキスタンなどを旅する雰囲気を感じてもらおうとする壁紙も多く出ています。
4. 旅する郷愁を味わう
移動が制限される中で、インドやアフリカ、日本やウズベキスタンなどを旅する雰囲気を感じてもらおうとする壁紙も多く出ています。
ÉLITIS 壁紙:Reves de Manille TP323-01
こちらは、インドの細密画をおとぎ話のような牧歌的田園風景にして描いているシリーズの壁紙です。
こちらは、インドの細密画をおとぎ話のような牧歌的田園風景にして描いているシリーズの壁紙です。
Maison & Objet Premium Design Photography © DR
5. クリーンなクラフト感
メゾン・エ・オブジェのオンラインイベント・デジタルデイズで提示されたトレンドの中でも、上質な仕上げのアイテムに価値を置く"プレミアムデザイン"や、手作りの素晴らしさに注目する"クラフト"のテーマは、日本でも取り入れやすく、これからも継続して取り入れられるであろう、大切なテーマです。
木を使った上質で精緻な仕上げ。清々しくクリーンなジャパンディのデザインが、世界中で取り上げられ、これからも拡大していくでしょう。
5. クリーンなクラフト感
メゾン・エ・オブジェのオンラインイベント・デジタルデイズで提示されたトレンドの中でも、上質な仕上げのアイテムに価値を置く"プレミアムデザイン"や、手作りの素晴らしさに注目する"クラフト"のテーマは、日本でも取り入れやすく、これからも継続して取り入れられるであろう、大切なテーマです。
木を使った上質で精緻な仕上げ。清々しくクリーンなジャパンディのデザインが、世界中で取り上げられ、これからも拡大していくでしょう。
Maison et Objet Well at Work Photography © DR
6. 新たなワークプレイスのあり方
デジタルデイスでは、Well at Workとして働き方のトレンドも出されました。これまでも"ワーク"はメゾン・エ・オブジェのトレンドのテーマに取り上げられてきました。コロナ以降、家での働き方やオフィスに対する考え方に著しい変化が生じ、ワークプレイスの在り方自体が問われる形になってきています。
6. 新たなワークプレイスのあり方
デジタルデイスでは、Well at Workとして働き方のトレンドも出されました。これまでも"ワーク"はメゾン・エ・オブジェのトレンドのテーマに取り上げられてきました。コロナ以降、家での働き方やオフィスに対する考え方に著しい変化が生じ、ワークプレイスの在り方自体が問われる形になってきています。
HAWORTHのオフィスチェアFern。シダ植物に着想を得たデザインが体の動きにそって背面をサポートする
来春には、世界的なオフィス家具展示会であるオルガテックの日本開催が決定しています。米国のオフィス家具見本市・NeoConやミラノサローネでも、これからの働く場の作り方が重要なテーマとなっています。
新たな働き方にフィットするインテリアを追求する動きは、今後も続いていくでしょう。
来春には、世界的なオフィス家具展示会であるオルガテックの日本開催が決定しています。米国のオフィス家具見本市・NeoConやミラノサローネでも、これからの働く場の作り方が重要なテーマとなっています。
新たな働き方にフィットするインテリアを追求する動きは、今後も続いていくでしょう。
KOHLERのStillness。ラスベガスのCESデジタルショーで発表された、ジャパンディ・ラグジュアリーなバス空間
7. スパのようなバスルーム
ステイホームにより、外でのスパの空間やリラックス体験を、個人的なバス空間に求める動きが世界的に出てきています。自宅でより快適なくつろぎが体験できる空間として、洗面やバスルームは生まれ変わりつつあります。
コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)のデジタルイベントでは、Kohler社が、日本の風呂文化をもとにデザインした温泉のようなジャパンディ・スタイルのバスルームを発表しました。特に、木を素材として取り入れるのは、広く世界のトレンドになっています。
木製の排水溝にあふれるお湯や湯舟に立ち登る湯気。木の心地よい香りにゆらぐ照明。まるで温泉のようなバスルームは五感に訴えてプレミアムな快適が体験でき、自宅でスパのようなくつろぎを提供してくれます。
7. スパのようなバスルーム
ステイホームにより、外でのスパの空間やリラックス体験を、個人的なバス空間に求める動きが世界的に出てきています。自宅でより快適なくつろぎが体験できる空間として、洗面やバスルームは生まれ変わりつつあります。
コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)のデジタルイベントでは、Kohler社が、日本の風呂文化をもとにデザインした温泉のようなジャパンディ・スタイルのバスルームを発表しました。特に、木を素材として取り入れるのは、広く世界のトレンドになっています。
木製の排水溝にあふれるお湯や湯舟に立ち登る湯気。木の心地よい香りにゆらぐ照明。まるで温泉のようなバスルームは五感に訴えてプレミアムな快適が体験でき、自宅でスパのようなくつろぎを提供してくれます。
CASAMANCEのSalonga
8. 幸せで健康な暮らしのためのベッドルーム
ずっと家にいて、さまざまなことを行うようになると、気持ちの切替がしにくくなります。そのような中、眠りが今までになく注目されています。
デジタル機器で照明や睡眠の質をサポートするものや、手触りのよい上質なベッドリネンの包まれるような質感や色使い。清潔で心地よい寝室は、ウエルネスな生活に欠かすことができない大きなトレンドとなっています。クラフトやプレミアムデザインのトレンドが、寝室にも反映されています。
8. 幸せで健康な暮らしのためのベッドルーム
ずっと家にいて、さまざまなことを行うようになると、気持ちの切替がしにくくなります。そのような中、眠りが今までになく注目されています。
デジタル機器で照明や睡眠の質をサポートするものや、手触りのよい上質なベッドリネンの包まれるような質感や色使い。清潔で心地よい寝室は、ウエルネスな生活に欠かすことができない大きなトレンドとなっています。クラフトやプレミアムデザインのトレンドが、寝室にも反映されています。
Maison et Objet Trendy Deco Photography © DR
9. 楽しく明るいスィートな色や、70年代の郷愁をさそうもの
砂糖菓子のようなペールな色に、偏光釉薬がかかったようなレトロな味わいをもつものや、70年代のレトロリミックスな色やモチーフを纏ったデザイン。郷愁をさそうようなインテリアアイテムが出てきています。
何もが大らかであったころを懐かしみ、レトロな温もりを感じさせる色や柄。丸みを帯びたデザインに、生地はブークレ織などのふっくらした素材が多く出ています。
昨年から暖かみと丸みをまとった、シンプルなフォルムで作りだすミニマルなインテリアが出てきていましたが、今期はよりふっくらと大らかなフォルムとなって、手作りのものとの組み合わせたプレミアムデザインにとなり、登場しています。
9. 楽しく明るいスィートな色や、70年代の郷愁をさそうもの
砂糖菓子のようなペールな色に、偏光釉薬がかかったようなレトロな味わいをもつものや、70年代のレトロリミックスな色やモチーフを纏ったデザイン。郷愁をさそうようなインテリアアイテムが出てきています。
何もが大らかであったころを懐かしみ、レトロな温もりを感じさせる色や柄。丸みを帯びたデザインに、生地はブークレ織などのふっくらした素材が多く出ています。
昨年から暖かみと丸みをまとった、シンプルなフォルムで作りだすミニマルなインテリアが出てきていましたが、今期はよりふっくらと大らかなフォルムとなって、手作りのものとの組み合わせたプレミアムデザインにとなり、登場しています。
Maison et Objet Premiumdesign Photography © DR
パンデミックを経て、暮らしは新たなフェーズに入りました。私たちは、自分たちの暮らしが環境に与える負荷を徐々に実感するようになってきています。物質と人との関係性が議論される中、環境に対してより「人間らしさ」が求められ、トレーサビリティや素材そのものの作り方にもスポットが当たるようになっています。
インテリアは今後、内と外の垣根を超え、室内に周囲の環境を取り込みながらいかに自然と共存していくかが重要になっていくでしょう。また、新たな暮らしの中で、どう働くのか、いかに快適に過ごすかを、試行錯誤していくことが求められていくでしょう。
パンデミックを経て、暮らしは新たなフェーズに入りました。私たちは、自分たちの暮らしが環境に与える負荷を徐々に実感するようになってきています。物質と人との関係性が議論される中、環境に対してより「人間らしさ」が求められ、トレーサビリティや素材そのものの作り方にもスポットが当たるようになっています。
インテリアは今後、内と外の垣根を超え、室内に周囲の環境を取り込みながらいかに自然と共存していくかが重要になっていくでしょう。また、新たな暮らしの中で、どう働くのか、いかに快適に過ごすかを、試行錯誤していくことが求められていくでしょう。
おすすめの記事
専門家向け情報
世界が注目するJapanブランドの照明。ミラノサローネ凱旋展で見た灯りの可能性
今年60周年記念だったミラノサローネ国際家具見本市。その晩餐会を飾ったのは、日本人アーティストによるコラボレーションでした。今秋、東京でもその夢の共演が実現しました。
続きを読む
カラー
2023年のトレンドカラーは深紅色!インテリアにどう取り入れる?
パントン社の2023年トレンド色は「Viva Magenta(ビバ・マゼンタ)」に決定。Houzzの専門家にインテリアに取り入れる方法を聞きました。
続きを読む
専門家向け情報
家具の最新トレンド【ハイポイントマーケット2022】
米ノースカロライナ州ハイポイントで今秋行われた家具見本市。そこで見つけたトレンドは、スパイシーカラー、光沢のあるメタル素材、伝統的なフォルムでした。
続きを読む
インテリア
イギリスのインテリア見本市「デコレックス2022」から読み解く8つのトレンド
ロンドンで開催された見本市で、クリエイターたちの注目を集めた最新の素材、スタイル 、デザインをご紹介します
続きを読む
インテリア
最新トレンド総括:循環型アップサイクルで、エコ・コンシャスに暮らしを楽しむ方法
文/あみむらまゆみ
国内外のトレンドに詳しいインテリアデザイナーの網村眞弓さんが、今秋発表された最新デザインの傾向を、まとめてご紹介します。
続きを読む