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専門家が教える、ビオトープのある庭のつくり方
植物と生物が共存する小さな空間、“ビオトープ”。庭づくりの専門家が、ビオトープのある庭のつくり方と、メリット・デメリットを詳しくご紹介します。
コロナ禍により外出の機会が減った今、住まいに自然を取り入れる人が増えてきています。庭にシンボルツリーを植えたり、花壇を増やしたりするのも素敵ですが、より自然を感じたいのなら、“ビオトープ”を設けてみてはいかがでしょう?
今回は2人の庭づくりの専門家に、ビオトープのつくり方や、住まいにビオトープを設けるメリットやデメリットを詳しくお伺いしました。
今回は2人の庭づくりの専門家に、ビオトープのつくり方や、住まいにビオトープを設けるメリットやデメリットを詳しくお伺いしました。
ビオトープとは?
ギリシア語の“BIO(命)”と“TOPS(場所)”を組み合わせた造語である“ビオトープ”。生物群集の生息空間を指す言葉で、環境保全や生物の保護を目的に、川や森林などの自然を整備したのがはじまりだといわれています。
ギリシア語の“BIO(命)”と“TOPS(場所)”を組み合わせた造語である“ビオトープ”。生物群集の生息空間を指す言葉で、環境保全や生物の保護を目的に、川や森林などの自然を整備したのがはじまりだといわれています。
日本では水辺の生態系を人工的に再現した空間として認識されており、ビオトープを取り入れる学校も多く見られます。
環境教育の観点からは、水草や水生植物と、プランクトン・魚・昆虫などの生物が、ひとつながりの生態系と食物連鎖を維持している空間として注目されていますが、家庭のガーデニング分野としては、水草栽培がビオトープと呼ばれることもあります。
環境教育の観点からは、水草や水生植物と、プランクトン・魚・昆虫などの生物が、ひとつながりの生態系と食物連鎖を維持している空間として注目されていますが、家庭のガーデニング分野としては、水草栽培がビオトープと呼ばれることもあります。
ビオトープを庭に設けるメリット
住まいの庭にビオトープを設けるメリットについて、木村グリーンガーデナーの木村博明さんは、「美しいせせらぎや涼やかな音色が心を和ませてくれる。木漏れ日で光る美しさが楽しめる」ことを挙げます。
水生植物には美しい花が多いですが、見た目だけでなく、水の流れる音や、そこに棲む魚や虫たちの奏でる音を楽しめることも、ビオトープの特長のひとつ。五感を使って自然とのつながりを感じられる空間は、深い癒やしを与えてくれるはず。
住まいの庭にビオトープを設けるメリットについて、木村グリーンガーデナーの木村博明さんは、「美しいせせらぎや涼やかな音色が心を和ませてくれる。木漏れ日で光る美しさが楽しめる」ことを挙げます。
水生植物には美しい花が多いですが、見た目だけでなく、水の流れる音や、そこに棲む魚や虫たちの奏でる音を楽しめることも、ビオトープの特長のひとつ。五感を使って自然とのつながりを感じられる空間は、深い癒やしを与えてくれるはず。
また、アトリエ心庭の鈴木邦浩さんは、「自然の変化を感じられること。子どもに自然に関心を持つ機会を与えられること」を挙げます。
「作られた庭の楽しみ方も大切ではありますが、自然本来の姿を純粋に楽しむことを目指したビオトープの庭は、これからの環境共生時代に必要となってくると考えています。とくに子どもたちには、自然に触れてほしいですね」と鈴木さん。
「作られた庭の楽しみ方も大切ではありますが、自然本来の姿を純粋に楽しむことを目指したビオトープの庭は、これからの環境共生時代に必要となってくると考えています。とくに子どもたちには、自然に触れてほしいですね」と鈴木さん。
ビオトープのメンテナンス方法
一方で、ビオトープを設けるデメリットについて、鈴木さんは「メンテナンスが必要となること」を挙げます。
「池をつくった場合は、池の底にたまった落ち葉などを除去したり、藻を取ったりする必要がありますし、草地には草刈りが必要となります」と鈴木さん。
とくに草の成長が活発になる夏や、落ち葉の多い秋には手入れに時間を費やすことになるでしょう。
一方で、ビオトープを設けるデメリットについて、鈴木さんは「メンテナンスが必要となること」を挙げます。
「池をつくった場合は、池の底にたまった落ち葉などを除去したり、藻を取ったりする必要がありますし、草地には草刈りが必要となります」と鈴木さん。
とくに草の成長が活発になる夏や、落ち葉の多い秋には手入れに時間を費やすことになるでしょう。
木村さんは「水質の管理が必要となること」をデメリットとして挙げる一方、ほとんどメンテナンス不要のビオトープもあると話します。
「弊社のビオトープガーデンは雨水を循環させるシステムで、ヤクルト容器のろ材を使う特殊なつくりをしています。メンテナンスは年に数回、バルブを開けて濾過槽の泥を流すのみで済みますよ」
専門家を探す
「弊社のビオトープガーデンは雨水を循環させるシステムで、ヤクルト容器のろ材を使う特殊なつくりをしています。メンテナンスは年に数回、バルブを開けて濾過槽の泥を流すのみで済みますよ」
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ビオトープを設けるために必要となる条件
では、今の住まいの庭に新しくビオトープを設けることはできるのでしょうか。
木村さんは、「ある程度の広さがあり、しっかり排水できる環境であること」が条件となると話します。あまりスペースのない庭では、睡蓮鉢などを使用したビオトープキットを採用したほうがいいかもしれません。
また、先述の通り水の流れる音が発生するため、ほかの住宅と密接する庭では、近隣住民の理解が必要となることも、木村さんは指摘します。
では、今の住まいの庭に新しくビオトープを設けることはできるのでしょうか。
木村さんは、「ある程度の広さがあり、しっかり排水できる環境であること」が条件となると話します。あまりスペースのない庭では、睡蓮鉢などを使用したビオトープキットを採用したほうがいいかもしれません。
また、先述の通り水の流れる音が発生するため、ほかの住宅と密接する庭では、近隣住民の理解が必要となることも、木村さんは指摘します。
鈴木さんは、「今の庭の環境をよく調べて、無理のない計画を立てることが必要」だと話します。
「自然にある程度任せることになるので、自然の変化には寛容であること。また、虫が出ても『それも自然の一部だ』ということを理解し楽しむことが必要です。好き嫌いに関わらず、虫はやってくるものです」
「自然にある程度任せることになるので、自然の変化には寛容であること。また、虫が出ても『それも自然の一部だ』ということを理解し楽しむことが必要です。好き嫌いに関わらず、虫はやってくるものです」
ビオトープに適した種類とは
ビオトープを検討する方の多くは、睡蓮や水芭蕉、カキツバタやカラーなどの華やかな植物をイメージするのではないでしょうか。実際、木村さんもビオトープに適した植物として、これらの水草を挙げます。
また、木村さんはほかに、凛とした立ち姿が涼しげなカヤツリグサや、水生野菜のクワイもおすすめだと話します。里芋のような球型の茎のクワイは食用として栽培することも可能なので、家庭菜園のように楽しむこともできそうです。
ビオトープを検討する方の多くは、睡蓮や水芭蕉、カキツバタやカラーなどの華やかな植物をイメージするのではないでしょうか。実際、木村さんもビオトープに適した植物として、これらの水草を挙げます。
また、木村さんはほかに、凛とした立ち姿が涼しげなカヤツリグサや、水生野菜のクワイもおすすめだと話します。里芋のような球型の茎のクワイは食用として栽培することも可能なので、家庭菜園のように楽しむこともできそうです。
ビオトープに適した生体としては、鯉やタナゴ、クチボソやハヤなどのコイ科の魚が木村さんのおすすめ。夏の高水温や冬の低水温にも耐えられるこれらの魚は、気温の変化が極端でない地域でならば比較的ビオトープで飼いやすいといえます。
とはいえ、気温の高い日には水が蒸発してしまうので水の量を増やしたり、直射日光が当たらないようすだれを設置するなど、気候や魚たちのコンディションによってある程度ビオトープの調整を行うことも必要です。
とはいえ、気温の高い日には水が蒸発してしまうので水の量を増やしたり、直射日光が当たらないようすだれを設置するなど、気候や魚たちのコンディションによってある程度ビオトープの調整を行うことも必要です。
また、鈴木さんは、「本来のビオトープを目指すのであれば、在来種を選ぶこと。野草を主体とした計画とすること」を勧めます。
「魚は、メダカなどの小型魚が基本。いずれも、その地域に生息していない生物の導入は避けることがビオトープを作る意義でもあり、自然の創出に必要な考え方だと思います」と鈴木さん。
「魚は、メダカなどの小型魚が基本。いずれも、その地域に生息していない生物の導入は避けることがビオトープを作る意義でもあり、自然の創出に必要な考え方だと思います」と鈴木さん。
ビオトープに取り入れる植物や生体に悩んだときには、地域の専門家に相談してみるのもいいでしょう。
その地域の気候や生態系について熟知する専門家ならば、目指すビオトープのイメージを共有しながら、最適な提案をしてくれるはずです。
庭づくり・植物の記事をもっと読む
その地域の気候や生態系について熟知する専門家ならば、目指すビオトープのイメージを共有しながら、最適な提案をしてくれるはずです。
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