直角の場所が一つもない9㎡が快適に!フランスのリノベーション
小さなスペースを愛するデザイナーが、状態が悪く、難しい形状だった部屋を工夫を凝らして使いやすく変身させました。
Agnès Carpentier
2021年3月24日
オーナーは、フランス南東部グルノーブル市にあるビジネススクールに通うことになった娘さんのために、このアパートを購入しました。オーナーの計画は、大学在学中は彼女がこのアパートに住み、卒業後は賃貸にするというもの。しかしこの部屋は状態が悪く、徹底的なリノベーションが必要でした。
プロジェクトを担当した建築デザイナーのソフィ・グラーヴは、「この家族は最初、ある施工業者に見積もりを依頼しました。私はその業者から『9平米しかない、とても小さなスペースの見積もりをまとめなければならないが、こんな物件は人生で初めてでどうしたらいいかわからない』と連絡を受けました。その業者の担当者は、小さなスペースを良いものにデザインすることに対する私の『偏愛』を知っていたので、私にオーナーと連絡を取るよう依頼してきたのです」と回想します。
プロジェクトを担当した建築デザイナーのソフィ・グラーヴは、「この家族は最初、ある施工業者に見積もりを依頼しました。私はその業者から『9平米しかない、とても小さなスペースの見積もりをまとめなければならないが、こんな物件は人生で初めてでどうしたらいいかわからない』と連絡を受けました。その業者の担当者は、小さなスペースを良いものにデザインすることに対する私の『偏愛』を知っていたので、私にオーナーと連絡を取るよう依頼してきたのです」と回想します。
写真:HomebOxcreation
どんなHouzz?
住まい手:若い学生
所在地:フランス南東部のグルノーブル市にある、古い建物の中庭に面する2階
面積:9平方メートル
竣工:2019年9月
プロジェクト期間:6ヶ月
デザイナー:HomebOxcreationのソフィ・グラーヴとエマニュエル・ドンカーリ
「この家族は浴室とキッチンのみを改修し、その他は塗装して仕上げることを望んでいました」と、最初に訪問した際に、確認した際のオーナーの要望について話します。「折りたたみベッドを要望されましたが、このように特殊なスペースでは圧迫感があり、スペースを無駄にしてしまうおそれがありました。
どんなHouzz?
住まい手:若い学生
所在地:フランス南東部のグルノーブル市にある、古い建物の中庭に面する2階
面積:9平方メートル
竣工:2019年9月
プロジェクト期間:6ヶ月
デザイナー:HomebOxcreationのソフィ・グラーヴとエマニュエル・ドンカーリ
「この家族は浴室とキッチンのみを改修し、その他は塗装して仕上げることを望んでいました」と、最初に訪問した際に、確認した際のオーナーの要望について話します。「折りたたみベッドを要望されましたが、このように特殊なスペースでは圧迫感があり、スペースを無駄にしてしまうおそれがありました。
ビフォー:この小さな部屋は古い3階建の建物の2階部分にあって中庭に面しており、その下の1階部分にはパン屋があります。この建物の部屋は、どれもこの部屋と似たような部屋に分割されています。9平方メートルの各ユニットはどれも非常に状態が悪く、共有部分も同様にひどい状態でした。「部屋の中に水が流れているほどだったんですよ」とデザイナーは話します。
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また、この部屋には、窓が1つだけしかないため、ほとんど自然光が入りません。さらに変わっているのは、空間内に直角が一か所もない点です。部屋は入口ドアから窓側に向かって狭くなっていきます。またその反対側には浴室がねじ込まれていますが、これは部屋の隅に建物の排水管が通っているためだといいます。
アフター:グラ―ヴは提案を通じて、この空間に最適化された独自のソリューションが得策であるとオーナーを説得することができました。
新しいベッドのレンダリング
リノベーション計画全体のレンダリング
後で想定していなかった問題が生じるのを避けるため、解体工事をすることが前提条件であるとグラ―ヴははっきり説明しました。しかしオーナーは時間とお金を節約できると考えて、彼女ではなく、知人に作業管理を依頼することに決めたのです。
「オーナーは約5ヶ月が経った頃、完全に打ちのめされた状態で私に電話してきました。すでに納期を3ヶ月過ぎており、想定していたよりも多くのお金を費やしていました。最終的に、プロジェクトが完成するよう、全ての仕上げと大工仕事を私に引き継がせることに決めたのです」とグラ―ヴは話します。
後で想定していなかった問題が生じるのを避けるため、解体工事をすることが前提条件であるとグラ―ヴははっきり説明しました。しかしオーナーは時間とお金を節約できると考えて、彼女ではなく、知人に作業管理を依頼することに決めたのです。
「オーナーは約5ヶ月が経った頃、完全に打ちのめされた状態で私に電話してきました。すでに納期を3ヶ月過ぎており、想定していたよりも多くのお金を費やしていました。最終的に、プロジェクトが完成するよう、全ての仕上げと大工仕事を私に引き継がせることに決めたのです」とグラ―ヴは話します。
ビフォー:既存の仕上げをはじめに取り除くというグラ―ヴの判断は、正しいものでした。リノリウムの下には、腐食した木製の床が腐った根太の上に敷かれていました。これらは取り除く必要がありましたが、建物の構造上、重すぎるものを載せないよう、軽量のモルタル下地をその上に流し込みました。
壁の下からは、湿気とカビだらけになった幾層にも貼り重ねられた古い壁紙が見つかりました。この壁は処理したうえで防湿材で覆う必要がありました(写真)。
電盤から浴室と住宅への電気配線を通すために、吊り天井を設置する必要がありました。また屋内の空気の熱を利用し、新鮮な外気を温めて屋内に取り入れることができる換気扇を設置し、この小さな部屋の湿気の問題に対処しています。
壁の下からは、湿気とカビだらけになった幾層にも貼り重ねられた古い壁紙が見つかりました。この壁は処理したうえで防湿材で覆う必要がありました(写真)。
電盤から浴室と住宅への電気配線を通すために、吊り天井を設置する必要がありました。また屋内の空気の熱を利用し、新鮮な外気を温めて屋内に取り入れることができる換気扇を設置し、この小さな部屋の湿気の問題に対処しています。
アフター:グラーヴは大工たちと共に部屋の価値を高めるような巧みな平面レイアウトを生みだしました。
「ベッドを窓際に置くことでスペースが直角になるようにし、このアパートの使いづらい形状を気にしないで済むようにしました。ベッドに寝転ぶのが好きで、机で作業する必要性をもはや感じていない若い人たちの習慣をもとに、『くつろぐ』ためのゾーンをデザインすることを考えました」(グラーヴ)
電力メーターの下地の背後のニッチは、ルーターやビデオプロジェクターのための配線スペースを組み込んだ本棚へと作り変えています。
「ベッドを窓際に置くことでスペースが直角になるようにし、このアパートの使いづらい形状を気にしないで済むようにしました。ベッドに寝転ぶのが好きで、机で作業する必要性をもはや感じていない若い人たちの習慣をもとに、『くつろぐ』ためのゾーンをデザインすることを考えました」(グラーヴ)
電力メーターの下地の背後のニッチは、ルーターやビデオプロジェクターのための配線スペースを組み込んだ本棚へと作り変えています。
ベッドとミニキッチン計画のレンダリング
ベッドは長さ2メートルの、メラミン樹脂仕上げのパーティクルボードの台の上に載せられています。高さは45センチ。窓際部分の幅は160センチ、その逆側は幅200センチになっていて、部屋のこの部分の不規則な形状に合うようデザインされています。マットレスは幅120センチです。
「幅140センチ、高さ30センチの2つの引出しをベッド内に収めて完全に引き出すことができるよう、2つ目の直角構造を作る必要がありました。1つは洋服用で、もう1つはカバン用です」とグラ―ヴ。
ベッドは長さ2メートルの、メラミン樹脂仕上げのパーティクルボードの台の上に載せられています。高さは45センチ。窓際部分の幅は160センチ、その逆側は幅200センチになっていて、部屋のこの部分の不規則な形状に合うようデザインされています。マットレスは幅120センチです。
「幅140センチ、高さ30センチの2つの引出しをベッド内に収めて完全に引き出すことができるよう、2つ目の直角構造を作る必要がありました。1つは洋服用で、もう1つはカバン用です」とグラ―ヴ。
このベッド用の台には孔が開いていて、マットレスの通気性を確保しています。フレームは作りがしっかりしているため、巨大なベンチシートとしても機能します。右側の棚はベッドサイドテーブルとして、またクッションを並べれば背もたれとしても、機能します。左側には3つのニッチがあり、ブランケットや文房具類、お酒を飲むためのグッズなどを収納することができます。
スペースを有効活用するため、丈夫には棚を設けています。元々あったラジエーターは、効率的で経済的な輻射式暖房に取り替えられ、有孔の板材で覆うことで、火傷せずにこのラウンジエリアで休むことができるようになっています。
床には革新的な素材を選びました。可塑剤やPVC、または毒性のある物質を使用していないPEFC認証の木材70%で構成された素材です。「木によく似た質感のあるデザインが、この素材を選ぶ決め手になりました。耐湿性があり、音響的な利点もあります」とグラーヴ。
スペースを有効活用するため、丈夫には棚を設けています。元々あったラジエーターは、効率的で経済的な輻射式暖房に取り替えられ、有孔の板材で覆うことで、火傷せずにこのラウンジエリアで休むことができるようになっています。
床には革新的な素材を選びました。可塑剤やPVC、または毒性のある物質を使用していないPEFC認証の木材70%で構成された素材です。「木によく似た質感のあるデザインが、この素材を選ぶ決め手になりました。耐湿性があり、音響的な利点もあります」とグラーヴ。
ビフォー:入口と簡易キッチン部分にある収納には洋服が収納されていました。浴室のドアを開けるとこの収納にぶつかってしまっていました。
アフター:浴室のドアは戸袋式の引き戸になり、ワードローブの後ろ側にスライドします。平面レイアウトを最適化するために、ワードローブは再配置されています。
この写真から分かるように、パーティクルボードには仕上げが加えられています。パーティクルボードはMDFより安価な素材ですが、エッジが仕上がっていないため、端部に仕上げ材を貼り付ける必要がありました。
ビフォー:もともとのキッチンには、古い加熱プレートや冷蔵庫があり、収納スペースも限られていました。
ベッド側からみたキッチンエリアの初期レンダリング
当初デザイナーのグラーヴは、このレンダリングイメージにあるように、キッチンと浴室の間の間仕切りに窓を設置する予定でした。しかし、この間仕切りは換気扇のダクトが通るように厚くする必要があったため、このアイデアは取りやめになりました。
当初デザイナーのグラーヴは、このレンダリングイメージにあるように、キッチンと浴室の間の間仕切りに窓を設置する予定でした。しかし、この間仕切りは換気扇のダクトが通るように厚くする必要があったため、このアイデアは取りやめになりました。
アフター:幅60センチの2つのモジュールが今はステンレス製のシンクとドミノ式電磁調理コンロを格納しています。メラミン製のカウンタートップは、直径45センチしかない円形のシンクのおかげで奥行きを63センチから55センチに狭めることができました。頭上のキャビネットによりさらに多くの収納スペースが確保されています。換気扇が一体化され、電子レンジ用のニッチも備えています。シンクの右側には折りたたみ式のテーブルがあり、「ベンチに2人、端に1人、キッチンに1人」と最大4人が食事をするスペースがあります、グラーヴはいいます。
ビフォー:もともとの浴室には、左手(ワードローブの裏側)に70センチ x 70センチのシャワーブース、中央に洗面台、右手には独立したトイレがありました。
部屋を片付け、壁の仕上げを取り除いた時、グラ―ヴはニッチとして利用できそうな、覆われた状態の既存の窓を見つけました。
写真右側には建物の下水管が写っています。グラーヴは吊り天井内の機械式換気扇のモーター用カバーを、この配管の排水栓の高さで取り付けました。
写真右側には建物の下水管が写っています。グラーヴは吊り天井内の機械式換気扇のモーター用カバーを、この配管の排水栓の高さで取り付けました。
アフター:入口を通して部屋に面している裾広がりのめっきミラーが遠近法の消失点のように作用して、空間を視覚的に拡張する役割を果たしています。グラ―ヴは塞がれてた窓をうまく利用して、洗面台をアーティスティックに縁取っています。左側には、壁付け式のトイレの上に非常に薄い温水器が取り付けられ、その間には水道メーターが収まっています。
洗面台とは逆側のスペースは排水管のせいで不規則な形になっています。シャワーを、パイプスペースに向かって押し込むことで、グラ―ヴは角度を修正するために仕切りを使い、奥行きが19センチも取られてしまうのを避けることができました。
「白い壁だけだとスペースがうまく引き締まらないので、浴室の黒い床をシャワー背後の柱部分へと続いて縦に伸びるようにして、まわりの白い壁とコントラストを生むようにしました。部屋が小さければ小さいほど、より強いコントラストが必要になります」とグラ―ヴはいいます。
「白い壁だけだとスペースがうまく引き締まらないので、浴室の黒い床をシャワー背後の柱部分へと続いて縦に伸びるようにして、まわりの白い壁とコントラストを生むようにしました。部屋が小さければ小さいほど、より強いコントラストが必要になります」とグラ―ヴはいいます。
バスルームのレンダリング
このリノベーションプロジェクトは順風満帆とはいきませんでしたが、学生であるオーナーの娘さんの新学期が始まるまでに引っ越しが間に合ったということです。
このリノベーションプロジェクトは順風満帆とはいきませんでしたが、学生であるオーナーの娘さんの新学期が始まるまでに引っ越しが間に合ったということです。
プロジェクトの平面図ビュー。左上から時計回りに:シャワー、簡易キッチン+折りたたみ式テーブル、ベッド+吊り戸と引出し、クローゼット、トイレ、洗面台
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