あたたかさと新しさが共存する、木造倉庫のリノベーション
かつては機織りの工場(こうば)として使われていた木造倉庫をリノベーション。古い梁が印象的な住まいです。
杉田真理子
2020年10月14日
母屋、離れ、工場(こうば)で構成されていた施主の実家。かつては機織りに使われていた工場は、何年も物置スペースとして放置されていました。最初はこの工場を取り壊す予定でしたが、建築家の勧めで古い建物を保存し、住空間にリノベーションすることに。「新しくつくることができない魅力」が残された、心地の良い住まいとなりました。
どんなHouzz?
所在地
:京都府京丹後市
家族構成:夫婦2人、8歳と3歳の娘
敷地面積
:未測量のため不明
延床面積:164.41㎡
構造:木造
設計:yasuhiro sawa design office.
施工会社:橋田建設株式会社
時期:2019.3 - 2019.7
写真:大竹央祐
実家近くのアパートに家族で暮らしていた夫妻。yasuhiro sawa design office.を主宰する、建築家・澤康博さんのお姉さまがご主人の同僚であることから縁が繋がり、夫妻は家づくりを真剣に検討し始めたと話します。澤さんがまず注目したのは、迫力の高い天井に木の温もりが残る梁の存在でした。「新しくつくれない価値は、残すべきだと思いました」
所在地
:京都府京丹後市
家族構成:夫婦2人、8歳と3歳の娘
敷地面積
:未測量のため不明
延床面積:164.41㎡
構造:木造
設計:yasuhiro sawa design office.
施工会社:橋田建設株式会社
時期:2019.3 - 2019.7
写真:大竹央祐
実家近くのアパートに家族で暮らしていた夫妻。yasuhiro sawa design office.を主宰する、建築家・澤康博さんのお姉さまがご主人の同僚であることから縁が繋がり、夫妻は家づくりを真剣に検討し始めたと話します。澤さんがまず注目したのは、迫力の高い天井に木の温もりが残る梁の存在でした。「新しくつくれない価値は、残すべきだと思いました」
工夫したのは、面積大きな体育館のような空間で、どう間取りをつくるかということでした。「面積が大きいからこそ、バランスを間違えるとメリハリがなくなってしまいます」と澤さんは説明します。広い室内に曲線的な壁を設けることで、「アウトサイドリビング」と「リビング」の間に緩やかな境界をつくり、ユニークさを演出しました。
「梁が直線的なため、曲線的な空間を組み込むことでお互いの良さが引き立つのではと考えました」と澤さん。「直線的な間取りも提案しましたが、直感的に曲線が良いと確信していました」と続けます。
模型を作るなど視覚的に夫妻に体験してもらうことで、最終的に思い切った曲線的なプランを採用してもらいました。
「梁が直線的なため、曲線的な空間を組み込むことでお互いの良さが引き立つのではと考えました」と澤さん。「直線的な間取りも提案しましたが、直感的に曲線が良いと確信していました」と続けます。
模型を作るなど視覚的に夫妻に体験してもらうことで、最終的に思い切った曲線的なプランを採用してもらいました。
アウトサイドリビングは、全ての個室に繋がる「室内の外」のような役目があります。「玄関から足を踏み入れると、外の延長のような雰囲気が続くことを意識しました」と澤さんは説明します。
部屋を抜けてアウトサイドリビングに出ると、まるで外に出るような広々とした空間の変化が楽しめます。段差があったり、家の中に家がある、迷路のような空間を意識したと、澤さん。
部屋を抜けてアウトサイドリビングに出ると、まるで外に出るような広々とした空間の変化が楽しめます。段差があったり、家の中に家がある、迷路のような空間を意識したと、澤さん。
玄関から入ってすぐの場所には、夫婦が希望していた薪ストーブも備えられました。また、天井の梁を生かすよう、断熱材は室内ではなく外側にいれることで、見た目を担保しつつ冬も過ごしやすい設計となっています。
アウトサイドリビングから、曲線の壁で仕切られたリビングダイニングへ繋がる開口部は、四角形に切り取られています。「曲線の壁なので、見る位置によってこの四角形の形が変わり、変化があります」と澤さん。
アウトサイドリビングから、曲線の壁で仕切られたリビングダイニングへ繋がる開口部は、四角形に切り取られています。「曲線の壁なので、見る位置によってこの四角形の形が変わり、変化があります」と澤さん。
広々と開口が設けられた、広々としたリビングダイニング。アウトサイドリビングとリビングダイニングを仕切る壁には、所々に四角く切り取られた室内窓があります。「擬似的な窓を設けることで、室内にも風景を作れるようにしました」と澤さんは話します。
キッチンに立って調理をする際に子供部屋まで目が届くよう、配慮して開口部が設計されています。キッチンから洗面所までも扉でつながっているため、家事動線も便利だと奥さまは話します。
キッチンに立って調理をする際に子供部屋まで目が届くよう、配慮して開口部が設計されています。キッチンから洗面所までも扉でつながっているため、家事動線も便利だと奥さまは話します。
玄関から家の奥までアウトサイドリビングを進むと、徐々に細くなり廊下となります。温もりのある木の梁が映えるよう、壁は白いクロスを使用。クロスを使用することでコストも抑えられ、さらりと清潔感のある仕上がりとなっています。
キッチンとリビングダイニングから廊下を挟んで、子供の部屋と寝室があります。
キッチンとリビングダイニングから廊下を挟んで、子供の部屋と寝室があります。
寝室と子供部屋の上にあるロフトには、アウトドアリビングにある梯子からアクセスできるようになっています。「元々工場に残っていた梯子が綺麗に残っていたので、そのまま使用しました」と澤さん。ロフトは、子供の遊び場所やミシン作業、梁にハンモックをかけたりなど、多用途に使用されています。
印象的な梁からペンダントライトが下げられ、夜は梁がドラマチックにうつり暖かく印象的な雰囲気になります。
床材には、温もりのある杉材が使われました。「澤さんが素材を適切にチョイスしてくださったので、全体の価格も安価に抑えられました」とご主人。頑張ってコスト削減をしたわけでもなく、この立地に適切な素朴な材料を使用したことが、成功の秘訣だったと澤さんと話します。
「私もお施主と同じ地元なので、どの材料を使いたい、という感覚が合っていたのだと思います。地元の信頼できる工務店や大工さんがいるのもあって、本当に楽しい現場でした」
「私もお施主と同じ地元なので、どの材料を使いたい、という感覚が合っていたのだと思います。地元の信頼できる工務店や大工さんがいるのもあって、本当に楽しい現場でした」
水回りは、家の東側に横並びにまとめました。トイレと洗面所はバラバラに区切られがちな空間ですが、今回はあえて区切りすぎることなく、広々とした設計となっています。木造倉庫から出てきた古い梯子を使用し、ちょっとした収納スペースにアクセスできるようにもなっています。
ホワイトが印象的に使われたリビング空間に対し、ベッドルームにはラワン合板を使用し、暖かい雰囲気を演出しました。
ホワイトが印象的に使われたリビング空間に対し、ベッドルームにはラワン合板を使用し、暖かい雰囲気を演出しました。
引っ越してから約1年。アパートに住んでいた頃は、子供を連れて遊園地や公園にしょっちゅう遊びに行っていたというご夫婦。マイホームができてからは、子供たちも家で存分に遊べるので、必然的に家で過ごす時間が多くなったと話します。
「ステイホーム期間中も、快適に過ごせました」と奥さま。「家のなかで、子供たちが走り回ったりボール遊びをしたりします。アパートではできなかったことです」
家の外にはご主人のお母さまが手掛ける菜園があり、新鮮な野菜が収穫できるとのこと。自然豊かな周囲の環境にも恵まれた、古いあたたかさと新しさが共存する住まいとなりました。
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「ステイホーム期間中も、快適に過ごせました」と奥さま。「家のなかで、子供たちが走り回ったりボール遊びをしたりします。アパートではできなかったことです」
家の外にはご主人のお母さまが手掛ける菜園があり、新鮮な野菜が収穫できるとのこと。自然豊かな周囲の環境にも恵まれた、古いあたたかさと新しさが共存する住まいとなりました。
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