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【ハイムテキスタイル2020】 環境に優しいホームテキスタイルとは?
2020年、世界最大規模のホームテキスタイル見本市・ハイムテキスタイルの大きなテーマの一つは「サステナビリティ」でした。環境問題に対する具体的な解決策が数多く提示され、注目を集めました。
Thomas Helbing
2020年1月21日
ホームテキスタイルの世界最大の見本市であるハイムテキスタイル(Heimtextil、ドイツ・フランクフルトで2020年1月7~10日開催)。50周年を迎えたこの歴史ある見本市の視線は、すでに未来へと向けられていました。中でも注目すべきは、多くの出展者がサステナブルな製品に力を入れていたこと。主催者側もサステナビリティを全面的に打ち出していました。
ハイムテキスタイル 2020の約3,000の出展者は、最新の張地、カーテン、装飾用ファブリック、そして毛布、クッションカバー、ベッドリネン、タオル、壁紙を披露しました。写真は、インドのテキスタイルメーカー、 ハフィジア(Hafizia)のブースです。サステナビリティは展示ホールのテーマでした。
5つのテーマを中心に企画された、見本市のトレンド・スペース(Trend Space)。アムステルダムのスタイルインスティテュート・アムステルダム(Stijlinstituut Amsterdam)、ロンドンに拠点を置くフランクリン・ティル(Franklin Till)、そしてデンマークの代理店スポット(SPOTT)といったトレンドとカラーの専門家で構成されるチームはここに、実際に見て回ることができるトレンドブックを作り出しました。
「テキスタイルの廃棄はファッション業界だけの問題ではありません」と、フランクリン・ティルのインサイト編集者であるエイミー・ラドクリフ(Amy Radcliffe)は、『ラジカル・マター:サステナブルな未来に向けて素材を再考慮する』と題した自身の講演で語っています。「繊維産業全体がより責任を負う必要があります。そして、自宅に取り入れたいのはどんな素材か、そしてそれらをどのように扱うのか、私たちはもっと考える必要があります。従来の態度はもはや通用しません。原材料が不足している一方で、大量の廃棄物も発生しているのです」
「テキスタイルの廃棄はファッション業界だけの問題ではありません」と、フランクリン・ティルのインサイト編集者であるエイミー・ラドクリフ(Amy Radcliffe)は、『ラジカル・マター:サステナブルな未来に向けて素材を再考慮する』と題した自身の講演で語っています。「繊維産業全体がより責任を負う必要があります。そして、自宅に取り入れたいのはどんな素材か、そしてそれらをどのように扱うのか、私たちはもっと考える必要があります。従来の態度はもはや通用しません。原材料が不足している一方で、大量の廃棄物も発生しているのです」
トレンドを概要するこの見本市では、革新的でサステナブルな繊維のマテリアル・ライブラリも展示されました。
ひとつのソリューション:廃棄物を資源にする
ロンドンのトレンドエージェンシーであるフランクリン・ティルによって企画された『未来のマテリアル・ライブラリ(Future Material Library)』では、革新的なデザイナーとメーカーたちが、未来の優れたマテリアル、代替生産システム、マテリアル・サイクルのあり方を提示しました。以下は展示の内容です。
ひとつのソリューション:廃棄物を資源にする
ロンドンのトレンドエージェンシーであるフランクリン・ティルによって企画された『未来のマテリアル・ライブラリ(Future Material Library)』では、革新的なデザイナーとメーカーたちが、未来の優れたマテリアル、代替生産システム、マテリアル・サイクルのあり方を提示しました。以下は展示の内容です。
- 果物や野菜のように成長する材料。たとえば、マライ(Malai)(写真)は、廃棄されたココナッツ水を「餌」として与えられたバクテリアによって、研究室で生産された材料です。仕上げと乾燥工程を経て、破れにくい紙または合成皮革に似た一種のバイオパルプが得られます。
- フェーバー・フューチャーズ(Faber Futures)は、天然の色素と無毒の化学物質を生成する細菌を使用して、写真のような、汚染の少ない布地の染料を作成しています。
- 食品廃棄物から作られた新しい材料もありました。オレンジ・ファイバー(Orange Fiber)は、オレンジジュースの搾りかすから紡がれた生地を生産しています。これまでのところ、衣類の布地にしか使用されていませんが、繊細なカーテンやその他の装飾用ファブリックにも使用できます。
- オーストリアのメーカー、オーガノイド(Organoid)は、干し草、野生の花、コケを極薄に圧縮し、亜麻不織布、チップボード、接着フィルムなどの基材に貼り付けた素材で、文字どおり家に自然をもたらします。干し草の壁紙は健康的で、視覚的および触覚的な体験だけでなく、実際に野生の花や干し草の匂いがする嗅覚的な体験も提供します。 「表面の香りの持続時間は、原材料の影響だけでなく、使用場所、つまり寝室とショッピングセンターの違い、および個人的、主観的な感覚にも大きく影響されます。ひとの鼻はすべて異なるので」とCEOのマーティン・ジェハート(Martin Jehart)は語ります。「強い香りのする表面は、数ヶ月から1年の間、香りを保持します。残念ながら、それ以上具体的にお話しすることはできません」
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スペインの繊維メーカー、ヒスパノ・テクス(Hispano Tex)のブースでも見られるように、ハイムテキスタイルにはリサイクルプラスチックから作られた繊維と布地が多く見られました。
リサイクルも良いけれど、無駄をなくす方がもっと良い
多くの製造業者は環境問題に目覚めているようです。ハイムテキスタイルを訪れた人々は、リサイクルされたペットボトルと繊維くずから作られた材料が延々と展示されるのを目の当たりにしました。新しい製品は廃棄物から作られるため、限られた天然資源を守ることができます。ただし、廃棄物を繊維に変えるには化学物質と大量のエネルギーが必要な場合があるため、必ずしも環境に優しいとは限りません。
ドイツ・クレーフェルトにあるメーカー、デコ・デザインフュルス(Deco DesignFürus)の手法は異なります。会社のオーナーでテキスタイルの専門家であるマヌエル・シュヴァイツァー(Manuel Schweizer)は、通常のリサイクルプロセスを超える方法を7年間研究しました。そしてついに、製品の素材が寿命の終わりに再利用されるため廃棄物がまったく出ないという「揺りかごから揺りかごまで」の原則を発見したのです。
リサイクルも良いけれど、無駄をなくす方がもっと良い
多くの製造業者は環境問題に目覚めているようです。ハイムテキスタイルを訪れた人々は、リサイクルされたペットボトルと繊維くずから作られた材料が延々と展示されるのを目の当たりにしました。新しい製品は廃棄物から作られるため、限られた天然資源を守ることができます。ただし、廃棄物を繊維に変えるには化学物質と大量のエネルギーが必要な場合があるため、必ずしも環境に優しいとは限りません。
ドイツ・クレーフェルトにあるメーカー、デコ・デザインフュルス(Deco DesignFürus)の手法は異なります。会社のオーナーでテキスタイルの専門家であるマヌエル・シュヴァイツァー(Manuel Schweizer)は、通常のリサイクルプロセスを超える方法を7年間研究しました。そしてついに、製品の素材が寿命の終わりに再利用されるため廃棄物がまったく出ないという「揺りかごから揺りかごまで」の原則を発見したのです。
デコ・デザインフリュスは、オーシャンセーフ(OceanSafe)コレクションでクレイドル・トゥ・クレイドル認証のゴールド基準を取得しました。これらの認証の資格は独立した評価者によって審査され、製品および製造サイクル全体が調べられるため、非常に高い要件が求められます。
ハイムテキスタイルでは、デコ・デザインフリュスによるオーシャンセーフ・レーベルのベッドリネン、タオル、カーテン、装飾用ファブリックの小さなコレクションを展示しました。これらの商品はオーガニックであるだけでなく、堆肥化可能です。使用後にゴミ箱に捨てられたり、苦労してリサイクルされたりすることはありません。代わりに、微生物によってバイオマスに戻されるのです。商品を土壌や海の中に置いた場合も、同じことが自然に起こります。これにより、プラスチックの長い半減期の問題を解決することができます。同じレーベルに使用されている、石油から製造された合成繊維でさえ、この生物学的プロセスで分解することができます。
さらに同社は現在、食品廃棄物を使用して、新しいカーテンやベッドカバーを作っています。「最初に良い『成分』だけが入ってくると、最後には良い廃棄物だけが出てきくるのです」とシュワイザーは話します。
ハイムテキスタイルでは、デコ・デザインフリュスによるオーシャンセーフ・レーベルのベッドリネン、タオル、カーテン、装飾用ファブリックの小さなコレクションを展示しました。これらの商品はオーガニックであるだけでなく、堆肥化可能です。使用後にゴミ箱に捨てられたり、苦労してリサイクルされたりすることはありません。代わりに、微生物によってバイオマスに戻されるのです。商品を土壌や海の中に置いた場合も、同じことが自然に起こります。これにより、プラスチックの長い半減期の問題を解決することができます。同じレーベルに使用されている、石油から製造された合成繊維でさえ、この生物学的プロセスで分解することができます。
さらに同社は現在、食品廃棄物を使用して、新しいカーテンやベッドカバーを作っています。「最初に良い『成分』だけが入ってくると、最後には良い廃棄物だけが出てきくるのです」とシュワイザーは話します。
家具やインテリアのCO2調整価格?
スポットのトレンド研究員兼CEOであるアーニャ・ビスガード・ゲーデ (Anja Bisgaard Gaede)は、ホームテキスタイルに関するレクチャー『気候変動に関連する消費主義』において、グリーン・ツァイトガイスト(緑の時代精神)が次の10年のムードを決めると示唆しています。
「確かに、消費者は自らの環境について再考し、より責任感を持つようになっています。このことに対し、メーカーは革新的で環境に優しいマテリアルで応えています」と彼女は話します。「しかし、二酸化炭素排出量に基づいて製品の価格を決めれば、より論理的ではないでしょうか?」環境汚染が少ない、または全くない製品は、環境に有害な製品よりも安くあるべきです。残念ながら、現在では逆のことが多いですが。
したがって、家具やホームアクセサリーにCO2調整価格のタグを付けることができる日がくるまでは、まずは家庭内の生地のサステナビリティにもっと注意を払いたいものです。そう、環境のために。
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スポットのトレンド研究員兼CEOであるアーニャ・ビスガード・ゲーデ (Anja Bisgaard Gaede)は、ホームテキスタイルに関するレクチャー『気候変動に関連する消費主義』において、グリーン・ツァイトガイスト(緑の時代精神)が次の10年のムードを決めると示唆しています。
「確かに、消費者は自らの環境について再考し、より責任感を持つようになっています。このことに対し、メーカーは革新的で環境に優しいマテリアルで応えています」と彼女は話します。「しかし、二酸化炭素排出量に基づいて製品の価格を決めれば、より論理的ではないでしょうか?」環境汚染が少ない、または全くない製品は、環境に有害な製品よりも安くあるべきです。残念ながら、現在では逆のことが多いですが。
したがって、家具やホームアクセサリーにCO2調整価格のタグを付けることができる日がくるまでは、まずは家庭内の生地のサステナビリティにもっと注意を払いたいものです。そう、環境のために。
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