コンクリートでありながら、沖縄の伝統的住宅のよさが盛り込まれた家
「沖縄だからこそできる家」について、じっくり時間をかけて考え続けた設計者とオーナー。内と外が繋がり、伝統的な美しさと現代性が融合する住まいです。
Mamiko Nakano
2021年1月12日
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2015年。建築士・インテリアプランナーの仲本兼一郎さんは、京都で共同代表の岡山泰士さん、森田修平さんとともに建築設計事務所・STUDIO MONAKAを立ち上げようとしていました。
ちょうど同じ頃。子供たちが成長する中、マンションで暮らしが手狭になっていた沖縄市に住む夫婦が、仲本さんに家づくりを依頼しました。
ちょうど同じ頃。子供たちが成長する中、マンションで暮らしが手狭になっていた沖縄市に住む夫婦が、仲本さんに家づくりを依頼しました。
どんなHouzz?
所在地:沖縄県沖縄市
住まい手:30代の夫婦と10歳、8歳、6歳、1歳のお子さんたち
敷地面積:565.20㎡
延べ床面積:113.65㎡
設計:STUDIO MONAKA
構造:壁式RC造
施工会社:有限会社大成プラン
竣工時期:2019年11月
受賞歴:2020 沖縄建築賞 奨励賞・新人賞
沖縄県沖縄市の、もともと畑だった場所を宅地として使おうというところから始まったこの計画。施主側からは「沖縄だからこそできる家をつくりたい」という要望がありました。
所在地:沖縄県沖縄市
住まい手:30代の夫婦と10歳、8歳、6歳、1歳のお子さんたち
敷地面積:565.20㎡
延べ床面積:113.65㎡
設計:STUDIO MONAKA
構造:壁式RC造
施工会社:有限会社大成プラン
竣工時期:2019年11月
受賞歴:2020 沖縄建築賞 奨励賞・新人賞
沖縄県沖縄市の、もともと畑だった場所を宅地として使おうというところから始まったこの計画。施主側からは「沖縄だからこそできる家をつくりたい」という要望がありました。
建築を志して以来「故郷の沖縄で仕事がしたい」と思い続けていた仲本さん。この家の計画が始まってからは、1ヶ月に1回、京都から沖縄に行き、施主夫妻とじっくり家づくりの話し合いをしたそうです。その中で「沖縄らしさ」とともに、「非日常なリゾート感」「バイクや釣りの道具を収納できるガレージ」「庭を楽しめる暮らし」などのキーワードもあがりました。
「せっかくだから、ほかと違うことがしたい」と、デザイン面は仲本さんに全面的に任せた施主夫妻。仲本さんが試行錯誤の中でたどり着いた最終案が「コンクリートでできているけれど、沖縄の伝統的住宅のよさが盛り込まれた家」でした。
「せっかくだから、ほかと違うことがしたい」と、デザイン面は仲本さんに全面的に任せた施主夫妻。仲本さんが試行錯誤の中でたどり着いた最終案が「コンクリートでできているけれど、沖縄の伝統的住宅のよさが盛り込まれた家」でした。
「戦争以前の沖縄の家は、赤瓦の木造建築でした。でも戦後、コンクリートがアメリカ文化とともに入ってきました。1階に駐車場があり、2階に住む形のRC住宅は、台風にもシロアリにも強く、機能をみたしているけれど、赤瓦のような美しさはありません」と、仲本さんはいいます。
「施主夫妻と一緒に考えたのは『戦争がなくて、そのまま赤瓦が残っていたときの光景や機能ってなんだろう?』ということ。RCではあっても、中庭の作り方や外との関係性、水回りの配置については、沖縄の昔の住宅の配置を現代風にアレンジしました」
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「施主夫妻と一緒に考えたのは『戦争がなくて、そのまま赤瓦が残っていたときの光景や機能ってなんだろう?』ということ。RCではあっても、中庭の作り方や外との関係性、水回りの配置については、沖縄の昔の住宅の配置を現代風にアレンジしました」
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それでは、玄関から入ってみましょう。
玄関を入ると、すぐに中庭です。ただ、屋根が中庭に向かって出ているので、玄関から部屋まで雨に当たらずに歩いていけるようになっています。
「沖縄の家の玄関にある、アマハジという縁側を意識してつくっています。雨をはじく、という意味です。沖縄の古い住宅は雨に濡れない部分があって、そこから各部屋にいけるようになっているんです」(仲本さん)
玄関を入ると、すぐに中庭です。ただ、屋根が中庭に向かって出ているので、玄関から部屋まで雨に当たらずに歩いていけるようになっています。
「沖縄の家の玄関にある、アマハジという縁側を意識してつくっています。雨をはじく、という意味です。沖縄の古い住宅は雨に濡れない部分があって、そこから各部屋にいけるようになっているんです」(仲本さん)
中庭のシンボルツリーは、ピンクの花が咲くサルスベリです。植えられているほかの植物もバラン、ツワブキ、リュウビンタイなど、沖縄に自生するシダ植物です。沖縄の在来種での庭づくりを得意とするHARVEST HIGH!の岩村浩生さんが造園を担当しました。
玄関を入って左側がリビング、右側が寝室と子供部屋で、向かい合うように配置されています。
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玄関を入って左側がリビング、右側が寝室と子供部屋で、向かい合うように配置されています。
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中庭との間を繋ぐ引き戸の建具は木製で、アコヤという木を使っているWOODWISEのもの。台風とシロアリの心配がある沖縄で木製建具を使うのは容易ではないそうですが、こちらは特別な薬剤が注入され、対策ができているのだそうです。
リビングの床材は、沖縄でチャーギと呼ばれるイヌマキ。「沖縄に自生していて、柱などに使われていた木材です。施主夫婦の知り合いの材木屋さんが扱っていたので手に入りました。色の濃淡があって、表情が豊かです」(仲本さん)
リビングには高窓がありますが、外には庇が設けられています。強い日差しが一気にではなく、適度に入るようにとの配慮です。
リビングの床材は、沖縄でチャーギと呼ばれるイヌマキ。「沖縄に自生していて、柱などに使われていた木材です。施主夫婦の知り合いの材木屋さんが扱っていたので手に入りました。色の濃淡があって、表情が豊かです」(仲本さん)
リビングには高窓がありますが、外には庇が設けられています。強い日差しが一気にではなく、適度に入るようにとの配慮です。
天井とキッチンの側面はラワン材。中庭と反対側にあるLDKの開口部の向こうは、バスルームなどがある別棟です。
この家が建つ土地は、少し窪んだ形状になっています。そのため、排水がしやすい位置に水回りを設けられるよう、リビングなどと分けた設計となりました。「棟を分けたことで、光が家のすみずみまで入るようになりました。キッチンは使い勝手のこともあるので、LDと繋げています」(仲本さん)
この家が建つ土地は、少し窪んだ形状になっています。そのため、排水がしやすい位置に水回りを設けられるよう、リビングなどと分けた設計となりました。「棟を分けたことで、光が家のすみずみまで入るようになりました。キッチンは使い勝手のこともあるので、LDと繋げています」(仲本さん)
外に出てみましょう。リビングの光の入り方をつくっている、庇と窓の関係性がわかりますね。
向かって左にある別棟のV字型屋根の形状は、必然的なものなのだそうです。
まず、バスルームや趣味室がある別棟の採光のため、東側に窓を設けました。その関係で右側があがりました。
そして、左側は駐車スペース。「車を降りてから雨に濡れずに入りたい」という施主夫妻の要望を叶えるために屋根を設けました。同時に、雨が落ちない形を考えたところ、左上にあがった形になりました。
結果的に屋根がV字となったことで、雨水をためられるようにもなり、今は水瓶を両サイドに置いています。水瓶にたまった水は、芝生の水やりに活用しているそうです。
コンクリートを使った家の外観写真をみる
向かって左にある別棟のV字型屋根の形状は、必然的なものなのだそうです。
まず、バスルームや趣味室がある別棟の採光のため、東側に窓を設けました。その関係で右側があがりました。
そして、左側は駐車スペース。「車を降りてから雨に濡れずに入りたい」という施主夫妻の要望を叶えるために屋根を設けました。同時に、雨が落ちない形を考えたところ、左上にあがった形になりました。
結果的に屋根がV字となったことで、雨水をためられるようにもなり、今は水瓶を両サイドに置いています。水瓶にたまった水は、芝生の水やりに活用しているそうです。
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広々とした芝生スペースのあるこの家。子供たちが飽きずに遊ベるこの庭では、家族でBBQを楽しむこともあります。
階段横の黒い扉は地下収納庫。釣りやバイクなど趣味のもの、草刈機などをしまっています。
階段横の黒い扉は地下収納庫。釣りやバイクなど趣味のもの、草刈機などをしまっています。
沖縄の伝統的な赤瓦住宅はもちろん、普段京都で関わっている町家のスケール感も参考にしたと、仲本さんはいいます。
「沖縄のコンクリート住宅の多くは、アメリカの住宅のように天井が高く広く作ってありますが、必ずしもそれが住む人の身体のスケールに合っているわけではありません。天井の高さをあえて抑えることで、伝統的な住宅のスケール感を踏襲しながら、快適性を担保することを心がけました」
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Houzzツアー:沖縄の海をダイナミックに望む、建築家の自邸兼オフィス
「沖縄のコンクリート住宅の多くは、アメリカの住宅のように天井が高く広く作ってありますが、必ずしもそれが住む人の身体のスケールに合っているわけではありません。天井の高さをあえて抑えることで、伝統的な住宅のスケール感を踏襲しながら、快適性を担保することを心がけました」
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参考になりました!! ありがとうございます