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ドーシ・レヴィエンのハイブリッドなデザイン哲学とは?
デザイン・デュオ「ドーシ・レヴィエン」として活動するニパ・ドーシとジョナサン・レヴィエン。グローカルをキーワードに、多くの北欧ブラントともコラボレーションを続けるふたりにインタビューしました。
Sara Norrman
2020年2月19日
ニパのビジュアルセンスとジョナサンの技術的ノウハウ。2人は様々なレベルで検討を重ねることによりプロダクトや空間を作り出し、遊びごころと実用性の両方に喜びをもたらします。Houzzはストックホルム国際家具見本市でドーシ・レヴィエンにお話を伺いました。
写真:Gustav Kaiser
ニパ・ドーシはデリー中心部で育ち、インドの伝統工芸と革新的で実験的なデザインとの融合を目指すナショナル・インスティチュート・オブ・デザインで教育を受けました。一方、ジョナサン・レヴィエンはスコットランドで玩具製造業を営む家庭のもとで幼少期を過ごし、その後、家具職人および工業デザイナーとして経験を積みました。2人今活動拠点としているスタジオ(写真)は、ロンドンにあります。
お二人のインタビューには、「グローカル(glocal)」という言葉がよく出てきます。グローバルとローカルの組み合わせ、また伝統工芸と現代的な表現の組み合わせという意味でもあります。これはお二人が意識する働き方ですか?
ジョナサン・レヴィエン:グローカルは私たち自身なのです。異なる世界をつなげるというスタジオ設立時からの私たちの夢でありヴィジョンです。私たちは文化のハイブリットであり、純粋主義的なデザインには否定的です。仕事には層と奥行きを求めます。ニパはとても強い視覚的文化のバックグラウンドがあり、そこに、高級家具職人というルーツを持つ私がヨーロッパ的な要素を加えます。
ニパ・ドーシはデリー中心部で育ち、インドの伝統工芸と革新的で実験的なデザインとの融合を目指すナショナル・インスティチュート・オブ・デザインで教育を受けました。一方、ジョナサン・レヴィエンはスコットランドで玩具製造業を営む家庭のもとで幼少期を過ごし、その後、家具職人および工業デザイナーとして経験を積みました。2人今活動拠点としているスタジオ(写真)は、ロンドンにあります。
お二人のインタビューには、「グローカル(glocal)」という言葉がよく出てきます。グローバルとローカルの組み合わせ、また伝統工芸と現代的な表現の組み合わせという意味でもあります。これはお二人が意識する働き方ですか?
ジョナサン・レヴィエン:グローカルは私たち自身なのです。異なる世界をつなげるというスタジオ設立時からの私たちの夢でありヴィジョンです。私たちは文化のハイブリットであり、純粋主義的なデザインには否定的です。仕事には層と奥行きを求めます。ニパはとても強い視覚的文化のバックグラウンドがあり、そこに、高級家具職人というルーツを持つ私がヨーロッパ的な要素を加えます。
モローゾのためにドーシ・レヴィエンがデザインした My Beautiful Backside sofa
ニパ・ドーシ:ピンク色のアール・デコの家で育ち、両親の友人たちはベスパやフィアットに乗っていましたが、食事に関してはインド料理が中心でした。グローバル化はポジティブな言葉であり、インターネットが普及するよりずっと前から人々が関わってきたものです。たとえば香辛料貿易やオランダから中国に渡った磁器など。それは美しいものの交換であり他国人に対する開放性です。とても重要なことだと思います。
ニパ・ドーシ:ピンク色のアール・デコの家で育ち、両親の友人たちはベスパやフィアットに乗っていましたが、食事に関してはインド料理が中心でした。グローバル化はポジティブな言葉であり、インターネットが普及するよりずっと前から人々が関わってきたものです。たとえば香辛料貿易やオランダから中国に渡った磁器など。それは美しいものの交換であり他国人に対する開放性です。とても重要なことだと思います。
写真:Jonas Lindström
今年のストックホルム国際家具見本市(2020年2月4~8日)では、ゲスト・オブ・オナー(Guests of Honor)に選ばれていますね。エントランスホールにあるインスタレーションのコンセプトについて聞かせてください。
ジョナサン・レヴィエン:「世界の中にある世界を作りたかったのです。完成品だけでなく、デザインプロセスも展示する、つまり、これはインスタレーションではなく、展示です。アイデア、スケッチ、プロトタイプ(実を結ぶものもあれば、日の目を見ることもないものもあります)が詰め込まれた私たちのロンドンスタジオの雰囲気が再現されています。その変遷、つまりデザインの全工程を共有することで、鑑賞力を高めます。プロダクトに対する理解も深くなります」
日本のプロダクトデザイナーを探す
今年のストックホルム国際家具見本市(2020年2月4~8日)では、ゲスト・オブ・オナー(Guests of Honor)に選ばれていますね。エントランスホールにあるインスタレーションのコンセプトについて聞かせてください。
ジョナサン・レヴィエン:「世界の中にある世界を作りたかったのです。完成品だけでなく、デザインプロセスも展示する、つまり、これはインスタレーションではなく、展示です。アイデア、スケッチ、プロトタイプ(実を結ぶものもあれば、日の目を見ることもないものもあります)が詰め込まれた私たちのロンドンスタジオの雰囲気が再現されています。その変遷、つまりデザインの全工程を共有することで、鑑賞力を高めます。プロダクトに対する理解も深くなります」
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写真:Jonas Lindström
高い丸天井の空間での体験はオープンであり、クローズでもあります。インスピレーションはどこからきたのでしょうか?
ニパ・ドーシ:最近行ったパレルモにある教会に影響を受けました。
ジョナサン・レヴェン:「私たちはサステナビリティも真摯に受け止めています。見本市で使った材料は再利用またはエネルギーに転用されます。木材は現地で調達されたものですし、クヴァドラ社のテキスタイルはすべて返却され、現地で販売されます。明確な意識をもってデザインしています」
二パ・ドーシ:「しかし、サステナビリティはどの材料を使うかに限ったことではありません。社会的に持続可能な方法で業界をサポートするために、正しいタイプのメーカーを選ぶことでもあるのです。長期に渡って使用される作品をデザインするため、というのも大きな理由です」
高い丸天井の空間での体験はオープンであり、クローズでもあります。インスピレーションはどこからきたのでしょうか?
ニパ・ドーシ:最近行ったパレルモにある教会に影響を受けました。
ジョナサン・レヴェン:「私たちはサステナビリティも真摯に受け止めています。見本市で使った材料は再利用またはエネルギーに転用されます。木材は現地で調達されたものですし、クヴァドラ社のテキスタイルはすべて返却され、現地で販売されます。明確な意識をもってデザインしています」
二パ・ドーシ:「しかし、サステナビリティはどの材料を使うかに限ったことではありません。社会的に持続可能な方法で業界をサポートするために、正しいタイプのメーカーを選ぶことでもあるのです。長期に渡って使用される作品をデザインするため、というのも大きな理由です」
写真:Jonas Lindström
最近、初のセルフプロデュースによる照明コレクション『アース・トゥ・スカイ (Earth to Sky)』(写真)を発表されましたね。メーカーの仕事との違いはどのようなものでしたか?
ジョナサン・レヴィエン: セルフプロデュースの場合、何かミスをしたら、それが見えるだけでなく、その代償を払わなければなりません。
二パ・ドーシ:一方でコストに制限されずに、業者探しから発売の計画、カタログ準備まで全工程に携われます。発表にあたり、ゲストに個人的な招待状も送ることができるのです。
ジョナサン・レヴィエン: 英国は名高い修復家の伝統があり、照明の仕事を一緒にしてくれる車の修復家を見つけました。彼はジャガーのEタイプが専門ですが、私たちの照明のためにアルミニウムとスチールを手動で圧延してくれました。Eタイプをおもわせるセクシーな形状の照明に仕上がりました。
最近、初のセルフプロデュースによる照明コレクション『アース・トゥ・スカイ (Earth to Sky)』(写真)を発表されましたね。メーカーの仕事との違いはどのようなものでしたか?
ジョナサン・レヴィエン: セルフプロデュースの場合、何かミスをしたら、それが見えるだけでなく、その代償を払わなければなりません。
二パ・ドーシ:一方でコストに制限されずに、業者探しから発売の計画、カタログ準備まで全工程に携われます。発表にあたり、ゲストに個人的な招待状も送ることができるのです。
ジョナサン・レヴィエン: 英国は名高い修復家の伝統があり、照明の仕事を一緒にしてくれる車の修復家を見つけました。彼はジャガーのEタイプが専門ですが、私たちの照明のためにアルミニウムとスチールを手動で圧延してくれました。Eタイプをおもわせるセクシーな形状の照明に仕上がりました。
写真:Photo by Gustav Kaiser
仕事でのお二人の物理的な関係・影響はどのようなものですか?
ジョナサン・レヴィエン:ロンドンオフィスでは向かい合って座っていて、常に対話しています。二パは香港で特注したノートに絵を描いていて、私は何かを折ったり曲げたりして3D形状にしているかもしれません。『アース・トゥ・スカイ』を作ったときの過程も、直接的なやりとりによるものでした。私が紙で形を検討していたときに、二パが穴あけパンチを手に取って、それに穴をあけたのです。
仕事でのお二人の物理的な関係・影響はどのようなものですか?
ジョナサン・レヴィエン:ロンドンオフィスでは向かい合って座っていて、常に対話しています。二パは香港で特注したノートに絵を描いていて、私は何かを折ったり曲げたりして3D形状にしているかもしれません。『アース・トゥ・スカイ』を作ったときの過程も、直接的なやりとりによるものでした。私が紙で形を検討していたときに、二パが穴あけパンチを手に取って、それに穴をあけたのです。
Kvadratのために、ドーシ・レヴィエンがデザインした Maya curtain textile(写真:Kvadrat)
「北欧デザイン」という用語は、特定のルックスや材料をあらわすために頻繫に使われています。現代のグローバルなデザインの世界で「特定の国」のスタイルをあらわす用語は適切であると思いますか?
ジョナサン・レヴィエン:北欧デザインという用語は、決まり文句として見ることができますし、あるいは優れた性質を集めたもの、デザインの哲学的基礎と考えることもできると思います。
「北欧デザイン」という用語は、特定のルックスや材料をあらわすために頻繫に使われています。現代のグローバルなデザインの世界で「特定の国」のスタイルをあらわす用語は適切であると思いますか?
ジョナサン・レヴィエン:北欧デザインという用語は、決まり文句として見ることができますし、あるいは優れた性質を集めたもの、デザインの哲学的基礎と考えることもできると思います。
Hayのために、ドーシ・レヴィエンがデザインしたUchiwa chair (写真:Hay)
二パ・ドーシ:「文化的にユニークなデザインです。光と暖かい感覚に満ちたとても清澄な家。全くミニマリスト的ではないと思います。教会にある伝統的なテキスタイルは非常にカラフルです。デザイナーのアルネ・ヤコブセンを見てみても、曲線が多用されています。私たちが一緒に仕事をした北欧の企業(Hay、Kvadrat、Bolon)はどれも、非常に北欧的な現代デザインに愛着を持っていました」
ジョナサン・レヴィエン:「また北欧企業は、明確な経営手法を持っています。透明性と育成を大切にし、それがインスピレーションの源となるのです。それが私にとっての北欧デザインです」
二パ・ドーシ:「文化的にユニークなデザインです。光と暖かい感覚に満ちたとても清澄な家。全くミニマリスト的ではないと思います。教会にある伝統的なテキスタイルは非常にカラフルです。デザイナーのアルネ・ヤコブセンを見てみても、曲線が多用されています。私たちが一緒に仕事をした北欧の企業(Hay、Kvadrat、Bolon)はどれも、非常に北欧的な現代デザインに愛着を持っていました」
ジョナサン・レヴィエン:「また北欧企業は、明確な経営手法を持っています。透明性と育成を大切にし、それがインスピレーションの源となるのです。それが私にとっての北欧デザインです」
Nani Marquinaのためにドーシ・レヴィエンがデザインしたRabari rugのために(写真:Nani Marquina)
一緒に仕事をしたい北欧ブランドまたは企業がありますか?
二パ・ドーシ:「アクネストゥディオスのために服をデザインしてみたいです!公共機関とのお仕事もしてみたいです。ギャラリーの設計は私の夢です」
ジョナサン・レヴィエン:「または地方に現代的なリトリート(静養地)をデザインするのもいいですね」
建築・デザインの記事をもっと読む
一緒に仕事をしたい北欧ブランドまたは企業がありますか?
二パ・ドーシ:「アクネストゥディオスのために服をデザインしてみたいです!公共機関とのお仕事もしてみたいです。ギャラリーの設計は私の夢です」
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