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欧州家具ブランドの新作にみる、2021年上半期10のトレンド
展示会の開催が減っても、ブランドがその歩みを止めることはありません。今年の新商品はライフスタイルの大きな変化を反映しています。
Leonora Sartori
2021年7月20日
2021年上半期に発表された欧州の家具・インテリアブランドの商品は、昨年から続くライフスタイルの変化を反映しています。各ブランドは例年、ミラノサローネ国際家具見本市などの主要な展示会で春の新作を発表するために、新しいトレンドと世界中の住まい手のニーズの両方を詳しく観察しています。だからこそ、毎年の製品ラインアップに、新しい家具だけでなく、私たちの生活を反映したアイデアを垣間見ることができるのです。
見本市が少ない今年、Houzzは各ブランドに直接、今年の製品トレンドを取材しました。そこで分かったのは、ホームオフィスはもう"おまけ"のスペースではない、ということ。また、過去の配色や形状が多く参照されていること。グリーンからローズまで、さまざまなパステルカラーがトレンドになっていること。そして、家の中で森の中にいるような気分になれるインテリアに、各ブランドは注目している、ということです。
見本市が少ない今年、Houzzは各ブランドに直接、今年の製品トレンドを取材しました。そこで分かったのは、ホームオフィスはもう"おまけ"のスペースではない、ということ。また、過去の配色や形状が多く参照されていること。グリーンからローズまで、さまざまなパステルカラーがトレンドになっていること。そして、家の中で森の中にいるような気分になれるインテリアに、各ブランドは注目している、ということです。
イラツォキ・リザソ(Iratzoki Lizaso)のデザインによるAlki社のLanオフィスチェア
1. ホームオフィス革命
さまざまなブランドがホームオフィス家具を発表しています。スタイルやセンスは会社ごとに異なり、クラシッカルからカラフルなコンテンポラリーまでさまざまです。住む人の生活にフィットし、かつ各々の好みに合ったテーブルや椅子を提案したい、という明確な意図が見られます。
ホームオフィスや書斎は、もう、おまけの部屋ではありません。むしろ重要なニーズの1つとなりました。ホームオフィスはすべての家に元からあるわけではないので、そのためのスペース探しから始めなければなりません。そして、そのスペースにフィットする椅子やテーブルが必要となるのです。
1. ホームオフィス革命
さまざまなブランドがホームオフィス家具を発表しています。スタイルやセンスは会社ごとに異なり、クラシッカルからカラフルなコンテンポラリーまでさまざまです。住む人の生活にフィットし、かつ各々の好みに合ったテーブルや椅子を提案したい、という明確な意図が見られます。
ホームオフィスや書斎は、もう、おまけの部屋ではありません。むしろ重要なニーズの1つとなりました。ホームオフィスはすべての家に元からあるわけではないので、そのためのスペース探しから始めなければなりません。そして、そのスペースにフィットする椅子やテーブルが必要となるのです。
Studio FMのアートディレクションによってロビン・リッツィーニ(Robin Rizzini)がデザインしたPedrali社の Toaテーブルとフォールディングスクリーン。
写真: Andrea Garuti
写真: Andrea Garuti
- いますぐオフィスが欲しい!
大城健作のデザインによるPoltrona Frau社のIrenデスク。配色は、テキスタイルデザイナーであり色の専門家であるジュリオ・リドルフォによるColorSphere(色立体)カラーシステムに基づいています。
ロナン&エルワン・ブルレックのデザインによる、Artek社のコレクションの一部であるKaari壁付けシェルフ。写真は、スイスのビルスフェルデンにあるVitra本社のClub Officeプロジェクトでの設置例です。この本社屋内では従業員にフレキシブルな執務空間が数多く提供されています。この本棚は新製品ではありませんが、新しいオフィス(およびホームオフィス)文化に適合するべくアップデートされています。
どんな部屋にも簡単に納まり、本棚の中に隠せるようなワークステーションは、必要なときにいつでもパソコン作業ができるような空間を作るための一つの手段です。
どんな部屋にも簡単に納まり、本棚の中に隠せるようなワークステーションは、必要なときにいつでもパソコン作業ができるような空間を作るための一つの手段です。
Alki社のためにフォーム・アス・ウィズ・ラブがデザインした、オーク材と金属管でできたAtalチェアコレクション。このラインアップには、ラウンジチェア、スツール、更にスタッキング可能な様々な形状の椅子が含まれています。
2. 同じだけどちがう。コレクションに夢中
形が似ていても完全に同一ではない椅子のシリーズも多くみられます。揃いの椅子だけど同じではない、というのは今年頻繁に見られるアイデアです。これは、家のあちこちで使えるようなスタイルを、各メーカーが追求しているということでもあります。各ブランドは象徴的な作品に注力するのではなく、また単一の形や色に過度に傾倒することもなく、互いにフィットして特別な華やかさを演出するようなコレクションをデザインしています。
2. 同じだけどちがう。コレクションに夢中
形が似ていても完全に同一ではない椅子のシリーズも多くみられます。揃いの椅子だけど同じではない、というのは今年頻繁に見られるアイデアです。これは、家のあちこちで使えるようなスタイルを、各メーカーが追求しているということでもあります。各ブランドは象徴的な作品に注力するのではなく、また単一の形や色に過度に傾倒することもなく、互いにフィットして特別な華やかさを演出するようなコレクションをデザインしています。
Arper社とGensler社とのコラボレーションによる Mixuチェアコレクション。座面、背もたれ、ベースが独立しているため、簡単にカスタマイズや分解ができます。さまざまな色とテクスチャの組み合わせでパーソナライズが可能です。
De Castelli社のためにザネラート/ボルトットがデザインした、DeErosion仕上げの自然銅を使ったBurracoゲームテーブル。このテーブルのデザインは、カードゲームからインスピレーションを受けています。天板から4つの小さなサービングトレイを出すことができます。
3. あちこちに小さなリビングルームを
どこにでも簡単に設置できるリビングルームや、おしゃべりやリラックスができるような居場所の需要が高まっています。
住まい手は従来の様式的なリビングルームだけでなく、リビングコーナーになりうる居場所を家中にちりばめることも求めています。たとえば玄関ホールに一つ、ベッドルームに一つ、といったように、一息ついたりちょっとしたおしゃべりをしたりできる場所が求められているのです。
そのようなコーナーには何が必要でしょうか?小さなソファまたはラウンジチェア、小さな椅子と小さなテーブル、もしくはちょっとした作業のため場所ともなるような大きいソファもいいでしょう。人も家具も、もはや一つの役割に縛られることはないのです。
3. あちこちに小さなリビングルームを
どこにでも簡単に設置できるリビングルームや、おしゃべりやリラックスができるような居場所の需要が高まっています。
住まい手は従来の様式的なリビングルームだけでなく、リビングコーナーになりうる居場所を家中にちりばめることも求めています。たとえば玄関ホールに一つ、ベッドルームに一つ、といったように、一息ついたりちょっとしたおしゃべりをしたりできる場所が求められているのです。
そのようなコーナーには何が必要でしょうか?小さなソファまたはラウンジチェア、小さな椅子と小さなテーブル、もしくはちょっとした作業のため場所ともなるような大きいソファもいいでしょう。人も家具も、もはや一つの役割に縛られることはないのです。
エドワード・バーバー & ジェイ・オズガビーによるSoft Workソファ。2018年にデザインされたこのソファは、自宅で仕事をするためのライフスタイルから導き出されたアプローチの一つとしてVitra社から発表されました。自由時間でもパソコンを使った仕事時間でも、リラックスしたフレキシブルな居場所を提供します。
マルティネリ・ヴェネツィア(Martinelli Venezia)のデザインによるDe Castelli社のAlphaテーブル。銅でできた表面は抗菌特性を維持すべく未処理のままとしています。収納スペースを内蔵した六角形のテーブルは、一つのテーブルとして使用することも、3つのモジュールを配置し直して使用することも可能です。
4. クリエイティブな収納
いつだって収納は足りないものです。そこで各ブランドは、リビングルームやベッドルームのような空間にも収納スペースを追加したり整理整頓したりするための新しいソリューションを提供しています。秘密の引き出しだって大歓迎です。
4. クリエイティブな収納
いつだって収納は足りないものです。そこで各ブランドは、リビングルームやベッドルームのような空間にも収納スペースを追加したり整理整頓したりするための新しいソリューションを提供しています。秘密の引き出しだって大歓迎です。
ステファン・ヒュルレマンのデザインによるVitra社のDancing Wallオフィス用間仕切りは、元はオフィス空間のために作られましたが、他の環境にも適用可能です。2018年にデザインされたこの可動壁は、オフィスを再考する新しいオフィスコレクションの一つでもあります。収納であるとともに、書き込み可能なホワイトボードを提供します。
アルテール・デジール・パークがArper社のためにデザインした、無垢材でできたKataアームチェア。フレームはFSC認証のオーク材です。3Dニットカバーはリサイクルされたポリエステルからできています。ニットは、端材が発生しないよう、フレームにぴったり合わせて設計されています。
5. 温故知新、新しい組み合わせのヴィンテージカラー
5. 温故知新、新しい組み合わせのヴィンテージカラー
- 緑+木材または金属の組み合わせ
Ideal Standard社のIntellimixタッチレス水栓
- オレンジからピンクまで
シチリアのブランドであるLithea社のためのマルティネリ・ヴェネツィアによるPantelleriaプロジェクトより、SesiテーブルとTracceタイル。どちらもネロマルキーナ大理石で作られています。
- 黒への回帰
アルテール・デジール・パークのデザインによるArper社のKataアームチェア。フレームはFSC認証のオーク材でできています。カバーは、使用済みプラスチックからリサイクルされたポリエステルでできたニットです。
レトロなデザインの円形取手が付いたHeal’s社のAmiraチェストは、無垢のウォールナット材でできています。
6. 新しいモダンスタイル
新しいスタイルも誕生しています。ヴィンテージのミッドセンチュリーモダンにも一見似ていますが、よく見るとこれらのベッドや戸棚は、ミニマルな形とエレガントな雰囲気を兼ね備えています。クラシックで落ち着いた家具でありつつ、それでもなおリラックスした空気感を作り出すような家具を探してみましょう。
6. 新しいモダンスタイル
新しいスタイルも誕生しています。ヴィンテージのミッドセンチュリーモダンにも一見似ていますが、よく見るとこれらのベッドや戸棚は、ミニマルな形とエレガントな雰囲気を兼ね備えています。クラシックで落ち着いた家具でありつつ、それでもなおリラックスした空気感を作り出すような家具を探してみましょう。
マリー・クリスティーヌ・ドロネーによるLigne Roset社のParavent
7. 待望のフォールディングスクリーン(屏風)
多くの人が気軽な間仕切りをずっと求めていました。そこで、家の中でプライバシーを確保するための魅力的な手法として、古くからのフォールディングスクリーン(屏風)が復活を遂げたのです。
7. 待望のフォールディングスクリーン(屏風)
多くの人が気軽な間仕切りをずっと求めていました。そこで、家の中でプライバシーを確保するための魅力的な手法として、古くからのフォールディングスクリーン(屏風)が復活を遂げたのです。
セバスチャン・ヘルクナーのデザインによるLigne Roset社のTaruソファ
8. ソファは最高の心地良さを目指す
卵形や丸みを帯びた角は、ソファの新しい実験的な形です。包み込んでくれるような新しいソファは、形式張らない居心地の良いデイベッドとしての役割も果たします。
8. ソファは最高の心地良さを目指す
卵形や丸みを帯びた角は、ソファの新しい実験的な形です。包み込んでくれるような新しいソファは、形式張らない居心地の良いデイベッドとしての役割も果たします。
パトリシア・ウルキオラによるGoganソファとアームチェア、nendoによるCloudスモールテーブル、MatrixラグとHimalayanラグ、オスカル&ガブリエーレ・ブラッティ によるFrame-Shiftブックシェルフ、以上すべてモローゾMoroso社より。写真:Alessandro Paderni
コンスタンティン・グルチッチのデザインによるMagis社のSam Sonローアームチェア
- 曲線美の椅子
ガム・フラテージによるPoltrona Frau社のSoffiシャンデリア。
9. ミニマリスト照明
照明は、天井から吊るされたほとんど見えない光の杖から、巨大で伝統的なシャンデリアを想起させつつもとてもシンプルで脱構築的な形状のものまで、ミニマルなデザインになってきています。構造的な支えや配線はほとんど消え、部屋には純粋な光だけが残ります。
9. ミニマリスト照明
照明は、天井から吊るされたほとんど見えない光の杖から、巨大で伝統的なシャンデリアを想起させつつもとてもシンプルで脱構築的な形状のものまで、ミニマルなデザインになってきています。構造的な支えや配線はほとんど消え、部屋には純粋な光だけが残ります。
フロント(Front)のデザインによるMoroso社のDesign by Nature。スウェーデンを拠点とするフロントは、実在の森を3Dスキャンし、家具をデザインしました。写真:Andy Liffner
10. 森林効果
これをコロナ禍の副産物であると言う人もいるかもしれません。自然を求めたり、家の中でも緑や植物が果たす役割に頼ったりすることは、この困難な一年よりも前から始まったトレンドではありますが、ここのところで急激に加速しているようです
イタリアのブランドであるMoroso社によるパターンやファブリックの革新は、騙し絵のような布地を組み合わせることによって、森の中にいるかのような「森林効果」を家の中にもたらします。ソファが森林環境の一部のようになりますね。
イタリアのブランドであるPoltrona Frau社も、優美でモダンなヴィンテージテーブルを発表しました。その形は幾何学的というよりは有機的で、テーブル脚は木の枝にインスピレーションを得ています。
10. 森林効果
これをコロナ禍の副産物であると言う人もいるかもしれません。自然を求めたり、家の中でも緑や植物が果たす役割に頼ったりすることは、この困難な一年よりも前から始まったトレンドではありますが、ここのところで急激に加速しているようです
イタリアのブランドであるMoroso社によるパターンやファブリックの革新は、騙し絵のような布地を組み合わせることによって、森の中にいるかのような「森林効果」を家の中にもたらします。ソファが森林環境の一部のようになりますね。
イタリアのブランドであるPoltrona Frau社も、優美でモダンなヴィンテージテーブルを発表しました。その形は幾何学的というよりは有機的で、テーブル脚は木の枝にインスピレーションを得ています。
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