築70年の古民家を減築リノベーション。田の字型の間取りを一新し、明るく快適な住まいに
受け継がれてきた良質な材を残しつつ、現在の生活スタイルに合わせた改築がされた家には多くの友人たちが集まります。
永井理恵子
2020年2月17日
富士山の南麓と箱根の外輪山に囲まれた静岡県御殿場市。オーナーの勝又靖雄さんは、地域の特産品である米やプチトマトを栽培する専業農家。彩子さんと結婚してからも変わらず、生まれ育った家に暮らし続けてきました。
戦後に建てられた家は、築およそ70年。間取りは昔ながらの田の字型で、最も日の光が差し込む東〜南に客間が、西〜北に居間や台所、寝室がありました。家族が集う居間は家の中央にあり「昼間でも暗く、冬はとにかく寒かった」と彩子さん。子ども達が成長するにつれ、一家団らんの時間を明るく快適に過ごしたいと考えた夫妻は、祖父から父、そして靖雄さんと代々住み継いできた家をリノベーションすることに決めました。
戦後に建てられた家は、築およそ70年。間取りは昔ながらの田の字型で、最も日の光が差し込む東〜南に客間が、西〜北に居間や台所、寝室がありました。家族が集う居間は家の中央にあり「昼間でも暗く、冬はとにかく寒かった」と彩子さん。子ども達が成長するにつれ、一家団らんの時間を明るく快適に過ごしたいと考えた夫妻は、祖父から父、そして靖雄さんと代々住み継いできた家をリノベーションすることに決めました。
どんなHouzz?
所在地:静岡県御殿場市
住まい手:勝又靖雄さん、彩子さん、長男(7歳)、長女(5歳)、次男(3歳)
敷地面積:約1487.44㎡
延床面積:164.61㎡
規模:LDK、主寝室、子供室、バス、トイレ、洗面所、土間、パントリー
構造:木造軸組工法
竣工年:2019年
設計:バークレーの風一級建築士事務所の参河基(みかわもとい)さん
施工:バークレーの風株式会社
設計を依頼したのは、バークレーの風一級建築士事務所の参河基さん。アトリエに併設のカフェを、夫妻が訪れたのがきっかけでした。元々は和食屋だった建物をリノベーションした店内には木や漆喰、鉄が使われ温もりがあり、夫妻が思い描く家のイメージそのものだったと言います。
所在地:静岡県御殿場市
住まい手:勝又靖雄さん、彩子さん、長男(7歳)、長女(5歳)、次男(3歳)
敷地面積:約1487.44㎡
延床面積:164.61㎡
規模:LDK、主寝室、子供室、バス、トイレ、洗面所、土間、パントリー
構造:木造軸組工法
竣工年:2019年
設計:バークレーの風一級建築士事務所の参河基(みかわもとい)さん
施工:バークレーの風株式会社
設計を依頼したのは、バークレーの風一級建築士事務所の参河基さん。アトリエに併設のカフェを、夫妻が訪れたのがきっかけでした。元々は和食屋だった建物をリノベーションした店内には木や漆喰、鉄が使われ温もりがあり、夫妻が思い描く家のイメージそのものだったと言います。
玄関に向かって左手には、L字のデッキテラス。元々室内にあった縁側を減築し、縁側と客間を仕切っていた建具を壁に替えました。
氷点下になることが多い御殿場の冬の朝に対応するため、気密性と断熱性能を上げたかった、と参河さん。庭に面した以前の縁側は一面ガラス窓で、冬の寒さを家の中に引き込む要因でした。
「冬を暖かく過ごせる家に」という夫妻の要望に応えるため、新たに建てた壁と床にグラスウールの断熱材を施工しました。基礎は束立ち。床下から室内へ湿気が上がるのを抑えるため、地面の上に防湿フィルムを敷いて砕石で押さえ、床下地の根太間に断熱材を入れてさらに気密フィルムを敷き、床を張りました。
氷点下になることが多い御殿場の冬の朝に対応するため、気密性と断熱性能を上げたかった、と参河さん。庭に面した以前の縁側は一面ガラス窓で、冬の寒さを家の中に引き込む要因でした。
「冬を暖かく過ごせる家に」という夫妻の要望に応えるため、新たに建てた壁と床にグラスウールの断熱材を施工しました。基礎は束立ち。床下から室内へ湿気が上がるのを抑えるため、地面の上に防湿フィルムを敷いて砕石で押さえ、床下地の根太間に断熱材を入れてさらに気密フィルムを敷き、床を張りました。
工事に先駆けて家の中の壁や天井を取り去ったところ、増築や改修の跡が見つかりました。玄関の引き戸は、この家の趣を大切にしたくて、竣工した当時の建具を再活用することに。水洗いしてオイルで仕上げ、鍵を交換。葺き替えられていた銅板の屋根は、年月に育まれた緑青が美しく、そのまま残しました。
建築家を探す
建築家を探す
玄関から室内へ。大黒柱、上がり框、床、式台、右手にある屋根裏へ続く階段もすべてケヤキ。式台の下にある引き出し収納もケヤキで、きちんと手入れされており、靖雄さんの両親や祖父母が、この家を大切に暮らしてきたのがよくわかります。左手の引き戸は、LDKにつながります。
ペンダントライトは、参河さんが選んだアンティーク。リノベーションの着工前に見つけ、この家の玄関に合うだろうと予想し購入していたもの。実際に取りつけた姿を見て夫妻も気に入っています。
ペンダントライトは、参河さんが選んだアンティーク。リノベーションの着工前に見つけ、この家の玄関に合うだろうと予想し購入していたもの。実際に取りつけた姿を見て夫妻も気に入っています。
広い土間は元々コンクリートでしたが、上がり框との段差が大きかったので上からさらにコンクリートを打ち、高さを上げました。土間の奥に穴があいている箇所があったので、補修もできました。
向かって左の壁は、新たに建てたもの。鉄製の柱を新たに施工し、壁を作りました。
向かって左の壁は、新たに建てたもの。鉄製の柱を新たに施工し、壁を作りました。
壁の向こうは、靖雄さんが趣味をじっくり楽しむ空間。フライフィッシング用のインジケーターを作ったり、道具のメンテナンスをしたり、一人で過ごす時間を満喫しています。
LDKと玄関の間の壁は、年代物の建具の隙間から入ってくる外気を堰き止めるため、新たに設けました。はめ込んだガラスは、取り寄せたサンプルの中から、彩子さんが選びました。波のような美しい模様が気に入り決めたそう。引き戸は、昔からある建具を再利用。造りがしっかりしていて美しい格子戸は、すべてLDKに面する出入り口に設置しました。
リビングとダイニングは、二間続きの客間だった場所。リノベーションするにあたり、南東向きの家の中で一番自然光が入る場所を、LDKにしました。
天井は、今回のリノベーションで立派な梁や桁をあらわしにして吹き抜けに。以前の天井の上には屋根裏部屋があり、物入れとして使用していました。
天井は、今回のリノベーションで立派な梁や桁をあらわしにして吹き抜けに。以前の天井の上には屋根裏部屋があり、物入れとして使用していました。
屋根裏部屋を取り払い、吹き抜けになった天井。天井上部に和壁を建て、新たにスギの木戸を設えました。夏、木戸を外せば風が通り、冬には木戸で室内の熱を閉じ込めます。
冬の間、家の中を温めるのは、長野県に暮らすイエルカ・ワインさんが作る薪ストーブ「大梅」。イエルカさんの工房を、夫妻と参河さんが連れ立って訪問し、選びました。厚い鉄板で作られた薪ストーブは丈夫で、オーブン付き。家全体をしっかりと温めてくれます。
家族5人が囲むダイニングテーブルは、ホワイトオークの一枚板に脚を取り付けて造作。椅子は、参河さんに紹介されて気に入ったERCOLや、古道具の中から見つけたもの。梁の上に新たに設けた高窓から自然光が降り注ぎます。壁は漆喰。
ダイニングテーブルの脚は、スチール製。漆を吹き付け塗装してあり「光が当たると質感がきれいで、とても気に入っています」と靖雄さん。脚先には、テーブルと同じホワイトオークを取り付けました。
交通量の多い道路に面する南向きのデッキテラスには、目隠しを兼ねてルーバーの塀を設けました。軒天を見上げれば、縁側と外との境に、建具が入っていた痕跡が見えます。訪ねてくる友人たちとBBQをしたり、七輪を囲んで一杯やったり、憩いの場となっています。
キッチンは、長野県の家具工房HUMPにオーダー。当初は長さ2.7mのアイランドキッチンを予定していましたが、工房で実物を見て、長さ3.6mのペニンシュラキッチンに変更しました。2.4mあるダイニングテーブルと合わせると、長さ6m。親戚や友達が多く、日々来客のある勝又家では、大勢で食卓を囲む機会が多くあるそう。広いLDK+デッキテラスは大勢で集まっても銘々が好きな場所でくつろげます。
キッチンのペニンシュラは栗の木で作られています。前板は木目を通した美しい仕上がり。ガスコンロにはHARMANのプラス・ドゥを選びました。
パントリーは、元々縁側だった場所。パントリーとキッチンは回遊できる造りです。収納するものの大きさを元に彩子さんが棚板の高さを決めて造作してもらったので、スッキリと使えます。
パントリーの奥には以前から使っている収納棚を置き、炊飯ジャーなどの家電置き場に。空いたスペースに天板を取り付け、彩子さんがホッと一息つく空間に仕立てました。
LDKの裏手は、子ども部屋や主寝室が並びます。子ども部屋や主寝室の板戸は、元々使っていたものをそのまま残しました。廊下は床下収納になっており、手を加えず、そのまま活用しています。
リビングからも、廊下からも出入りできる和室には、神棚や仏壇が。毎朝、子ども達の登園や通学の支度にも利用しています。
主寝室の高窓からは、リビングを介して光が差し込みます。天井や梁はそのまま。床板を張り替え、壁を漆喰で仕上げました。
主寝室の向かいにある子ども部屋。以前の天井を取り外したら天窓が出現しました。靖雄さんですらその存在を知らなかった天窓からの光が、漆喰の塗り跡をやさしく照らします。
漆喰の壁は、靖雄さんたちが、左官に教えてもらいながら塗った愛着ある空間。左手前の壁は、子ども達が塗ったそう。
漆喰の壁は、靖雄さんたちが、左官に教えてもらいながら塗った愛着ある空間。左手前の壁は、子ども達が塗ったそう。
廊下の奥に、洗面台とトイレ。右手の引き戸の先はパウダールームです。
グレーのタイルで仕上げた洗面台は、彩子さんの要望。トイレは、元々勝手口だった場所。ドアは木枠だけ新調し、以前使っていた木戸の良好な部分を再使用しました。
グレーのタイルで仕上げた洗面台は、彩子さんの要望。トイレは、元々勝手口だった場所。ドアは木枠だけ新調し、以前使っていた木戸の良好な部分を再使用しました。
「三代で住み継いできた家の間取りを一新してしまうので最初は緊張しました。しかし、靖雄さんたちが家族でのびのび暮らせる家を作れたら最高だと思ったんです」と参河さん。
「親から受け継ぎ、自分たちの意見を反映したリノベーションを終えたことで、この家は自分たち家族の家なんだという実感が湧いてきました」と彩子さんが話すように、リノベーションによって、生まれ育った家で家族が1つになって暮らしたいという靖雄さんの願いが叶いました。
日本のHouzzツアーをもっと読む
「親から受け継ぎ、自分たちの意見を反映したリノベーションを終えたことで、この家は自分たち家族の家なんだという実感が湧いてきました」と彩子さんが話すように、リノベーションによって、生まれ育った家で家族が1つになって暮らしたいという靖雄さんの願いが叶いました。
日本のHouzzツアーをもっと読む
おすすめの記事
Houzzがきっかけの家(国内)
ジョージア・オキーフ邸をイメージした、4人家族の暮らしにフィットする家
文/永井理恵子
Houzzで見つけた建築家に依頼して、予算内で夢の住まいを実現!通りかかった人に「素敵ですね!」とよく褒められる、シンプルながらスタイリッシュなお宅です。
続きを読む
日本の家
ゲストへの思いやりの心をしつらえた、離れのある家
文/杉田真理子
東京から訪れるゲストのため、母屋のほかにゲストルームの離れをしつらえた住まい。伝統的な日本家屋の美しさが、自然の中で引き立つ家です。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(国内)
家族で自然を満喫。極上の浴室と広々としたデッキを備えた軽井沢の別荘
3人の子供たちの成長期に家族で軽井沢ライフを楽しむため、オーナーは時間のかかる土地探し&新築計画を見直し、中古物件を購入。Houzzで見つけた長野県の建築家に改修を依頼して、飛躍的に自然とのつながりが感じられる住まいに変身させました。
続きを読む
リノベーション
建築家がゲストハウスに再考したガレージ
多目的スペースへと作り替えられた空間とカーポートの追加によって、スタイリッシュにアップデートされた、歴史あるニューイングランド様式の住宅をご紹介します。
続きを読む
世界の家
ビルバオのグランビア通りに佇む、1950年代のクラシカルなフラットハウス
既存のモールディングが美しい85平方メートルのリビング、ダイニング、ホームオフィスをもつ、エレガントなフラットをご紹介します。
続きを読む
古い杢を洗ってオイル、楽しめる施工ですね。
素晴らしいリノベーション