古さと新しさが融合する、高台に立つEARTH HOUSE
高台に立つ、築50年の物件をリノベーション。住まい手のこだわりがつまった空間が完成しました。
杉田真理子
2019年11月7日
長く賃貸暮らしの続いた施主が家づくりを決心したのは、趣味の陶芸にしっかり打ち込みたいという想いからだった。「まずは土地探しからスタートしましたが、陶芸ができる納屋スペースも一緒に確保した住宅となると、なかなか条件に一致する場所がなくて。都心から離れた僻地になるのは嫌だったので、今のこの場所に決めました」と施主は当時を振り返る。中古物件をリノベーションすることでコストを下げつつも、楽しい家づくりをしたい、という想いで探し続けて見つかったのは、高台に立つ築50年の建物だった。
どんなHouzz?
住まい手:30代の家主
場所:兵庫県宝塚市
建築面積:94.14㎡
延床面積:136.63㎡
構造:在来木造
設計:鈴木俊彦(SQOOL一級建築士事務所)
施工:鷲尾工務店
竣工時期:住居2018年1月
撮影:笹の倉舎/笹倉洋平
建築家・鈴木俊彦さんとの出会いは、友人を通じてだったという。共通の友人がいたことに加え、同世代で話しやすく、すぐに意気投合した。「こんな家にしたい、という想いに、真摯に耳を傾けてくれました。どんなに色々言っても、”これは無理です”、と否定されることは全然なくて」と施主。鈴木さんは、「お施主さんのこだわりとセンスが抜群なので、僕自身、他には無い彼らしい家を設計したい、というモチベーションで臨みました」と語る。
”元々ある良いものは、なるべく残す”、という方針で、2人のコラボレーションともいえるリノベーションがスタートした。
住まい手:30代の家主
場所:兵庫県宝塚市
建築面積:94.14㎡
延床面積:136.63㎡
構造:在来木造
設計:鈴木俊彦(SQOOL一級建築士事務所)
施工:鷲尾工務店
竣工時期:住居2018年1月
撮影:笹の倉舎/笹倉洋平
建築家・鈴木俊彦さんとの出会いは、友人を通じてだったという。共通の友人がいたことに加え、同世代で話しやすく、すぐに意気投合した。「こんな家にしたい、という想いに、真摯に耳を傾けてくれました。どんなに色々言っても、”これは無理です”、と否定されることは全然なくて」と施主。鈴木さんは、「お施主さんのこだわりとセンスが抜群なので、僕自身、他には無い彼らしい家を設計したい、というモチベーションで臨みました」と語る。
”元々ある良いものは、なるべく残す”、という方針で、2人のコラボレーションともいえるリノベーションがスタートした。
駅から坂道を登ること数分。開けた高台に、深い紺色が印象的な横長の家が見えてくる。
施主がオークションで見つけたというクラシックな木製のドアを開けると、レトロで可愛らしいタイルが貼られた正面壁が迎えてくれた。タイルは、施主と鈴木さんが2人でショップで見つけ、即決したもの。「タイルはケチったらダメだと思います」と施主は笑う。
1人暮らしの家づくりであったが、将来的に4人家族でも住めることを想定して設計したという。「1人暮らしの今だからこそ、好きなことを詰め込んだ住まいにしようと思いました」と施主は当時を振り返る。
建築家を探す
施主がオークションで見つけたというクラシックな木製のドアを開けると、レトロで可愛らしいタイルが貼られた正面壁が迎えてくれた。タイルは、施主と鈴木さんが2人でショップで見つけ、即決したもの。「タイルはケチったらダメだと思います」と施主は笑う。
1人暮らしの家づくりであったが、将来的に4人家族でも住めることを想定して設計したという。「1人暮らしの今だからこそ、好きなことを詰め込んだ住まいにしようと思いました」と施主は当時を振り返る。
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インテリア全体のテイストは、施主が好きなスタジオジブリの映画に登場する木造建築にヒントを得て、木質感溢れるウッディなデザインとした。見た目はログハウス的だが、断熱材を完備し、設備や機能は新築に劣らずしっかりと作り込んだという。
この家を印象づける特徴のひとつは、深い色合いの壁と天井だ。新築にあるような、真っ白なクロスでは物足りなさを感じたという。「コストを下げるため、合板350枚、マホガニー色で自分達で塗りました」と鈴木さんと施主は顔を見合わせて笑う。「1枚30分程度かかるので、175時間は、この色ぬりに費やしました。この家に関しては、業務外だったとしても、きっとすごい建築になるから頑張ろう、という思いがありました」と鈴木さん。
この家を印象づける特徴のひとつは、深い色合いの壁と天井だ。新築にあるような、真っ白なクロスでは物足りなさを感じたという。「コストを下げるため、合板350枚、マホガニー色で自分達で塗りました」と鈴木さんと施主は顔を見合わせて笑う。「1枚30分程度かかるので、175時間は、この色ぬりに費やしました。この家に関しては、業務外だったとしても、きっとすごい建築になるから頑張ろう、という思いがありました」と鈴木さん。
玄関から入り、右手に進むと、シューズクローク兼サンルームとなる。元々の家では、日当たりの良いこの西側の部分がリビングとして使われていた。今回のリノベーションでは、東側に位置する納屋へのアクセスのしやすさも考慮し、生活の中心となるリビングダイニングはあえて東側に移している。
洗濯機で洗い、サンルームで干し、ウォークインクローゼットにそのまま服をかける、という家事動線を設計した。ちょっとした書斎も設けられており、長時間滞在しても気持ちの良いスペースだ。「元々あった西側のリビングを潰してでも、このサンルームには価値があると思います」と施主。アーチ型の通路扉が美しい。
天井には、施主がデザインしたオリジナルの物干し竿を大工に作成してもらった。シンプルなデザインで、出しっぱなしにしても気にならない。
洗濯機で洗い、サンルームで干し、ウォークインクローゼットにそのまま服をかける、という家事動線を設計した。ちょっとした書斎も設けられており、長時間滞在しても気持ちの良いスペースだ。「元々あった西側のリビングを潰してでも、このサンルームには価値があると思います」と施主。アーチ型の通路扉が美しい。
天井には、施主がデザインしたオリジナルの物干し竿を大工に作成してもらった。シンプルなデザインで、出しっぱなしにしても気にならない。
バスルームは、ガラリとイメージの違うデザインとした。氷河色の壁に、一部のみ使用された濃紺のタイルが印象的だ。「タイルは面積が多いとくどくなってしまいがちですが、少しの面積だけでも雰囲気をガラリと変えてくれるので、気に入っています」と施主。元々気に入っていたという洗面台が、すぽりとおさまるサイズとなった。
玄関から廊下を抜けると、高台だからこその展望が見事なリビングダイニングが広がる。元々あった和室は全てフローリングとし、マホガニー色で壁と天井を統一することで、シックでレトロクラシックな雰囲気に仕上がった。大きく切り取られた窓、高台の斜面に沿って突き出たテラスが開放的な雰囲気を演出している。
もともと壁向きで設計されていたキッチンは、施主の母のアドバイスで、眺望を考えてアイランド式とした。キッチンの周りは循環性のある導線を確保し、リビングダイニングとの行き来がスムーズにできるようにした。
「キッチンにたつと、外の景色が見渡せて気持ちが良いです」と施主。親戚の子供達が遊びに来た時も、台所に立ちながらリビングの様子を確認できるので、安心だという。
キッチンとリビングを隔てる壁は、一部抜くことで開放感を演出した。キッチンには様々な場所で買い付けてきたお気に入りの食器が並び、施主のこだわりと趣味の良さが際立つ。キッチン左手にはパントリースペースもあり、すっきりとした収納が可能だ。
「キッチンにたつと、外の景色が見渡せて気持ちが良いです」と施主。親戚の子供達が遊びに来た時も、台所に立ちながらリビングの様子を確認できるので、安心だという。
キッチンとリビングを隔てる壁は、一部抜くことで開放感を演出した。キッチンには様々な場所で買い付けてきたお気に入りの食器が並び、施主のこだわりと趣味の良さが際立つ。キッチン左手にはパントリースペースもあり、すっきりとした収納が可能だ。
ドアを開け放つと、広々と設えたウッドデッキが、内部空間と外部空間を繋げ開放感がある。ダイニングキッチンと程よく仕切られたリビングでは、ソファに座ってゆったりとくつろぐことができる。
施主が趣味の陶芸を嗜む場所である納屋へと続く、半屋外のテラス。屋根をかけることで、あえて内と外が曖昧なデザインとした。現在は、外用の家具を置き外での時間も楽しんでいるという。
2階は、将来家族が増えた時のために、4部屋分個室を確保した。現在は、寝室のほか、TV観賞用リビング、ゲストルーム、趣味のための部屋として使用されている。
壁のマホガニー色が印象的な空間に、元々の建物にあった照明や、施主がアンティークショップなどで買い付けてきたステンドグラスなどを埋め込んだ。「自然光がたっぷり入る家なので、暗い色合いの壁でも問題ありませんでした。照明も明るすぎにしたくなかったので、少し落としたデザインで統一しています」と鈴木さん。
壁のマホガニー色が印象的な空間に、元々の建物にあった照明や、施主がアンティークショップなどで買い付けてきたステンドグラスなどを埋め込んだ。「自然光がたっぷり入る家なので、暗い色合いの壁でも問題ありませんでした。照明も明るすぎにしたくなかったので、少し落としたデザインで統一しています」と鈴木さん。
手塗りをした壁の板は、色のりや模様など、1枚1枚表情が異なる。「1枚ずつ塗ったからこそ愛着もありますし、それだけ木に向き合う時間があり、面白かったです」と鈴木さんは説明する。
屋根の構造をそのまま残した部屋は、現在趣味のための空間として使われている。樹脂タイルはあえて模様のあるゴールドとし、個性のある部屋に仕上げた。
「壁の色塗りが間に合わず、一部無塗装の壁ができてしまいました。大工さんに取り付けてもらった時に、模様として個性があり、面白いと感じたので、そのままの形で残しています。偶然的に生まれたデザインには、思いがけない美しさがあります」と鈴木さん。
「壁の色塗りが間に合わず、一部無塗装の壁ができてしまいました。大工さんに取り付けてもらった時に、模様として個性があり、面白いと感じたので、そのままの形で残しています。偶然的に生まれたデザインには、思いがけない美しさがあります」と鈴木さん。
独立前はハウスメーカーで数多くの住宅を手がけてきたという鈴木さん。さまざまな家づくりをみてきたが、今回は施主のこだわりから学ぶことも多かったという。
「彼の趣味や好みを共有するために、一緒にお店やショールームなど、見て回りました」と鈴木さん。ハウスメーカーであれば実現できなかった、建築家と施主の組み合わせが生む細かい工夫やこだわり。人ありきの家づくりの魅力を実感した。
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「彼の趣味や好みを共有するために、一緒にお店やショールームなど、見て回りました」と鈴木さん。ハウスメーカーであれば実現できなかった、建築家と施主の組み合わせが生む細かい工夫やこだわり。人ありきの家づくりの魅力を実感した。
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