屋上庭園のある豊かな暮らし。実現したいなら知っておきたいこと
「狭小地に建つ住宅だけど、屋上に畑を作って野菜を育てたい!」そんな希望も今では工夫次第で叶うようになりました。屋上庭園のメリットや、費用の面で踏まえておきたいことなどについて考えてみましょう。
安井俊夫
2020年6月4日
天工舎一級建築士事務所主宰。神奈川県小田原市に事務所を構え、住宅や店舗などの設計監理業務を行っています。書評やコラムなども執筆中。
屋上に緑のある建物なんて、少し前まではビルやデパートにしかありませんでした。決して我が家に設けるような物ではなく、まして木造住宅の屋上に庭を造ることなど考えもしなかったのではないでしょうか。ですが、今では工夫次第で木造住宅にも、屋上庭園を設けることができるようになっています。
屋上利用を考えるときには、はじめに利用の仕方を明確にする必要があります。たいていの場合は、屋上に適切な防水工事を施し、庭のように利用することを考えます。
防水処理を施す場合には、そこに土を入れ植栽することも可能ですし、床一面に芝を張ることだって出来ます。ですが、非防水の場合には人工芝を貼り、スノコ状のウッドデッキを敷く程度のことしか出来ません。どちらも屋上庭園として利用できますが、楽しみ方には大きな違いが生まれます。
では、屋上庭園があると可能になることと、作るなら知っておきたい費用や条件面での留意点について、一つずつ見ていきましょう。
防水処理を施す場合には、そこに土を入れ植栽することも可能ですし、床一面に芝を張ることだって出来ます。ですが、非防水の場合には人工芝を貼り、スノコ状のウッドデッキを敷く程度のことしか出来ません。どちらも屋上庭園として利用できますが、楽しみ方には大きな違いが生まれます。
では、屋上庭園があると可能になることと、作るなら知っておきたい費用や条件面での留意点について、一つずつ見ていきましょう。
【屋上庭園があるとできること】
1. 庭のある暮らしを楽しめる
屋上庭園があれば、地面に庭を作るスペースが無くても、庭スペースが確保できます。屋上に防水を施した場合には、土を入れて木を植えることができ、庭として立派な役割を担うことが可能となります。家庭菜園を作り、楽しく野菜を育てることもできることでしょう。
1. 庭のある暮らしを楽しめる
屋上庭園があれば、地面に庭を作るスペースが無くても、庭スペースが確保できます。屋上に防水を施した場合には、土を入れて木を植えることができ、庭として立派な役割を担うことが可能となります。家庭菜園を作り、楽しく野菜を育てることもできることでしょう。
2. 断熱効果を期待できる
防水処理を施した屋上であれば、芝を張ることも可能となり、夏の温度上昇を抑制する効果が生まれます。そもそも断熱や遮熱は室内で行うよりも室外で行う方が、その効果が高いため、室温の上昇を抑えることが出来ますし、冷暖房効率を高めることにも繋がります。
防水を施さない場合でも、ウッドデッキなどを敷くことにより、一定の断熱効果が期待できます。
自然で心地よい涼しさを演出する、庭・屋上の暑さ対策
防水処理を施した屋上であれば、芝を張ることも可能となり、夏の温度上昇を抑制する効果が生まれます。そもそも断熱や遮熱は室内で行うよりも室外で行う方が、その効果が高いため、室温の上昇を抑えることが出来ますし、冷暖房効率を高めることにも繋がります。
防水を施さない場合でも、ウッドデッキなどを敷くことにより、一定の断熱効果が期待できます。
自然で心地よい涼しさを演出する、庭・屋上の暑さ対策
3. 安全な子供の遊び場ができる
屋上を利用する場合には、道行く人の視線などを気にすることも無く、安全に子供を遊ばせておくことが出来ます。夏にはビニールプールに水を貼り、悠々と水遊びをすることも可能ですし、冬には天体望遠鏡で星を眺めることだってできるでしょう。少し大きなパラソルを立てれば、休日には家族で食事を楽しむことも可能です。
屋上を利用する場合には、道行く人の視線などを気にすることも無く、安全に子供を遊ばせておくことが出来ます。夏にはビニールプールに水を貼り、悠々と水遊びをすることも可能ですし、冬には天体望遠鏡で星を眺めることだってできるでしょう。少し大きなパラソルを立てれば、休日には家族で食事を楽しむことも可能です。
4. 見晴らしがよく、素敵な景色を楽しめる
家の最上部に設けるのですから、とにかく見晴らしが良いです。都会のど真ん中、住宅密集地に家を建てる場合でも、空は遮るものなく見上げることが可能です。それだけで屋上庭園を設ける価値があると感じることでしょう。また設計段階に周囲の家の隙間を把握することが出来れば、我が家だけが知る素敵な景色を眺めることだってできるかもしれません。
家の最上部に設けるのですから、とにかく見晴らしが良いです。都会のど真ん中、住宅密集地に家を建てる場合でも、空は遮るものなく見上げることが可能です。それだけで屋上庭園を設ける価値があると感じることでしょう。また設計段階に周囲の家の隙間を把握することが出来れば、我が家だけが知る素敵な景色を眺めることだってできるかもしれません。
【屋上庭園を作るなら踏まえておきたいポイント】
1. 補強のためにはそれなりの費用が必要になる
想像しただけで楽しくなってくる屋上庭園ですが、作るなら踏まえておきたい留意点もいくつかあります。例えば、建設に必要な費用は意外と高額です。屋上にしっかりとした防水処理を施し、土を入れ植栽すると建物全体の荷重が増えてしまいます。屋上庭園に要する費用だけでなく、建物を補強するための費用も必要となってしまうのです。
1. 補強のためにはそれなりの費用が必要になる
想像しただけで楽しくなってくる屋上庭園ですが、作るなら踏まえておきたい留意点もいくつかあります。例えば、建設に必要な費用は意外と高額です。屋上にしっかりとした防水処理を施し、土を入れ植栽すると建物全体の荷重が増えてしまいます。屋上庭園に要する費用だけでなく、建物を補強するための費用も必要となってしまうのです。
2. 天候の影響も考慮し、メンテナンスする必要がある
屋上に植栽を設けた場合、その管理をしっかりすることが重要になります。その管理とは水遣りや剪定、雑草取りと言ったことだけではなく、落ち葉が排水パイプに詰まらないように配慮し、定期的な清掃を含めた維持に気を配る必要があります。
屋上に庭園を造る―、それは質が高く、水捌けの良い船を造るような物と言ってもよいでしょう。設計者・施工者共に最善を尽くした防水工事を施し、雨水を詰まらすことなく排水させる創意工夫の上に成り立っていますが、それでも天候と言う自然との対峙に「絶対」はありません。
定期的なメンテナンスを行い、良質な屋上庭園の環境を維持することが大切です。また強風により土埃が舞い散る可能性もあるので、植栽や緑化を行う際には屋上に適した土壌を設置することを忘れてはいけません。
屋上に植栽を設けた場合、その管理をしっかりすることが重要になります。その管理とは水遣りや剪定、雑草取りと言ったことだけではなく、落ち葉が排水パイプに詰まらないように配慮し、定期的な清掃を含めた維持に気を配る必要があります。
屋上に庭園を造る―、それは質が高く、水捌けの良い船を造るような物と言ってもよいでしょう。設計者・施工者共に最善を尽くした防水工事を施し、雨水を詰まらすことなく排水させる創意工夫の上に成り立っていますが、それでも天候と言う自然との対峙に「絶対」はありません。
定期的なメンテナンスを行い、良質な屋上庭園の環境を維持することが大切です。また強風により土埃が舞い散る可能性もあるので、植栽や緑化を行う際には屋上に適した土壌を設置することを忘れてはいけません。
3. 降雪地域の場合はオススメできない
そもそも雪の降る地域での屋上庭園設置は難しいです。雪の重さは1m四方の面積に1cm積もると、約2kgの重さとなります。例えば延床面積が40坪の住宅で屋上の広さが20坪(約66㎡)だった時に、10cmの雪が積もると、その重さは約1.3tとなります。
乗用車1台に大人四人が乗ったぐらいの重さが建物の上に乗る計算になります。雪の量が増えれば建物に対する負担が大きくなるばかりなので、オススメは出来ません。
そもそも雪の降る地域での屋上庭園設置は難しいです。雪の重さは1m四方の面積に1cm積もると、約2kgの重さとなります。例えば延床面積が40坪の住宅で屋上の広さが20坪(約66㎡)だった時に、10cmの雪が積もると、その重さは約1.3tとなります。
乗用車1台に大人四人が乗ったぐらいの重さが建物の上に乗る計算になります。雪の量が増えれば建物に対する負担が大きくなるばかりなので、オススメは出来ません。
4. 屋上緑化しない場合、断熱効果は限定的
前に「断熱効果が高い」と書きましたが、それは屋上緑化を施した場合です。ウッドデッキを敷設しただけでも一定の遮熱効果は期待できますが、土のように水分を含み、樹木が太陽熱を遮ってくれるわけではないため、過大な期待をされると思わぬ暑さに悩まされる可能性もあるでしょう。
前に「断熱効果が高い」と書きましたが、それは屋上緑化を施した場合です。ウッドデッキを敷設しただけでも一定の遮熱効果は期待できますが、土のように水分を含み、樹木が太陽熱を遮ってくれるわけではないため、過大な期待をされると思わぬ暑さに悩まされる可能性もあるでしょう。
屋上庭園に向いている家の構造と費用の目安は?
建物の強度や屋上庭園の作りやすさから考えれば、鉄筋コンクリート造>鉄骨造>木造と言う順番になると思います。ですが2008年に屋上庭園の排水勾配基準が緩和されたため、今では木造住宅でも屋上庭園を容易に設置することが可能となりました。
その際の費用の目安とすれば建物規模や庭園の内容、その他様々な要因で変わってきますが、大まかに言えば屋上庭園面積1坪あたり10万円から30万円ぐらいだと思います。つまり屋上庭園が10坪(約33㎡)ならば、100万円から300万円程が目安となります。
建物の強度や屋上庭園の作りやすさから考えれば、鉄筋コンクリート造>鉄骨造>木造と言う順番になると思います。ですが2008年に屋上庭園の排水勾配基準が緩和されたため、今では木造住宅でも屋上庭園を容易に設置することが可能となりました。
その際の費用の目安とすれば建物規模や庭園の内容、その他様々な要因で変わってきますが、大まかに言えば屋上庭園面積1坪あたり10万円から30万円ぐらいだと思います。つまり屋上庭園が10坪(約33㎡)ならば、100万円から300万円程が目安となります。
屋上緑化に適した防水とは?
木造住宅に屋上防水を施す場合、少し前までは塗布防水やシート防水、FRP防水が一般的でした。ですが最近では金属プレートを用いた金属防水工法に人気が集まっているようです。
金属防水とは防水合板を下地とし、金属板を敷き並べていく防水方法で、地震の揺れなどに対してもひび割れを生じにくく、地震の多い日本には適していると言われています。非防水とは文字通り防水処理を施さず、屋根勾配を緩くした上にスノコ等のウッドデッキを敷いて利用する考え方ですが、安全上の問題もあり、あまり多くの事例を見かけることはありませんので、あくまでも参考としてご理解ください。
木造住宅に屋上防水を施す場合、少し前までは塗布防水やシート防水、FRP防水が一般的でした。ですが最近では金属プレートを用いた金属防水工法に人気が集まっているようです。
金属防水とは防水合板を下地とし、金属板を敷き並べていく防水方法で、地震の揺れなどに対してもひび割れを生じにくく、地震の多い日本には適していると言われています。非防水とは文字通り防水処理を施さず、屋根勾配を緩くした上にスノコ等のウッドデッキを敷いて利用する考え方ですが、安全上の問題もあり、あまり多くの事例を見かけることはありませんので、あくまでも参考としてご理解ください。
リフォームでも屋上庭園は作れる
最近は減築と称して、2階建ての家を平屋にリフォームする事例を見かけますが、そんな家にも屋上庭園を設けることができます。そもそも屋根と2階を解体し、新たな屋根を設けるわけですから、その屋根に防水処理を施して緑化すれば良いのです。
また屋根に上がるためには階段が必要となりますが、もともと2階に上がる階段はあるのですから、それらを上手く活用できる可能性があります。ただし、1階の強度確認や補強が必要となるでしょう。屋上緑化に関する費用だけを見れば、新築と同じ程度と考えられます。
家の中で楽しく過ごす時間が増えた時、庭は大切な憩いの場となります。その庭が屋上にあったとしたら、プライベート感はとても大きく、気分は「我が家のリゾート空間」になることでしょう。あなたの夢に見る屋上リゾートライフを、どうお楽しみください。
最近は減築と称して、2階建ての家を平屋にリフォームする事例を見かけますが、そんな家にも屋上庭園を設けることができます。そもそも屋根と2階を解体し、新たな屋根を設けるわけですから、その屋根に防水処理を施して緑化すれば良いのです。
また屋根に上がるためには階段が必要となりますが、もともと2階に上がる階段はあるのですから、それらを上手く活用できる可能性があります。ただし、1階の強度確認や補強が必要となるでしょう。屋上緑化に関する費用だけを見れば、新築と同じ程度と考えられます。
家の中で楽しく過ごす時間が増えた時、庭は大切な憩いの場となります。その庭が屋上にあったとしたら、プライベート感はとても大きく、気分は「我が家のリゾート空間」になることでしょう。あなたの夢に見る屋上リゾートライフを、どうお楽しみください。
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高層階の場合普段から風は強いのですが、特に台風の時、バルコニーの家具を全て室内に戻さなければとても危険です。以前ルーフバルコニーの人工芝がすべてめくりあがり、ガーデンセットが手すりを直撃し破壊したことがあります。幸いにも落下はしませんでしたが、もし落下していたらと恐ろしく、以後ガーデン台風の前に全て室内に戻せる程度のものにしています。
手すり部分に木製の目隠しも考えましたが、それも風に持っていかれる可能性が高いので施工不可と言われました。
今後ますます巨大化する台風の強風のことをよく考えて設計する必要があると思います。
ご意見・ご感想いただき、ありがとうございます。
今回のコラムは、2階建ての一戸建て住宅、あるいは3階建て程度の一戸建て住宅を想定して書かせていただきましたが、ご指摘の通り4階5階建て住宅も有ると思いますので、風に対する配慮は大切ですね。またロケーションによっては、風の強い沿岸部や高台などに建てるケースもありますので注意が必要です。
参考までに補足させていただくと、今回のコラムは高層マンションなどの建物を想定しておりませんでした。そもそも分譲あるいは賃貸のマンション(基準法上、共同住宅と定義される建物)のバルコニーは、占有部では無く共用部として扱われるため、植栽をはじめとした樹木の設置や机・テーブルなどの設置は認められていないことが多いからです。
とくに二方向避難路として扱われている際には、管理規約における美観上の問題だけではなく、基準法・消防法上の安全確保と言う点においても適切では無いため、注意が必要です。
手摺部に目隠しを施す際にも、お住まいの建物がマンションでしたら、後々のトラブルを避けるためにも、管理組合・管理会社さんと御相談されてから工事されることを、お薦めします。ご意見ありがとうございました。