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20㎡でも快適。引き出し式ベッドのある、パリ近郊のリノベーション
床面積が限られていることに加え、一風変わった“角度”の課題があったワンルーム。工夫が凝らされたデザイナーの解決策をご覧ください。
Agnès Carpentier
2020年3月17日
はじめて家を買おうと決めた若いフランス人女性が惚れ込んだのは、オープンプランのキッチンと快適なバスルームを備えた、20平米のワンルームタイプのアパルトマン。やや狭いものの、パリのすぐ北側、ラモルレイという場所にある美しい建物です。
とはいえ、部屋には全面的な改装が必要でした。リビングの角の角度が特殊で、きちんとした専門家に依頼する必要があると考えたオーナーは、Houzzでインテリアデザイナーのパトリシア・コワニャールを見つけました。コワニャールは、構造的な課題を解決して、おしゃれで心地よい空間にしたい、というオーナーの期待に応えるため、力を尽くしました。
とはいえ、部屋には全面的な改装が必要でした。リビングの角の角度が特殊で、きちんとした専門家に依頼する必要があると考えたオーナーは、Houzzでインテリアデザイナーのパトリシア・コワニャールを見つけました。コワニャールは、構造的な課題を解決して、おしゃれで心地よい空間にしたい、というオーナーの期待に応えるため、力を尽くしました。
写真:サビーヌ・セラド
どんなHouzz?
住まい手: 24歳女性
所在地:オワーズ県南部のラモルレイ(フランス)
改装:2018年
面積:20平米
インテリアデザイナー:アトモスフェール・デザインのパトリシア・コワニャール
予算:工事に40,000ユーロ(約480万円)、家具やインテリアに5,000ユーロ(約60万円)
どんなHouzz?
住まい手: 24歳女性
所在地:オワーズ県南部のラモルレイ(フランス)
改装:2018年
面積:20平米
インテリアデザイナー:アトモスフェール・デザインのパトリシア・コワニャール
予算:工事に40,000ユーロ(約480万円)、家具やインテリアに5,000ユーロ(約60万円)
インテリアデザイナー兼デコレーターのパトリシア・コワニャールは、オーナーがもっとも懸念している点を、最初の訪問で即座に見抜きました。「生活空間に入った途端、鋭い角が目に留まりました。部屋を小さく見せ、おさまりが悪くなる原因になっていたのです」
難しい形状にもかかわらず、若いオーナーが求めたのは、この小さなワンルームにリビングルームと本格的なダブルベッド、そして収納スペースが収まるようにリノベーションすること。もともとあったキッチンも改装したいということでした。さらには、「オーナーらしさ」にあふれ、オーナーと愛猫にとって居心地のいい場所を作ることも求められたのです。
インテリアデザイナー・コーディネーターを探す
難しい形状にもかかわらず、若いオーナーが求めたのは、この小さなワンルームにリビングルームと本格的なダブルベッド、そして収納スペースが収まるようにリノベーションすること。もともとあったキッチンも改装したいということでした。さらには、「オーナーらしさ」にあふれ、オーナーと愛猫にとって居心地のいい場所を作ることも求められたのです。
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工事後
オーナーは「北欧にインスパイアされた、居心地がよく、明るい禅の雰囲気」を望んでいたとコワニャールは話します。2人が選んだのは、白色と木を取り入れたソフトな外観でした。
コワニャールは色を巧みに使うことで特色を出し、開放感とウェルビーイングを演出しました。「トリックアートの技を使ったんです。玄関にとても濃い色を使ったことでリビングルームが明るくなり、相対的に広々として見えます。部屋の大きさを変えるのに、錯覚を利用するのは効果的です」
オーナーは「北欧にインスパイアされた、居心地がよく、明るい禅の雰囲気」を望んでいたとコワニャールは話します。2人が選んだのは、白色と木を取り入れたソフトな外観でした。
コワニャールは色を巧みに使うことで特色を出し、開放感とウェルビーイングを演出しました。「トリックアートの技を使ったんです。玄関にとても濃い色を使ったことでリビングルームが明るくなり、相対的に広々として見えます。部屋の大きさを変えるのに、錯覚を利用するのは効果的です」
玄関から続く廊下の床には、耐久性も考慮して木目調の磁器質タイルを採用。リビングのオーク材のフローリングは、色を明るくするために磨き、マット仕上げを施しています。
バスルームのドアは、自然光を通すガラスのドアと取り換えました。また、その幾何学的な木枠とペンダントライトのワイヤーを組み合わせることで、視覚的な要素を強調しています。
反対側にあるクローゼットのドアには、猫ドアを設置。「こうして、大きな課題だった猫用トイレの問題を解決しました。猫はオーナーの大切な友達です。猫のウェルビーイングも欠かせない条件であることはすぐにわかりました」というコワニャール。オーナーからはっきりと伝えられていなくても、あらゆるニーズを満たすことが自分の仕事だと考えているのです。
バスルームのドアは、自然光を通すガラスのドアと取り換えました。また、その幾何学的な木枠とペンダントライトのワイヤーを組み合わせることで、視覚的な要素を強調しています。
反対側にあるクローゼットのドアには、猫ドアを設置。「こうして、大きな課題だった猫用トイレの問題を解決しました。猫はオーナーの大切な友達です。猫のウェルビーイングも欠かせない条件であることはすぐにわかりました」というコワニャール。オーナーからはっきりと伝えられていなくても、あらゆるニーズを満たすことが自分の仕事だと考えているのです。
工事後
コワニャールはこの問題を、収納がほとんどなかったワンルームにたっぷりした収納スペースを作るチャンスと捉えました。「壁全体を床から天井までのユニットで覆うことを提案したとき、オーナーは狭く感じるのではないかと不安そうでしたが、私を信頼してくれました」と彼女は話します。
コワニャールが選んだのは、幾何学的なユニット式収納で、柱も隠してくれるもの。テレビを置くオーク材のニッチが中央にあり、本やインターネットルーターなど、リビングルームに欠かせないものを収納する棚が、上下を囲んでいます。
両側には、ハンガーパイプと引き出し付きのクローゼットが2つ。右側のオーク材のニッチによって、活き活きとした佇まいに仕上がっています。
コワニャールはこの問題を、収納がほとんどなかったワンルームにたっぷりした収納スペースを作るチャンスと捉えました。「壁全体を床から天井までのユニットで覆うことを提案したとき、オーナーは狭く感じるのではないかと不安そうでしたが、私を信頼してくれました」と彼女は話します。
コワニャールが選んだのは、幾何学的なユニット式収納で、柱も隠してくれるもの。テレビを置くオーク材のニッチが中央にあり、本やインターネットルーターなど、リビングルームに欠かせないものを収納する棚が、上下を囲んでいます。
両側には、ハンガーパイプと引き出し付きのクローゼットが2つ。右側のオーク材のニッチによって、活き活きとした佇まいに仕上がっています。
オーナーの要望のひとつは、リビングルームやベッド、キッチンからもテレビを観られるようすること。そこでコワニャールは、ある仕掛けを思いつきました。
「スクリーンをアームに取り付けて、ニッチからテレビを出したり、近づけたり、調整したりすることができるようにしたんです」
「スクリーンをアームに取り付けて、ニッチからテレビを出したり、近づけたり、調整したりすることができるようにしたんです」
工事前
この壁面収納の反対側の際立ったへこんだ空間は、このワンルーム最大の難点でした。
「よく目立つ鬱陶しい角度で、珍しいゆえに注意を惹きつけ、部屋を小さく見せます」とコワニャールは言います。
この壁面収納の反対側の際立ったへこんだ空間は、このワンルーム最大の難点でした。
「よく目立つ鬱陶しい角度で、珍しいゆえに注意を惹きつけ、部屋を小さく見せます」とコワニャールは言います。
工事後
「狭いスペースにさまざまな機能を組み入れる過程の中で、このへこみを“消す”必要がありました」とコワニャール。
オーナーが望んだのは、友達と一緒にくつろげる居心地の良い座り場所、魔法のように隠せる快適なダブルベッド、そしてたっぷりした収納でした。
専門家を探す
「狭いスペースにさまざまな機能を組み入れる過程の中で、このへこみを“消す”必要がありました」とコワニャール。
オーナーが望んだのは、友達と一緒にくつろげる居心地の良い座り場所、魔法のように隠せる快適なダブルベッド、そしてたっぷりした収納でした。
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スペースの形状とオーナーの要望の両方に対処する、特別仕立ての解決策が必要なのは明らかでした。
「まず、高さ60センチの木製プラットフォームから始めました。その下にあるのは、スライド式の快適なダブルベッド。プラットフォームへは、高さ20センチの3つのステップを上がります。リビングの空間は2つのパーテーションで構成されています」とコワニャールは言います。
「まず、高さ60センチの木製プラットフォームから始めました。その下にあるのは、スライド式の快適なダブルベッド。プラットフォームへは、高さ20センチの3つのステップを上がります。リビングの空間は2つのパーテーションで構成されています」とコワニャールは言います。
スラットベースとハイエンドのマットレスは引き出しのようになっています。
「引き出しには車輪がついていて、側面に取り付けたボールベアリングレール上をスライドします。課された条件は2つ。若い女性にとって使いやすいようベッドを簡単に引き出せるようにすること、そしてシーツや枕を全部置いたままでしまえることでした」とコワニャール。
「引き出しには車輪がついていて、側面に取り付けたボールベアリングレール上をスライドします。課された条件は2つ。若い女性にとって使いやすいようベッドを簡単に引き出せるようにすること、そしてシーツや枕を全部置いたままでしまえることでした」とコワニャール。
写真からわかるように、生活空間にあるものを何も動かさずにベッドを引き出すことが可能です。プラットフォームを壁の形に合わせたのはこのためでした。
コワニャールは、隅から隅まで活用し、収納スペースに変身させました。「ベッドの右側には、荷物用にもうひとつ引き出しを設けています」とコワニャール。
「私はいつも、アパルトマンは写真で美しく見せるためだけのものでなく、住むためのものであるという原則から始めます。美学のために実用性を犠牲にすべきではないのです」
「私はいつも、アパルトマンは写真で美しく見せるためだけのものでなく、住むためのものであるという原則から始めます。美学のために実用性を犠牲にすべきではないのです」
プラットフォームの足元にあるステップには、さらに収納スペースが隠されています。
パーテーションは光を遮ることなく、スムーズかつゆるやかに生活空間を区切っています。
パーテーションは光を遮ることなく、スムーズかつゆるやかに生活空間を区切っています。
プラットフォームのステップは靴の収納に。
工事後
オーナーの希望は角度を視覚的に消し去ることでしたが、家具を配置するだけでは不可能でした。ここで再び、トリックアートの技術が活用されます。濃色のペイントで内側の角の大きさを変え、左側を強調し、角に濃色を取り入れることで視界から遠ざけているのです。
インテリアデザイナーの間ではよく知られる技ですが、上手な使い方を知っている必要があります。コワニャールは、「壁に塗った三角形が目立ちすぎると、逆効果をもたらしかねません」と言います。
オーナーの希望は角度を視覚的に消し去ることでしたが、家具を配置するだけでは不可能でした。ここで再び、トリックアートの技術が活用されます。濃色のペイントで内側の角の大きさを変え、左側を強調し、角に濃色を取り入れることで視界から遠ざけているのです。
インテリアデザイナーの間ではよく知られる技ですが、上手な使い方を知っている必要があります。コワニャールは、「壁に塗った三角形が目立ちすぎると、逆効果をもたらしかねません」と言います。
さらに、インテリアも慎重に選ぶ必要がありました。
「私のおすすめをもとにオーナーが選んだのは、150センチ幅のシックな二人掛けソファ、調節可能な照明、プラットフォームの直線を相殺するような丸みを帯びたオブジェクト、くつろげるカーペット、そして快適で洒落た猫のベッドでした」とコワニャール。
「私のおすすめをもとにオーナーが選んだのは、150センチ幅のシックな二人掛けソファ、調節可能な照明、プラットフォームの直線を相殺するような丸みを帯びたオブジェクト、くつろげるカーペット、そして快適で洒落た猫のベッドでした」とコワニャール。
工事後
コワニャールは、非常に効果的な4つの要素を追加しました。新しい床と照明、改良したペニンシュラ式のカウンター、キッチンとリビングと玄関のつながりを持たせるよう考え抜かれた壁ユニットです。
コワニャールは、非常に効果的な4つの要素を追加しました。新しい床と照明、改良したペニンシュラ式のカウンター、キッチンとリビングと玄関のつながりを持たせるよう考え抜かれた壁ユニットです。
壁を青く塗るために、キッチンの白い食器棚を一時的に取り外しました。左後ろの隅にあるボイラーと暖房炉は、周りの壁と同色に塗った箱で目隠しされています。
天井を下げ、幾何学模様のタイルを新しく使ったことで、キッチンとほかの部分とを視覚的にはっきり分けています。キッチン空間を照らすのは、LEDスポットライトと黒いペンダントライトです。
もともとあったカウンターはとてもベーシックなものでした。「大きくしてオーク材のカウンターとしてデザインしなおしたところ、快適にランチを食べられるテーブルになりました。天板と側板が一体となったカウンターも、キッチンの入り口をはっきりさせています」とコワニャール。
天井を下げ、幾何学模様のタイルを新しく使ったことで、キッチンとほかの部分とを視覚的にはっきり分けています。キッチン空間を照らすのは、LEDスポットライトと黒いペンダントライトです。
もともとあったカウンターはとてもベーシックなものでした。「大きくしてオーク材のカウンターとしてデザインしなおしたところ、快適にランチを食べられるテーブルになりました。天板と側板が一体となったカウンターも、キッチンの入り口をはっきりさせています」とコワニャール。
工事後
水まわりやキッチン機器を、できるだけリビングから見えないようにするのがコワニャールの狙いでした。左側のカウンターは、シンクの目隠しになっています。蛇口は洗練された形のものに取り換えました。
冷蔵庫とオーブンを隠し、カウンターとの調和を図るため、コワニャールはまた別の技を使いました。
水まわりやキッチン機器を、できるだけリビングから見えないようにするのがコワニャールの狙いでした。左側のカウンターは、シンクの目隠しになっています。蛇口は洗練された形のものに取り換えました。
冷蔵庫とオーブンを隠し、カウンターとの調和を図るため、コワニャールはまた別の技を使いました。
「角にオーク材と白い化粧板の棚をデザインして、それからサイズを調整しました。このユニットがキッチンへの入り口となり、キッチンとリビングのインテリアに変化を持たせています。」とコワニャール。
「入り口であることが分かるよう、ニッチの背面をキッチンと同じ青にしてました。このユニットによって、プロジェクトがまさに芯の通ったものになったのです」
「入り口であることが分かるよう、ニッチの背面をキッチンと同じ青にしてました。このユニットによって、プロジェクトがまさに芯の通ったものになったのです」
このようなスペースを最大限に活用するには、綿密な分析と、家具のオーダーメイドが必要でした。そのためおよそ4万ユーロ(約480万円)まで費用がかさみましたが、高品質の素材と仕上げのおかげで、オーナーは居心地の良い我が家を長年にわたって楽しむことができるはずです。
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