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長屋とは?その魅力と特徴、間違いやすいポイント
落語で江戸の庶民が住んでいるイメージのある「長屋」という建物。現代の長屋とは、どんな建物なのかをご紹介します。

安井俊夫
2021年1月20日
天工舎一級建築士事務所主宰。神奈川県小田原市に事務所を構え、住宅や店舗などの設計監理業務を行っています。書評やコラムなども執筆中。
長屋とは複数の住戸が一つの建物の中で、壁を共有する形で存在する集合住宅の一つです。共同住宅と似ていますが、似て非なるもの。昔の長屋は平屋がほとんどでしたが、今では2階建て以上の建物が主流となっています。
建築基準法で「長屋」と「共同住宅」とは別のもの
建築基準法でも、「長屋」という建物が定義付けられていますが、それは「共同住宅」とは違う建物として扱われています。「共同住宅」とは、二以上の住戸が階段や廊下、エレベーターなどを共用して利用する建物を指し、各住戸に出入りする際に他者と共用して使う空間がある建物のことをいいます。
つまり他者が共同して使用する空間がある建物が「共同住宅」。皆さんが「マンション」と呼ぶ建物のほとんどが、「共同住宅」だと考えても良いでしょう。共同住宅は不特定多数が使用する特殊建築物に該当するため、敷地内の通路幅や避難路の確保、消防設備の設置といった具合に数多くの規制を受けます。
建築基準法でも、「長屋」という建物が定義付けられていますが、それは「共同住宅」とは違う建物として扱われています。「共同住宅」とは、二以上の住戸が階段や廊下、エレベーターなどを共用して利用する建物を指し、各住戸に出入りする際に他者と共用して使う空間がある建物のことをいいます。
つまり他者が共同して使用する空間がある建物が「共同住宅」。皆さんが「マンション」と呼ぶ建物のほとんどが、「共同住宅」だと考えても良いでしょう。共同住宅は不特定多数が使用する特殊建築物に該当するため、敷地内の通路幅や避難路の確保、消防設備の設置といった具合に数多くの規制を受けます。
いっぽう「長屋」は、界壁と呼ばれる壁あるいは床(天井部分)を共用するだけで、それ以外の空間を共用することはありません。またそれぞれの住戸には、外部から直接出入りできることが必要になります。
そのため、長屋は特殊建築物には該当せず、最低限の安全を確保するための通路幅や、隣接する住戸からの火災の延焼を防げる配慮が成されていれば良く、共同住宅に比べて規制が多くありません。
そのため、長屋は特殊建築物には該当せず、最低限の安全を確保するための通路幅や、隣接する住戸からの火災の延焼を防げる配慮が成されていれば良く、共同住宅に比べて規制が多くありません。
また江戸時代の長屋と違い、現在は2階建て3階建ての長屋が、数多く存在します。最近では「長屋」と呼ばずに、「テラスハウス」とか「タウンハウス」と呼ぶことが多いので、「それなら知ってる!」という方もいるかもしれませんね。
参考までに補足すれば、最近人気の「シェアハウス」と呼ばれる建物は、この二つの建物用途のどちらにも該当せず、「寄宿舎」として扱われます。建物用途が違う事で、さまざまな基準が変わってくるので注意が必要です。
参考までに補足すれば、最近人気の「シェアハウス」と呼ばれる建物は、この二つの建物用途のどちらにも該当せず、「寄宿舎」として扱われます。建物用途が違う事で、さまざまな基準が変わってくるので注意が必要です。
長屋を建てるメリットとデメリット
長屋を建てる大きなメリットの一つに、「共同住宅に比べて法的規制が少ない」ということがあります。共同住宅では廊下や階段といった共用スペースの確保が必要となり、それらはすべて工事費のアップに繋がります。賃貸住宅を計画する場合には、工事費の負担が家賃に影響するため、入居者を探すことが難しくなるかもしれません。また災害時に安全に避難するための通路幅の確保が求められますが、敷地面積に余裕が無い場合には、計画建物に影響を与えることとなるでしょう。
長屋を建てる大きなメリットの一つに、「共同住宅に比べて法的規制が少ない」ということがあります。共同住宅では廊下や階段といった共用スペースの確保が必要となり、それらはすべて工事費のアップに繋がります。賃貸住宅を計画する場合には、工事費の負担が家賃に影響するため、入居者を探すことが難しくなるかもしれません。また災害時に安全に避難するための通路幅の確保が求められますが、敷地面積に余裕が無い場合には、計画建物に影響を与えることとなるでしょう。
長屋の場合にも法的な規制はありますが、共同住宅より緩いので建設コストを抑えることに繋がります。各住戸の玄関から道路へ出られることが求められますが、それが適わない場合でも、共同住宅と比較しても求められる敷地内の通路幅は狭く、建物計画が有利に進められます。
間取りの特徴
各住戸には共用スペースを通らずに出入りすることが前提の長屋は、当然ですが玄関が1階に設けられます。それは2階建て、3階建ての長屋でも同じです。つまり気分は一戸建て住宅に限りなく近いのです。専用の庭を持つことも出来れば、玄関前に専用の駐車場を設けることも可能です。限りなく一戸建て住宅に近い建物が、隣の家と壁だけを共有して建てることが可能となります。
また少し間取りを工夫すれば、必ずしも同じ間取りを並べる必要も無くなります。例えばAの住戸は平屋とし、Bの住戸は平屋プラスAの住戸の上に、2階を載せた変形な間取りを造ることも可能となります。注意すべき点は出入口を分け、共用部分を造らないことです。
各住戸には共用スペースを通らずに出入りすることが前提の長屋は、当然ですが玄関が1階に設けられます。それは2階建て、3階建ての長屋でも同じです。つまり気分は一戸建て住宅に限りなく近いのです。専用の庭を持つことも出来れば、玄関前に専用の駐車場を設けることも可能です。限りなく一戸建て住宅に近い建物が、隣の家と壁だけを共有して建てることが可能となります。
また少し間取りを工夫すれば、必ずしも同じ間取りを並べる必要も無くなります。例えばAの住戸は平屋とし、Bの住戸は平屋プラスAの住戸の上に、2階を載せた変形な間取りを造ることも可能となります。注意すべき点は出入口を分け、共用部分を造らないことです。
二所帯住宅のつもりが「長屋」なのかも?
二所帯住宅と呼ばれる「一戸建て住宅」がありますが、間取りによっては「長屋」や「共同住宅」と判断されてしまうケースがあります。例えば玄関が二つあり、キッチンや浴室が各住戸に設けられており、かつ建物内部で行き来することが出来ない二所帯住宅の場合には「一戸建て住宅」として認められずに、「長屋」として判断されます。
また一つの玄関を二所帯で共用しつつ、かつ各住戸の内部から施錠できるような場合には「共同住宅」と判断されてしまうかもしれません。長屋や共同住宅と判断された場合には、住宅に比べて法規制が厳しくなり、住宅用融資の対象外となるケースもあるので注意が必要です。
二所帯住宅と呼ばれる「一戸建て住宅」がありますが、間取りによっては「長屋」や「共同住宅」と判断されてしまうケースがあります。例えば玄関が二つあり、キッチンや浴室が各住戸に設けられており、かつ建物内部で行き来することが出来ない二所帯住宅の場合には「一戸建て住宅」として認められずに、「長屋」として判断されます。
また一つの玄関を二所帯で共用しつつ、かつ各住戸の内部から施錠できるような場合には「共同住宅」と判断されてしまうかもしれません。長屋や共同住宅と判断された場合には、住宅に比べて法規制が厳しくなり、住宅用融資の対象外となるケースもあるので注意が必要です。
長屋なら10㎡以下の増築でも申請は必要
以前、二所帯住宅のリフォーム計画のご相談を、いただいたいことがありました。親所帯に10㎡以下の増築を行いつつ、室内の模様替えも一緒に行いたいというご希望でした。増築面積の10㎡以下とは、確認申請の必要が無い広さを考慮してのことだったのですが、建物の確認通知書を見ると、建物用途が「長屋」と記載されており、その場合には10㎡以下の増築であっても申請が必要となります。その計画は紆余曲折の末、計画を断念されました。(防火地域の場合には一戸建て住宅でも申請が必要)
高齢化が進み、親と同居するための二所帯住宅を考える方も増えてくるかもしれませんが、二所帯のライフスタイルや生活パターンを十分に検討した上で建物を計画しないと、思わぬ勘違いからトラブルが生じることがあるかもしれません。建築家とよくご相談し、長屋・共同住宅・一戸建て住宅の用途を間違えないように、ご注意下さい。
建築家を探す
以前、二所帯住宅のリフォーム計画のご相談を、いただいたいことがありました。親所帯に10㎡以下の増築を行いつつ、室内の模様替えも一緒に行いたいというご希望でした。増築面積の10㎡以下とは、確認申請の必要が無い広さを考慮してのことだったのですが、建物の確認通知書を見ると、建物用途が「長屋」と記載されており、その場合には10㎡以下の増築であっても申請が必要となります。その計画は紆余曲折の末、計画を断念されました。(防火地域の場合には一戸建て住宅でも申請が必要)
高齢化が進み、親と同居するための二所帯住宅を考える方も増えてくるかもしれませんが、二所帯のライフスタイルや生活パターンを十分に検討した上で建物を計画しないと、思わぬ勘違いからトラブルが生じることがあるかもしれません。建築家とよくご相談し、長屋・共同住宅・一戸建て住宅の用途を間違えないように、ご注意下さい。
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