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竹林を借景にした、工房のある京都の住宅
木工と漆の作家である夫婦が選んだのは、竹林に囲まれた職住一体の家でした。

杉田真理子
2020年8月26日
京都市内の自然豊かなエリアに暮らす、木工と漆の工芸作家ご夫婦。ものづくりをしながら生活を営みたいという想いがあり、工房付住宅を所望していました。夫婦の美意識と、こだわりが感じられる住宅です。
どんなHouzz?
所在地:京都府京都市
住まい手:木工作家の夫と、漆作家の妻
敷地面積:185.22平方メートル
延床面積:108.81平方メートル
構造:木造地上3階建
設計:高橋勝建築設計事務所
施工:池本工務店
竣工時期:2019年3月
写真撮影:髙橋菜生
最初は予算の関係上、中古物件を探していたご夫婦。建築家・髙橋勝さんの提案で、予算内で漆室と木工室を備えた新築を実現させました。
2年間、髙橋さんの協力のもと土地を探し続け、最終的に見つけたのは、京都の風致地区である、自然に囲まれた場所でした。市街地の近くにも関わらず静かで緑の多い場所で、北側には筍畑のために整備された竹林があり、素晴らしい借景を得る事が出来る敷地です。
しかし、この土地は、土砂災害特別警戒区域でもありました。土砂対策用に擁壁を作る必要があるのと、警戒区域ならではの規制があり、京都市の景観条例等と合わせて多くの建築的規制があったと、高橋さんは振り返ります。
所在地:京都府京都市
住まい手:木工作家の夫と、漆作家の妻
敷地面積:185.22平方メートル
延床面積:108.81平方メートル
構造:木造地上3階建
設計:高橋勝建築設計事務所
施工:池本工務店
竣工時期:2019年3月
写真撮影:髙橋菜生
最初は予算の関係上、中古物件を探していたご夫婦。建築家・髙橋勝さんの提案で、予算内で漆室と木工室を備えた新築を実現させました。
2年間、髙橋さんの協力のもと土地を探し続け、最終的に見つけたのは、京都の風致地区である、自然に囲まれた場所でした。市街地の近くにも関わらず静かで緑の多い場所で、北側には筍畑のために整備された竹林があり、素晴らしい借景を得る事が出来る敷地です。
しかし、この土地は、土砂災害特別警戒区域でもありました。土砂対策用に擁壁を作る必要があるのと、警戒区域ならではの規制があり、京都市の景観条例等と合わせて多くの建築的規制があったと、高橋さんは振り返ります。
風致地区のため、屋根には瓦の使用が義務付けられていました。外構には焼杉を使用し、外部の景観と溶け込むように工夫されています。
「焼杉は、機械ではなく伝統的な手焼き工法で作成した天龍焼杉を使用しました」と高橋さん。天龍焼は、杉板を煙突のように三角形に並べ、その内側を焼くことで仕上げる工法です。「仕上がりが独特のため好き嫌いがあるのですが、お施主夫婦の雰囲気にあっているなと思ったんです」
施主の普段の服装や趣味などから人柄や好みを汲み取ったうえで、ひとつひとつ素材を選ぶ、高橋さんの細やかな配慮が伺えます。
木造住宅の材料は、地元・京都で取れる檜と杉を使用しています。「地元の材料は、安価なうえに、風土にあっているので扱いやすい。地元の木材をつかうメリットは多いんです」と話す高橋さんは、国産木材や地域素材の使用を促進する団体にも所属しているそうです。
「焼杉は、機械ではなく伝統的な手焼き工法で作成した天龍焼杉を使用しました」と高橋さん。天龍焼は、杉板を煙突のように三角形に並べ、その内側を焼くことで仕上げる工法です。「仕上がりが独特のため好き嫌いがあるのですが、お施主夫婦の雰囲気にあっているなと思ったんです」
施主の普段の服装や趣味などから人柄や好みを汲み取ったうえで、ひとつひとつ素材を選ぶ、高橋さんの細やかな配慮が伺えます。
木造住宅の材料は、地元・京都で取れる檜と杉を使用しています。「地元の材料は、安価なうえに、風土にあっているので扱いやすい。地元の木材をつかうメリットは多いんです」と話す高橋さんは、国産木材や地域素材の使用を促進する団体にも所属しているそうです。
作家夫婦が集めたこだわりのアイテムが出迎えてくれる、エントランスギャラリー。土砂災害用に造られたRC擁壁が、そのまま玄関の壁になっています。
「擁壁のためエントランスは暗くなる宿命にあったので、光の調整をしやすいギャラリーを作りました。擁壁と壁の間に間接で照明を仕込み、ご夫婦が古道具屋で見つけてきたアイテムや、漆作家である奥さまの師匠の作品などを置いて、演出できるようになっています」と高橋さん。「耐力壁のためのブレースはあえて隠さずそのまま残し、土壁、床のコンクリート、鉄、木といった素朴な素材が共存する空間を作りました」
Houzzで建築家を探す
「擁壁のためエントランスは暗くなる宿命にあったので、光の調整をしやすいギャラリーを作りました。擁壁と壁の間に間接で照明を仕込み、ご夫婦が古道具屋で見つけてきたアイテムや、漆作家である奥さまの師匠の作品などを置いて、演出できるようになっています」と高橋さん。「耐力壁のためのブレースはあえて隠さずそのまま残し、土壁、床のコンクリート、鉄、木といった素朴な素材が共存する空間を作りました」
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玄関から1階の奥に進むと、奥さまの工房である漆室が、環境の良い北側にあります。
「室は、板材は杉、柱や梁は檜を使うなど、伝統的なつくり方の型が決まっています。漆室は、奥さまと相談し、綿密に作り込みました」と高橋さん。
漆室では、目の前に竹林の風景を、小窓からも植栽の風景画楽しめます。豊かな自然の借景を前に、作品づくりに集中できる空間です。
「室は、板材は杉、柱や梁は檜を使うなど、伝統的なつくり方の型が決まっています。漆室は、奥さまと相談し、綿密に作り込みました」と高橋さん。
漆室では、目の前に竹林の風景を、小窓からも植栽の風景画楽しめます。豊かな自然の借景を前に、作品づくりに集中できる空間です。
漆室の隣には、仕上げ室があります。
「漆は湿度で固まります。湿度や温度によって仕上がりに変化が現れるため、室は4室に分け、タオルをかけて湿度を変えるなど、作品によって調整できる仕掛けとなっています。塵が入らないよう、仕上げ室は締め切れるようになっています」
机の天板は、奥様が竣工後、漆で仕上げました。
「漆は湿度で固まります。湿度や温度によって仕上がりに変化が現れるため、室は4室に分け、タオルをかけて湿度を変えるなど、作品によって調整できる仕掛けとなっています。塵が入らないよう、仕上げ室は締め切れるようになっています」
机の天板は、奥様が竣工後、漆で仕上げました。
木工室は音が響くため、木の加工場は本来難しいとされています。「しかし、土砂災害のための待ち受けRC擁壁を付ける必要が元々あったので、こちらを防音装置として活用しました」と高橋さんは説明します。
夫妻の希望で、扉は古道具の建具を使用しました。
ギャラリーとしても使用できる階段は、トップライトから光が差し込むため、広々と明るい印象。鉄骨の廻り階段が、軽やかな雰囲気をプラスしています。ご主人が好きな陶芸作家の展覧会で購入された壺が、粋な空間を演出しています。
壁は土壁、3階には土佐和紙を使用しました。
壁は土壁、3階には土佐和紙を使用しました。
竹林と反対側、南に面する2階のリビングでは、隣家からの視線を避けて開口部を設けました。「もみじの木が目の前にあり、秋は紅葉が見事です」と高橋さん。読書や音楽を楽しめる、リラックス空間です。
家の中心となる食堂。ダイニングテーブルとキッチンの天板、その他家具の一部は、木工作家であるご主人の作品です。北欧のデザインチェアやイサム・ノグチの照明AKARIと合わせて、和モダンな仕上がりとなっています。
和風の家の写真をみる
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「食堂には、半屋外のような雰囲気を持たせるため、北側の開口部を大きく設けました。屋外バルコニーもつけ、軒下のような雰囲気となっています」と高橋さん。天気や1日の時間の移ろい、季節の変化を楽しめる空間です。
野地板をそのまま活かした天井が、素朴で繊細な雰囲気をプラスしています。
野地板をそのまま活かした天井が、素朴で繊細な雰囲気をプラスしています。
浴室も竹林に面しており、景色を楽しみながら入浴ができるようになっています。
3階は、寝室と納戸となっています。北側にアクリルの引き戸を作り、3階からも竹林の景色が楽しめます。ガラス瓦のトップライトから差し込む自然光が、空間を優しく照らします。
「1年住んでみたことで、暑い夏も寒い冬も快適に過ごせる工夫がされていることを実感しました」と、暮らした実感を語るオーナーご夫婦。「秋には家の外の紅葉が綺麗に見えるように窓の位置が決められていた事に気付き、四季の移ろいもたっぷりと感じられる事に、髙橋さんのきめ細やかな心遣いを感じました」
風景を最大限に活かした、夫妻のものづくりに寄り添う職住一体の住まいです。
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