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次に注目されるのは版築の壁?
版築には、自然のあたたかみと美しさがあるだけでなく、サステナブルであり、耐久性・耐火性にも優れているという利点があります。
Rebecca Gross
2019年12月22日
“版築”は何千年も前から行われている施工方法です。どこまでも続く中国の「万里の長城」、壮大なモロッコの「カスバ」、魅惑的なスペインの「アルハンブラ宮殿」にも使用されています。現代建築にも多く見られるようになっている版築は、住宅用のサステナブルな建築資材を使った壁として、今再び注目を浴びています。
版築壁が新たに興味を向けられるようになった理由は、そのサーマルマス(蓄熱体)、強度、耐久性、そして視覚的な印象にあります。版築壁のある住宅には自然なあたたかみや美しさが感じられ、大地や自然環境とのつながりを深めてくれます。今回は、住宅建築における版築壁の基本についてご紹介しましょう。
版築壁が新たに興味を向けられるようになった理由は、そのサーマルマス(蓄熱体)、強度、耐久性、そして視覚的な印象にあります。版築壁のある住宅には自然なあたたかみや美しさが感じられ、大地や自然環境とのつながりを深めてくれます。今回は、住宅建築における版築壁の基本についてご紹介しましょう。
版築とは?
版築壁は、砂利、砂、シルト、粘土などを混ぜたものを、平らな板と板の間や型枠に入れて、固めて施工されます。型枠を外せば、版築壁の完成。主に現場で行われる施工方法です。
従来、混合物を固めて圧縮するのには木杭が使われていましたが、現在は機械化されています。配管設備とコンセントは、壁の建設時に内部に配置されます。
版築壁は、砂利、砂、シルト、粘土などを混ぜたものを、平らな板と板の間や型枠に入れて、固めて施工されます。型枠を外せば、版築壁の完成。主に現場で行われる施工方法です。
従来、混合物を固めて圧縮するのには木杭が使われていましたが、現在は機械化されています。配管設備とコンセントは、壁の建設時に内部に配置されます。
安定処理をした版築壁
オーストラリアにある現代の版築壁のほとんどは、安定処理を施した版築です。つまり、強度と耐久性を高めるために、混合物に少量のセメントを加えているのです。さらに、通常は耐用期間を延ばすために、通気性のあるシーラーでコーティングされています。
安定処理版築壁は、外壁の場合は300mm厚、屋内用の場合は200~300mm厚であることが一般的です。
オーストラリアにある現代の版築壁のほとんどは、安定処理を施した版築です。つまり、強度と耐久性を高めるために、混合物に少量のセメントを加えているのです。さらに、通常は耐用期間を延ばすために、通気性のあるシーラーでコーティングされています。
安定処理版築壁は、外壁の場合は300mm厚、屋内用の場合は200~300mm厚であることが一般的です。
ビクトリア州のモーニントン半島にあるこちらの住宅に取り入れられているのは、仕上げを施していない300mm厚の安定処理版築壁です。この壁が住宅の脊柱として機能し、インパクトのある視覚的要素だけでなく、季節を問わず快適で安定した室温の維持を助ける、サーマルマスとなっています。
快適な室内温度を維持できるサステナブルな技術、「サーマルマス」とは?
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断熱効果のある安定化版築
版築の断熱性能は限られています。しかし、400mm以上の厚さがあり、内部に50mm厚の発泡スチロールが入っている版築壁であれば、高い“R値”を実現することが可能とされ、外壁によく使われています。R値とは素材の熱抵抗値のこと。R値が高いほど、断熱効果は高くなるのです。
版築の断熱性能は限られています。しかし、400mm以上の厚さがあり、内部に50mm厚の発泡スチロールが入っている版築壁であれば、高い“R値”を実現することが可能とされ、外壁によく使われています。R値とは素材の熱抵抗値のこと。R値が高いほど、断熱効果は高くなるのです。
版築壁の外観
混合物に使われている天然素材によって版築壁の色は変わります。素材は地元で採れるものを使うことが多く、それによって、農村部では建物が地域の環境になじみやすくなります。版築壁には、クリーム色、サンド、ピーチ、淡い褐色、グレーから深紅色まで、さまざまな色があります。
混合物に使われている天然素材によって版築壁の色は変わります。素材は地元で採れるものを使うことが多く、それによって、農村部では建物が地域の環境になじみやすくなります。版築壁には、クリーム色、サンド、ピーチ、淡い褐色、グレーから深紅色まで、さまざまな色があります。
こちらの12戸の共同住宅は、西オーストラリア州にある砂丘を掘ってつくられています。長さ230mの版築壁には、地元で採れる土と砂利が使われているそう。鉄分が豊富な砂土は地元の粘土盤から取り出したもの。小石や砂利は、河床から切り出したものなのだそうです。その結果、風景にしっくりなじむ色味に仕上がりました。
層を1つずつ重ねて打ち固める工程によりできる水平や層状のラインを、個性としてあえて取り入れることもできますし、すべて消してしまうこともできます。さらに、天然の酸化鉄顔料を加えることで好みの色に変えたり、特別な効果を生むために石を露出させたり、組み込んだりすることも可能です。型枠の質感や形状も、最終形に影響を与えます。
コンテンポラリースタイルのリビング・居間の写真をもっと見る
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版築壁のメリット
ただし、壁によっては住宅に熱がこもりやすくなるため、熱帯地方では版築の使用はお勧めしません。
- 優れたサーマルマス
ただし、壁によっては住宅に熱がこもりやすくなるため、熱帯地方では版築の使用はお勧めしません。
- 耐火性
- メンテナンス不要
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