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桜の眺めを取り込む、趣のあるレトロモダンな家
桜の絶景を独り占めできるピクチャーウィンドウが圧巻の家。オーナー夫妻が大切にしてきたアンティーク家具や雑貨も、新しく作られた空間と共存しています。
Miki Anzai
2019年12月15日
神奈川県横須賀市の湘南鷹取地区。みごとな桜のトンネルが出来ることで知られる住宅街に建つこの家は、満開の桜を愛でることを第一に計画された。二階の二つの部屋は、まるで巨大な出窓のように、桜が眼前に迫る距離までせり出ている。期待を膨らませて玄関から足を踏み入れると、そのモダンでスタイリッシュな外観からは想像もしなかった、なんともノスタルジックで落ち着いた世界が広がっていた。
どんなHouzz?
所在地:神奈川県横須賀市
住まい手:夫妻と2歳の息子
種別:新築
敷地面積: 214.82㎡
延床面積:121.07㎡
構造:木造
竣工年:2018年
設計: 一級建築士事務所 秋山立花
施工:ウスイホーム株式会社
土地代:約2900万円
設計・工事費:約4000万円
撮影:鳥村鋼一写真事務所
横浜市中区日ノ出町に暮らしていたオーナー夫妻。息子さんの誕生を機に「もっと自然の中で子どもを育てたい」と考えていたところ、不動産業を営む友人から強く勧められ、訪れたこの地に「一目惚れ」をしたという。
そして「まずは桜ありき」のスタンスで、一級建築士事務所 秋山立花の秋山怜史さんに設計を依頼。秋山さんは「家づくりとは全く関係ない話」まで夫妻からヒアリング。家の内観は擬洋風建築が好みのご主人と日本の伝統家屋が持つ、独特の雰囲気や英国アンティークが好きな奥様の、両者が満足のできるレトロモダン調に設計・デザインした。
予算の関係で断念したアイデアも多かったそうだが、オーナーが手づくりできるところは自らの手で仕上げ、これからも少しずつ手を入れていく余地が残された「余白を楽しめる」家でもある。
所在地:神奈川県横須賀市
住まい手:夫妻と2歳の息子
種別:新築
敷地面積: 214.82㎡
延床面積:121.07㎡
構造:木造
竣工年:2018年
設計: 一級建築士事務所 秋山立花
施工:ウスイホーム株式会社
土地代:約2900万円
設計・工事費:約4000万円
撮影:鳥村鋼一写真事務所
横浜市中区日ノ出町に暮らしていたオーナー夫妻。息子さんの誕生を機に「もっと自然の中で子どもを育てたい」と考えていたところ、不動産業を営む友人から強く勧められ、訪れたこの地に「一目惚れ」をしたという。
そして「まずは桜ありき」のスタンスで、一級建築士事務所 秋山立花の秋山怜史さんに設計を依頼。秋山さんは「家づくりとは全く関係ない話」まで夫妻からヒアリング。家の内観は擬洋風建築が好みのご主人と日本の伝統家屋が持つ、独特の雰囲気や英国アンティークが好きな奥様の、両者が満足のできるレトロモダン調に設計・デザインした。
予算の関係で断念したアイデアも多かったそうだが、オーナーが手づくりできるところは自らの手で仕上げ、これからも少しずつ手を入れていく余地が残された「余白を楽しめる」家でもある。
桜の絶景を独り占めできるピクチャーウィンドウが圧巻の二階の和室。新緑の季節には、若葉のつややかな緑に溢れ、桜の季節をむかえれば、満開の桜が一枚の壮大な絵画となる、夢のような空間だ。
当初、天井を障子にして、その中に間接照明を設置する案もあったそうだが、見積もり段階で変更を迫られ、夫妻が好きなウィリアム・モリス(MORRIS & CO.製)の植物柄のクロスを採用した。両脇の壁はマットな質感で塗装仕上げのように見えるが、同社製の「モリス ヘリテージ カラーズ」という無地の壁紙をはっている。
夫妻がネットで探して購入した陶器製トグルスイッチが、この部屋にマッチしており、こうした小物への気配りが、全体の調和を保つのに大切なことがわかる。
当初、天井を障子にして、その中に間接照明を設置する案もあったそうだが、見積もり段階で変更を迫られ、夫妻が好きなウィリアム・モリス(MORRIS & CO.製)の植物柄のクロスを採用した。両脇の壁はマットな質感で塗装仕上げのように見えるが、同社製の「モリス ヘリテージ カラーズ」という無地の壁紙をはっている。
夫妻がネットで探して購入した陶器製トグルスイッチが、この部屋にマッチしており、こうした小物への気配りが、全体の調和を保つのに大切なことがわかる。
「古民家風の家にしたい」という夫妻の要望を実現するために、構造部材の梁を現しにした秋山さん。本来の木造在来工法の梁よりも「本数を増やす」ことで梁の一本一本を細くしたので、圧迫感がない。
見せ梁天井にした場合、配線の関係で照明の設置が課題となるが、flame社のブラケットランプを壁の高い位置に設置することで、頭上から照らす灯りが可能となった。「スタンド式照明にするしか無いと思っていたので、目から鱗でした」というご主人。ただし若干の注意が必要で、奥様は、趣味のフラメンコの練習をする時には、電球に「ぶつからないように」気をつけているのだそう。
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見せ梁天井にした場合、配線の関係で照明の設置が課題となるが、flame社のブラケットランプを壁の高い位置に設置することで、頭上から照らす灯りが可能となった。「スタンド式照明にするしか無いと思っていたので、目から鱗でした」というご主人。ただし若干の注意が必要で、奥様は、趣味のフラメンコの練習をする時には、電球に「ぶつからないように」気をつけているのだそう。
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「どの場所から見ても、それぞれの景色が額縁のようなに見えるよう」にと希望した夫妻。そのため二階は、各空間を仕切る戸がひとつもない。
「額縁に見立てた」というリビングの本棚兼、飾り棚は、木製飾り枠が付いていて、まさに大きな額縁のよう。以前の家で使っていた箪笥や、のみの市で買い集めたブロカント、TVなどが綺麗なフレームの中に収まっている。
左側の小上がりのスペースは、夫妻がイメージしていた「少し広めの出窓」を、秋山さんのアイディアで、家族全員で籠もれる「ブックヌック」に拡張した。
左側の小上がりのスペースは、夫妻がイメージしていた「少し広めの出窓」を、秋山さんのアイディアで、家族全員で籠もれる「ブックヌック」に拡張した。
秋山さん(写真右)と三歳になるお嬢さんが一緒に入ってもまだ余裕がある3.98㎡(棚部分を含む)のヌック・スペース。今は主に息子さんの遊び場となっているが、大人にとっても「巣ごもり感」が心地のよい空間だ。
二階フロアーには、完全に閉じたスペースが1つも無いため、視野の片隅に必ず入ってくる各スポットの色や柄選びには、かなり気をつかったそう。
判断のベースにしたのが、このヌックに敷いたマットレスカバー(知人のカルトナージュ作家の作)だ。また部屋の雰囲気を大きく左右する、リビングの天井や床の色は、オスモ&エーデル社のショールームに出向き、さまざまな色を調合し、比較検討したという。「濃い目の茶色」に決めた後に、周囲の壁の色や柄を選択していったという。
判断のベースにしたのが、このヌックに敷いたマットレスカバー(知人のカルトナージュ作家の作)だ。また部屋の雰囲気を大きく左右する、リビングの天井や床の色は、オスモ&エーデル社のショールームに出向き、さまざまな色を調合し、比較検討したという。「濃い目の茶色」に決めた後に、周囲の壁の色や柄を選択していったという。
和室の裏側(東側)のオープンキッチンは、パントリーを設けない代わりに、十分過ぎる収納を確保している。奥様は「カウンターキッチンでないと、子どもの動きが見えないのでは?」と少し心配だったそうだが、LDKがつながっているので「全く問題なく、階下の音も聞こえるので安心」だそう。
キッチンの壁面タイルは、右側と左側で同じデザインながら少し色味の違うものを採用した。ダイニングテーブルやその上の置物は、蚤の市で知り合ったアイアン(鉄)アーティストにつくってもらったもの。シンプルかつスタイリッシュな裸電球は、「シェードにお金をかけない」代わりに、見栄えのよいソケットを選んだ。とはいえ、「照明は、これから懲りたい『余白』の部分です」という奥様。
キッチンの壁面タイルは、右側と左側で同じデザインながら少し色味の違うものを採用した。ダイニングテーブルやその上の置物は、蚤の市で知り合ったアイアン(鉄)アーティストにつくってもらったもの。シンプルかつスタイリッシュな裸電球は、「シェードにお金をかけない」代わりに、見栄えのよいソケットを選んだ。とはいえ、「照明は、これから懲りたい『余白』の部分です」という奥様。
陰影が美しい一階の玄関ホール。憧れの「階段箪笥」は、予算オーバーで諦めたが、格子と手摺りの交差が織りなす「すっきりしたデザイン」が美しい。壁面のアクセントになっているアートボックスは、これまで蒐集した小物を取り合わせて、奥様自らが制作した。シンプルなフォルムの電気スイッチは、神保電気製NK SERIE。
床や長押しも夫妻が自ら、友人や秋山さんの手を借りて、のべ1週間かけて塗装した。書斎の造作引き戸(写真左奥)も、床と同じ塗料で自分たちで塗ったが「材質が違うと仕上がりの色も違って、図らずもアンティーク調に仕上った」という。
床や長押しも夫妻が自ら、友人や秋山さんの手を借りて、のべ1週間かけて塗装した。書斎の造作引き戸(写真左奥)も、床と同じ塗料で自分たちで塗ったが「材質が違うと仕上がりの色も違って、図らずもアンティーク調に仕上った」という。
一階浴室の引き戸は、代官山のアンティークショップで購入した古建具(板戸)を使用した。洗面台前の壁には、キッチンで使ったタイルと同デザインで色違いのものを採用している。
写真左側が浴室で、右側がトイレ。実は一階には二箇所トイレを設置したが、二階にはない。「利便性も大事ですが、それよりも自分たちが住んでいて嬉しい家、満喫できる家をめざしました」という夫妻。
写真左側が浴室で、右側がトイレ。実は一階には二箇所トイレを設置したが、二階にはない。「利便性も大事ですが、それよりも自分たちが住んでいて嬉しい家、満喫できる家をめざしました」という夫妻。
二人の書斎(写真右)と納戸(写真左)。板戸の微妙な高さの違いから、日本の建具の寸法の変遷が伺い知れる。
大学の研究者であるご主人の希望で、書斎の本棚は天井の高さいっぱいに造作した。「本棚まで塗装する余力がなく、白木のまま」になっているが、モリスの壁紙と調和して、優しい空間になっている。
本棚の上段まで手が届かないので、梯子を購入するはずだったが、「必要ありませんでした」と笑うご主人。趣味がボルタリングやクライミングなので、楽々と棚の上まで登れてしまうそうだ。
本棚の上段まで手が届かないので、梯子を購入するはずだったが、「必要ありませんでした」と笑うご主人。趣味がボルタリングやクライミングなので、楽々と棚の上まで登れてしまうそうだ。
書斎から、ご主人が製作したウッドデッキまで、綺麗に視線が抜けていく。「外」と「内」をつなぐ広い中間スペースは、秋山さんが「どうしてもつくりたかった」という「用途としては廊下でありながら、その用途からはみだした空間」だ。狭い廊下にすると、各部屋を断絶してしまうが、この空間を介することで、つながりを感じることができる。書斎から出て左側が寝室。
今後の課題は庭づくりだというご主人。「表の花壇の煉瓦積みだけでも大変だったのに、その何倍のスペースがあるかと考えるだけで心が折れ気味」だそう。
子育ての真っ最中に「庭木の剪定も自分たちだけでできるか」と奥様も不安を隠さないが、いろいろと手づくりすることで「暮らしに愛着を持てる」と確信しているという。
今後の課題は庭づくりだというご主人。「表の花壇の煉瓦積みだけでも大変だったのに、その何倍のスペースがあるかと考えるだけで心が折れ気味」だそう。
子育ての真っ最中に「庭木の剪定も自分たちだけでできるか」と奥様も不安を隠さないが、いろいろと手づくりすることで「暮らしに愛着を持てる」と確信しているという。
家づくりにあたり、オーナー夫妻は、叶えたい夢だけでなく、好きなもの、嫌いなものまで細かく秋山さんに伝えたと話す。秋山さんは、微妙に違う夫婦の趣味の「落としどころ」を絶妙に探り当てた。二人が所有していたアンティーク家具や雑貨を、新築の建物に共存させていく作業は「パズルのよう」で楽しかったという。「情報量は多ければ多いほど、その方にとって、より住みやすい家をつくることができます」(秋山さん)
閑静な住宅街にあって、ひときは目立つ、黒と木のコントラストが美しい家。その外観は、日々、道行く人を魅了してやまないようだ。「先日、お宅の外壁の色が気に入っているので近寄って見ていいか?と突然、見ず知らずの人が訪ねて来られて、驚きました」というご主人。満開の桜の時期には、さらに多く人から、羨望のまなざしを向けられることだろう。
こちらもあわせて
桜を愛でる、美しい日本の家
一級建築士事務所 秋山立花の他の事例はこちらから
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